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ライオンとは

ライオン株式会社は、日本を代表する大手生活用品メーカーであり、歯ブラシでは国内首位、トイレタリー分野全体でも国内3位に位置する強固な事業基盤を持つ企業である。本社は東京都台東区蔵前にあり、東京証券取引所プライム市場に上場している。創業は1918年と長く、100年以上にわたり日本人の生活習慣と密接に結びついた製品を提供してきた企業である。
ライオンの事業の中核は、歯磨き・歯ブラシ・洗口液などのオーラルケア分野である。特に歯ブラシでは圧倒的なシェアを持ち、歯磨き剤についても「クリニカ」「システマ」「デントヘルス」「NONIO」など複数の主力ブランドを展開している。虫歯予防、歯周病対策、口臭ケア、知覚過敏対策など用途別に細かく商品を展開し、価格帯も幅広く設定することで、子どもから高齢者まで幅広い層をカバーしている点が特徴である。
一般消費者向けだけでなく、歯科医院向け製品にも強みを持っている。関連会社のライオン歯科材を通じて、歯科医療現場専用の歯ブラシ、歯間ブラシ、歯磨剤、洗口液、義歯ケア用品、口腔ケア用品を提供しており、予防歯科の分野では業界内でも高い評価を得ている。低研磨・低発泡・高フッ素設計の歯磨剤や、ジェル・フォームタイプ製品、要介護者向けの口腔ケア用品など、高付加価値で専門性の高い製品群が揃っている点は、価格競争に陥りにくい収益構造につながっている。
オーラルケア以外では、洗濯用洗剤、台所用洗剤、住宅用洗浄剤などのホームケア製品、ボディソープやハンドソープといったパーソナルケア製品も展開しており、日常生活の「清潔」「衛生」に関わる領域を広く押さえている。これらは生活必需品であるため、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブな性格を持つ。
また、医薬品分野では鎮痛解熱薬「バファリン」をはじめとする一般用医薬品を展開しており、トイレタリーと医薬品をまたぐ独自のポジションを築いている。さらに、工業用品や業務用製品も手掛けており、BtoCだけでなくBtoB分野にも事業の裾野を広げている。
近年は海外事業にも注力しており、特にアジア地域を重点市場としている。東南アジアや中国など、人口増加や中間層拡大、健康・衛生意識の高まりが続く地域において、日本で培ったオーラルケアや衛生分野のノウハウを活かした商品展開を進めている。現地ニーズに合わせた商品開発や価格戦略を取ることで、単なる輸出ではなく、現地密着型の事業展開を目指している点が特徴である。
企業としての方向性は、単なる「モノ売り」から「習慣づくり」への進化を掲げている。企業パーパスとして「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」を掲げ、歯みがきや手洗いといった日常行動そのものを通じて、人々の健康に長期的に寄与することを重視している。この考え方は、少子高齢化や医療費増大といった社会課題とも親和性が高く、同社の事業が中長期的にも必要とされ続ける理由の一つとなっている。
総合すると、ライオンはオーラルケアを軸とした圧倒的な国内シェア、生活必需品中心の安定した事業構造、歯科医院向けや高齢者向けなど付加価値領域への展開、そしてアジアを中心とした海外成長余地を併せ持つ企業である。急成長型ではないものの、長期的な生活習慣・健康テーマに支えられた、安定性と持続性を重視した事業モデルが特徴といえる。
ライオン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.12 | 389,869 | 28,843 | 31,292 | 21,939 | 77.0 | 25 |
| 2023.12 | 402,767 | 20,505 | 22,375 | 14,624 | 51.4 | 26 |
| 2024.12 | 412,943 | 28,387 | 32,249 | 21,197 | 76.5 | 27 |
| 2025.12(予) | 420,000 | 35,000 | 38,000 | 25,000 | 90.4 | 30 |
| 2026.12(予) | 433,000 | 36,000 | 39,000 | 25,600 | 92.5 | 30〜32 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 41,962 | -19,535 | -19,821 |
| 2023.12 | 30,068 | -34,790 | -11,762 |
| 2024.12 | 43,660 | -7,659 | -21,205 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 5.0% | 5.2% | 3.0% | ― | ― |
| 2024.12 | 6.8% | 7.2% | 4.2% | 18.9倍~25.8倍 | 1.50倍 |
| 2025.12(予) | 8.3% | 8.5% | 5.0% | 18.6倍 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益規模を億円ベースで見ると、2023年12月期は営業利益205億円、経常利益223億円、純利益146億円である。2024年12月期には営業利益283億円、経常利益322億円、純利益211億円へと大きく改善しており、収益力が明確に回復している。2025年12月期予想では営業利益350億円、経常利益380億円、純利益250億円とさらに増益が見込まれ、2026年12月期予想でも営業利益360億円、経常利益390億円、純利益256億円と高水準を維持する計画となっている。売上規模が拡大する中で利益も着実に積み上がっており、業績トレンドは安定した増益基調と評価できる。
収益性の面では、営業利益率が2023年の5.0%から2024年6.8%、2025年8.3%へと段階的に改善している。生活必需品メーカーとしては依然として高い水準ではないものの、価格改定やコスト構造改善の効果が数字に表れており、構造的な収益性改善が進んでいると読み取れる。
資本効率を見ると、ROEは5.2%から7.2%、8.5%へと上昇しており、ROAも3.0%から4.2%、5.0%へと改善している。急成長企業と比べると水準自体は控えめだが、巨大な売上・資産規模を持つ生活用品メーカーとしては、着実に効率が改善している点が評価できる。
バリュエーション面では、2024年実績PERは安値平均18.9倍、高値平均25.8倍とやや高めのレンジにあったが、2025年予想PERは18.5倍まで低下している。これは株価調整ではなく、利益成長によって評価倍率が自然に切り下がる構図であり、成長の裏付けがある点は好材料である。実績PBRは1.5倍で、ブランド力と事業安定性を考慮すれば過度な割高感はない。
以上を総合すると、ライオンは「高成長株」ではないものの、売上規模の拡大と利益率改善が同時に進むことで、収益性・資本効率ともに底上げが進んでいる企業である。PERは依然として20倍前後と割安とは言えないが、生活必需品メーカーとしての安定性、着実な増益トレンド、資本効率の改善を踏まえると、現在の評価水準は妥当な範囲にある。
投資判断としては、短期的な割安株狙いには向かないが、業績改善を背景に中期的な安定成長を取り込む投資には適した銘柄と判断される。ディフェンシブ性を持ちながら、緩やかな成長と利益率改善を享受できる点が同社の投資妙味である。
配当目的とかどうなの?
ライオンの予想配当利回りは2025年12月期が1.80%、2026年12月期も1.80%である。日本株全体で見るとこの水準は明確に低配当の部類に入り、高配当目的の投資には向かない。業績面を見ると、営業利益・経常利益・純利益はいずれも増益基調で営業利益率も5.0%から8.3%へと改善している。営業キャッシュフローも安定して大きく、配当を支払う余力自体は十分にある。
一方で、ROEは8%台、PBRは1.5倍、PERも18倍前後と株主還元を強く意識する企業というよりは、事業の安定運営と中長期的な成長を優先する企業姿勢が数値から読み取れる。配当水準も年々緩やかに増えてはいるが、利回りは2%に届かずインカムゲインを主目的とする投資家にとっては物足りない。高配当株に求められる3%〜4%以上の利回り水準とは明確に差がある。
以上を総合すると、ライオンは配当目的で買う銘柄ではない。配当はあくまで「おまけ」に近く、安定した事業基盤と業績改善を背景にした値上がりと緩やかな増配を含めたトータルリターン型の銘柄と位置付けるのが妥当である。配当収入を重視する投資スタンスには不向きだが、ディフェンシブ性を持つ中期保有銘柄としては一定の魅力がある。
今後の値動き予想!!(5年間)
ライオンの現在値は1,661.5円である。同社は歯ブラシ国内首位、トイレタリー分野で国内上位の生活必需品メーカーでありオーラルケアを中核に洗剤、医薬品、工業用品まで幅広い事業を展開している。直近数値では売上拡大とともに営業利益率が5.0%から8.3%へ改善し、ROE・ROAも着実に上向いている。PERは2024年実績で18.9倍〜25.8倍、2025年予想では18.5倍程度まで低下しており、利益成長によって評価が切り下がる構図にある。配当利回りは1.8%と低く、投資リターンの中心は配当ではなく株価上昇となる前提で今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、オーラルケアを中心とした国内事業が価格改定と高付加価値商品の拡大により順調に伸び、営業利益率が10%前後まで改善する展開を想定する。加えてアジア事業が成長ドライバーとして定着し、売上・利益ともに安定した増益が続く。この場合、生活必需品メーカーとしての安定性に加えて「着実な成長」が評価され、PERは18倍〜20倍程度を維持したまま利益成長が株価に反映される可能性がある。5年後の株価は2,200円〜2,600円程度まで上昇する余地があり、現在値から見れば中期で十分な値上がり余地が期待できる。
中間のシナリオでは、国内事業は堅調だが成長率は緩やかにとどまり、海外事業も想定通りの拡大にとどまる状況を想定する。営業利益率は8%前後で安定し、ROE・ROAも現状水準から小幅改善にとどまる。市場評価はPER15倍〜18倍程度に落ち着き、株価は業績に沿って緩やかに推移する。この場合、5年間の株価レンジは1,600円〜2,000円程度が中心となり、大きな上昇はないものの下値も限定的な展開となる。値動きは小さいが、ディフェンシブ性を重視した保有には向く。
悪い場合のシナリオでは、原材料価格の上昇や競争激化により収益性改善が止まり、営業利益率が再び6%前後にとどまる状況を想定する。海外展開も期待ほど伸びず利益成長が鈍化した場合、市場は成長期待を後退させPERは12倍〜14倍程度まで低下する可能性がある。この場合、株価は評価調整の影響を受けやすく、5年後の水準は1,200円〜1,400円程度にとどまる展開も考えられる。配当利回りは相対的に上昇するが、値下がりを補えるほどではなくトータルリターンは低調となる。
総合すると、ライオンは生活必需品メーカーとしての安定性を土台に収益性改善が続けば2,000円超への上昇余地がある一方、成長が鈍化すれば評価調整を受けやすい銘柄である。良い場合は2,200円〜2,600円、中間では1,600円〜2,000円、悪い場合は1,200円〜1,400円というレンジが想定され、配当よりも業績改善による株価上昇を狙う中期向けの銘柄と位置付けられる。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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