株価
大平洋金属とは

太平洋金属は、ステンレス鋼の原料となるフェロニッケルを主力とする国内有数のフェロアロイメーカーであり、ニッケル価格の変動に業績が大きく左右される典型的な資源・素材株である。一方で、近年はフェロニッケル一極依存からの脱却を意識し、用途拡大や事業構造転換にも着手している点が特徴となっている。
太平洋金属は、1949年に日曹製鋼として日本曹達から独立して発足し、1970年に現在の社名へ変更された。製造拠点は青森県八戸市河原木にある八戸製造所で、ここが実質的な本社機能を担っている。登記上の本店は東京都千代田区大手町に置かれているが、経営・生産の中枢は八戸に集約されている。国内では大阪・仙台に事務所を構え、海外ではフィリピンやインドネシアに鉱山開発関連の拠点を持ち、原料確保と情報収集を行っている。
事業の中核はフェロニッケル製錬である。フェロニッケルは鉄とニッケルの合金で、ステンレス鋼の耐食性や強度を左右する重要な原料であり、同社は世界最大級クラスの電気炉を用いた製錬技術を強みとしている。高温・大量電力を必要とする工程であるため、電力コストや操業条件が収益に直結するが、その分、技術的な参入障壁は高い。製品は国内外のステンレスメーカーに供給され、建材、化学プラント、エネルギー関連設備、産業機械など幅広い用途に使われている。
かつてはステンレス鋼そのものの製造も行っていたが、1999年に撤退し、以降はフェロニッケル専業に特化している。この判断により事業構造はシンプルになった一方、ニッケル価格やステンレス市況への依存度は高まり、業績の振れ幅が大きくなる要因ともなっている。実際、ニッケル価格の上昇局面では高収益を確保できるが、価格下落や需要減退局面では一転して利益が急減する傾向がある。
また、フェロニッケル製錬の過程で発生するスラグを再利用したスラグ加工品事業も展開している。スラグを加工した人工砂や人工石は、凍結融解抵抗性に優れ、道路、港湾、土木工事向けの資材として利用されている。規模はフェロニッケル事業に比べると小さいものの、副産物の有効活用という点で環境負荷低減と収益補完の役割を果たしている。
グループ企業を見ると、商社機能を担うパシフィックソーワを中心に、鍛鋼メーカー、鋳鋼メーカー、研磨材メーカー、産業用ポンプやミキサーを手がける機械メーカーなどが存在する。これらは必ずしもフェロニッケルと直接結びつかない事業も含むが、素材・加工・周辺分野を含む事業ポートフォリオを形成しており、一定のリスク分散効果を持っている。
近年の経営課題は、フェロニッケルという単一素材への依存度の高さと、市況循環性の強さである。そのため同社は、フェロニッケルの用途拡大や、高付加価値用途への対応、環境対応型技術の開発などを通じて、収益構造の安定化を模索している。ただし、現時点では依然としてニッケル価格、為替、電力コストの影響が大きく、業績の安定性という点では不確実性が残る。
総合すると太平洋金属は、ステンレス産業を支える上流素材メーカーとして不可欠な存在であり、高度な製錬技術と生産設備を持つ一方で、資源価格に強く左右される市況株的性格を色濃く持つ企業である。用途拡大や事業転換の取り組みは進めているものの、現段階では「ニッケル市況をどう読むか」が投資判断や業績評価の中心となる企業といえる。
大平洋金属 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 32,217 | -493 | 3,344 | 1,162 | 59.6 | 20 |
| 22.3 | 57,129 | 4,806 | 12,999 | 11,368 | 582.9 | 175 |
| 23.3 | 34,852 | -12,588 | -4,960 | -5,026 | -257.8 | 0 |
| 24.3 | 15,521 | -9,114 | -2,119 | -1,074 | -55.1 | 0 |
| 25.3 | 13,175 | -7,368 | -1,622 | -1,667 | -85.5 | 135 |
| 26.3予 | 8,500 | -6,500 | -1,850 | -1,900 | -109.3 | 120〜133 |
| 27.3予 | 9,000 | -3,000 | -500 | -650 | -37.4 | 120〜133 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | -7,516 | 974 | -3,006 |
| 24.3 | 2,793 | 2,000 | -5 |
| 25.3 | 3,011 | -153 | -7 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | -36.2% | -7.1% | -6.4% | ― | ― |
| 24.3 | -58.8% | -1.6% | -1.5% | ― | ― |
| 25.3 | -56.0% | -2.5% | -2.4% | ― | 0.70倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
大平洋金属は、直近数年にわたり業績悪化が続いている素材株であり、収益性・資本効率の両面で極めて厳しい状態にある。2024.3期は売上高155億円、営業利益は-91億円、経常利益は-21億円、純利益は-10億円である。営業利益率は-58.8%で、本業が大幅な赤字構造に陥っていることが明確に示されている。
2025.3期は売上高131億円、営業利益は-73億円、経常利益は-16億円、純利益は-16億円となっている。売上はさらに縮小しており、営業赤字額自体は前年差で縮小しているものの、営業利益率は-56.0%と依然として極めて低水準にあり、固定費負担の重さや操業環境の厳しさが続いていることが分かる。
2026.3期予想では、売上高85億円、営業利益は-65億円、経常利益は-18億円、純利益は-19億円とされている。赤字幅は段階的に縮小する見通しではあるが、依然として営業黒字には至らず、構造的な回復には相応の時間を要する前提となっている。収益性指標を見ると、2023~2025年の営業利益率は-36.2%、-58.8%、-56.0%と3期連続で大幅なマイナスで推移している。
ROEは-7.1%、-1.6%、-2.5%、ROAは-6.4%、-1.5%、-2.4%と、株主資本・総資産のいずれに対しても価値を生み出せていない状態が続いている。バリュエーション面では、2025年実績PBRは0.7倍と帳簿価値ベースでは割安な水準に見える。ただし、純利益が継続的に-となっているためPERは算出不能であり、利益水準に基づく評価は成立しない。以上を踏まえると、大平洋金属は数字上はPBR0.7倍と割安に見えるものの、営業赤字が長期化し、ROE・ROAともにマイナス圏にあることから、現時点では割安ではなく低評価が妥当な状態と判断できる。
投資判断としては、安定収益や配当、資本効率を重視する投資には不向きであり、ニッケル価格やステンレス市況の急回復を前提とした、市況回復待ちの高リスクな逆張り投資対象という位置づけになる。提示された数値だけを見る限り、黒字転換の兆しが確認できるまでは評価が切り上がる根拠は乏しく、慎重姿勢が妥当な局面という結論になる。
配当目的とかどうなの?
2026.3期、2027.3期ともに予想配当利回りは4.96%と、表面的には高配当水準にある。数値だけを見ると、一般的な高配当株の基準である4%を上回っており、利回りそのものは魅力的に映る。一方で業績面を見ると状況はかなり厳しい。2024.3期から2026.3期予想まで営業利益、経常利益、純利益はいずれも-が続いており、営業利益率は2023~2025年で-36.2%、-58.8%、-56.0%と大幅なマイナス圏にある。ROE、ROAもすべて-で推移しており、事業そのものが利益を生み出せていない状態が続いている。
この中での配当は、安定した収益の積み上げによって生まれているものではなく、過去の内部留保や財務余力を取り崩して支払われている性格が強いと考えられる。実際、赤字が続く中で高い配当利回りが成立しているのは、配当が特別に厚いというより、株価が業績悪化を織り込んで低水準にあることの裏返しといえる。
そのため、現在の配当利回り4.96%は、安定的に長期で受け取れる配当利回りというより、業績回復を前提とした条件付きの高配当と捉えるのが妥当である。今後も赤字が続けば、減配や無配に転じる可能性は常に意識しておく必要がある。
以上を踏まえると、大平洋金属は安定した配当収入を目的とした投資には向かず、市況回復を前提に配当も出ているうちに保有する逆張り型の配当投資向け銘柄と位置づけられる。結論として、現在の配当利回りは魅力的に見えるものの、配当の持続性は低く、安心して配当目的で長期保有できる銘柄ではない。ニッケル市況やステンレス需要の回復を信じられるかどうかが、配当目的での投資判断を左右する銘柄である。
今後の値動き予想!!(5年間)
大平洋金属の現在値は2,417.0円である。大平洋金属はステンレス原料であるフェロニッケルを主力とする素材メーカーで、ニッケル価格や電力コスト、ステンレス市況の影響を強く受ける市況循環型の企業である。足元では営業赤字が続いており、株価は業績悪化とPBR0.7倍水準という低評価を背景に抑えられている。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、ニッケル価格が回復基調に入り、ステンレス需要も持ち直すことで操業環境が改善する。電力コストの上昇が一服し、フェロニッケルの採算が回復すれば、営業赤字は縮小から黒字転換へ向かう。利益水準は過去の好況期ほどではないものの、安定的に黒字を確保できる状態となり、市場は業績回復を評価する。この場合、PBRは1倍前後まで見直され、株価は段階的に上昇する。3年程度で3,000円前後、5年後には3,500円〜4,200円程度まで上昇する余地がある。
中間のシナリオでは、ニッケル価格やステンレス市況は下げ止まるものの、明確な回復には至らない。赤字幅は縮小するが黒字化は遅れ、業績は低位での横ばいが続く。市場の評価も大きく変わらず、PBRは0.6〜0.8倍程度にとどまる。この場合、株価は1,900円〜2,600円程度のレンジ内で推移し、上下を繰り返しながら方向感の乏しい値動きとなる。
悪い場合のシナリオでは、ニッケル価格が低迷したまま推移し、電力コストや固定費負担が重くのしかかる。営業赤字が長期化し、黒字転換の見通しが立たない状況が続くと、市場は事業の先行きに一段と慎重になる。この場合、PBRは0.5倍前後まで切り下がり、株価は現在値2,417円から下落する。水準としては1,300円〜1,800円程度まで下押しされるリスクがある。
総合すると、大平洋金属の今後5年間の株価目安は、良い場合で3,500円〜4,200円程度、中間では1,900円〜2,600円程度、悪い場合で1,300円〜1,800円程度となる。現在値2,417円は中間シナリオのやや上寄りに位置しており、割安感はあるものの、株価の方向性はニッケル市況と黒字化の可否に大きく左右される局面にある。
この記事の最終更新日:2026年1月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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