株価
大同特殊鋼とは

大同特殊鋼は、高機能特殊鋼分野で世界有数の技術力と実績を持つ、日本を代表する大手特殊鋼メーカーである。本社は愛知県名古屋市東区にあり、東京証券取引所プライム市場に上場している。電気炉を中核とした製鋼技術を基盤に、自動車向けを事業のベースとしながら、航空、エネルギー、半導体など先端分野向け素材へ事業領域を広げている点が大きな特徴である。
大同特殊鋼グループは、大同特殊鋼本体と連結子会社64社、持分法適用会社8社で構成されており、事業は①特殊鋼鋼材、②機能材料・磁性材料、③自動車部品・産業機械部品、④エンジニアリング、⑤流通・サービスの5セグメントに分かれている。単なる鋼材メーカーにとどまらず、素材から部品、エンジニアリング、流通までをカバーする総合特殊鋼グループとしての性格を持つ。
主力の特殊鋼鋼材事業では、構造用鋼、軸受鋼、ステンレス鋼、チタン合金などを製造しており、自動車や産業機械を中心に幅広い分野で使用されている。特に自動車向けではエンジン、駆動系、ターボチャージャー関連部品用鋼材に強みを持ち、安定した需要基盤を形成している。一方で、航空機エンジン用シャフトでは世界シェア約30%を占めるなど、航空分野でも高い競争力を有している。
機能材料・磁性材料分野では、子会社ダイドー電子を中心に携帯電話用モーター磁石で世界シェア約35%、HDD用では50%超という圧倒的な実績を持つ。これらは高精度・高信頼性が求められる分野であり、大同特殊鋼の材料技術力の高さを象徴している。近年は半導体関連やエネルギー分野向けの先進素材にも注力しており、脱炭素や高効率化といった社会的要請に対応する材料開発を進めている。
歴史的には、戦後しばらくは普通鋼の生産が中心だったが、早期に特殊鋼へ特化する戦略転換を行った。1970年代の石油危機では一時赤字に転落したものの、1976年の3社合併を経て現在の大同特殊鋼が誕生し、その後は高付加価値分野への集中によって競争力を高めてきた。2000年代以降は、ブラジルのゲルダウグループや米国ティムケンとの技術提携など、グローバルな技術連携も進めている。
生産・研究拠点は愛知県を中心に全国に展開されており、技術開発研究所や複数のテクノセンターを通じて材料開発と生産技術の高度化を図っている。電気炉を軸とした製鋼プロセスは資源循環型であり、環境負荷低減の面でも優位性を持つ。
総合すると、大同特殊鋼は自動車向けを収益の基盤としつつ、航空、エネルギー、半導体といった成長分野向けの高機能素材を拡大している世界有数の特殊鋼メーカーである。市況の影響は受けるものの、量産普通鋼とは一線を画す技術力と高付加価値製品を武器に、中長期的な競争力を維持する企業と位置づけられる。
大同特殊鋼 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 税前利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 412,722 | 10,070 | 12,642 | 4,516 | 21.2 | 7 |
| 連22.3 | 529,667 | 36,982 | 39,200 | 26,894 | 126.2 | 36 |
| 連23.3 | 578,564 | 46,986 | 48,122 | 36,438 | 171.0 | 46 |
| 連24.3 | 581,287 | 42,113 | 45,031 | 49,759 | 233.5 | 46 |
| 25.3 | 574,945 | 39,408 | 42,653 | 28,314 | 134.6 | 47 |
| 26.3予 | 565,000 | 33,000 | 34,500 | 23,500 | 117.6 | 49 |
| 27.3予 | 585,000 | 38,000 | 40,000 | 26,000 | 130.1 | 49〜51 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 22,634 | -20,084 | -2,668 |
| 2024.3 | 58,657 | 16,777 | -71,810 |
| 2025.3 | 53,516 | -15,586 | -22,715 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 8.1% | 4.7% | 9.8% | – | – |
| 2024.3 | 7.2% | 6.3% | 11.6% | – | – |
| 2025.3 | 6.8% | 3.6% | 6.5% | 10.0倍 / 6.1倍 | 0.73倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績を億円ベースで見ると、2024年3月期は売上高5,812億円、営業利益421億円、経常利益450億円、純利益497億円と非常に高い水準にある。2025年3月期になると売上高は5,749億円とやや減少し、営業利益も394億円に低下、純利益は283億円まで落ちている。2026年3月期予想では売上高5,650億円、営業利益330億円、純利益235億円と、利益水準はさらに調整する想定になっており、直近数年のピークからは一段落した局面に入っていることが分かる。
営業利益率を見ると、2023年8.1%、2024年7.2%、2025年6.8%と、緩やかな低下傾向にある。特殊鋼という高付加価値分野ではあるものの、市況や需要環境の影響を完全に遮断できるわけではなく、収益性は循環的に動くという性格が数字に表れている。ただし6〜8%台の利益率は、普通鋼メーカーと比べれば依然として高く、事業競争力が失われているわけではない。
ROEは2023年9.8%、2024年11.6%と好調だったが、2025年には6.5%まで低下している。ROAも同様に2024年をピークに2025年は3.6%まで落ちており、資本効率は市況悪化とともに一気に鈍る。安定的に高ROEを維持する企業というより、好況期に一気に稼ぐ循環型企業だということがはっきりする。
評価面を見ると、2025年の実績PERは安値平均で6.1倍、高値平均でも10.0倍とかなり低い水準にある。PBRも0.73倍と1倍を大きく下回っており、資産価値に対して市場はかなり保守的な評価を付けている。利益がピークアウトしたこと、市況循環の影響を強く受けることが、評価を押し下げていると考えられる。
一方で、利益が減少する局面でも配当は40円台後半へと引き上げられており、配当性向は依然として低めで無理がない。利益水準と比べると配当余力は大きく、財務体質の強さと株主還元姿勢は数字からも読み取れる。
これらを総合すると、大同特殊鋼は高成長株ではなく、典型的な循環型の高付加価値メーカーである。ピーク時の利益水準は非常に高く、技術力や事業基盤は強固だが、業績は景気や需要環境に左右されやすい。その割に株価評価はPER6〜10倍、PBR0.7倍台と低く抑えられており、悲観的な見方がかなり織り込まれている状態と言える。
結論として、この数値だけを見る限り、大同特殊鋼は短期的な成長を狙う銘柄ではなく、市況が回復する局面を見据えて中長期で仕込むタイプの銘柄である。業績が再び拡大フェーズに入れば評価修正の余地は大きい一方、景気低迷が続けば株価の停滞も覚悟する必要がある。循環を許容できる投資家にとっては、割安感と高付加価値技術を併せ持つ銘柄だと評価できる。
配当目的とかどうなの?
まず配当利回りを見ると、2026年3月期予想で3.03%、2027年3月期予想でも3.03%と、水準としては中程度である。高配当株と呼ばれる4〜5%クラスではないが、東証プライム全体の平均と比べるとやや高めで、「配当が全く物足りない」という水準ではない。
次に利益との関係を見ると、一株益は2024年に233円、2025年に134円、2026年予想でも117円と依然として高い。一方で配当は40円台後半に抑えられており、配当性向はかなり低い。利益を上回る配当を出しているわけではなく、内部留保を削って無理に配当を維持している状況でもない。配当の原資という点では余裕があり、減配リスクは相対的に小さいと考えられる。
キャッシュフロー面でも、営業CFは大きく安定したプラスが続いており、配当を支払う力は十分にある。2024年に財務CFが大きくマイナスになっているが、これは配当や自己株取得、財務体質改善によるもので、資金繰りが苦しい印象はない。稼いだキャッシュを投資と株主還元に回す健全な構造が見える。
一方で注意点もある。営業利益率やROEはピークアウトしており、2025年以降は調整局面に入っている。業績が循環的に動く企業であるため、将来も必ず毎年増配が続くとは言い切れない。現在の配当水準は安全寄りだが、「増配スピードが速い配当成長株」というタイプではない。
評価面を見ると、PBRは0.7倍台、PERも6〜10倍と低く、株価は業績調整をかなり織り込んでいる。株価が低位で推移する限り、配当利回りは3%前後を安定して確保しやすい。逆に、業績回復で株価が上がれば利回りは下がるが、含み益と合わせたトータルリターンは改善する。
結論として、大同特殊鋼は配当目的として「安定性寄り」の銘柄である。高配当を狙う人にはやや物足りないが、減配リスクが低く、業績悪化局面でも配当を維持しやすい体力を持っている。配当だけで大きなリターンを狙う銘柄ではなく、割安な評価と安定配当を受け取りながら、市況回復による評価見直しも待つタイプの配当投資に向いた銘柄、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
大同特殊鋼の現在値1,614.5円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。大同特殊鋼は高機能特殊鋼で世界有数のメーカーであり、自動車向けを事業のベースとしつつ、航空機、エネルギー、半導体など先進分野向け素材を拡大している。普通鋼の市況に左右される企業とは異なり、技術力と付加価値で差別化された製品を持つ一方、需要の大きな柱である自動車・産業機械分野の景気動向には影響を受けやすいという、循環性と高付加価値が同居した性格を持つ。
良い場合のシナリオでは、自動車生産の回復や電動化・高性能化の進展により高機能特殊鋼の需要が底堅く推移し、航空機エンジン、エネルギー、半導体関連向け素材が成長ドライバーとなる。価格転嫁も一定程度進み、営業利益率は7〜9%台へ回復、ROEも8〜10%台を安定的に確保する。市場は大同特殊鋼を「市況依存度が相対的に低い高付加価値素材メーカー」として再評価し、PERは10〜14倍、PBRは1倍前後まで切り上がる。この場合、株価は2,800円〜3,800円程度まで上昇する余地があり、配当利回りは低下するものの、株価上昇と配当の両面で良好なリターンが期待できる。
中間のシナリオでは、自動車や産業機械向け需要は横ばい圏で推移し、先端分野の成長が全体を下支えする形となる。大きな業績拡大はないものの、高機能素材による一定の収益性は維持され、営業利益率は6〜8%台、ROEは6〜8%程度に落ち着く。市場評価はPER8〜10倍、PBR0.8〜1.0倍程度にとどまり、株価は1,300円〜2,000円程度のレンジで推移する。この場合、値上がり益は限定的だが、3%前後の配当利回りを受け取りながら保有する安定型の銘柄という位置づけになる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な景気後退により自動車・産業機械需要が大きく落ち込み、特殊鋼全体の数量・価格が下押しされる。高付加価値製品の比率は高いものの、数量減を補いきれず、営業利益率は5%前後まで低下し、ROEも5%台に落ち込む。市場は循環株としての側面を強く意識し、PERは5〜7倍、PBRは0.6倍前後まで評価が切り下がる可能性がある。この場合、株価は800円〜1,200円程度まで下落するリスクがあり、配当も減配が意識される局面となる。
総合すると、大同特殊鋼の今後5年間の株価は、良い場合で2,800円〜3,800円程度、中間では1,300円〜2,000円程度、悪い場合で800円〜1,200円程度が一つの目安となる。現在値1,614.5円は、中間シナリオを概ね織り込んだ水準にあり、業績が再び拡大局面に入れば上方向の余地は大きい。一方で、市況悪化時の下振れも無視できないため、大同特殊鋼は安定配当を受け取りつつ、自動車・先端分野需要と利益率の回復を見極めながら中長期で向き合うタイプの銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2026年1月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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