株価
ミルボンとは

ミルボンは美容室向けヘア化粧品専業メーカーとして国内首位の地位を築いている企業である。一般消費者向けにドラッグストアや量販店で大量販売するモデルとは一線を画し、美容室専売を基本としたビジネスモデルを採用している点が大きな特徴となっている。このため価格競争に巻き込まれにくく、高付加価値型の製品とサービスを通じて安定した収益構造を構築している。
主力製品は、ヘアカラー剤、染毛剤、パーマ剤、ヘアスタイリング剤、シャンプー、ヘアトリートメントなど、美容師が施術現場で使用するプロフェッショナル用途のヘア化粧品である。これに加え、育毛剤やスキンケア、メイクアップ化粧品といった分野にも展開しており、美容室を起点としたトータルビューティ領域での製品ラインアップ拡充を進めている。製品は国内向け販売を中心に、海外向けの輸出・現地販売も行っている。
ミルボンの競争力の源泉は、毛髪科学に基づく研究開発力と、美容室に密着した営業・教育体制にある。研究開発部門では、髪質改善やダメージケアといった美容師や顧客の課題を起点に製品開発を行っており、サロン現場での使いやすさや仕上がりの再現性を重視している。販売面では、単に製品を卸すだけでなく、美容師向けの技術講習やカウンセリング手法の指導、接客・提案力の強化などを通じて、美容室の売上向上や顧客満足度向上を支援している。
こうした製品とサービスを一体化したビジネスモデルにより、美容室との長期的な取引関係が築かれており、継続的なリピート需要が生まれやすい構造となっている。国内ヘアサロン市場が成熟する中でも、安定したシェアとブランド力を維持している背景には、この強固なサロンネットワークの存在がある。
海外展開では、韓国をはじめ、中国、東南アジアなどアジア地域を中心に事業を拡大している。各国の美容トレンドや髪質、サロン文化に合わせた製品開発と販売戦略を進めており、現地スタッフによる教育活動や技術サポートにも注力している。海外事業は、国内市場の成長余地が限られる中で、中長期的な成長ドライバーとして位置付けられている。
総合するとミルボンは、美容室向けヘア化粧品専業という明確なポジションを軸に、高付加価値製品、研究開発力、教育・支援サービスを組み合わせた独自のビジネスモデルを確立しており、国内首位の安定感と海外展開による成長余地を併せ持つ企業と評価できる。
ミルボン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS(円) |
一株当り配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 45,238 | 7,551 | 7,829 | 5,577 | 171.5 | 86 |
| 連23.12 | 47,762 | 5,525 | 5,586 | 4,001 | 123.0 | 88 |
| 連24.12 | 51,316 | 6,839 | 6,968 | 5,017 | 154.1 | 88 |
| 連25.12予 | 52,300 | 5,300 | 5,100 | 3,000 | 94.4 | 88 |
| 連26.12予 | 55,000 | 6,600 | 6,400 | 4,600 | 144.7 | 88〜92 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 5,008 | -3,865 | -2,578 |
| 2023.12 | 4,765 | -3,109 | -2,797 |
| 2024.12 | 7,625 | -2,531 | -2,862 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 11.5 | 7.4 | 8.7 | – | – |
| 2024 | 13.3 | 8.5 | 10.2 | 36.7(高) 23.1(安) |
1.68 |
| 2025予 | 10.1 | 5.0 | 6.1 | 26.31 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績推移を見ると、2023年から2024年にかけて売上・利益ともに明確な増加基調にあり、営業利益は55億円から68億円へ大きく伸びている。営業利益率も11.5%から13.3%へ改善しており、この時点では収益性・効率性ともに良好な局面だったと言える。ROE10.2%、ROA8.5%という水準も、化粧品・日用品系企業としては健全で、資本効率の面でも評価できる。
一方で2025年予想を見ると、売上は増加が続くものの、営業利益は68億円から53億円へ減少し、純利益も50億円から30億円へ大きく落ち込む想定となっている。これに伴い、営業利益率は10.1%まで低下し、ROEは6.1%、ROAは5.0%と明確に悪化する。収益性・資本効率の両面でピークアウトが想定されている点は、投資判断上の大きなマイナス要素である。
評価面を見ると、2024年実績PERは高値平均36.7倍、安値平均でも23.1倍と、すでにかなりの成長期待を織り込んだ水準にあった。2025年予想PERは26.3倍まで低下するものの、これは業績減速を織り込んだ結果であり、それでもなお割安とは言い難い。PBRも1.6倍台と、ROEが6%台まで低下する局面ではやや高めの評価に見える。
総合すると、2024年までは高収益・高評価が正当化される局面だったが、2025年以降は利益率・ROE・ROAの低下が明確であり、成長性よりも調整局面を意識すべきフェーズに入っていると判断できる。PER26倍前後という評価は、業績が再び拡大基調に戻る前提でなければ正当化しにくく、現時点では割安感よりも「期待先行」の色合いが強い。
結論としては、上記数値だけで判断する限り、長期安定成長を前提とした高評価株から、業績踊り場を迎える調整局面の銘柄へ移行しつつある段階であり、新規で強気に買いに行く局面ではなく、押し目待ち・様子見寄りの投資判断が妥当、という評価になる。
配当目的とかどうなの?
ミルボンを配当目的で見る場合、まず数字として目に入るのは予想配当利回り3.59%という水準である。2025年、2026年ともに同じ利回りが見込まれており、日本株全体の平均と比べればやや高めで、表面上は配当目的として一定の魅力があるように見える。
ただし、この利回りの背景を業績とあわせて見ると、評価は慎重になる。2025年12月期は純利益が30億円まで減少する予想となっており、営業利益率は10.1%、ROEは6.1%、ROAは5.0%と、2024年のピーク時から明確に低下している。つまり、業績が拡大して配当が増えているわけではなく、利益が落ち込む中でも配当水準を維持することで利回りが高く見えている構図である。
この局面で配当を88円水準で維持する場合、配当性向は相対的に高くなり、利益成長に裏付けられた余裕のある配当とは言いにくい。配当がすぐに危険水域に入るわけではないが、高配当株に期待されるような強い減配耐性があるとも言えない。
一方で、2026年12月期は純利益が46億円まで回復する予想となっており、この水準が実現すれば、配当維持に対する無理はやや和らぐ。ただし、ROEや営業利益率が再び二桁に戻るかどうかは、この数値だけでは判断できず、配当の安定性はあくまで業績回復が前提となる。
総合すると、ミルボンは配当利回りだけを見ればそこそこ魅力的だが、配当を主目的に長期保有する銘柄としてはやや中途半端な位置づけになる。安定成長とブランド力を背景に一定の配当は期待できるものの、高配当株の代替として安心して持ち続けるタイプではない。結論としては、配当を最優先に狙う銘柄ではなく、業績回復や評価修正を見込みつつ、利回り3%台後半を受け取りながら保有する補助的な配当枠として考えるのが現実的であり、株価が調整した局面であれば配当込みでの妙味が出てくる、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ミルボンの現在値は2,443.0円である。同社は美容室向けヘア化粧品専業メーカーとして国内首位の地位を確立しており、シャンプー、トリートメント、ヘアカラー剤、パーマ剤などを中心に美容室専売モデルを軸とした事業を展開している。価格競争に巻き込まれにくい高付加価値型のビジネスモデルを持つ一方、直近の業績予想では営業利益率やROE・ROAがピークアウトする見通しとなっており成長期待はやや後退している。配当利回りは3%台後半と一定の水準にあるが、高成長を前提とした評価には慎重さが求められる局面にある。こうした前提を踏まえ、現在値2,443.0円を起点に今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、国内の美容室向け市場で安定した需要を維持しつつ、海外事業が想定以上に拡大する展開を想定する。特にアジア市場でのブランド浸透が進み売上成長とともに利益率が回復することで、営業利益率は再び12%前後、ROEも10%前後まで改善する。この場合、ミルボンは「安定成長型の高付加価値企業」として再評価され、PERは30倍前後まで許容される可能性がある。利益回復と評価倍率の改善が重なれば5年後の株価は3,200円〜3,800円程度まで上昇する余地があり、配当を含めたトータルリターンも比較的良好なものとなる。
中間のシナリオでは、国内事業は堅調に推移するものの大きな成長はなく、海外展開も緩やかな拡大にとどまる状況を想定する。2025年に一度落ち込んだ利益は回復基調に入るが、2024年のピーク水準には届かず営業利益率は10%前後、ROEは7〜8%程度で安定する。この場合、市場評価は過度に高まらず、PERは22〜25倍程度に収れんしやすい。株価は2,200円〜2,800円程度のレンジ内で推移し、5年間を通じて緩やかな値動きにとどまる可能性が高い。配当利回り3%台後半を受け取りながら、比較的安定した推移となる現実的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、国内美容室市場の成長が鈍化し、海外事業も期待ほど収益貢献しない状況を想定する。原材料費や販管費の上昇が利益を圧迫し、営業利益率は10%を下回る状態が続きROEも6%前後に低迷する。この場合、成長期待は後退しPERは18〜20倍程度まで切り下がる可能性がある。評価調整が主因となって株価は下押しされ、5年後の水準は1,600円〜2,000円程度まで下落するリスクがある。配当は一定の下支え要因にはなるものの、株価面でのリターンは限定的となる。
総合するとミルボンは大きな成長を期待する銘柄というよりも、安定した事業基盤を背景に利益率の回復度合いと評価倍率の変化で株価が動くタイプの企業である。5年間で見ると中間シナリオが最も現実的で、株価は現在値近辺から緩やかなレンジ推移となる可能性が高い。一方で、海外事業の進展と収益性改善が明確になれば上振れ余地もあり、逆に利益回復が遅れれば2,000円割れも意識される。現在値2,443.0円は、将来の業績回復を見極めながら慎重に向き合う水準にあると言える。
この記事の最終更新日:2025年12月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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