株価
WOWOWとは

WOWOW株式会社である。WOWOWは日本初の民間有料衛星放送会社として1991年に開局した放送事業者で、日本全域を放送対象地域とする衛星基幹放送事業者である。地上波民放のように広告収入を主軸とするモデルではなく、視聴者からの月額視聴料を収益源とする有料放送モデルを採用しており、日本におけるペイテレビの草分け的存在と位置付けられる。
事業の中核はBSデジタル放送を中心とした有料放送事業であり、映画、海外ドラマ、国内ドラマ、スポーツ、音楽ライブ、ステージ作品などを幅広く編成している。特に映画や海外ドラマ、オリジナルドラマの分野では早期から自社制作・独占編成に力を入れてきた点が特徴で、放送権を購入して流すだけの編成ではなく、自社が製作委員会に参加する、あるいは主導的に制作を行うことで、差別化されたコンテンツを提供してきた。
テレビ放送は現在、WOWOWプライム、WOWOWライブ、WOWOWシネマの3チャンネル体制で運営されている。WOWOWプライムは総合編成のフラッグシップチャンネルとして位置付けられ、映画、ドラマ、スポーツ、音楽など幅広いジャンルを網羅する。WOWOWライブはスポーツ中継や音楽ライブ、舞台・演劇といったライブ性の高いコンテンツを中心に編成され、WOWOWシネマは映画専門チャンネルとして新作映画からクラシック作品までを幅広く扱っている。この3チャンネル体制により、ジャンルごとの専門性と総合力の両立を図っている。
技術面では、日本の有料放送の中でも先行的な役割を果たしてきた。BSデジタル放送開始当初からハイビジョン放送を積極的に導入し、5.1chサラウンド音声にも対応することで、映画やライブコンテンツの臨場感を重視した放送を行ってきた。2021年には4K放送としてWOWOW 4Kを開始し、HDR対応や4Kマスター制作などにも取り組んだが、動画配信サービスとの競争激化やコスト構造の見直しを背景に、2025年2月末で4K放送から撤退する方針を表明している。この点は、ハードとしての放送設備よりも、コンテンツや配信への経営資源集中を優先する判断と見ることができる。
インターネット分野では、従来の放送契約者向けサービスを発展させる形で動画配信事業を強化してきた。WOWOWメンバーズオンデマンドとして放送同時配信や見逃し配信を提供していたが、2021年以降はテレビを持たない層も対象としたWOWOWオンデマンドを本格展開している。これにより、衛星放送に依存しない視聴形態を確立し、若年層や単身世帯など新たな顧客層の取り込みを狙っている。さらに2023年以降はPPV配信にも対応し、特定コンテンツ単位での課金モデルも取り入れている。
放送の仕組みとしては、有料放送を成立させるため限定受信方式を採用しており、契約者以外はスクランブルにより視聴できない仕組みとなっている。一方で、加入促進や編成周知のために一部時間帯では無料放送や番組案内を実施しており、完全なクローズド型ではなく、開放と制限を組み合わせた運営が行われている。映画や一部番組については映倫基準に基づくレイティング表示を行い、年齢制限や視聴上の注意喚起にも配慮している。
制作事業の側面では、自社放送向けコンテンツにとどまらず、外部向けの映像制作や共同制作にも関与しており、放送局という枠を超えたコンテンツプロデュース企業としての性格を強めている。オリジナルドラマやドキュメンタリーは国内外で評価を受ける例も多く、ブランド価値の源泉となっている。
資本関係としては、2024年時点でフジ・メディア・ホールディングスおよびTBSホールディングスの持分法適用関連会社となっており、地上波キー局と一定の関係を持ちながらも、編成や経営の独立性を維持している点が特徴である。地上波とは異なる有料放送という立ち位置を保ちつつ、制作力や人材面でのシナジーを模索する関係にある。
総合的に見るとWOWOWは、広告依存型の放送局でも、巨大なグローバル配信プラットフォームでもなく、質の高いコンテンツを安定的に提供することによって会員からの継続収入を得る中規模だが独自性の強い映像エンターテインメント企業である。放送から配信への構造転換期にある中で、ハードとしての放送設備よりも、コンテンツ制作力とブランド価値を軸に生き残りを図る企業と位置付けられる。
WOWOW 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 79,165 | 6,789 | 6,934 | 2,942 | 108.9 | 80 |
| 連22.3 | 79,657 | 5,268 | 5,349 | 4,239 | 154.0 | 60 |
| 連23.3 | 77,101 | 3,225 | 3,547 | 2,398 | 83.8 | 50 |
| 連24.3 | 74,869 | 1,450 | 2,057 | 1,092 | 38.8 | 30 |
| 連25.3 | 76,757 | 2,036 | 2,997 | 637 | 22.6 | 30 |
| 連26.3 予 | 76,000 | 700 | 1,500 | 800 | 28.2 | 30 |
| 連27.3 予 | 77,000 | 900 | 1,700 | 900 | 31.8 | 30 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 3,219 | -2,303 | -2,515 |
| 2024.3 | 4,293 | -2,755 | -1,433 |
| 2025.3 | 4,344 | -3,626 | -927 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 4.1% | 3.5% | 2.4% | ― | ― |
| 2024.3 | 1.9% | 1.6% | 1.2% | ― | ― |
| 2025.3 | 2.6% | 0.9% | 0.6% | 27.8倍 ~ 35.2倍 | 0.58倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績水準を億円ベースで整理すると、2024年3月期の営業利益は14億円、経常利益は20億円、純利益は10億円である。2025年3月期は営業利益20億円、経常利益29億円、純利益6億円と、営業段階では回復しているものの、最終利益は大きく落ち込んでいる。2026年3月期予想では営業利益7億円、経常利益15億円、純利益8億円とされており、営業利益は再び大きく減少する見通しとなっている。
次に収益性を見ると、営業利益率は2023年3月期4.1%、2024年3月期1.9%、2025年3月期2.6%と低水準で推移している。放送・配信事業というストック型モデルであるにもかかわらず、利益率が3%前後にとどまっており、固定費負担の重さと競争環境の厳しさが数字に表れている。
資本効率面では、ROEが2023年3月期3.5%、2024年3月期1.6%、2025年3月期0.9%、ROAが同期間で2.4%、1.2%、0.6%と、年々悪化している。特にROEが1%を下回る水準まで低下しており、株主資本を使って十分な利益を生み出せていない状態である。この水準では、成長株としても高配当株としても評価しづらい。
バリュエーションを見ると、2025年の実績PERは安値平均27.8倍、高値平均35.2倍と非常に高い。一方で実績PBRは0.5倍台にとどまっており、資産価値から見ると割安だが、収益力の低さが強く嫌気されている状態である。つまり、市場は「資産はあるが稼ぐ力が弱い企業」と評価している構図になっている。
これらを総合すると、WOWOWは売上規模こそ維持しているものの、営業利益・ROE・ROAはいずれも低水準で、かつ改善トレンドが明確とは言えない。にもかかわらずPERは20倍後半から30倍台と高く、利益水準に対して株価の評価は割高感が強い。一方でPBRが0.6倍を下回っている点は下値の支えにはなり得るが、ROEが1%未満の状態ではPBR是正のカタリストも見えにくい。
投資判断としては、現時点では「積極的に買う局面ではない」。高成長期待で買うには利益成長とROE改善が不足しており、割安株として拾うにはPERが高すぎる。位置づけとしては、業績回復や構造改革によって営業利益率が4~5%、ROEが5%以上に戻る兆しが見えるまでは「様子見」、もしくは既存保有者の「中立・保有継続」レベルにとどまる銘柄と判断される。
配当目的とかどうなの?
WOWOWの予想配当利回りは、2026年3月期が2.09%、2027年3月期も2.09%であり、水準としては日本株全体の平均並みからやや低めに位置する。高配当投資の基準とされやすい3~4%には届かず、配当利回りそのものを目的に積極的に選ばれる水準ではない。
利益面を見ると、2025年3月期の純利益は約6億円、2026年3月期予想でも約8億円と小規模で、ROEは0.9%、ROAは0.6%と資本効率は極めて低い。営業利益率も2%台にとどまっており、事業が十分に稼げているとは言い難い状況である。この中で配当を維持している点は評価できるが、利益成長を伴った増配余地が大きいとは言えない。
バリュエーションの観点では、PBRは0.58倍と低く、純資産ベースでは割安に見える一方、ROEが1%未満であることから、市場は資産効率の低さを強く織り込んでいる状態である。PERも27.8~35.2倍と高水準で、利益規模に対して株価の評価は割高感が残る。
これらを総合すると、WOWOWは配当利回りが2%前後と中途半端で、利益水準と資本効率の低さから増配期待も持ちにくい。既に保有して配当を受け取りながら業績改善を待つという位置付けなら成立するが、新規に配当目的で投資する銘柄としては優先度が低いと判断される。
今後の値動き予想!!(5年間)
WOWOWの現在値は1,429.0円である。この株価を起点に今後5年間の値動きを業績・収益性・市場評価の変化という観点から良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合は、WOWOWが長年課題となっている低収益体質から一定程度脱却できるケースである。配信事業のコスト構造見直しやコンテンツ制作の選択と集中が進み、営業利益率が現在の2%台から4~5%水準まで回復することが前提となる。これに伴いROEも1%未満の状態から5%前後まで改善すれば、市場の見方は「稼げない放送会社」から「利益回復フェーズに入ったコンテンツ企業」へと変わる可能性がある。この場合、PBRは現在の0.6倍前後から0.8~1.0倍程度まで是正され、PERも利益成長を伴いながら20倍台に落ち着く展開が想定される。EPSが回復することで株価の許容レンジは切り上がり、株価は2,200円から条件が揃えば2,800円程度までの上昇余地が見えてくる。5年間で見れば、短期的な上下を挟みつつも明確な右肩上がりのトレンドを描くシナリオである。
中間のケースでは、売上は大きく落ち込まないものの、利益率の改善が限定的にとどまる。衛星放送と配信の二重構造による固定費負担が続き営業利益率は2~3%台、ROEも1~2%程度で低空飛行が続く。この場合、配当は現状水準を維持できるが増配余地は乏しく、成長株としても高配当株としても中途半端な位置付けが続く。市場評価も大きく変わらずPBRは0.6~0.7倍、PERは20倍後半から30倍前後で推移する可能性が高い。株価は1,200円~1,600円程度のレンジ内で上下を繰り返し、好材料が出れば一時的に上振れるものの持続的な上昇トレンドには乗り切れない。5年間を通して見ると、実質的には横ばい圏での値動きに収束する可能性が高い。
悪い場合は、動画配信サービスとの競争激化が想定以上に進み会員数の減少やARPUの低下が続くケースである。コンテンツ投資は続けざるを得ない一方で収益が伸びず営業利益率は再び1%台、あるいはそれ以下まで低下する。ROEも1%未満の状態が常態化すれば、市場からは「構造的に稼げない企業」との評価が一段と強まる。この場合、PBRは0.4~0.5倍程度まで切り下がり、株価は800円~1,000円近辺まで下落する可能性がある。配当も維持が難しくなれば配当目的の投資家が離れ、株価は下値模索の期間が長引く展開となる。
総合的に見ると、現在値1,429円は明確な回復シナリオを織り込むには早く、かといって深刻な悪化を前提とした水準でもない、いわば分岐点に近い位置にある。5年間の値動きは、業績そのものよりも営業利益率とROEがどこまで戻せるか、そして市場がそれを「一時的改善」ではなく「構造改善」と評価するかどうかに大きく左右される。現状の延長線上では横ばい、改革が進めば上振れ、競争に押されれば下振れという三分岐構造が今後5年間のWOWOW株価を規定すると考えられる。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す