株価
日本精線とは

日本精線は、大同特殊鋼グループに属するステンレス鋼線メーカーで、ステンレス線の二次加工分野では国内トップクラスの地位を持つ企業である。本社は大阪府大阪市中央区に置き、ばね、ねじ、金網など多様な用途向けに高品質なステンレス鋼線を供給している。
同社はかつて日本冶金工業のグループ企業であったが、2007年に大同特殊鋼の連結子会社となり、同年に大同ステンレスを吸収合併した。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しによりプライム市場へ移行している。事業所は大阪の本社を中心に、東京、名古屋の支店、枚方工場、東大阪工場を構え、国内生産を軸とした体制をとっている。
事業の中核はステンレス鋼線であり、ばね用、ねじ用、金網用など幅広い用途に対応している。加えて、直棒、平線、角線、精密異形線などのステンレス鋼異形線も手掛けており、顧客の用途や仕様に応じた高精度な加工力を強みとしている。自動車、航空機、OA機器、電気製品、医療機器、さらには日用品やレジャー用品まで、使用分野は非常に広く、産業インフラを下支えする素材メーカーとしての性格が強い。
近年特に力を入れているのが、金属繊維事業である。日本精線が独自技術で開発したステンレス鋼繊維「ナスロン」は、線径1〜50ミクロンという極細の金属繊維で、金属の耐熱性・耐食性を保ちながら、有機繊維に近い柔軟性と加工性を持つ点が特徴である。単独使用だけでなく、有機繊維との混紡も可能で、従来の金属材料では対応できなかった用途を切り開いている。
ナスロンを用いた高機能メタルフィルターも同社の重要な製品群である。高強度、高耐熱、耐食性に優れ、合成繊維、樹脂、石油精製、発電、医薬など幅広い分野で使用されている。洗浄して再利用できるため、ランニングコストや環境性能の面でも評価が高い。さらに、半導体やフラットパネルディスプレイ、太陽電池向けには、ステンレス鋼短繊維を焼結した超精密ガスフィルター「NASclean」を展開しており、濾材から最終製品までを一貫生産できる点が強みとなっている。低圧力損失と高い除粒子性能を併せ持ち、世界的にも独自性の高い製品である。
総合すると、日本精線はステンレス鋼線という成熟分野で首位級のポジションを維持しつつ、金属繊維や半導体関連フィルターといった高付加価値分野を拡充している企業である。大同特殊鋼グループの素材力を背景に、品質重視・技術重視の事業構造を築いており、安定性とニッチ成長を併せ持つ素材メーカーとして位置付けられる。
日本精線 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
EPS (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 34,108 | 2,380 | 2,602 | 1,825 | 59.5 | 22 |
| 22.3 | 44,795 | 4,596 | 4,599 | 3,177 | 103.6 | 42 |
| 23.3 | 49,055 | 4,179 | 4,317 | 3,086 | 100.6 | 42 |
| 24.3 | 44,727 | 3,537 | 3,699 | 2,592 | 84.5 | 42 |
| 25.3 | 46,749 | 4,576 | 4,585 | 3,250 | 106.0 | 56 |
| 26.3予 | 43,500 | 3,200 | 3,200 | 2,300 | 74.9 | 42 |
| 27.3予 | 44,500 | 3,800 | 3,800 | 2,700 | 87.9 | 42〜50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 1,861 | -1,781 | -1,046 |
| 24.3 | 4,682 | -2,823 | -1,537 |
| 25.3 | 4,719 | -1,341 | -1,705 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER (高値/安値平均) |
実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 8.5% | 8.3% | 5.7% | – | – |
| 24.3 | 7.9% | 6.6% | 4.8% | – | – |
| 25.3 | 9.7% | 7.8% | 5.8% | 13.2倍/9.0倍 | 0.90倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の水準を見ると、2024年3月期は売上高447億円に対して営業利益35億円、経常利益36億円、純利益25億円となっている。営業利益率は7.9%と素材メーカーとしては高めで、ROEは6.6%、ROAは4.8%といずれも安定したプラス水準にある。景気変動を受けやすい素材分野でありながら、収益構造は比較的しっかりしている年だったと言える。
2025年3月期になると、売上高は467億円へとやや増加し、営業利益は45億円、経常利益45億円、純利益32億円と利益面がはっきり伸びている。営業利益率は9.7%まで上昇しており、収益力は直近3年の中で最も高い水準にある。ROEも7.8%、ROAも5.8%と改善しており、利益の質が高まった年と評価できる。売上の大幅な成長がなくても、利益をしっかり積み上げられる事業体質であることが数字に表れている。
2026年3月期予想では、売上高435億円、営業利益32億円、経常利益32億円、純利益23億円と、25.3期からは減益予想になっている。ただし、営業利益・純利益ともに20億円台を確保しており、極端な悪化という印象ではない。直近の高水準から一服する調整局面と見るのが自然で、事業の土台が崩れるような数字ではない。
収益性指標を通して見ると、2023年から2025年にかけて営業利益率は8.5%、7.9%、9.7%と高水準で推移しており、ROEも6〜8%台、ROAも5%前後を安定して維持している。高成長企業のような突出した数値ではないが、素材メーカーとしては明確に「稼げている」部類に入る。赤字や急激なブレがなく、事業の質は高い。
バリュエーションを見ると、2025年実績PERは高値平均13.2倍、安値平均9.0倍となっており、成長期待を過度に織り込んだ水準ではない。PBRは0.9倍と1倍をわずかに下回っており、資産価値と比較しても割高感は小さい。営業利益率9%台、ROE7%台という水準を考えると、市場評価はむしろ慎重で、極端に高く評価されている印象はない。
これらを総合すると、日本精線は急成長による株価の大幅上昇を狙うタイプの銘柄ではないが、安定した収益力と比較的高い利益率を背景に、堅実な業績を積み上げている企業と言える。2026年は減益予想ではあるものの、利益水準は十分に維持されており、長期的に見れば安定志向の事業構造が評価ポイントになる。
したがって投資判断としては、高い成長性を求める投資には向かない一方で、業績の安定性、収益性、そしてPBR1倍前後という評価水準を重視する中長期投資には向いた堅実型の銘柄、という位置付けになる。派手さはないが、事業の質と数字の安定感を評価して保有を検討するタイプの企業である。
配当目的とかどうなの?
まず予想配当利回りを見ると、26.3期、27.3期ともに3.43%とされており、水準としては高配当株とまでは言えないが、素材メーカーとしては十分に魅力のある利回りである。銀行預金や国債と比べれば明確に高く、インカム目的で一定の意味を持つ水準だといえる。
配当の裏付けとなる利益を見ると、24.3期、25.3期はいずれも営業利益・純利益ともに安定しており、特に25.3期は純利益32億円、営業利益率9.7%と収益力が高い。26.3期予想では減益が見込まれているものの、純利益は23億円と十分な水準を維持しており、配当を支える利益余力は残っている。営業キャッシュフローも直近3年は安定してプラスであり、数字を見る限り、配当の原資に不安を感じる状況ではない。
収益性の面では、営業利益率が8〜10%台、ROEが6〜8%台、ROAが5%前後と、素材系としては比較的高い水準で安定している。高成長企業ほどの余裕はないが、事業の質が高く、利益のブレが小さい点は配当目的では評価しやすい。赤字や急激な利益悪化が頻発するタイプの企業ではないため、配当の継続性は比較的高いと考えられる。
一方で、配当利回り3.4%台は「圧倒的に高い」わけではなく、インフラ株や高配当金融株のような安心感がある水準ではない。また、26.3期以降は減益予想であり、今後の景気動向次第では配当が伸びにくい、あるいは据え置きになる可能性はある。増配を強く期待して買う銘柄ではない点は意識しておく必要がある。
バリュエーションを見ると、PBRは0.9倍とほぼ解散価値水準であり、この株価水準で3%台半ばの配当利回りが確保できるのであれば、株価の下値は比較的意識されやすい。値上がり益を大きく狙わなくても、配当を受け取りながら安定的に保有する戦略とは相性が良い。高い利回りだけを最優先する人には物足りないが、事業の質や財務の健全性も重視しつつ、安定配当を狙う中長期保有には現実的な選択肢、という位置付けになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本精線の現在値1,224.0円を基準に今後5年間の値動きを考えると、同社はステンレス鋼線という比較的ニッチで高付加価値な分野に強みを持つ素材メーカーであり、一般的な市況株ほど業績の振れは大きくない一方、成長期待も急激には高まりにくい性格の銘柄である。営業利益率は8〜10%台と素材メーカーとしては高水準で安定しており、ROEも6〜8%台を維持しているが、突出した成長性があるわけではないため、株価は業績の安定性とバリュエーションを軸に評価されやすい。PBRは0.9倍前後とほぼ解散価値水準にあり、割安感と収益性のバランスでシナリオごとの差が出る構造になっている。
良い場合は、ステンレス鋼線の需要が自動車、医療、電子部品分野などで堅調に推移し、加えて金属繊維「ナスロン」や半導体向け高機能フィルターといった高付加価値分野の比率が高まるケースである。営業利益率が9〜10%台で定着し、ROEも8%前後を安定して維持できれば、事業の質の高さが改めて評価されやすくなる。この場合、PBRは1倍を明確に上回り、PERも13倍前後まで許容されるようになり、配当利回り3%台を維持しながら評価修正が進む。こうした環境が続けば、5年後の株価は1,600円〜1,900円程度まで上昇するイメージで、事業の成長が市場に強く意識される局面では2,000円近辺を試す可能性もある。
中間の場合は、需要環境が大きく改善も悪化もせず、業績が安定横ばいで推移するケースである。売上高は450億円前後、営業利益は30億円台後半から40億円前後、営業利益率は8〜9%台にとどまり、ROEも6〜7%台で安定する。事業の質は高いが成長期待は限定的なため、市場評価は慎重なままで、PBRは0.8〜0.9倍、PERは9〜12倍程度に収まる。この場合、株価は1,000円〜1,400円程度のレンジで推移し、5年後も1,200円前後に落ち着く可能性が高い。値上がり益よりも、配当を受け取りながらの安定保有が前提となる。
悪い場合は、世界的な景気減速や製造業の設備投資鈍化により、ステンレス鋼線の需要が弱含むケースである。高付加価値分野が下支えになるものの、全体の稼働率が低下し、営業利益率が7%を割り込むようになると、ROEも5%前後まで低下する。減益が続く局面では成長期待が後退し、PBRは0.6〜0.7倍台まで売り込まれる可能性がある。この場合、5年後の株価は800円〜1,000円程度まで下落する展開も想定される。
総合すると、日本精線は急成長による株価の大幅上昇を狙う銘柄ではなく、安定した収益力と高い事業品質を背景に評価される堅実な素材株である。良い場合はPBR是正による緩やかな上振れ余地があり、中間では配当を受け取りながらの横ばい推移、悪い場合でも事業の質が一定の下支えになる一方で、景気悪化時には株価が調整する可能性もある。長期では中間シナリオを基本に、安定性と配当を重視しつつ、付加価値分野の伸びによる評価改善を待つ銘柄、という位置付けになる。
この記事の最終更新日:2026年1月7日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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