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三菱製鋼とは

三菱製鋼は、三菱グループに属する特殊鋼メーカーであり、日本の鉄鋼業界では特殊鋼分野に位置付けられる企業である。本社は東京都中央区に置き、三菱金曜会および三菱広報委員会の会員企業として、三菱グループの鉄鋼部門を担ってきた。原料調達面では日本製鉄と親密な関係を持ち、高炉由来の溶銑を活用することで、品質の安定した高付加価値鋼材を供給できる体制を築いている。
事業の柱は、鋼材事業、ばね事業、加工・精密部品事業の三つである。鋼材事業では、建設機械、自動車、産業機械向けを中心に、特殊鋼棒鋼や線材を製造・販売している。中核拠点である三菱製鋼室蘭特殊鋼では、転炉溶鋼と電気炉を併用した製鋼体制に加え、高度な炉外精錬技術や最新の連続鋳造設備を備えており、安定した品質と高い生産性を両立している。圧延工程では、高剛性のV-H圧延設備やインライン高速プレスなどを導入し、特に直径170ミリ以上の太丸サイズでは国内トップシェアを誇る。この分野は建設機械や産業機械向けでの需要が強く、同社の収益基盤を支える重要な領域となっている。
海外展開としては、インドネシア子会社のPT. JATIM TAMAN STEEL MFG.が、東南アジア唯一の特殊鋼鋼材メーカーとして位置付けられている。電気炉製法によるビレットから特殊鋼丸棒や平鋼を製造し、JIS規格やインドネシア国家規格の認証を取得することで、現地および周辺国の自動車・産業機械需要に対応している。国内生産で培った品質管理や技術力を海外拠点にも展開することで、アジア地域での競争力強化を図っている。
ばね事業は、同社の歴史と技術力を象徴する分野である。1904年に日本で初めて工業的なばね製造に成功した流れをくむ、日本最古のばねメーカーの系譜を継いでおり、素材から製品まで一貫生産できる国内唯一のメーカーである。精密ばねから超大型ばねまで幅広い製品ラインアップを持ち、建設機械用太巻ばねでは世界トップシェアを有する。かつては携帯電話の折り畳みヒンジで世界的な高シェアを獲得し、一時は世界市場の大半を占めた実績もある。現在でも車載用モニター、デジタルカメラ、音響機器、電子辞書など向けにヒンジや精密組立品を供給しており、精密加工技術を活かした事業を継続している。
ばね・精密部品の生産拠点は、福島県会津若松市の広田製作所やタイのMSM-Thailandなどに展開している。広田製作所では2023年4月から使用電力の100%を再生可能エネルギーで賄っており、脱炭素への取り組みも進めている。海外拠点では現地調達や現地生産に対応できる体制を整え、グローバル顧客のニーズに応えている。
加工・精密部品事業では、鋳鋼品・鍛鋼品、粉末冶金製品、さらには鍛圧機械や環境プラント機器、一般産業機械、鉄構品といった大型製品までを手掛けている。設計から製造、出荷までを一貫して行う体制を持ち、自動車、航空・船舶、エネルギー、電気電子、農業機械など多様な分野に製品を供給している。これらの製品は国内のみならず、北米、東南アジア、中近東、欧州など世界各地に納入されており、海外売上の拡大にも寄与している。
全体として三菱製鋼は、建設機械・自動車向けを中核としつつ、特殊鋼、ばね、鋳鍛造、精密部品といった複数の事業を組み合わせた事業構造を持つ。材料技術と加工技術、長年培った品質管理力を強みに、国内外で安定した需要を取り込みながら、高付加価値化と環境対応を進めている点が同社の特徴である。
三菱製鋼 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
EPS (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 97,804 | -4,943 | -5,509 | -5,528 | -359.4 | 0 |
| 22.3 | 146,292 | 6,270 | 5,780 | 4,068 | 264.8 | 50 |
| 23.3 | 170,537 | 5,547 | 3,743 | 2,190 | 142.6 | 50 |
| 24.3 | 169,943 | 4,808 | 1,949 | -969 | -63.5 | 60 |
| 25.3 | 159,584 | 6,564 | 4,854 | 2,363 | 155.9 | 64 |
| 26.3予 | 159,000 | 4,400 | 3,000 | 2,500 | 165.3 | 80 |
| 27.3予 | 162,000 | 5,500 | 4,000 | 2,600 | 171.9 | 80 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | -2,777 | -1,439 | 14,789 |
| 24.3 | 6,477 | -3,971 | -11,607 |
| 25.3 | 6,010 | -5,171 | -6,541 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER (高値/安値平均) |
PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 3.2% | 5.0% | 1.4% | – | – |
| 24.3 | 2.8% | -2.4% | -0.7% | – | – |
| 25.3 | 4.1% | 5.5% | 1.7% | 10.6倍/6.6倍 | 0.68倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、2024年3月期は売上高1,699億円に対して営業利益48億円、経常利益19億円、純利益はマイナス9億円と最終赤字で終わっている。この年は営業利益率2.8%、ROEマイナス2.4%、ROAマイナス0.7%となっており、収益力・資本効率ともに明確に低迷していた局面だといえる。
一方、2025年3月期になると売上高は1,595億円とやや減少しているものの、営業利益は65億円、経常利益48億円、純利益23億円まで回復している。営業利益率は4.1%まで改善し、ROEも5.5%、ROAも1.7%とプラスに戻っている。売上規模自体は成長していないが、利益面でははっきりと立て直しが進んだ年と評価できる。
2026年3月期予想では、売上高1,590億円と横ばい圏を想定しつつ、純利益は25億円と25.3期をやや上回る見通しになっている。ただし営業利益は44億円、経常利益30億円と25.3期からは減少予想であり、利益水準が一段と伸びていくというよりは、回復後の安定を目指す段階にあることが読み取れる。
収益性の水準を見ると、営業利益率は2023年3月期3.2%、2024年3月期2.8%、2025年3月期4.1%と、低水準ながら改善傾向にはある。ただし4%台は製造業としては決して高いとは言えず、事業の稼ぐ力が強い企業とは言いにくい。ROEも2025年で5.5%、ROAは1.7%にとどまっており、資本効率は全体として低い水準にある。
バリュエーションを見ると、2025年実績PERは高値平均10.6倍、安値平均6.6倍、PBRは0.6倍台となっている。PBRが1倍を大きく下回っている点から、市場は同社を高収益企業としては評価しておらず、資産価値に対しても控えめな評価をしていることが分かる。PERも1桁から10倍程度であり、成長期待が強く織り込まれている水準ではない。
これらを総合すると、三菱製鋼は2024年に業績の底を打ち、2025年に回復したものの、収益力や資本効率は依然として低い。成長株として高い評価を受けるタイプではなく、業績の急拡大による株価上昇を狙う投資には向きにくい。一方で、PBR1倍割れ、PERも低水準にあり、業績が大きく崩れなければ下値は比較的限定されやすい水準ともいえる。
したがって、提示された数値だけで判断すると、三菱製鋼は高成長を期待して買う銘柄ではなく、業績回復後の安定を前提に、割安水準と配当を意識して中長期で保有するかどうかを検討するタイプの銘柄、という位置付けになる。
配当目的とかどうなの?
まず予想配当利回りを見ると、26.3期、27.3期ともに4.19%とされており、水準としてはかなり高い。銀行預金や国債はもちろん、一般的な製造業の平均的な配当利回りと比べても見劣りしない数字で、インカム目的で株を保有したい場合には目に留まりやすい水準である。
配当の裏付けとなる利益を見ると、24.3期は純利益が赤字で、配当の安定性という点では不安の残る年だった。ただし25.3期には純利益が23億円まで回復し、26.3期予想でも25億円と、利益自体は大きく崩れない前提になっている。配当も25.3期の64円から26.3期、27.3期は80円予想とされており、会社としては業績回復を背景に株主還元を重視する姿勢を示している。
一方で、営業利益率は4%前後、ROEは5%台、ROAは2%未満と、収益力や資本効率は高いとは言えない。高い利益余力の中から余裕をもって配当を出しているというよりは、事業環境が落ち着いている間に、比較的高めの配当で株主をつなぎとめたい局面と見ることもできる。景気や業績が再び悪化した場合、減配リスクが全くないとは言えない点は意識しておく必要がある。
ただし株価水準を見ると、PBRは0.6倍台と明確な1倍割れであり、資産価値から見て割安な位置にある。この水準で4%を超える配当利回りが確保できるのであれば、株価の大きな値上がりを狙わなくても、配当を受け取りながら保有する戦略とは相性が良い。高値圏で利回りが削られるリスクは比較的小さい。
これらを総合すると、三菱製鋼は配当目的として「無条件で安心できる高配当株」ではないが、「割安水準で、業績が大きく崩れないことを前提に配当を取りにいく銘柄」としては十分に検討対象になる。配当利回りの高さに魅力を感じつつも、業績の振れや景気循環を意識しながら、分散投資の一角として中長期で持つ、という付き合い方が現実的だといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
三菱製鋼の現在値1,907円を基準に今後5年間の値動きを考えると、同社は建設機械・自動車向けを主力とする特殊鋼・ばねメーカーであり、素材産業として景気循環や設備投資動向の影響を受けやすい一方、ニッチ分野での技術力と高いシェアを持つ点が特徴である。PBRは0.6倍台と資産価値面では割安水準にあり、配当利回りも4%前後と高いが、営業利益率は4%前後、ROEも5%台と収益性は高くない。このため、株価は成長期待よりも業績の安定度と配当を軸に評価されやすく、シナリオ次第で緩やかな上振れから下振れまで幅を持った動きになりやすい。
良い場合は、建設機械や自動車向け需要が堅調に推移し、特殊鋼・ばねともに採算が安定するケースである。営業利益率が4%台で定着し、純利益も20億円台を安定的に確保できれば、配当80円水準の維持が現実味を帯び、配当目的の資金が入りやすくなる。PBRは0.6倍台から0.9倍程度まで見直され、PERも10倍前後で評価されるようになる。この場合、株価は時間をかけて切り上がり、5年後には2,400円から2,700円程度まで上昇するイメージで、好環境が重なれば3,000円近辺を試す余地も出てくる。
中間の場合は、業績が大きく崩れない一方で、成長も限定的なケースである。売上高は横ばい圏、営業利益率は3〜4%台、純利益は20億円前後で推移し、配当は80円を維持するが増配期待は高まらない。市場の評価は引き続き慎重で、PBRは0.6〜0.7倍台、PERは8〜10倍程度にとどまる。この場合、株価は大きなトレンドを描かず、1,700円から2,100円程度のレンジで上下を繰り返し、5年後も1,900円前後に落ち着く可能性が高い。リターンの中心は値上がり益ではなく、配当収入になる。
悪い場合は、建機・自動車向け需要が弱含み、コスト増や稼働率低下で利益率が再び悪化するケースである。営業利益率が3%を下回り、純利益が一桁億円台まで落ち込むと、配当維持への不安が強まり、減配が意識される。評価面ではPBRが0.5倍近辺まで低下し、割安感よりも業績不安が意識されやすくなる。この場合、株価は1,500円を割り込み、状況次第では1,200円から1,400円程度まで下落する可能性がある。
総合すると、三菱製鋼は高成長による株価急騰を狙う銘柄ではなく、業績の安定性と配当を軸に評価される典型的な素材・部品株である。良い場合は低PBR是正による緩やかな上振れ余地があり、中間では高配当を受け取りながらの横ばい推移、悪い場合は業績悪化に連動した下振れも起こり得る。長期では中間シナリオを基本に、配当を受け取りつつ、業績が安定する局面での評価回復を期待する銘柄という位置付けになる。
この記事の最終更新日:2026年1月7日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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