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エステー(4951)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

エステーとは

エステーは、家庭用消臭芳香剤で国内トップクラス、衣類用防虫剤では国内シェア1位を誇る日用品メーカーである。主力ブランドは「消臭力」と「ムシューダ」で、消臭芳香剤、防虫剤、除湿剤を中心とした生活必需品分野に強みを持つ。家庭用消臭芳香剤では国内トップ3に入り、衣類用防虫剤では圧倒的な存在感を維持しており、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブな事業構造が特徴となっている。

同社の原点は戦後にさかのぼる。創業者が疎開先で母親の着物が虫に食われていたことに胸を痛め、防虫剤を開発したことが事業の出発点である。1948年8月にエステー化学工業株式会社として法人化され、防虫剤を中心に事業を拡大してきた。社名の「エステー」は、Service(奉仕)とTrust(信頼)を組み合わせた造語であり、同時にSuper Topを目指すという企業姿勢を象徴している。

2007年には社名から「化学」を外し、エステー株式会社へと商号変更した。これは、単なる化学メーカーではなく、生活者目線で価値を提供する日用品メーカーへと進化する意思を明確にしたものである。この方針転換以降、同社は防虫剤に加えて消臭・芳香剤分野を成長領域と位置付け、ブランド力強化と商品ラインの拡充に注力してきた。

製品ポートフォリオは非常に幅広い。消臭・芳香剤では「消臭力」を中心に、「シャルダン」「消臭ポット」「消臭プラグ」など、トイレ、リビング、玄関、冷蔵庫といった使用シーン別の商品を展開している。「消臭力」はエステーを代表するメガブランドであり、機能性と分かりやすい訴求力によって長年にわたり高い認知度を維持している。

防虫剤分野では「ムシューダ」が衣類用防虫剤の国内シェアNo.1ブランドとして君臨している。ピレスロイド系、パラジクロロベンゼン系、ナフタリン系など複数のタイプを揃え、ウールマーク認定商品も多く、衣類や和服、収納環境に応じた細かなニーズに対応している。また、「米唐番」のように米びつ用防虫剤など、生活の細部に入り込む商品も手掛けている。

除湿剤では「ドライペット」が国内トップブランドであり、クローゼットや押し入れ、下駄箱など家庭内のさまざまな場所で使用されている。脱臭剤としては「脱臭炭」が定番商品となっており、炭素材を活かした訴求で差別化を図っている。さらに、家庭用手袋の「ファミリー」、キッチン用品や清掃用品、使い捨てカイロ「オンパックス」など、生活シーン全体をカバーする商品群を展開している。

生産面では、福島、埼玉、九州に工場を持ち、国内生産体制を重視している。グループ会社には、業務用分野を担うエステーPRO、カイロ事業を行うエステーマイコールのほか、タイ、台湾、韓国などの海外子会社があり、アジアを中心とした海外展開も進めている。

総合すると、エステーは「消臭力」「ムシューダ」という強力な定番ブランドを軸に、消臭芳香剤、防虫剤、除湿剤といった家庭必需品分野で安定したポジションを築いている企業である。大きな成長を狙うハイリスク型の企業ではないが、生活に根ざした商品と強いブランド力を背景に、安定収益を積み上げていく典型的な日用品メーカーと言える。

エステー 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
純利益
(百万円)
一株益
EPS(円)
一株当り配当
DPS(円)
連21.3 49,673 3,945 3,737 2,525 113.9 37
連22.3 45,469 3,250 3,481 1,109 49.9 38
連23.3 45,576 2,416 2,730 1,828 82.2 40
連24.3 44,472 1,341 1,930 1,274 57.2 42
連25.3 48,114 1,658 2,084 2,834 133.6 44
連26.3予 52,000 2,500 2,800 1,600 76.7 44〜46
連27.3予 56,000 2,800 3,100 1,800 86.2 44〜46

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF
(百万円)
投資CF
(百万円)
財務CF
(百万円)
2023.3 4,362 -1,242 -983
2024.3 1,644 -981 -1,164
2025.3 3,295 -4,785 -2,419

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率
(%)
ROE
(%)
ROA
(%)
PER
(倍)
PBR
(倍)
2023.3 5.3 5.6 3.9
2024.3 3.0 3.8 2.8
2025.3 3.4 8.7 6.1 24.1(高)
21.5(安)
0.93

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績規模を見ると、2024年3月期の売上高は約444億円、2025年3月期は約481億円、2026年3月期予想では約520億円と、トップラインは緩やかながら回復・拡大基調にある。消臭・防虫といった生活必需品を主力とする事業構造らしく、売上自体は大きく崩れにくい安定感がある。

一方、利益面を見ると、2024年3月期の営業利益は約13億円と低水準で、営業利益率は3.0%まで落ち込んだ。2025年3月期は営業利益が約16億円、営業利益率3.4%とやや改善しているが、依然として高収益とは言い難い。2026年3月期予想では営業利益約25億円と大きく回復する見通しで、利益率も4%台後半まで戻る想定になっているものの、構造的に高い利益率を誇る企業ではないことは明確である。

資本効率を見ると、ROEは2024年の3.8%から2025年に8.7%へと改善し、ROAも2.8%から6.1%まで回復している。2024年は明確なボトムで、2025年以降は立て直し局面に入ったと読み取れる。ただし、ROE8%台は優良企業と呼べる水準ではなく、あくまで平均的なディフェンシブ銘柄のレンジにとどまっている。

評価面では、2025年の実績PERは21.5倍から24.1倍と、営業利益率やROEの水準を考えると割高感がある。一方でPBRは0.9倍と1倍を下回っており、資産やブランド価値、事業の安定性が株価の下支えになっている構造が見て取れる。つまり、市場は成長力よりも、生活必需品メーカーとしての安定性や配当余地を評価している状態である。

これらを総合すると、エステーは業績の変動が小さく、生活必需品を扱う典型的なディフェンシブ銘柄であり、売上の安定性は高いが、稼ぐ力は強くない。2025年以降は回復基調にあるとはいえ、PER水準はすでに高く、成長による株価の大きな上昇余地は限定的と考えられる。

結論として、エステーは短期的な値上がりや高い成長を狙う銘柄ではなく、業績の安定性や配当を重視する保守的な投資向けの企業である。上記数値だけで判断する限り、大きく儲けにいくための銘柄ではなく、ディフェンシブ性と継続的な株主還元を前提に、落ち着いて保有するタイプの銘柄という投資判断になる。

配当目的とかどうなの?

エステーを配当目的という観点で見ると、結論としては「配当目的としては可もなく不可もなく、やや弱めだが安定志向向け」という評価になる。予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに2.90%とされており、日本株全体の平均と比べるとほぼ平均的な水準である。いわゆる高配当株と呼べる水準ではないが、極端に低いわけでもなく、ディフェンシブ銘柄としては一定の水準を確保している。

業績との関係を見ると、営業利益率は3〜4%台と低めで、ROEも8%台にとどまっており、企業として強い稼ぐ力を持っているわけではない。そのため、配当を大きく引き上げていく余力は限定的で、今後も配当利回りが急に高水準へ上がる可能性は高くない。一方で、消臭・防虫といった生活必需品を扱う事業構造から、利益が急減するリスクも比較的低く、配当の継続性は高い。

キャッシュフローを見ると、営業CFは安定して黒字で、投資CFや財務CFも過度に無理をした動きではない。配当は本業で稼いだキャッシュの範囲内で支払われており、無理のない水準に抑えられている。減配リスクは小さく、安定配当を続けやすい体質と言える。

総合すると、エステーは配当利回りの高さで選ぶ銘柄ではないが、業績の安定性と配当の継続性を重視する投資家には一定の適性がある。高配当を狙うインカム投資には物足りない一方で、値動きの小ささとディフェンシブ性を活かしつつ、2%台後半の配当を受け取りたい投資家にとっては、落ち着いた保有先になりやすい銘柄という位置付けになる。

今後の値動き予想!!(5年間)

エステーの現在値は1,515.0円である。同社は消臭・芳香剤、防虫剤、除湿剤といった生活必需品の定番ブランドを多く持つ日用品メーカーで売上規模の安定性は高いものの、利益率やROEは中程度である。配当利回りは約2.90%と平均的な水準にあり、業績の堅調さや生活必需品というディフェンシブ性を背景に投資家から一定の評価を受けやすい銘柄である。この前提を踏まえ、現在値1,515円を起点にした今後5年間の株価の値動き予想(良い場合・中間・悪い場合)を整理する。

良い場合のシナリオでは、国内の生活必需品市場が堅調に推移し、消臭力やムシューダ、ドライペットといった主力ブランドが引き続き高いニーズを維持する。また、ブランド強化や商品ラインの拡充により新たな販売機会が増え、特に消臭・防虫・除湿といった生活用品分野での市場シェアがさらに高まる展開を想定する。この場合、営業利益率やROEが改善し、利益拡大の期待が高まることで市場評価が上昇しやすい。PER水準は過去の平均レンジへ戻り、株価は2,000円〜2,400円程度まで上昇する可能性がある。このシナリオでは、安定した事業基盤と堅実な収益成長が株価を押し上げる。

中間のシナリオでは、生活必需品市場は成熟したまま緩やかに推移し、同社の売上・利益は緩やかな増減の範囲で横ばい〜微増となる。主力ブランドは一定の支持を維持するものの、劇的な成長はなく営業利益率やROEも概ね現状水準で推移する。評価倍率(PER)は市場全体の動向に沿って20倍前後で落ち着き、株価は1,300円〜1,700円程度のレンジで推移しやすい。値動きは穏やかだが、配当利回り2.9%前後も加味するとインカム+ポートフォリオの安定性確保には向いた展開となる。

悪い場合のシナリオでは、国内消費の冷え込みや原材料費の上昇などで主力商品の収益性がさらに圧迫され、営業利益や純利益が予想を下回る展開を想定する。特に利益率が低下し、ROEやROAが鈍化するような状況では市場評価が低下してPERが15倍を下回る局面が生じる可能性がある。この場合、株価は1,000円〜1,300円程度まで下落するリスクがあり、配当利回りは相対的に高まってもトータルリターンは低調となりやすい。生活必需品銘柄として相対的に安定性はあるものの、評価倍率の低下が株価を重くする展開となる。

総合すると、現在値1,515円はエステーの堅実な事業基盤とディフェンシブ性を一定程度織り込んだ水準にある。良い場合はPER回復と利益改善を背景に2,000円台前半までの上昇余地があり、中間シナリオでは現在値付近を中心とした穏やかな値動き、悪い場合では1,000円台前半までの下押しリスクが意識される。今後5年間の株価は収益性の改善度合いや市場評価倍率の変動が最大の分岐点となる銘柄である。

この記事の最終更新日:2025年12月30日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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