株価
東洋炭素とは

東洋炭素株式会社は、等方性黒鉛の分野における世界的なパイオニア企業であり、同製品において日本国内シェア約5割、世界シェア約3割を占めるトップメーカーである。本社は大阪府大阪市北区に置き、西淀川区に本店を構える。東証プライム市場に上場しており、先端素材メーカーとして長年にわたり安定した事業基盤を築いてきた。
同社の中核技術である等方性黒鉛は、約3000度の高温処理によって生成される黒鉛素材で、結晶構造が均一であることから、方向による特性差が極めて小さいという特徴を持つ。耐熱性、耐薬品性、電気伝導性、熱伝導性に優れ、かつ軽量で加工性が高く、摩耗しにくいという性質を併せ持つため、高い信頼性が要求される分野で不可欠な素材となっている。具体的には、半導体製造装置、放電加工用電極、原子力関連設備、太陽電池、宇宙航空分野、医療分野など、先端産業を中心に幅広く使用されている。
東洋炭素は1974年に、日本で初めて大型等方性黒鉛の量産化技術を確立した企業であり、この技術的優位性が現在の高い市場シェアにつながっている。専業メーカーとして長年にわたり研究開発を重ね、品質の安定性や大型化、高純度化といった要求に応え続けてきた点が競争力の源泉である。さらに、原料調達から製造、加工、販売までを自社グループ内で完結させる一貫生産体制を構築しており、品質管理力と供給安定性の高さにおいて他社との差別化を実現している。
国内の生産拠点としては、香川県観音寺市および三豊市、福島県いわき市に工場を有し、観音寺市には研究所を設置している。研究開発と生産が近接した体制により、顧客ニーズを迅速に製品へ反映できる点も強みである。海外では、アメリカ、ドイツ、中国などに生産・販売拠点を展開しており、アジア・欧州・米州の三極体制を構築することで、グローバル市場における安定供給とコスト競争力を高めている。直販を基本とする販売体制を採用し、顧客と技術面で密接な関係を築くことを重視している点も特徴である。
創業は1941年で、当初はカーボンブラシの製造から事業を開始した。創業以来、「どこにもないモノをつくる」というパイオニア精神を企業文化の中核に据え、高機能・高付加価値分野への特化を進めてきた。等方性黒鉛に加え、近年では黒鉛表面にコーティングを施した機能性複合材料など、新しい機能を持つカーボン製品の開発にも注力しており、用途の拡張と付加価値向上を図っている。
今後の経営方針としては、既存事業の高度化と収益性向上を軸にしつつ、新事業展開やM&A、アライアンスを通じた成長を目指している。また、品質と生産性のさらなる向上、研究開発体制の強化、グローバル経営管理体制およびコーポレートガバナンスの高度化を進めることで、名実ともに「真のグローバル企業」としての地位を確立することを目標としている。
主な事業内容は、等方性黒鉛を中心とした高機能カーボン製品の製造・販売およびそれに付随する加工事業であり、先端産業の発展と密接に連動する素材メーカーとして、中長期的な成長余地を有する企業である。
東洋炭素 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 43,774 | 6,667 | 7,369 | 5,181 | 247.1 | 70 |
| 連23.12 | 49,251 | 9,283 | 10,182 | 7,506 | 357.9 | 110 |
| 連24.12 | 53,093 | 12,238 | 13,480 | 9,960 | 475.0 | 145 |
| 連25.12予 | 48,000 | 7,500 | 7,000 | 5,000 | 238.4 | 145 |
| 連26.12予 | 49,000 | 8,000 | 8,000 | 5,700 | 271.8 | 145〜150 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 5,625 | -5,253 | -1,388 |
| 2023.12 | 6,216 | -2,693 | -1,970 |
| 2024.12 | 9,489 | -6,312 | -2,563 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 18.8 | 8.8 | 7.7 | – | – |
| 2024.12 | 23.0 | 10.5 | 8.7 | 9.7〜17.3 | 1.06 |
| 2025.12予 | 15.6 | 5.3 | 4.4 | 20.23 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、2023年12月期は売上高492億円、営業利益92億円、経常利益101億円、純利益75億円で、すでに高い収益水準にあった。2024年12月期には売上高530億円、営業利益122億円、経常利益134億円、純利益99億円まで拡大しており、利益面・収益力ともに明確なピークを形成している。一方で2025年12月期予想では売上高480億円、営業利益75億円、経常利益70億円、純利益50億円と、2024年から大きく減益する見通しとなっている。2026年12月期予想では売上高490億円、営業利益80億円、経常利益80億円、純利益57億円と回復はするものの、2024年の水準には及ばない。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年18.8%、2024年23.0%と素材メーカーとしては非常に高い水準に達していたが、2025年は15.6%まで低下する予想であり、利益率のピークアウトが明確である。ROEは2023年8.8%から2024年10.5%へと改善したものの、2025年には5.3%まで低下する見通しで、株主資本効率の悪化が示唆されている。ROAも2023年7.7%、2024年8.7%から2025年には4.4%へと低下しており、総合的な資産効率も調整局面に入る。
株価評価の面では、2024年の実績PERは安値平均9.7倍から高値平均17.3倍と幅があり、業績好調を背景に評価が切り上がった局面があったことが分かる。一方、2024年の実績PBRは1.0倍前後の1.06倍で、資産価値から見て極端な割高感はない水準である。しかし2025年12月期の予想PERは20.2倍と、利益が減少する局面で評価倍率が上昇する形になっており、数値上は割安とは言いにくい。
以上の数値だけで判断すると、2024年は業績、収益性、評価が最も良好に揃った局面であり、2025年以降は高収益体質を維持しつつも成長が一服し、評価が先行しやすい局面に入ると考えられる。営業利益率、ROE、ROAが同時に低下する局面でPERが20倍台に達している点を踏まえると、短期的には上値余地よりも調整リスクの方が意識されやすい。
結論として、この数値群のみを前提にすれば、東洋炭素は事業の質が高く長期的な保有対象としては優良である一方、2025年時点では新規で積極的に買い進む局面ではなく、評価の調整や業績の底打ちを確認しながら慎重に向き合うべき銘柄と判断される。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると、東洋炭素は「悪くはないが、純粋な高配当株とは性格が違う」銘柄である。まず数字だけを見ると、連25.12・連26.12ともに予想配当利回りは3.0%で、東証全体の平均と比べればやや高めであり、インカム目的として最低限の水準は満たしている。実際、配当実績は2023年110円、2024年145円と大きく増配しており、業績好調期の利益を株主に還元してきた姿勢は評価できる。
一方で注意すべき点は業績トレンドである。2024年は営業利益率23.0%、ROE10.5%と明確なピーク水準にあり、2025年以降は営業利益率15.6%、ROE5.3%まで低下する見通しとなっている。純利益も2024年99億円から2025年50億円へと大きく減少する予想であり、配当は「成長に裏打ちされた増配局面」から「利益が落ちる中で維持される配当」へとフェーズが変わっている。
この局面で配当が145円前後で据え置かれている点は、株主還元意識が高いとも言えるが、同時に今後の増配余地が限られることも示している。ROEが5%台まで低下する状況では、内部留保を確保しつつ積極的に配当を引き上げる余力は大きくない。今後は「増やす配当」よりも「守る配当」の性格が強くなると考えられる。
また、2025年の予想PERは20倍台に達しており、配当利回り3%を得るための株価水準としては割安感があるとは言いにくい。低PER・高利回りを武器とする典型的な配当株とは異なり、東洋炭素はあくまで高収益事業を背景とした中配当株という位置づけになる。
結論として、東洋炭素は配当目的で「保有しても問題ない水準」ではあるが、「配当だけを狙って積極的に買う銘柄」ではない。業績が底打ちし、ROEや利益率が再び安定・回復する兆しが見えれば、3%前後の配当を受け取りながら中長期で保有する戦略は成立するが、現時点ではインカム狙いよりも事業回復力や利益の再成長を重視して向き合う銘柄と判断するのが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
東洋炭素について、現在値4,820円を起点に今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。まず全体像として、東洋炭素は等方性黒鉛で世界トップクラスのシェアを持つ高収益素材メーカーであり、典型的な景気循環株ではないが、半導体・先端分野の設備投資動向に業績が左右されやすい性格を持つ。2024年12月期は営業利益率23%、ROE10%超と収益性のピーク局面にあり、現在の株価はその高収益期をかなり織り込んだ水準にある。一方で、2025年以降は利益調整が予想されており、株価評価の軸は「再成長への期待」か「高収益体質の持続性」をどう見るかに移りつつある。
良い場合のシナリオでは、2025年以降の減益が一時的にとどまり、半導体・エネルギー関連向け需要の回復により、営業利益率が18〜20%程度まで持ち直す。ROEも8〜9%台で安定し、世界シェアの高さと参入障壁の強さが再評価される。この場合、市場は東洋炭素を「景気敏感要素を持ちながらも構造的に高収益な素材メーカー」として捉え直し、PERは15〜18倍程度が許容される可能性がある。EPSの回復を前提にすると、株価は6,500円から8,000円程度まで上昇する余地があり、配当利回りは2%台後半まで低下するものの、値上がり益を伴ったトータルリターンが期待できる展開となる。
中間のシナリオでは、2025年の減益後、業績は横ばいから緩やかな回復にとどまり、営業利益率は15〜17%、ROEは6〜7%台で安定する。事業の競争力は維持されるが、成長ストーリーは弱く、市場評価に大きな変化は生じない。この場合、PERは12〜15倍、PBRは1倍前後に落ち着きやすく、株価は4,500円から6,000円程度のレンジで推移する可能性が高い。5年間で見れば値上がり益は限定的だが、3%前後の配当を積み上げることで、安定感のある中長期保有となる。
悪い場合のシナリオでは、半導体投資の低迷が長期化し、設備投資需要の回復が想定より遅れることで、営業利益率が12〜13%台まで低下する。ROEも5%前後にとどまり、高収益企業としての評価が後退する。この場合、市場は成長期待を剥落させ、PERは10倍前後、PBRも0.8倍程度まで低下する可能性がある。株価は3,500円から4,000円程度まで調整するリスクがあり、値上がり益は期待しにくい。ただし、事業の質そのものが崩れるわけではないため、配当利回りは4%前後まで上昇し、下値は比較的限定されやすい。
総合すると、東洋炭素の5年間の値動きは、フコクのような高配当安定株よりも振れ幅は大きいものの、成長株ほどの爆発力はない中間的な性格を持つ。良い場合で7,000円前後、中間では4,500〜6,000円、悪い場合でも3,800円前後までの調整にとどまるイメージである。現在値4,820円は、高収益期の反動減益をある程度織り込みつつも、再成長期待が残っている水準であり、今後5年間は「業績回復を待ちながら配当を受け取る」姿勢で向き合う銘柄と考えられる。
この記事の最終更新日:2026年1月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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