株価
古河機械金属とは

古河機械金属株式会社は、1875年創業という日本でも最古級の産業企業の一つであり、旧古河財閥の源流企業として知られている。創業者は古河市兵衛で、新潟県の草倉銅山、続いて栃木県の足尾銅山の経営に着手したことが同社の出発点である。足尾銅山は明治期に日本最大級の銅山へと成長し、これを基盤として古河財閥が形成された。古河機械金属は、古河電気工業、富士電機、富士通といった日本を代表する製造業の母体企業であり、現在も古河グループの中核に位置付けられている。
戦前は銅山経営と銅製錬を中心とした鉱業会社であったが、鉱山の開発・運営を通じて培った技術は、採掘、掘削、運搬、排水、発電、排ガス処理、副産物処理など多岐にわたっており、これらの技術の蓄積が現在の事業の根幹となっている。戦後は財閥解体により持株会社としての機能を失い、経営体制の大きな転換を迫られたが、その後は鉱業依存からの脱却と事業多角化を進め、1989年に社名を古河鉱業から古河機械金属へ変更した。
現在の古河機械金属は、祖業である銅製錬の比重を大きく下げ、土木・鉱山用機械を中心とした機械事業を主力とする企業へと変貌している。特に削岩機やトンネルドリルジャンボなどの開発機械分野では国内トップメーカーであり、削岩機においては国内シェア約90%という圧倒的な地位を築いている。トンネル工事、鉱山開発、インフラ整備といった分野に不可欠な機械を供給しており、公共投資や資源開発動向の影響を受けやすい一方で、高い専門性と実績による安定した需要を持つ。
また、車両搭載型クレーンであるユニック製品は、建設現場や物流現場で広く使用されており、同社の機械事業の中でも収益性とブランド力の高い分野となっている。産業機械分野では、スラリーポンプ、破砕機、粉砕機、汚泥処理装置、プラント機器などを手掛け、環境対策や資源循環関連の需要にも対応している。
金属事業では、海外から調達した鉱石を委託製錬し、電気銅、金、銀、硫酸などを販売しているが、かつての中核であった銅製錬事業は縮小傾向にあり、現在では市況影響を受けやすい補完的事業という位置付けになっている。一方で、副産物や資源リサイクルの分野では、鉱業由来の技術を活かした事業展開が続けられている。
電子化成品事業は、同社の中でも高付加価値分野として重要性が高まっている。高純度金属ヒ素は、ガリウムヒ素半導体の材料として不可欠な製品であり、古河機械金属は国内唯一の製造メーカーであると同時に、世界シェア約60%を有するトップメーカーでもある。このほか、ガリウムリン多結晶、窒化アルミセラミックス、光学部品、ノイズフィルター用部材、医療用関連製品など、半導体・電子部品分野を支える材料を幅広く展開しており、景気変動の大きい機械・金属事業を補完する成長ドライバーとなっている。
化成品分野では、酸化チタン、亜酸化銅、硫酸などを製造・販売しており、顔料、電子材料、工業薬品用途など多様な分野で使用されている。これらもまた、鉱業時代に培った副産物処理技術や化学処理技術を応用した事業である。
さらに、不動産事業も同社の特徴の一つである。メーカーでありながら、日本橋や大手町といった一等地に不動産を保有・活用し、コレド室町2の開発に参画するなど、安定収益源として不動産の賃貸・管理・開発を行っている。この不動産事業は、景気変動を受けやすい製造業収益を下支えする役割を果たしている。
古河機械金属は、日本の公害史に残る足尾銅山鉱毒事件の原因企業としても知られているが、現在ではその反省を踏まえ、環境保全技術の開発や自然再生事業に積極的に取り組んでいる。鉱業を源流とする企業として、環境対策、水処理、排ガス処理といった分野での技術力を社会に還元する姿勢を打ち出している。
総じて古河機械金属は、鉱業を起点とした長い歴史の中で、日本の産業構造の変化に対応しながら事業転換を進めてきた企業であり、現在は土木・鉱山用機械を主軸に、電子材料や化成品、不動産を組み合わせた多角的な事業構成を持つ。成長性と安定性の両立を図りつつ、インフラ、資源、先端電子材料といった社会基盤を支える役割を担う、実務色の強い老舗メーカーである。
古河機械金属 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 159,702 | 5,592 | 6,773 | 7,468 | 190.7 | 50 |
| 連22.3 | 199,097 | 7,734 | 8,996 | 6,477 | 165.9 | 50 |
| 連23.3 | 214,190 | 9,031 | 9,348 | 6,211 | 162.0 | 50 |
| 連24.3 | 188,255 | 8,524 | 10,384 | 16,097 | 429.3 | 55 |
| 連25.3 | 201,216 | 9,763 | 9,705 | 18,619 | 510.6 | 70 |
| 連26.3予 | 197,500 | 8,000 | 9,400 | 7,500 | 228.8 | 70 |
| 連27.3予 | 200,000 | 8,200 | 8,200 | 5,500 | 167.8 | 70 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 6,148 | -1,617 | -5,934 |
| 2024 | 10,492 | 1,915 | -8,446 |
| 2025 | 5 | 15,098 | -9,234 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.2% | 6.0% | 2.6% | – | – |
| 2024 | 4.5% | 12.3% | 6.1% | – | – |
| 2025 | 4.8% | 14.2% | 7.2% |
8.8倍(高値) 7.3倍(安値) |
1.11倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
古河機械金属について、2024年3月期から2026年3月期予想までの業績と指標を見ると、まず売上高は2024年が1,882億円、2025年が2,012億円、2026年予想が1,975億円と、横ばいから微減の水準で推移している。売上成長は大きくないが、極端な落ち込みもなく、事業規模自体は安定しているといえる。
営業利益は2024年が85億円、2025年が97億円、2026年予想が80億円であり、2025年にピークをつけた後、2026年はやや減益予想となっている。ただし営業利益率を見ると、2023年4.2%、2024年4.5%、2025年4.8%と年々改善しており、収益構造自体は着実に良くなっている。売上が大きく伸びない中でも利益率を引き上げている点は評価できる。
経常利益は2024年が103億円、2025年が97億円、2026年予想が94億円で、営業利益ほどの増減はなく、比較的安定している。一方で純利益は2024年160億円、2025年186億円と大きく伸びているが、2026年予想では75億円と大きく減少する見通しになっている。この点から、2024年から2025年にかけては一時的な要因による利益押し上げがあった可能性が高く、2026年は平常水準への回帰と見るのが妥当である。
資本効率を見ると、ROEは2023年6.0%、2024年12.3%、2025年14.2%と大きく改善しており、自己資本を使った利益創出力は明確に向上している。ROAも2023年2.6%、2024年6.1%、2025年7.2%と改善しており、資産全体の収益性も強まっている。重厚長大型の機械・素材系企業としては、2025年のROE14.2%、ROA7.2%は比較的高水準といえる。
バリュエーション面では、2025年実績PERが高値平均8.8倍、安値平均7.3倍と明確な1桁水準にあり、市場は成長企業というより安定収益企業として評価している。PBRも1.1倍とほぼ解散価値近辺で、過度な割高感はない。ROEが2桁に達していることを考えると、指標面だけを見る限り、株価は利益水準に対して控えめな評価にとどまっている。
総合すると、売上成長は限定的で、2026年は利益面で調整が入る予想であるため、高成長株としての投資対象ではない。一方で、営業利益率・ROE・ROAはいずれも改善基調にあり、2025年時点の収益性とPER7〜8倍、PBR1.1倍という評価水準を踏まえると、業績悪化を前提としない限り下値リスクは相対的に小さい。上記数値だけで判断するなら、景気循環の影響を受けつつも、利益体質が改善した段階で割安に放置されている「中立からやや買い寄り」の銘柄と位置付けられる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは2026年3月期が1.56%、2027年3月期も1.56%と、2年連続で同水準となっている。この利回り水準は、日本株全体の中でも低めであり、高配当を目的とした投資対象としては物足りない数字である。一般的に配当目的で選ばれる銘柄は利回り3%前後、場合によっては4%以上が期待されることが多く、それと比べるとインカム収入の魅力は限定的である。
一方、2025年時点の業績を見ると、純利益は186億円、一株益は510円と高水準で、ROE14.2%、ROA7.2%と収益性も大きく改善している。それにもかかわらず配当利回りが1.5%台にとどまっている点から、会社は利益成長を株主還元に直接回すよりも、内部留保や事業の安定性を重視している姿勢がうかがえる。
さらに、2026年3月期予想では純利益が75億円と大きく減少する見通しとなっており、利益の振れ幅が大きい事業構造であることも無視できない。このような状況では、高い配当性向を継続するよりも、無理のない水準で配当を維持する方針を取るのは合理的といえる。その結果として、配当利回りは低めで安定した水準に抑えられていると考えられる。
PERは7倍から8倍台、PBRは1.1倍と株価指標面では割安感があるが、これは配当利回りの高さによる評価ではなく、成長期待が限定的であることを反映したバリュエーションと見るのが自然である。したがって、この割安さはインカム狙いというより、業績や評価の見直しによる株価変動を狙う投資に向いている。
以上を踏まえると、古河機械金属は配当を主目的とする投資にはあまり適していない。配当はあくまで補助的な要素と割り切り、業績改善や割安評価の修正を期待する投資であれば検討余地はあるが、安定した配当収入を重視する場合は、より利回りの高い銘柄を選ぶ方が合理的である。
今後の値動き予想!!(5年間)
古河機械金属の現在値4,480.0円を基準に今後5年間の値動きを考えると、同社は旧古河財閥の源流企業として長い歴史を持ち、現在は土木・鉱山用機械を主力に、電子材料、化成品、不動産を組み合わせた事業構成を持つ企業である。売上成長は大きくないものの、近年は営業利益率やROE、ROAが改善しており、収益体質は着実に良くなっている。一方で、事業はインフラ投資や資源・景気動向の影響を受けやすく、成長株というよりは循環色のあるバリュー株的性格が強い銘柄といえる。
良い場合は、国内外のインフラ投資が堅調に推移し、トンネル工事や鉱山関連向けの機械需要が底堅く推移するケースである。加えて、ユニック事業の安定収益に加え、高純度ヒ素など電子材料分野が半導体関連需要を背景に安定成長し、利益の下支えとなる状況が想定される。この場合、営業利益率は5%台前半から中盤で定着し、ROEも10%超を安定的に維持する。市場からは「収益性が改善した安定企業」として評価され、PERは現在の7〜8倍水準から10倍前後まで見直される可能性がある。こうした評価修正が進めば、5年後の株価は6,000円〜7,500円程度まで上昇する展開が想定される。インフラ投資拡大や電子材料の評価が想定以上に高まれば、8,000円近辺まで上振れする可能性もある。
中間の場合は、インフラ需要や機械需要が大きく崩れることもなく、かといって力強い成長にも至らないケースである。売上は横ばいから微増、営業利益は安定して推移し、営業利益率は4%台後半から5%前後で推移する。ROEは8〜10%程度に落ち着き、収益性は改善した状態を維持するものの、成長期待は限定的となる。この場合、PERは8倍前後、PBRは1倍前後で推移し、株価は業績に沿って緩やかに動く展開となる。5年後の株価水準は4,500円〜5,500円程度で、現在値からは小幅な上昇か横ばい圏での推移をイメージするのが妥当である。
悪い場合は、国内外の景気後退や公共投資の抑制により、土木・鉱山用機械の需要が減少するケースである。加えて、資源価格やエネルギーコストの上昇が利益を圧迫し、営業利益率が再び4%を下回る水準まで低下する可能性がある。ROEやROAも低下し、収益性改善の流れが一服することで、市場からの評価も慎重になる。この場合、PERは6倍前後まで低下し、PBRも1倍を割り込む局面が想定される。株価は3,000円〜4,000円のレンジで低迷し、景気悪化が長引けば一時的に2,800円近辺まで下押しされるリスクも考えられる。
総合すると、古河機械金属は高成長を期待する銘柄ではないが、収益性改善が進んだ段階でPER1桁、PBR1倍前後に放置されやすいバリュー色の強い銘柄である。5年間では中間シナリオを基本としつつ、インフラ投資や電子材料分野の評価次第で6,000円超への上振れ余地もある一方、景気循環の影響を受けて3,000円台までの下押しリスクも併せ持つ。安定配当や急成長を狙うより、業績と評価のズレを見ながら腰を据えて向き合うタイプの銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2026年1月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す