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愛知製鋼とは

愛知製鋼は、自動車向け特殊鋼を主力とするトヨタグループの中核素材メーカーであり、同グループ唯一の素材メーカーという位置づけにある。自動車用鋼材から鍛造品、磁性材料、新規事業まで幅広く展開し、高い加工技術力と材料開発力を強みとしている。
愛知製鋼は、1930年代に豊田喜一郎が自動車開発を進める中で、自動車部と製鋼部を設立したことを起源とする。1940年に製鋼部が独立して豊田製鋼株式会社となり、後に現在の愛知製鋼へと発展した。トヨタ自動車の成長と歩みを共にしてきた歴史を持ち、自動車産業と極めて結びつきの強い企業である。
事業の中核は特殊鋼事業であり、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、ばね鋼、軸受鋼、ボロン鋼、非調質鋼など、多品種の高付加価値鋼材を展開している。これらは主に自動車のエンジン、駆動系、足回りなど重要部品に使用されており、品質の安定性や加工適性が重視される分野で高い評価を得ている。自動車向けが中心ではあるが、建築・土木分野や建設機械向けにも製品を供給している。
また、鋼材にとどまらず、クランクシャフトや歯車などの自動車用鍛造品を手がける鍛造品事業も重要な柱となっている。エンジン部材、トランスミッション部材、ステアリング・シャーシー部材などを一貫して生産できる体制を持ち、材料から加工までを自社で完結させることで、高い品質管理力とコスト競争力を確保している。
近年は磁性材料や電子材料分野の育成にも力を入れている。ネオジム磁石、磁気センサ、MIセンサ、アモルファスワイヤなどを展開しており、EVや省エネ機器、電子部品分野といった成長市場への対応を進めている点は中長期的な成長要素といえる。
さらに、新規事業として鉄イオンを植物に安定供給する技術を応用し、鉄力あぐり、鉄力あくあといった土壌改良材や水質改善材を一般消費者向けに販売するなど、素材技術を生かした異分野展開にも取り組んでいる。国内では愛知県東海市を中心に、知多工場、鍛造工場、東浦工場、刈谷工場、岐阜工場、関工場など複数の生産拠点を持ち、物流、情報システム、精密部品、セラミックス関連などのグループ会社と連携した事業体制を構築している。
全体として愛知製鋼は、自動車向け特殊鋼を軸に高い加工技術と材料開発力を積み重ねてきた企業であり、内燃機関向け需要の変化という課題を抱えつつも、磁性材料や新規事業を育成しながら事業領域の拡張を進めている点が特徴である。
愛知製鋼 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 204,908 | 3,563 | 4,248 | 3,049 | 38.7 | 11.3 |
| 22.3 | 260,138 | 2,806 | 3,508 | 933 | 11.8 | 7.5 |
| 23.3 | 285,141 | 3,260 | 4,099 | 1,610 | 20.4 | 7.5 |
| 24.3 | 296,516 | 10,372 | 10,947 | 6,593 | 83.5 | 25 |
| 25.3 | 299,287 | 12,016 | 11,907 | 7,820 | 99.5 | 40 |
| 26.3予 | 300,000 | 15,000 | 16,000 | 10,000 | 155.6 | 138特 |
| 27.3予 | 310,000 | 16,100 | 17,000 | 10,500 | 163.4 | 138〜140特 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 13,028 | -15,958 | 16,998 |
| 24.3 | 33,817 | -18,895 | -16,283 |
| 25.3 | 25,354 | -17,918 | -17,674 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(高値〜安値) | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 1.1% | 0.7% | 0.4% | – | – |
| 24.3 | 3.4% | 2.6% | 1.4% | – | – |
| 25.3 | 4.0% | 3.3% | 1.9% | 21.5〜12.2倍 | 0.90倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
2024.3期は売上高2,965億円、営業利益103億円、経常利益109億円、純利益65億円で、営業利益率は3.4%まで回復した。ROEは2.6%、ROAは1.4%と、資本効率はまだ低いが、底打ちから改善局面に入った段階といえる。2025.3期は売上高2,992億円、営業利益120億円、経常利益119億円、純利益78億円へと増益が続き、営業利益率は4.0%まで上昇した。ROEは3.3%、ROAは1.9%と、依然として高水準とは言えないが、前年差で着実に改善している点は評価できる。
2026.3期予想では、売上高3,000億円、営業利益150億円、経常利益160億円、純利益100億円と、利益成長が一段と加速する見通しとなっている。利益水準だけを見ると、構造的な収益力改善が進んでいる段階にある。一方、収益性指標を見ると、2023年から2025年にかけて営業利益率は1.1% → 3.4% → 4.0%と改善しているものの、素材メーカーとしてはまだ中程度の水準にとどまる。ROEは3.3%、ROAは1.9%と、資本効率は依然として低く、成長企業として高い評価を受ける水準ではない。
バリュエーション面では、2025年実績PERは高値平均21.5倍、安値平均12.2倍とレンジが広い。利益変動の大きさや循環性を考えると、PERの上限を前提にした投資はリスクが高い。一方で、実績PBRは0.9倍と1倍を下回っており、資産価値面では割高感はない。
以上を踏まえると、愛知製鋼は高ROE・高成長を狙うグロース投資向きではなく、業績回復と利益水準の底上げを背景に、PBR1倍割れ水準で拾う循環・回復型の投資対象と判断できる。利益の伸びは確認できるが、ROEが低いため評価倍率が大きく切り上がる余地は限定的であり、投資判断としては「高値追いは不向き、業績が強い局面での押し目・配当含みの中期保有向き」という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
2026.3期・2027.3期の予想配当利回りはいずれも4.56%と、市場平均と比べて明確に高い水準にある。素材・鉄鋼関連の中でも上位クラスの利回りであり、表面的な数字だけを見ると配当目的としての魅力は十分にある。利益水準を見ると、2026.3期予想では純利益100億円まで拡大しており、2024.3期の65億円、2025.3期の78億円から大きく伸びる見通しとなっている。配当が138円規模で維持される前提であれば、利益とのバランスは現時点では過度に無理な水準には見えない。
一方で注意点もある。ROEは2025.3期時点で3.3%と低く、企業としての稼ぐ力自体はまだ高いとは言えない。配当利回りが高い理由は、収益性の高さというよりも、株価がPBR0.9倍と低く抑えられていることによる側面が大きい。つまり、高配当の裏付けが「高収益体質」ではなく「評価の低さ」に依存している点は意識しておく必要がある。
また、利益は市況の影響を受けやすい構造にあり、2026.3期の高水準がピークになる可能性も否定できない。仮に利益が反落すれば、特別配当を含む高水準配当が継続できるかは不透明になる。
以上を踏まえると、愛知製鋼は安定的に長期で配当を積み上げていく「超安定高配当株」というより、業績が良い局面で高利回りを享受する循環型・タイミング型の配当投資向きと判断できる。現在の利回り4.56%は魅力的だが、配当の持続性よりも業績サイクルを見ながら保有する姿勢が重要であり、「今の利益水準が維持される前提であれば配当目的は成立するが、永久保有型ではない」という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
愛知製鋼の現在値は3,025円である。愛知製鋼はトヨタグループ唯一の素材メーカーとして、自動車向け特殊鋼・鍛造品を主力とする企業であり、エンジン・駆動系・足回りなど基幹部品向けの高品質鋼材に強みを持つ。一方で素材メーカーとしての市況循環性が強く、足元では業績が回復局面にあるものの、ROEや営業利益率は依然として低水準にとどまっている。株価はPBR1倍割れと高配当を背景に下支えされている状況にある。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、自動車生産が底堅く推移し、電動化対応鋼材や磁性材料などの高付加価値分野が着実に拡大する。2026.3期予想で示されている営業利益150億円、純利益100億円規模が一時的なピークに終わらず、安定水準として定着する。営業利益率は5%前後、ROEも5%程度まで改善し、市場の評価もやや見直される。この場合、PBRは1.2倍前後、PERは14〜16倍程度が許容され、株価は段階的に上昇する。3年程度で3,800円前後、5年後には4,500円〜5,000円程度までの上昇が視野に入る。高配当を受け取りながら緩やかな株価上昇が期待できる局面となる。
中間のシナリオでは、2026.3期を利益のピークとして、その後はやや調整しつつも、2024〜2025年よりは高い水準で業績が安定する。営業利益は120億円前後、営業利益率は4%程度、ROEは3%台にとどまる。市場は循環株として慎重な評価を続け、PBRは0.9〜1.0倍、PERは12〜14倍のレンジに収まる。この場合、株価は2,800円〜3,400円程度のレンジで推移し、値上がり益は限定的だが、4%台の配当利回りを享受しながら保有する銘柄という位置づけになる。
悪い場合のシナリオでは、自動車生産の減速や鋼材市況の悪化により、利益が再び圧迫される。営業利益は100億円を下回り、営業利益率は3%台前半まで低下、ROEも2%台に逆戻りする。市場は素材株としての循環性を強く意識し、PBRは0.7倍前後まで切り下がる可能性がある。この場合、株価は現在値3,025円から下落し、2,200円〜2,500円程度まで下押しされるリスクがある。業績次第では特別配当の剥落も意識され、配当目的の買いも弱まる展開となる。
総合すると、愛知製鋼の今後5年間の株価目安は、良い場合で4,500円〜5,000円程度、中間では2,800円〜3,400円程度、悪い場合で2,200円〜2,500円程度となる。現在値3,025円は中間シナリオの下寄りに位置しており、割安感と高配当はあるものの、ROEの低さから評価が大きく切り上がる局面には至っていない。株価の方向性は、利益水準の持続性と収益性改善がどこまで進むかに大きく左右される局面にある。
この記事の最終更新日:2026年1月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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