株価
日本板硝子とは

日本板硝子株式会社は住友グループに属するガラス専業メーカーで東京都港区三田および大阪市中央区北浜に本社を置いている。AGCと並ぶ国内有力の板ガラスメーカーであり、建築用ガラスと自動車用ガラスが売上の約9割を占める事業構造を持つ。現在は「NSG Group」の名称でブランドを世界統一し、名実ともにグローバル企業として事業を展開している。
同社の最大の転機は2006年の英国ピルキントン社の買収である。約6千億円という巨額投資により欧州・北米・アジアに広範な生産・販売拠点を獲得し、AGCやサンゴバンと並ぶ世界最大級のガラスメーカーの一角に加わった。この結果、売上や利益の多くを海外、とりわけ欧州に依存する構造となり、現在も欧州比率が高いことが特徴である。一方で、欧州の景気動向、エネルギー価格、為替変動の影響を強く受けやすい体質も併せ持つようになった。
建築用ガラス事業では同社は高断熱・高遮熱性能を持つエコガラス分野で世界的な評価を受けている。Low-E複層ガラス、真空ガラス「スペーシア」、防犯性に優れた合わせガラス「セキュオ」、調光ガラスや温度で日射を制御するサーモクロミックガラスなど、高付加価値製品を幅広く展開している。特にスパッタ遮熱高断熱コーティングや複層ガラス技術では米国カーディナル社との提携やピルキントンが持つオンラインCVDコーティング技術を活用し、省エネルギー・脱炭素需要を追い風に世界市場での競争力を確立している。エコガラス分野では地球温暖化対策を背景に世界のリーダー的存在と位置づけられている。
自動車用ガラス事業ではフロントガラス、サイドガラス、リアガラスなどを世界の自動車メーカー向けに供給している。単なるガラス素材にとどまらず、HUD対応ガラス、遮熱・遮音ガラス、軽量化対応ガラスなど付加価値の高い製品開発に力を入れている点が特徴である。鉄道車両向けの複層ガラスなど車両用途にも展開しており、グローバルOEMとの取引を通じて海外売上比率の高い事業となっている。
高機能ガラス分野では通信・情報機器向けの光学部品やガラス基板、太陽電池用ガラスなどを手がけている。複合機向けのセルフォックレンズや静電容量型タッチパネル用ガラス基板では世界トップシェアを持つ分野もあり、ガラスメーカーとしては珍しい大面積スプレーコーティング技術など独自性の高い技術力を有している。近年では抗ウイルス・抗菌ガラスやPCR検査装置など、社会課題に対応した製品も投入している。
研究開発面では技術研究所を中心に、エコガラス、調光ガラス、水素関連技術、光触媒など将来分野への先行投資を継続している。スパッタ光触媒の結晶化シード層技術など、自社開発の独自技術も多くこれらを既存製品や新分野へ横展開することで中長期的な成長余地を確保しようとしている。
全体として日本板硝子は建築用・自動車用を軸としたガラス専業のグローバルメーカーであり、高機能ガラス技術では世界トップクラスの競争力を持つ。一方で、欧州比率の高さやエネルギーコスト、景気循環の影響を受けやすい事業特性も抱えており、高付加価値製品の拡大と収益体質の安定化が長年の課題となっている。技術力とグローバル基盤を活かしつつ、いかに収益のブレを抑えられるかが今後の企業価値を左右するポイントだと言える。
日本板硝子 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 499,224 | -8,329 | -17,171 | -16,930 | -208.3 | 0 |
| 22.3 | 600,568 | 23,626 | 11,859 | 4,134 | 24.1 | 0 |
| 23.3 | 763,521 | -10,342 | -21,933 | -33,761 | -393.1 | 0 |
| 24.3 | 832,537 | 35,950 | 17,597 | 10,633 | 95.4 | 0 |
| 25.3 | 840,401 | 11,242 | -8,525 | -13,831 | -173.2 | 0 |
| 26.3予 | 850,000 | 33,600 | 12,600 | 3,000 | 30.1 | 0 |
| 27.3予 | 875,000 | 37,000 | 16,000 | 7,000 | 70.3 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 48,506 | -34,649 | -7,889 |
| 24.3 | 58,769 | -43,512 | -48,079 |
| 25.3 | 52,419 | -42,444 | 8,513 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | -1.4% | -34.8% | -3.6% | – | – |
| 24.3 | 4.3% | 8.5% | 1.0% | – | – |
| 25.3 | 1.3% | -12.8% | -1.4% | 9.2倍 / 5.2倍 | 0.72倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の水準を億円ベースで見ると24.3期は売上約8,325億円に対して営業利益約359億円、経常利益約176億円、純利益約106億円と黒字を確保している。一方で25.3期は売上約8,404億円とほぼ横ばいながら営業利益は約112億円に縮小し、経常利益は-85億円、純利益は-138億円と再び赤字に転落している。26.3期予想では売上約8,500億円、営業利益約336億円、経常利益約126億円、純利益約30億円と黒字回復が見込まれているが利益水準はまだ不安定であることが分かる。
収益性を見ると営業利益率は23.3期-1.4%、24.3期4.3%、25.3期1.3%と振れが大きい。板ガラスという装置産業の特性上、エネルギーコストや市況の影響を強く受け安定して3〜5%以上を維持できていない点は明確な弱点である。ROEも-34.8%、8.5%、-12.8%と大きく乱高下しており、株主資本を安定的に活用できているとは言い難い。ROAも-3.6%、1.0%、-1.4%と低水準で、資産規模に対して利益創出力が弱い状態が続いている。
バリュエーション面では25.3期実績PERは高値平均9.2倍、安値平均5.2倍と数値だけ見れば低水準に見える。ただし、これは業績が赤字に近い、もしくは赤字である年を含んだ結果であり、安定的な利益を前提にした割安感とは性質が異なる。PBRは0.7倍と1倍を下回っており資産価値に対して株価は低く評価されているが、ROEがマイナスまたは低水準である以上、「資産はあるが稼げない」という評価を市場が付けている状態と解釈できる。
これらを総合すると日本板硝子は売上規模が非常に大きく世界的なガラスメーカーとしての地位と技術力を持つ一方で、利益の安定性が極めて低い。営業利益率、ROE、ROAはいずれも振れが大きく、構造的に高収益体質とは言えない。PERやPBRの低さは魅力に映るもののそれは業績不安定さを織り込んだ結果であり、単純な割安株とは判断しにくい。
投資判断としては26.3期以降の黒字回復が一過性に終わらず営業利益率が継続的に3%以上、ROEが安定して5%超に乗る見通しが立たない限り、積極的に買い進む局面ではない。現時点では業績回復局面を見極めるための様子見、もしくは高リスクを許容できる投資家向けの「回復期待枠」にとどまる銘柄と考えられる。
配当目的とかどうなの?
日本板硝子株式会社について配当目的という観点だけで見ると、現状では明確に不向きと判断できる。まず前提として26.3期・27.3期ともに予想配当利回りは0.00%であり、会社として無配を継続する姿勢が示されている。これは一時的な減配ではなく過去数年にわたって業績の振れが大きく、安定的に利益を株主へ還元できる段階にないことを反映している。
実際に業績を見ると営業利益・純利益は黒字と赤字を行き来しており、ROEやROAもマイナスを含む低水準で推移している。こうした状況では配当原資となる安定したフリーキャッシュフローを恒常的に確保することが難しく、経営としても内部留保の確保や財務体質の立て直しを優先せざるを得ない。PBRが0.7倍台と低い水準にあるにもかかわらず無配が続いている点からも、株主還元より事業継続と収益安定化を最優先している段階であることが読み取れる。
配当目的で株を保有する場合に重視される「毎年ほぼ確実に配当が出る」「減配リスクが小さい」「利回りがインフレや機会費用に見合う」といった条件は、現時点の日本板硝子には当てはまらない。仮に将来黒字が定着してもまずは財務改善や負債圧縮が優先され、その後に配当再開という順序になる可能性が高く配当が投資リターンの柱になるまでには相応の時間がかかると考えられる。
結論として、日本板硝子は配当を目的として保有する銘柄ではない。投資する場合はあくまで業績回復や市況改善による株価の戻りを狙うキャピタルゲイン志向、もしくは長期的な事業再建・体質改善が進むかを見極めるポジションに限られる。安定配当やインカム収入を重視する投資家にとっては、現時点では選択肢から外すのが無難だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本板硝子株式会社について現在値590.0円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。まず全体像として日本板硝子は高成長株ではなく、建築用ガラスと自動車用ガラスを主力とする市況影響の大きい素材メーカーである。売上規模は8,000億円超と大きいものの、エネルギーコストや欧州市況の影響を強く受け利益は黒字と赤字を行き来している。配当は無配が続いており、株価評価の軸は配当ではなく「業績回復の持続性」と「資産価値に対する割安感」に置かれている。PBRは0.7倍台と低く、市場は同社を慎重に評価している状態である。
良い場合のシナリオでは、26.3期以降に黒字回復が定着し、営業利益率が3%前後まで安定的に改善する。欧州事業の収益性改善とエネルギーコストの落ち着きにより、営業利益・純利益が継続的に積み上がる局面に入る。ROEも一桁後半まで回復すれば市場は同社を「再建が進んだ大型素材メーカー」として見直し、PBRは0.9倍前後まで切り上がる可能性がある。PERも10倍前後が許容されるようになれば、EPS水準を前提に株価は800円から1,000円程度まで上昇する余地がある。ただし配当再開までは時間を要するため、リターンの中心は値上がり益となる。
中間のシナリオでは、業績は黒字と赤字を繰り返しつつも致命的な悪化は回避され、売上8,500億円前後、営業利益100〜300億円規模で不安定な推移が続く。営業利益率は1〜2%台にとどまり、ROEも低水準のままとなる。この場合、市場評価に大きな変化はなく、PERは低位、PBRは0.7〜0.8倍程度で推移しやすい。株価は500円から650円程度のレンジで上下し、5年間で見ても値上がり益は限定的となる。配当がないため、保有メリットは主に市況回復時の短期的な株価反発に限られる。
悪い場合のシナリオでは、欧州経済の低迷やエネルギー価格の再上昇により収益改善が頓挫し、営業利益率が再びマイナス近辺に低下する。ROE・ROAもマイナス圏で推移すると、市場は再建の遅れを強く意識し評価は一段と厳しくなる。この場合、PBRは0.6倍台まで低下する可能性があり、株価は350円から500円程度まで下落するリスクがある。配当による下支えがないため、株価のボラティリティは大きくなりやすい。
総合すると日本板硝子の5年間の値動きは、業績回復が定着すれば大きな戻り余地はあるものの基本的には市況依存度が高く、安定的に右肩上がりを描くタイプではない。良い場合で900円前後、中間では500〜650円、悪い場合は400円前後までの調整もあり得るイメージである。現在値590円は業績不安定さと資産価値を同時に織り込んだ水準であり、今後5年間は高配当目的ではなく、業績回復の確度を見極めながら値動きを狙う中・上級者向けの銘柄という性格が強いと考えられる。
この記事の最終更新日:2026年1月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す