株価
日本カーボンとは

日本カーボンは、日本における炭素材料産業の中でも最も歴史のある企業の一つで、炭素・黒鉛という非常に専門性の高い素材を軸に事業を展開してきた会社である。炭素製品は一見すると地味だが、実際には鉄鋼、半導体、電池、航空宇宙、原子力といった基幹産業や先端産業を根底から支える素材であり、同社はその中核領域を長年にわたって担ってきた。
事業の柱は電気製鋼炉向けの人造黒鉛電極である。電炉は鉄スクラップを溶解して鋼材を生産する設備であり、脱炭素の流れを背景に世界的に再評価されている製鋼方式である。この電炉で使用される黒鉛電極は消耗品であり、一定の更新需要が継続的に発生するため、景気変動は受けつつも構造的な需要が存在する分野といえる。一方で、電極市場は市況性が強く、鉄鋼生産量や価格動向に業績が左右されやすいという特徴も併せ持つ。
日本カーボンの強みは、こうした市況型ビジネスだけに依存せず、特殊炭素製品の比重を高めてきた点にある。半導体製造装置向けの高純度・超高純度等方性黒鉛は、極微量の不純物すら許されない領域で使用されるため、長年の製造ノウハウと品質管理能力が不可欠となる。半導体の微細化や高度化が進むほど、こうした材料の重要性は高まり、価格競争に陥りにくい分野となっている。
また、放電加工用電極やカーボン治具、高温炉用部材、原子炉用高純度黒鉛なども手掛けており、いずれも高温・高耐久・高信頼性が求められる用途である。これらの分野は顧客との長期取引になりやすく、製品切り替えのハードルが高いため、安定した収益源として機能しやすい。日本カーボンは、こうしたニッチだが技術的に難易度の高い市場を着実に押さえている。
成長分野としては、リチウムイオン電池向け負極材や関連炭素材料が挙げられる。EVや定置用蓄電池の普及により電池需要は中長期的に拡大が見込まれており、炭素材料メーカーにとっては重要な戦略領域である。同社は電極や特殊炭素で培った炭素制御技術を応用し、電池材料分野への展開を進めている段階にある。
さらに特徴的なのが炭素繊維関連事業である。ニカロン、ハイニカロン・タイプSといった高性能炭素繊維は、耐熱性や強度に優れ、航空機や宇宙分野、エネルギー関連分野で使用される。特に航空機向けではGEなど海外大手企業との合弁を通じて事業を展開しており、日本国内にとどまらないグローバルな技術連携を行っている点が特徴である。
拠点面では、研究所を滋賀県近江八幡市に構え、富山、白河、滋賀の各工場で製造を行う体制を取っている。研究開発から量産までを国内で完結できる点は品質面での強みとなっており、特殊炭素のように品質要求が極めて高い分野では重要な要素である。また、欧州、米国、中国に海外拠点を持ち、グローバル顧客への供給体制も整えている。
全体として見ると、日本カーボンは電炉向け電極という市況性の高い事業と、半導体・電池・航空宇宙向けの高付加価値材料という技術集約型事業を併せ持つ構造になっている。景気や市況の影響を完全に避けることはできないものの、炭素材料という参入障壁の高い分野で長年蓄積してきた技術力を背景に、産業構造の変化に合わせて事業ポートフォリオを徐々に進化させてきた企業といえる。派手な成長ストーリーよりも、素材メーカーとしての技術の深さと用途の広がりに価値があるタイプの会社である。
日本カーボン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 22.12 | 35,799 | 4,791 | 5,042 | 3,194 | 289.2 | 200 |
| 23.12 | 37,867 | 6,573 | 7,115 | 4,050 | 366.8 | 200 |
| 24.12 | 37,956 | 6,319 | 6,692 | 4,078 | 369.0 | 200 |
| 25.12予 | 36,400 | 4,800 | 5,300 | 5,900 | 533.6 | 200 |
| 26.12予 | 36,700 | 4,900 | 5,400 | 3,300 | 298.4 | 200 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 22.12 | 5,798 | -1,601 | -3,777 |
| 23.12 | 3,189 | -4,426 | -2,614 |
| 24.12 | 5,234 | -5,546 | -1,985 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 17.3 | 5.1 | 8.1 | – | – |
| 2024 | 16.6 | 4.9 | 7.8 | 11.5〜14.6 | 0.9 |
| 2025 | 13.1 | 7.1 | 11.3 | 8.8 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、売上高は23.12から24.12にかけてほぼ横ばい、25.12予・26.12予ではやや減少後に横ばいという見通しで、数量ベース・需要環境ともに大きな成長局面ではないことがうかがえる。一方で利益水準は高く、営業利益は23.12で約65億円、24.12で約63億円と高水準を維持している。ただし25.12予では約48億円まで低下し、26.12予で約49億円と、利益面ではピークアウト後の調整局面に入っている。
利益率を見ると、営業利益率は2023年17.3%、2024年16.6%、2025年13.1%と高水準ながら低下傾向にある。依然として製造業としてはかなり高い水準だが、価格是正や需給の追い風が一巡し、稼ぐ力が徐々に平常水準に戻っている段階と考えられる。ROEは8.1%→7.8%→11.3%と2025年に改善しており、純利益が大きく出る予想で資本効率は一時的に良化している。一方ROAも5.1%→4.9%→7.1%と改善しており、総資産に対する収益力は依然として高い。
バリュエーション面では、2024年実績PERは11.5〜14.6倍レンジ、PBRは0.9倍程度と、収益力の割に株価評価は控えめである。さらに2025年予想PERは8.8倍と一段と低下しており、市場は利益のピークアウトをかなり織り込んだ評価を付けている状態といえる。PBRが1倍を下回っている点からも、成長期待は高くないが、資産価値と収益力に対して割高感はない。
総合すると、日本カーボンは売上成長を期待して買う銘柄ではなく、成熟産業の中で高い利益率と安定したキャッシュ創出力を評価するタイプの企業である。利益率は低下傾向にあるものの、依然としてROE・ROAは十分に高く、PER・PBRは低位に抑えられている。業績が大きく崩れない前提であれば、現在の評価水準は保守的で、下値リスクは比較的限定的と考えられる。一方で、営業利益率の低下が続く場合は評価修正余地は小さく、株価の上昇余地も限定的になりやすい。
結論としては、成長株ではないが、高収益体質と割安なバリュエーションを前提に、安定運用・中長期保有向けの銘柄という位置づけになる。利益の天井感を理解したうえで、割安さと収益の持続性を重視する投資判断が前提となる。
配当目的とかどうなの?
まず数字だけを見ると、連25.12・連26.12ともに予想配当利回りは4.53%と高水準で、製造業の中では明確に「高配当銘柄」に分類できる。しかも直近数年は1株配当200円を継続しており、業績の振れがある中でも配当水準を維持している点は、配当重視投資にとって大きな安心材料になる。
収益力との関係を見ると、営業利益率は13〜17%台と非常に高く、ROE・ROAも製造業としては良好な水準にある。利益率はピークアウト気味とはいえ、25.12予・26.12予でも営業利益はしっかり黒字を確保しており、現時点では配当の原資に無理がある状況ではない。予想PERが8倍台と低いことも、利益に対して配当負担が過度ではないことを示している。
一方で注意点もある。売上は横ばいからやや減少基調で、営業利益率も低下傾向にあるため、将来に向けて増配余地が大きいタイプではない。今後の配当は「増やしていく」というより、「高水準を維持できるかどうか」が焦点になる。市況悪化や電炉向け需要の調整が長引けば、配当維持がやや重荷になる局面も想定される。
総合すると、日本カーボンは配当目的との相性はかなり良い銘柄といえる。4.5%前後の利回りを安定的に受け取りたい投資家にとっては魅力的で、株価もPER・PBRともに低位なため、配当狙いでのエントリー価格としても無理はない。ただし、成長による増配を期待する銘柄ではなく、「高めの配当を受け取りながら業績の安定を見守る」スタンスが前提になる。結論として、配当目的なら十分に選択肢に入る銘柄だが、配当の将来的な伸びよりも、現行水準の維持を重視するタイプの高配当株として捉えるのが現実的である。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本カーボンについて、現在値4,415.0円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。まず全体像として、日本カーボンは高成長株というよりも、高収益体質を持つ素材メーカーであり、電炉向け人造黒鉛電極という伝統的事業に加え、半導体製造装置向け高純度炭素材料、リチウムイオン電池関連、航空宇宙向け炭素繊維などを展開している。売上高は大きく拡大しない一方で、営業利益率は10%台後半と高水準を維持しており、株価評価の軸は成長期待よりも収益力と高い配当利回りに置かれている。PER・PBRはいずれも低位にあり、市場は依然として慎重な評価を付けている状態である。
良い場合のシナリオでは、半導体関連や電池材料向けの需要が底堅く推移し、電炉向け電極事業も安定収益源として機能する。営業利益率は15%前後を維持し、ROEは10%前後まで改善する。この場合、市場は同社を「高収益かつ高配当の特殊素材メーカー」として再評価し、PBRは1.0倍〜1.2倍程度まで切り上がる可能性がある。PERも12倍〜15倍程度が許容されるようになれば、EPS水準を前提に株価は5,500円から6,500円程度まで上昇する余地がある。配当利回りは3%台後半まで低下するが、株価上昇と配当の両面でトータルリターンが期待できる展開となる。
中間のシナリオでは、事業環境は大きく悪化しないものの、成長分野の拡大は限定的にとどまる。売上は横ばい圏、営業利益率は13〜15%程度で安定し、ROEは8%前後で推移するが、市場評価に大きな変化はない。この場合、PERは8倍〜11倍、PBRは0.9倍前後にとどまり、株価は3,800円から5,000円程度のレンジで推移しやすい。5年間で見れば大きな値上がり益は期待しにくいが、4%台の配当を積み上げることで、安定的なトータルリターンが得られる保有となる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な設備投資の減速や、電炉・半導体向け需要の落ち込み、原材料コスト上昇などが重なり、利益率が低下する。営業利益率は10%台前半まで低下し、ROEも7%を下回る水準になると、市場は収益力の鈍化を意識して評価を引き下げる。この場合、PERは6倍〜8倍、PBRは0.8倍前後まで低下する可能性があり、株価は2,800円から3,500円程度まで調整するリスクがある。ただし、配当利回りは5%前後まで上昇するため、完全な下落トレンドというよりは高配当を意識した下値の堅い展開になりやすい。
総合すると、日本カーボンの5年間の値動きは、急成長で株価が倍増するタイプではなく、高い収益性と配当を軸に評価が上下する展開が想定される。良い場合で6,000円前後、中間では4,000〜5,000円、悪い場合でも3,000円前後までの調整にとどまるイメージである。現在値4,415円は、すでに高配当と高収益体質をある程度織り込んだ水準であり、今後5年間は値上がり益を狙うというより、配当を受け取りながら中長期で付き合う銘柄としての性格が強いと考えられる。
この記事の最終更新日:2026年1月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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