株価
中部鋼鈑とは

中部鋼鈑は、厚板専業の電気炉メーカーであり、日本で唯一、電気炉による厚鋼板製造を専業としている点が最大の特徴である。本社および主力工場は愛知県名古屋市中川区にあり、国内最大級の電気炉を保有するなど、設備規模と操業能力の両面で国内トップクラスの厚板電炉メーカーと位置づけられる。
事業の中心は厚鋼板の製造・販売で、産業機械、工作機械向けを主力市場としてきた。これらの分野では、鋼材の強度や靱性だけでなく、加工性や寸法精度、品質の安定性が強く求められるが、中部鋼鈑は長年の操業で蓄積した製造技術と品質管理力により、安定した評価を得ている。単なる素材供給ではなく、ユーザーの用途や加工工程を意識した鋼板供給を行っている点が、継続取引につながっている。
近年は、産業・工作機械向けに加え、建築分野への展開を積極化している。建築向け厚板は、橋梁や大型構造物など用途が広く、需要の裾野が比較的安定している分野である。これにより、特定業界への依存度を下げ、需要変動リスクを分散させる狙いがある。厚板専業という事業構造上、汎用鋼材の大量生産メーカーと比べると数量成長は限定的だが、その分、価格競争に陥りにくい市場を主戦場としている点が特徴である。
製品面では、厚板製品の製造販売に加え、鋼片の製造販売、鋼板の切断加工までを一貫して手がけている。鋼板の切断加工を自社で行うことで、顧客側の工程を簡素化でき、納期短縮や在庫圧縮といった付加価値を提供している。素材メーカーでありながら、加工工程まで踏み込むことで、単価競争から距離を置いたビジネスモデルを構築している。
環境対応は同社の重要な強みの一つである。電気炉メーカーとして鉄スクラップを主原料とする資源循環型の生産体制を持ち、CO₂排出量が比較的少ない点は、脱炭素を重視する社会環境と親和性が高い。環境配慮型電気炉鋼材「すみれす」は、その象徴的な製品であり、従来製品に比べてカーボンフットプリントを大幅に削減している。第三者認証機関によるCFPの妥当性確認を受け、ミルシートと連動した環境配慮型電気炉鋼材証明書を発行できる点は、環境価値を重視する顧客にとって大きな差別化要因となっている。
人材育成にも特徴がある。中部鋼鈑は、産業技術短期大学への技術者派遣を通じたオフ・ザ・ジョブ・トレーニングを実施し、現場力と理論の両立を重視している。企業内選抜を経て中堅技術者候補を外部教育に送り出し、その成果を現場に還元する仕組みは、厚板専業という技術集約型事業を支える基盤となっている。設備産業でありながら、人への投資を継続している点は、長期的な安定操業に直結する要素である。
関係会社としては、物流、商事、広告、環境関連などを担う企業を抱えており、本業を支える周辺機能をグループ内で完結させている。これにより、製造から販売、物流までの一体運営が可能となり、コスト管理や供給安定性の面で強みを発揮している。
総合的に見ると、中部鋼鈑は厚板専業という明確なポジションを持ち、産業・工作機械向けを軸にしつつ建築分野へも展開する電炉メーカーである。市況の影響を受けやすい鉄鋼業界に属しながらも、専業性、加工対応力、環境配慮型製品、人材育成といった要素により、単なる素材メーカーにとどまらない存在感を持つ企業と言える。成長性は緩やかだが、安定性と専門性を重視するタイプの鉄鋼メーカーとして、独自の立ち位置を築いている。
中部鋼鈑 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 40,327 | 2,574 | 2,532 | 1,593 | 57.7 | 18 |
| 連22.3 | 64,399 | 5,554 | 5,525 | 3,785 | 137.1 | 43 |
| 連23.3 | 76,320 | 12,261 | 12,328 | 8,577 | 310.5 | 104 |
| 連24.3 | 67,785 | 10,425 | 10,228 | 7,133 | 259.3 | 91 |
| 連25.3 | 51,047 | 2,704 | 2,599 | 1,731 | 64.0 | 101 |
| 連26.3予 | 52,800 | 2,300 | 2,600 | 2,100 | 77.5 | 101 |
| 連27.3予 | 67,000 | 7,000 | 7,200 | 4,700 | 173.5 | 101 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 10,133 | -9,084 | -1,953 |
| 2024.3 | 3,872 | 285 | -4,548 |
| 2025.3 | 21,525 | -9,091 | -3,011 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 16.0% | 9.7% | 11.7% | – | – |
| 2024.3 | 15.3% | 7.6% | 9.2% | – | – |
| 2025.3 | 5.2% | 2.0% | 2.2% | 22.6倍 / 13.4倍 | 0.80倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の振れ幅が非常に大きい。2024年は営業利益104億、純利益71億と高収益だったが、2025年は営業利益27億、純利益17億まで急減している。売上高も677億から510億へ大きく落ちており、市況悪化の影響を強く受けたことが数字からはっきり分かる。2026年予想では若干の回復を見込んでいるが、利益水準は2024年には遠く及ばない。
営業利益率は2023~2024年に15%超という非常に高い水準だったのが、2025年には5.2%まで急低下している。これは事業競争力が失われたというより、厚板専業という業態上、需給と価格の変化がそのまま利益に反映される循環型ビジネスであることを示している。
ROEとROAも同様で、2023~2024年はROE二桁近く、ROAも高水準だったが、2025年はROE2.2%、ROA2.0%まで落ち込んでいる。資本効率という観点では、好況期は優秀だが、不況期には一気に効率が悪化する企業だと分かる。安定的に高ROEを期待するタイプの銘柄ではない。
評価面を見ると、2025年は業績が底に近い状態にもかかわらず、PERは安値平均でも13.4倍、高値平均では22.6倍と、見かけ上は割高に見える。一方でPBRは0.8倍と1倍を下回っており、資産価値ベースではかなり悲観的な評価が織り込まれている。これは「今の利益は信用されていないが、資産と将来回復余地は一定程度評価されている」状態と解釈できる。
配当との関係を見ると、2025年は一株益64円に対して配当101円となっており、明らかに利益を上回る水準で配当を出している。2026年予想でも一株益77円に対して配当101円を維持する前提になっており、短期的には内部留保や過去の好業績の蓄えを使った配当政策であることが分かる。配当は厚いが、業績次第では将来の見直し余地も否定できない。
この数値だけを見る限り、中部鋼鈑は高成長株でも安定成長株でもなく、典型的な市況循環株である。好況期には営業利益率15%超、ROEも高水準まで跳ね上がる一方、不況期には利益と効率が一気に縮む。現在は利益の谷に近い局面で、PBR0.8倍という評価は悲観寄りだが、PERは利益低迷の影響で割安感がはっきり出る水準ではない。
投資スタンスとしては、業績回復を前提に仕込む循環株型の投資には向くが、安定した利益成長や恒常的な高ROEを期待する投資には向かない。配当は魅力的に見えるが、利益水準との乖離が大きいため、配当の持続性を重視する投資では慎重さが必要、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
まず利回りを見ると、2026年3月期予想で4.52%、2027年3月期予想でも4.52%と、かなり高い水準にある。水準だけを見れば、配当目的としては十分に魅力がある数字で、市場平均と比べても明確に上回っている。
ただし、利益との関係を見ると注意点が多い。2025年3月期の一株益は64円、2026年3月期予想でも77円にとどまる一方で、配当は101円を維持する前提になっている。つまり、直近および予想ベースでは、利益を上回る配当を出している状態であり、配当性向は100%を大きく超えている。これは平時の配当というより、過去の好業績期に積み上げた内部留保を取り崩しながら配当を維持している形だと読み取れる。
キャッシュフローを見ると、2025年は営業CFが大きく改善しており、短期的に配当を支える体力はある。ただし、厚板専業の電炉メーカーという事業特性上、業績とキャッシュフローは市況に大きく左右される。2023~2024年のような高収益局面が再来すれば問題は小さいが、低収益が長引くと、現在の配当水準を恒常的に維持するのは簡単ではない。
ROEや営業利益率の推移も、配当の安定性という観点では引っかかる。2023~2024年はROEが二桁近く、営業利益率も15%超と非常に強かったが、2025年にはROE2.2%、営業利益率5.2%まで急低下している。利益の振れ幅が大きいため、配当も本質的には業績連動型になりやすく、毎年安定して同水準の配当を期待する銘柄ではない。
一方で、PBRが0.8倍と低く、資産面ではかなり悲観的な評価が織り込まれている点は、配当目的の投資家にとって一定の安心材料になる。株価が大きく下がりにくい水準であれば、高い利回りを受け取りながら市況回復を待つという考え方は成り立つ。
結論として、中部鋼鈑は配当利回りの「水準」だけを重視するなら魅力は大きい。ただし、その配当は利益成長に裏付けられた安定配当ではなく、市況回復を前提に維持されている色合いが強い。電力や通信のように減配リスクの小さいディフェンシブな配当株とは性格が異なり、業績の波と減配リスクを許容できる人向けの配当銘柄だと言える。配当目的としてまとめるなら、高利回りを取りに行くには向いているが、安定配当狙い一本で持つには慎重さが必要、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
中部鋼鈑の現在値2,232円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。中部鋼鈑は、厚板専業の電炉メーカーであり、日本で唯一、電気炉による厚鋼板製造を専業としている企業である。産業機械・工作機械向けを主力とし、近年は建築分野にも積極的に進出している。国内最大級の電気炉を保有し、品質の安定性や加工対応力に強みを持つ一方、業績は厚板需給や市況の影響を受けやすく、収益の振れが大きい点が特徴である。
良い場合のシナリオでは、国内外の設備投資や建設投資が回復・拡大し、産業機械・建築向けを中心に厚板需要が持ち直す。価格環境も改善し、稼働率の上昇とともに採算が回復することで、営業利益率は10〜15%程度まで戻り、ROEも10%前後で安定する。市場は中部鋼鈑を「厚板分野に特化した高収益電炉メーカー」として再評価し、PERは12〜18倍、PBRも1.0〜1.2倍程度まで切り上がる。この場合、株価は3,500円〜5,000円程度まで上昇する余地があり、配当利回りは低下するものの、株価上昇と配当を合わせた総合リターンは大きくなる。
中間のシナリオでは、厚板需要は大きく崩れないものの、強い追い風もなく、現在に近い環境が続く。営業利益率は5〜8%程度、ROEも5〜8%台にとどまり、業績は回復と停滞を繰り返す横ばい圏で推移する。市場評価はPER8〜12倍、PBR0.8〜1.0倍程度に収まり、株価は1,800円〜2,800円程度のレンジで上下する。この場合、値上がり益は限定的だが、4%前後の配当利回りを受け取りながら保有する配当重視・循環株としての位置づけになる。
悪い場合のシナリオでは、国内建設投資や設備投資が大きく減速し、厚板需給が悪化する。数量減と価格低下が同時に進み、営業利益率は3〜5%台、ROEも3%前後まで低下する。市場は市況循環株としての側面を強く意識し、PERは5〜8倍、PBRは0.5〜0.7倍程度まで評価が切り下がる可能性がある。この場合、株価は1,000円〜1,800円程度まで下落するリスクがあり、配当についても減額や見直しが意識される局面となる。
総合すると、中部鋼鈑の今後5年間の株価は、良い場合で3,500円〜5,000円程度、中間では1,800円〜2,800円程度、悪い場合で1,000円〜1,800円程度が一つの目安となる。現在値2,232円は中間シナリオの中央付近に位置しており、割高感はない一方、業績回復を明確に織り込んでいる水準でもない。市況回復局面では上方向の余地が大きい反面、需給悪化時の下振れ幅も無視できないため、中部鋼鈑は配当を受け取りつつ、厚板需給と利益率の回復タイミングを見極めながら中長期で向き合うタイプの銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2026年1月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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