株価
長谷川香料とは

長谷川香料株式会社は東京都中央区に本社を置き、食品向けフレーバーと化粧品・トイレタリー向けフレグランスを両輪とする香料専業企業である。国内では香料シェア2位に位置し、とりわけ飲料向けフレーバー分野では圧倒的な存在感を持つことで知られている。清涼飲料や乳飲料、機能性飲料など幅広い飲料カテゴリーで採用実績があり、日本の飲料市場を支える中核的サプライヤーの一社といえる。
事業の中心は食品香料で、飲料、菓子、乳製品、冷菓、調味料、加工食品向けにフレーバーを提供している。同社の特徴は、単なる香り付けにとどまらず、味の厚みや後味、飲みやすさといった「おいしさ全体」を設計する提案型ビジネスに強みを持つ点にある。顧客の商品開発初期段階から関与するケースが多く、長期継続取引につながりやすいビジネスモデルを構築している。
一方で、化粧品・トイレタリー向けフレグランス事業も重要な柱である。香水、スキンケア、ヘアケア、ボディケア、洗剤など幅広い分野に香料を供給しており、トレンド分析力や地域ごとの嗜好に対応した調香技術を強みとしている。食品香料に比べると市場変動の影響を受けやすい分野ではあるが、高付加価値な香り提案が可能な収益性の高い事業領域でもある。
事業内容としては、香粧品香料、食品香料、合成香料の製造・販売に加え、各種食品添加物や食品の製造・販売、ならびにそれらの輸出入業務を行っている。香料専業メーカーでありながら、原料開発から最終製品までを見据えた幅広い事業領域をカバーしている点が特徴である。
研究開発体制も同社の競争力の源泉であり、神奈川県川崎市に総合研究所を構えている。ここでは新規香料素材の探索、香味改良技術、安全性評価などが行われており、長年にわたり蓄積された香料データベースが同社の強固な参入障壁となっている。生産拠点としては、埼玉県深谷市の深谷工場、群馬県板倉町の板倉工場を有し、安定供給体制を確立している。
海外展開にも注力しており、世界市場においても一定の存在感を持つ。2011年時点での世界市場シェアは2.6%、世界第8位に位置しており、日本国内に軸足を置きながらもグローバル香料メーカーとしての地位を築いてきた。近年はアジアを中心に海外売上比率の拡大を進め、現地ニーズに即した開発体制の強化にも取り組んでいる。
全体として長谷川香料は、飲料向けフレーバーでの圧倒的競争力を基盤に、食品・日用品といった景気変動の影響を受けにくい分野を主戦場とする堅実型企業である。研究開発力、顧客密着型の提案力、安定した生産体制を兼ね備えた、典型的な高品質・高信頼型の香料メーカーと位置づけられる。
長谷川香料 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.9 | 55,755 | 6,859 | 7,466 | 6,763 | 163.6 | 55 |
| 連22.9 | 62,398 | 8,051 | 9,075 | 8,007 | 194.7 | 61 |
| 連23.9 | 64,874 | 7,507 | 8,185 | 6,671 | 162.2 | 61 |
| 連24.9 | 71,645 | 9,371 | 9,723 | 7,201 | 175.0 | 70 |
| 連25.9 | 73,495 | 8,515 | 9,288 | 6,921 | 169.5 | 74 |
| 連26.9予 | 78,000 | 9,450 | 10,100 | 7,320 | 181.0 | 100 |
| 連27.9予 | 81,000 | 10,000 | 10,500 | 7,000 | 173.1 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 8,012 | -3,092 | -2,657 |
| 2024年 | 13,947 | -9,386 | -2,699 |
| 2025年 | 11,247 | -6,914 | -5,489 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 11.5 | 5.7 | 4.7 | ― | ― |
| 2024年 | 13.0 | 6.0 | 4.9 | ― | ― |
| 2025年 | 11.5 | 5.6 | 4.7 | 15.3~21.0 | 0.92 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績を見ると、売上は24.9期の716億円から25.9期に734億円、26.9期予想で780億円と一貫して増加している。事業規模は着実に拡大しており、需要の底堅さは数値からも読み取れる。一方で利益はやや波があり、営業利益は24.9期93億円から25.9期85億円へ一度減少し、26.9期予想では94億円と回復見込みになっている。経常利益、純利益も同様に25.9期で一服した後、26.9期に再び増益を想定している。売上成長は安定的だが、利益成長は緩やかで、急拡大するタイプではないことが分かる。
次に収益性を見る。営業利益率は2023年11.5%、2024年13.0%、2025年11.5%と、二桁前半で安定している。食品・日用品向けを主力とする企業としては十分に高い水準で、価格競争に巻き込まれにくいビジネスモデルであることを示している。ただしピークは13.0%で、その後は元の水準に戻っており、利益率が右肩上がりで改善している局面ではない。
ROEは5.7%、6.0%、5.6%、ROAは4.7%、4.9%、4.7%と、いずれも5%前後にとどまっている。収益自体は安定しているが、資本効率は高くなく、積極的にレバレッジを効かせて成長する企業ではない。内部留保を厚く持ちながら堅実に運営する保守的な企業体質が、そのまま数値に表れている。
バリュエーションを見ると、2025年の実績PERは安値平均で15.3倍、高値平均で21.0倍と幅がある。業績の安定性を考えれば極端に高い評価ではないが、成長性を考慮すると常に高値側を正当化できるわけでもない。一方でPBRは0.9倍と1倍を下回っており、資産価値面では割高感はない。ROEが5%台であることを踏まえると、PBR1倍割れは妥当で、むしろ市場が「安定だが成長力は限定的」と評価している状態といえる。
以上の数値だけから判断すると、長谷川香料は売上と利益が中長期で緩やかに積み上がる安定型企業であり、業績のブレは小さいが、資本効率や成長力は控えめである。PERは中立水準、PBRは低めで下値は比較的堅い一方、大きな評価見直しを期待する材料も乏しい。
結論として、この数値だけを見る限りでは、長谷川香料は高成長や株価の大幅上昇を狙う銘柄ではなく、業績の安定性を重視する投資家向けの中立的な投資対象と言える。割安感が強い局面で拾う余地はあるが、積極的にリスクを取って買い向かうタイプの銘柄ではない、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的でどうかという点について、提示された数値だけで判断する。まず利回り水準を見ると連26.9期、連27.9期ともに予想配当利回りは3.54%で、東証プライム全体と比較してもやや高めの水準にある。高配当株と呼べるほどではないが、インカム狙いとしては十分に意識される水準と言える。
次に業績とのバランスを見る。営業利益はおおむね90億円前後、純利益は70億円前後で推移しており、26.9期予想では純利益73億円と回復が見込まれている。利益の変動幅は小さく、急激な悪化を示す数値ではない。事業内容が食品・日用品向けを中心としているため、景気後退局面でも需要が大きく落ち込みにくく配当の原資となる利益が安定しやすい点は配当目的では大きな強みになる。
ROEは5%台にとどまっており、積極的な成長投資で利益を拡大していく企業ではない。その反面、内部留保を厚く保ちながら無理のない配当を継続できる体質とも言える。PBRが0.9倍と1倍を下回っている点も株主還元を優先しつつ財務の安全性を重視する姿勢を反映していると考えられる。
配当の継続性という観点では、現行の利益水準が維持される限り今の配当水準を大きく下回るリスクは高くない。一方で、ROEや成長率が低めであることから、今後も大幅な増配が続く可能性は低く配当額は横ばいから緩やかな増加にとどまる公算が大きい。
以上を踏まえると、長谷川香料は高配当で一気に利回りを取りにいく銘柄ではないが、3.5%前後の利回りを安定的に受け取りたい投資家には向いた銘柄と言える。値上がり益を強く狙うよりも、業績の安定性を重視し配当を長く受け取りたい配当目的の投資先としては十分に検討余地があるという評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
長谷川香料の現在値は2,818.0円である。同社は食品向けフレーバーと化粧品・トイレタリー向けフレグランスを主力とする香料専業メーカーで国内では香料シェア2位、特に飲料向けフレーバーでは圧倒的な存在感を持つ。食品・日用品向けが中心のため需要の景気感応度は低く、価格競争にも巻き込まれにくい安定したビジネスモデルを構築している。
一方で、直近の数値を見る限り営業利益率は11%台、ROE・ROAは5%前後と高水準とは言えず成長性よりも安定性が前面に出た企業である。PBRは1倍を下回り、配当利回りは3.5%前後と値上がり益よりインカムを意識した評価が中心となっている。こうした前提を踏まえ、現在値2,818.0円を起点に今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、国内の飲料・食品向けフレーバー需要が底堅く推移する中で、海外事業の拡大が想定以上に進む展開を想定する。アジア市場を中心に現地開発力が評価され、売上成長とともに原価率や販管費の改善が進むことで営業利益率は12%台へ回復、ROEも6%台後半から7%程度まで上昇する。この場合、長谷川香料は「安定高収益型のグローバル香料メーカー」として再評価され、PERは20倍前後まで許容される可能性がある。業績の緩やかな成長と評価倍率の改善が重なれば、5年後の株価は3,600円〜4,200円程度まで上昇する余地がある。
中間のシナリオでは、国内事業は引き続き安定し、海外も緩やかな拡大にとどまる状況を想定する。売上は年率数%で増加するものの営業利益率は11%前後で横ばい、ROE・ROAも5%台で大きな変化はない。この場合、市場からの評価も現状水準を大きく上回らず、PERは15倍〜18倍程度に収れんしやすい。株価は大きなトレンドを描かず、2,600円〜3,200円程度のレンジ内で推移し、5年間を通じて緩やかな値動きにとどまる可能性が高い。配当利回り3.5%前後を受け取りながら保有する、最も現実的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速や原材料価格の上昇、為替の逆風などにより利益率が圧迫される展開を想定する。売上は維持できるものの営業利益率は10%前後まで低下し、ROEも5%を下回る水準に沈む。この場合、成長期待はさらに後退し、PERは12倍〜14倍程度まで切り下がる可能性がある。評価調整が主因となって株価は下押しされ、5年後の水準は2,200円〜2,500円程度まで下落するリスクがある。配当は下値を支える要因になるものの、株価面でのリターンは限定的となる。
総合すると長谷川香料は急成長を期待する銘柄というよりも、事業の安定性と配当を重視する投資家向けの企業である。5年間で見ると中間シナリオが最も現実的で、株価は現在値近辺を中心としたレンジ推移になりやすい。一方で、海外事業の進展と利益率改善が明確になれば上振れ余地もあり、逆に収益性が低下すれば評価調整で下振れする可能性もある。現在値2,818.0円は、安定配当を前提に中長期で向き合う水準にあると言える。
この記事の最終更新日:2025年12月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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