株価
日本冶金工業とは

日本冶金工業は、国内ステンレス専業メーカーの中でもトップクラスの地位を持つ独立系企業であり、ニッケル精錬からステンレス鋼の製造・圧延までを一貫して手がける点に大きな特徴がある。本社は東京都中央区京橋に置き、東京証券取引所プライム市場に上場している。
日本冶金工業は「NAS(Nippon-Yakin Austenite Stainless Steel)」ブランドで広く知られ、耐食性・耐熱性・高強度といった特性が求められる高機能ステンレス鋼を強みとしている。量産型の汎用ステンレスよりも、用途・性能重視の特殊鋼に軸足を置く事業構造で、価格競争に陥りにくいポジションを確立している。
沿革をたどると、1925年に中央理化工業として創業し、1929年にはステンレス鋼の初出鋼を行った。1942年に現在の社名となり、戦前から戦後にかけて日本の特殊鋼産業を牽引してきた歴史を持つ。「東洋のクルップ」と称されたこともあり、技術志向の強い企業文化が現在まで受け継がれている。
同社の大きな特徴の一つが、ニッケル製錬部門を自社で持つ点である。京都府宮津市の大江山製造所ではフェロニッケルを製造しており、国内でフェロニッケルを生産できる数少ない企業の一社である。これにより、ステンレス鋼の重要原料であるニッケルを安定的に確保でき、原料調達面での競争力と製品品質の安定性を両立している。ニッケル超合金分野では世界でも上位の供給量を誇る。
主力の生産拠点である川崎製造所は、京浜工業地帯に位置し、電気炉を用いたステンレス鋼の溶解から圧延までを担う中核工場である。環境対応にも力を入れており、ISO14001の認証を取得するなど、環境負荷低減を意識した操業を行っている。
製品分野は極めて幅広い。高機能材では、ディスプレイ用シャドーマスクや電子銃、電子機器部品、燃料電池・排煙脱硫装置向け材料、耐中性子線材料、海洋鋼構造用オーバーレイ材、自動車エンジン用ガスケット材、高温環境向けヒーター材など、一般的なステンレス用途を超えた分野に強みを持つ。LNGタンカー用メンブレンや低熱膨張材など、特殊用途向け素材も重要な収益源となっている。
加工品分野では、建築外装・内装向けのナスコート、ナスファインコート、キッチン・家電向けの高意匠ステンレス、特殊環境対応のメタルハニカムなどを展開し、素材供給にとどまらない付加価値提供を行っている。鋼種としては304系、316系を中心に、高耐食性・耐孔食性・耐粒界腐食などの特性を持つ材料を揃えている。
総合すると、日本冶金工業はステンレス専業メーカーとして、原料のニッケル精錬から製品加工までを一貫して行う数少ない企業であり、高耐食・高耐熱といった高機能分野に強みを持つ。市況の影響は受けるものの、技術力と差別化された製品群によって、汎用鋼メーカーとは異なる独自のポジションを築いている企業と言える。
日本冶金工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 112,482 | 6,145 | 4,990 | 3,764 | 247.9 | 45 |
| 連22.3 | 148,925 | 13,966 | 12,807 | 8,471 | 561.3 | 120 |
| 連23.3 | 199,324 | 29,256 | 27,738 | 19,703 | 1,317 | 200 |
| 連24.3 | 180,341 | 20,010 | 19,128 | 13,565 | 933.6 | 200 |
| 連25.3 | 172,097 | 16,967 | 16,200 | 11,579 | 819.5 | 220 |
| 連26.3予 | 148,000 | 11,000 | 10,000 | 7,000 | 505.3 | 220 |
| 連27.3予 | 153,000 | 11,500 | 10,500 | 7,300 | 526.9 | 220 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 3,649 | -13,035 | 8,530 |
| 2024 | 26,824 | -7,919 | -14,318 |
| 2025 | 11,041 | -11,389 | -7,394 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 14.6% | 8.8% | 24.7% | – | – |
| 2024 | 11.0% | 6.1% | 15.1% | – | – |
| 2025 | 9.8% | 5.3% | 12.0% | 3.4~5.3 | 0.63 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、24.3期をピークに営業利益・経常利益・純利益はいずれも減少している。営業利益は24.3期の200億から25.3期169億、26.3期予想では110億まで落ち込む見通しで、減益幅は小さくない。経常利益も191億から100億、純利益も135億から70億へと縮小しており、利益水準そのものが一段切り下がっている。
収益性の面でも、営業利益率は14.6%から11.0%、9.8%と3年連続で低下している。二桁は維持しているものの、明確にピークアウト後の調整局面に入っている。ROEも24.7%から15.1%、12.0%へと下がり、ROAも8.8%から5.3%まで低下しており、資本効率・資産効率ともに悪化傾向がはっきりしている。稼ぐ力が年々弱まっている点は否定できない。
一方で、バリュエーションを見ると2025年時点の実績PERは高値平均で5.3倍、安値平均で3.4倍、PBRは0.6倍とかなり低い水準にある。利益が減っているにもかかわらずこの倍率にとどまっているということは、市場はすでに業績悪化を織り込んでおり、期待値は相当下がっている状態と考えられる。
総合的に見ると、この銘柄は足元の業績トレンドは明確に下向きで、成長や業績改善を前提に積極的に買いに行く局面ではない。一方で、PER・PBRの水準だけを見ると明らかに割安圏にあり、業績がこれ以上悪化しなければ下値余地は限定的とも言える。
結局のところ、この銘柄は好業績が続く成長株ではなく、鉄鋼市況や外部環境に左右される循環株としての性格が強い。営業利益率やROEが下げ止まり、利益が110億前後で底を打つ兆しが見えてこない限り、強気に買う理由は乏しい。ただし、市況回復や業績反転が起きた場合には、低いPER・PBRを背景に株価が大きく戻る余地はある。
今ある数値だけで判断するなら、評価は割安だが業績悪化局面にある銘柄。投資判断としては、積極買いではなく、様子見か、市況反転を前提とした慎重な逆張り向け、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という視点で日本冶金工業を見ると、利回りの数字自体はかなり魅力的に映る一方で、その持続性には注意が必要だと感じる。まず予想配当利回りは26.3期、27.3期ともに4.8%台と高水準で、数字だけ見れば高配当株の部類に入る。この水準で配当が安定して入ってくるなら、インカム目的の投資家にとって関心を引きやすい。
ただ、配当の裏付けとなる利益の動きを見ると楽観はできない。純利益は24.3期の135億から25.3期115億、26.3期予想では70億まで落ちる見込みで、明確な減益局面にある。それにもかかわらず1株配当は220円を維持する前提になっており、利益が減る中で配当だけを据え置く形だ。この状況では配当性向がかなり高くなり、将来にわたって同水準の配当を無理なく続けられるとは言い切れない。
キャッシュフローの面でも、営業CFは年ごとの振れが大きく、投資CFは継続的にマイナスになっている。事業特性上、設備投資や維持投資が避けられないため、景気が悪い局面ではフリーCFが不安定になりやすい。そうした中で高い配当を続けるには、業績の回復か、ある程度の財務余力に頼る必要が出てくる。
総合すると、この銘柄は配当利回りだけを目的に長期で安心して持ち続けるタイプの高配当株ではない。一方で、業績が底に近い局面で、減配リスクを理解したうえで配当を受け取りながら市況回復を待つ、という使い方には合っている。
結局のところ、配当目的としては「利回りは高いが安全性は高くない」という評価になる。安定配当を重視する投資には慎重に、循環株としての反転や市況改善を見据えた補助的な配当狙いなら選択肢になる、という位置づけだと思う。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本冶金工業の現在値は4,510円である。日本冶金工業はステンレス鋼・高合金鋼を主力とする素材メーカーで、一般的な建材向け鉄鋼よりも、エネルギー、化学プラント、半導体装置など高付加価値分野への依存度が高い。一方で素材株としての市況循環性も持ち、足元では利益水準がピークアウトしている。株価は高配当と割安評価を背景に下支えされている状況にある。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、世界的なエネルギー投資や半導体・化学プラント向け設備投資が持ち直し、高機能ステンレス鋼の需要が回復する。原材料価格の変動を一定程度転嫁でき、製品ミックスの改善によって営業利益が110億規模から150億〜200億水準へ回復、営業利益率やROEも改善する。市場は業績回復を評価し、PERは現在の3〜5倍水準から6〜8倍程度まで見直される。この場合、株価は段階的に上昇し、3年程度で6,000円前後、5年後には7,000円〜9,000円程度まで上昇する余地がある。配当を受け取りながらの株価上昇が期待できる局面となる。
中間のシナリオでは、エネルギー・半導体投資は底堅いものの大きな拡大には至らず、業績は下げ止まりから横ばい圏で推移する。営業利益は100億前後、営業利益率は一桁後半から10%前後、ROEも10%前後で落ち着く。市場評価はPER4〜5倍、PBR0.6〜0.8倍程度にとどまり、割安だが慎重な評価が続く。この場合、株価は3,800円〜5,500円程度のレンジで推移し、値上がり益は限定的だが、4%台後半の配当利回りを受け取りながら保有する銘柄という位置づけになる。
悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速によりエネルギー・半導体・化学プラント向け投資が同時に冷え込み、受注量が大きく落ち込む。高付加価値製品の強みはあるものの数量減を補いきれず、営業利益は100億を下回り、利益率・ROE・ROAも一段と低下する。市場は素材株としての循環性を強く意識し、PERは2〜3倍、PBRは0.5倍前後まで切り下がる可能性がある。この場合、株価は現在値4,510円から下落し、3,000円前後、場合によっては2,500円近辺まで下押しされるリスクがある。業績次第では減配も意識され、配当目的の買いも弱まる。
総合すると、日本冶金工業の今後5年間の株価目安は、良い場合で7,000円〜9,000円程度、中間では3,800円〜5,500円程度、悪い場合で2,500円〜3,000円程度となる。現在値4,510円は中間シナリオのレンジ中央付近にあり、割安感と高配当がある一方で、業績トレンドはまだ回復途上にない。株価の方向性は、高機能素材需要の回復と利益の下げ止まりを確認できるかどうかに大きく左右される局面にある。
この記事の最終更新日:2026年1月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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