株価
日本ヒュームとは

日本ヒューム株式会社は、日本における下水道インフラの発展とともに歩んできた、コンクリート二次製品メーカーの草分け的存在である。1925年の創業時に、日本で初めて遠心成型によるヒューム管の製造技術を確立し、下水道用管材の量産化を実現した点は、日本の都市インフラ整備史において極めて重要な役割を果たしてきた。現在でも下水道向けヒューム管では国内トップクラスのシェアを維持しており、公共インフラ分野での知名度と信頼性は非常に高い。
もっとも、下水道普及率が高まった現在では、ヒューム管単体の市場は成長産業とは言い難く、同社も早い段階から事業構造の転換を進めてきた。現在の主力は、建築・土木工事に欠かせないPC基礎杭を中心としたコンクリートパイル事業であり、製造だけでなく施工までを一体で提供できる点が強みとなっている。単なる製品供給にとどまらず、現場対応力を含めた総合力で競争優位を築いている点は、同社の事業モデルを理解する上で重要である。
加えて、近年特に力を入れているのがプレキャストコンクリート製品である。建設業界では人手不足や高齢化が深刻化しており、現場作業を減らせるプレキャスト化は構造的な需要を背景に拡大が続いている。日本ヒュームは、コンクリート二次製品の設計・製造・施工を一貫して行う「総合コンクリート主義」を掲げ、発注者にとって扱いやすいワンストップ体制を整えている。この点は、単品メーカーとの差別化要因になっている。
技術面でも、同社は単なる成熟企業ではない。耐震・補修・更生工法といったインフラ老朽化対応技術、光ファイバーケーブル敷設工法など、既存インフラを活かしながら機能を高度化する分野に継続的に取り組んでいる。i-Constructionやi-下水道といった国の政策とも親和性が高く、更新需要・維持管理需要を長期的な事業機会として捉えている点が特徴である。
事業拠点は全国に分散しており、北海道から九州まで工場・支社を展開している。これは輸送コストが重くなりがちなコンクリート製品において、地域密着型の供給体制を築く上で大きな強みとなる。また、香港やインドネシアなど海外にも拠点を持ち、東南アジアを中心としたインフラ需要の取り込みも視野に入れている。ただし、海外事業は成長ドライバーというよりは中長期的なオプション的要素と見るのが現実的である。
もう一つの特徴として、不動産賃貸事業が挙げられる。工場跡地などの遊休資産を活用した不動産収益は、建設市況の波を緩和する役割を果たしており、キャッシュフローの安定性向上に寄与している。製造業でありながら、一定のストック型収益を持つ点は、同社の財務的な耐久力を高めている要因の一つである。
全体として、日本ヒュームは高成長企業ではないものの、社会インフラという不可欠な分野に軸足を置いた安定型の事業構造を持つ企業と言える。新設需要よりも、更新・補修・省力化といったテーマに強みを持ち、人口減少・成熟社会に適応したビジネスモデルへと進化している。景気循環の影響は受けるものの、インフラ老朽化という長期テーマを背景に、一定の需要が見込める点が同社の本質的な価値である。
日本ヒューム 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 30,446 | 1,730 | 2,711 | 2,129 | 87.2 | 25記 |
| 22.3 | 29,501 | 1,449 | 2,526 | 2,136 | 88.0 | 20 |
| 23.3 | 31,876 | 1,236 | 2,102 | 1,642 | 68.1 | 21 |
| 24.3 | 33,732 | 1,381 | 2,391 | 1,912 | 79.9 | 25 |
| 25.3 | 37,064 | 2,022 | 3,049 | 3,045 | 129.9 | 38 |
| 26.3予 | 40,000 | 2,300 | 3,400 | 3,000 | 130.1 | 48記 |
| 27.3予 | 42,000 | 2,400 | 3,600 | 2,800 | 121.4 | 42〜48 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 649 | -757 | -519 |
| 24.3 | 2,774 | -121 | -790 |
| 25.3 | 897 | 36 | -2,534 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 (%) |
ROE (%) |
ROA (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 3.8 | 4.3 | 2.9 | ― | ― |
| 24.3 | 4.0 | 4.6 | 3.0 | ― | ― |
| 25.3 | 5.4 | 7.1 | 5.3 | 8.0〜13.3 | 1.56 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず規模感として、売上高は2024.3で約337億円、2025.3で約370億円、2026.3予で約400億円と、着実に拡大している。年率で見ると一桁後半程度の成長であり、高成長ではないが、インフラ関連企業としては安定した増収基調にある。
営業利益は2024.3で約13億円、2025.3で約20億円、2026.3予で約23億円と増加している。営業利益率も2023~2025で3.8%→4.0%→5.4%と段階的に改善しており、価格転嫁や採算改善が進んでいることが読み取れる。ただし5%台という水準は、製造業としては「改善途上」であり、高収益とは言えない。
経常利益は2024.3で約23億円、2025.3で約30億円、2026.3予で約34億円と、営業利益以上に伸びている。これは持分法や財務面の安定、もしくは一部の営業外収益が寄与している可能性を示唆する。純利益も2025.3には約30億円と大きく伸びており、利益水準そのものは一段上がった印象を受ける。
資本効率面を見ると、ROEは2023~2025で4.3%→4.6%→7.1%、ROAは2.9%→3.0%→5.3%と改善している。ただし、依然としてROEは7%台にとどまり、株主資本を高効率に回している企業とは言いにくい。インフラ関連・コンクリート製品という業態を考えれば妥当ではあるが、成長株や高収益株の水準ではない。
バリュエーション面では、2025年実績PERは8.0倍~13.3倍のレンジ、PBRは1.56倍となっている。PERだけを見ると割安感がある局面も想定されるが、PBRは1倍を明確に上回っており、純資産に対してはすでに一定の評価が付いている。ROEが7%前後であることを考えると、PBR1.56倍はやや先行した評価とも言える。
以上を総合すると、日本ヒュームは売上・利益ともに安定的に成長し、収益性も徐々に改善している「堅実なインフラ関連銘柄」という位置付けになる。一方で、ROEはまだ低めで、PBRはすでに平均以上の水準にあるため、ここから大きな株価上昇を期待するには、さらなる利益率改善や事業構造の変化が必要になる。
投資判断としては、景気変動に左右されにくい安定事業を背景に、中期的な業績改善を評価するスタンスなら検討余地はあるが、明確な割安放置株や高成長株として積極的に攻める局面ではない。利益の積み上げを確認しながら、評価が行き過ぎた場面では慎重に、押し目水準で中長期保有を考えるタイプの銘柄と判断できる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると、日本ヒュームは主力の配当株とは言いにくいという評価になる。まず水準として、予想配当利回りは連26.3で1.57%、連27.3で1.38%と、株式市場全体で見ても低めである。インフラ関連・コンクリート製品という比較的ディフェンシブな業態であっても、配当利回り2~3%台を期待する投資家から見ると、物足りない水準だと言える。
一方で、配当の安定性という点では一定の評価はできる。直近数年を見ると、業績が大きく悪化した局面でも配当をゼロにすることはなく、利益回復に合わせて段階的に増配している。2025.3で年間38円、2026.3予で48円と、利益成長に応じて配当額を引き上げる姿勢は確認できる。ただし、増配ペースは緩やかで、積極的な株主還元を前面に打ち出す企業ではない。
配当性向の観点では、2025.3の一株益約130円に対して配当38円とすると、配当性向は30%弱となる。無理のない水準であり、内部留保を優先しながら安定配当を行う「守り重視」のスタンスがうかがえる。将来の設備投資やプレキャスト関連の成長投資を考えれば、現時点で高配当路線に舵を切る可能性は低い。
総合すると、日本ヒュームは「配当を主目的に買う銘柄」ではなく、「業績改善と中期的な企業価値向上を軸に、配当はあくまでおまけとして受け取る銘柄」と位置付けるのが妥当である。インカム狙いなら他に利回りの高い選択肢が多く、この銘柄はキャピタルと安定性を重視する投資家向けの性格が強い。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本ヒュームについて現在値1,519.0円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。まず全体像として、日本ヒュームは高成長株ではなく、下水道向けヒューム管やPC基礎杭、プレキャストコンクリート製品を主力とするインフラ関連の安定成長型企業である。下水道新設需要は縮小傾向にある一方、老朽インフラ更新や省力化を背景に、プレキャスト製品や基礎杭分野で堅調な需要が続いている。株価評価の軸は成長期待よりも、業績の安定性と中程度の配当、インフラ需要の継続性に置かれている。
良い場合のシナリオでは、インフラ更新需要が想定以上に進み、プレキャスト製品の採用拡大や採算改善が進展する。営業利益率は5%台後半まで改善し、ROEも7%台後半で定着する。この水準が継続すれば、市場は同社を安定収益型インフラ企業として再評価し、PERは実績レンジの上限である13倍前後、PBRも1.6倍から1.8倍程度まで許容される可能性がある。利益成長を前提にすると、株価は2,000円から2,400円程度まで上昇する余地があり、配当を含めたトータルリターンも安定的に積み上がる展開となる。
中間のシナリオでは、業績は計画どおり緩やかに推移し、売上高は400億円前後、営業利益は20億円台前半で安定する。営業利益率は5%前後、ROEは6〜7%、ROAは5%前後で大きな変化はない。この場合、市場評価も大きく変わらず、PERは8〜11倍、PBRは1.4〜1.6倍程度にとどまり、株価は1,300円から1,800円程度のレンジで推移しやすい。5年間で見れば値上がり益は限定的だが、業績の安定と一定の配当を受け取りながら保有する形になる。
悪い場合のシナリオでは、公共投資の鈍化や原材料コスト上昇が重なり、利益率の改善が止まる。営業利益率は4%台前半まで低下し、ROEも5%台にとどまる。市場は収益力の頭打ちを意識し、評価倍率が切り下がる。この場合、PERは8倍を下回り、PBRも1.3倍前後まで低下する可能性があり、株価は1,000円から1,300円程度まで調整するリスクがある。ただしインフラ関連という事業特性から、業績が急激に崩れる可能性は低く、配当利回りの上昇が下値を支えやすい。
総合すると、日本ヒュームの5年間の値動きは、業績と評価倍率の変化に応じて緩やかに上下する展開が想定される。良い場合で2,000円台前半から2,400円程度、中間では1,300〜1,800円、悪い場合でも1,000円台前半までの調整にとどまるイメージである。現在値1,519円は安定性と将来の緩やかな成長を織り込んだ水準であり、今後5年間は大きな値上がりを狙うよりも、インフラ需要の継続性を前提にじっくり保有する銘柄としての性格が強いと考えられる。
この記事の最終更新日:2026年1月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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