株価
ナブテスコとは

ナブテスコは、日本を代表する精密機械メーカーであり、産業ロボット、航空機、鉄道、建築設備といった分野で世界トップクラスのシェアを持つ製品を数多く抱えている企業である。特に産業ロボット用精密減速機では世界市場の約6割を占める圧倒的なシェアを持ち、この分野における事実上のデファクトスタンダードとなっている点が最大の特徴である。
同社は2003年に、ナブコと帝人製機の経営統合によって純粋持株会社として設立され、2004年に両社を吸収合併して事業持株会社へ移行した。両社がそれぞれ培ってきた精密制御、油圧、空圧、機械加工といった技術を統合することで、現在の多角的な事業ポートフォリオが形成されている。
事業の中核をなす精密機器事業では、産業用ロボットや工作機械向けの精密減速機を展開している。ロボットの関節部に使用される減速機は高精度・高耐久が要求され、参入障壁が極めて高い分野であるが、ナブテスコは長年の技術蓄積と量産実績を背景に、世界市場で約60%という圧倒的シェアを確立している。自動化・省人化の進展に伴い、中長期的な成長分野と位置づけられている。
輸送用機器事業では、鉄道車両用ブレーキシステムやドア装置、商用車向けエアーブレーキ、大型船舶エンジン制御システムなどを手がけている。鉄道分野では、新幹線や在来線、地下鉄など幅広い車両にブレーキ装置や戸閉装置が採用されており、国内ではブレーキ装置で約50%、ドア開閉装置で約70%という高いシェアを持つ。特に新幹線用戸閉装置では、高度な安全性が求められることから、過去の資料では国内シェア100%という実績を誇っている。
航空・油圧機器事業では、航空機の操縦系統を担うフライト・コントロール・アクチュエーターをはじめ、建設機械向けの油圧走行モーターなどを展開している。航空機の姿勢制御という極めて高い信頼性が求められる分野で、世界有数のメーカーとして位置づけられており、長期にわたる安定した受注が見込まれる事業である。建設機械向けでは、油圧ショベルの走行ユニットで世界シェア約25%を占めるなど、こちらも強い競争力を持つ。
産業用機器事業では、建物用自動ドアやプラットホームドア、セキュリティゲートなどを展開している。自動ドア分野では、NABCOブランドとして広く知られ、国内市場で約50%のシェアを持つほか、海外でもトップクラスの地位を築いている。駅や商業施設、公共施設など社会インフラに深く根付いた事業であり、景気変動の影響を受けにくい安定収益源となっている。
このほか、空気圧縮機や除湿装置、滑走防止装置、ホームドア、可動式ステップ、福祉機器など、多様な製品群を展開しており、安全性・信頼性を重視するニッチ分野を数多く押さえている点も特徴である。
全体としてナブテスコは、産業ロボット向け精密減速機という成長分野と、鉄道・航空・自動ドアといった社会インフラ分野を併せ持つ、非常にバランスの取れた事業構造を持つ企業である。短期的には設備投資やロボット需要の影響を受けるものの、世界シェアの高さと参入障壁の高さを背景に、中長期では安定性と成長性を兼ね備えた機械メーカーといえる。
ナブテスコ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 税前利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 22.12 | 308,691 | 18,097 | 15,763 | 9,464 | 78.9 | 78 |
| 23.12 | 333,631 | 17,376 | 25,629 | 14,554 | 121.3 | 80 |
| 24.12 | 323,384 | 14,788 | 15,747 | 10,119 | 84.3 | 80 |
| 25.12予 | 301,000 | 20,800 | 20,800 | 14,900 | 127.1 | 80 |
| 26.12予 | 310,000 | 31,000 | 31,000 | 22,200 | 189.3 | 80〜84 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 7,717 | 13,231 | -13,456 |
| 2023年 | 11,177 | -46,295 | -13,482 |
| 2024年 | 26,650 | -28,733 | -4,137 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 5.2% | 5.5% | 3.4% | – | – |
| 2024年 | 4.5% | 3.7% | 2.2% |
高値平均 38.3倍 安値平均 26.8倍 |
1.85倍 |
| 2025年予 | 6.9% | 5.5% | 3.3% | 33.42倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の水準を見ると、売上規模は3000億円前後で安定しており、日本の機械メーカーとしては十分に大きな企業である。一方で利益面を見ると、営業利益率は2023年が5.2%、2024年が4.5%と低下し、2025年予想で6.9%へ回復する見込みではあるが、全体としては高収益企業とは言いにくい水準にとどまっている。製造業としては悪くはないが、突出した収益力があるとは言えない。
ROEとROAを見ると、この傾向はさらに明確になる。ROEは2023年で5.5%、2024年で3.7%、2025年予想で5.5%と、資本効率はかなり低い。ROAも3%前後で推移しており、会社が持つ資産や自己資本を使って大きく利益を生み出している構造ではない。事業の安定性は高いが、資本効率という点では明確に弱い企業である。
利益の推移を見ると、2023年から2024年にかけて営業利益、純利益ともに減少しており、2024年はやや厳しい年だったことが分かる。2025年予想では営業利益208億、純利益149億と回復が見込まれており、2026年予想ではさらに大きな増益が示されている。ただし、これらはあくまで予想であり、過去数年の実績を見る限り、安定はしているが高成長が続くタイプではないことも事実である。
ここで問題になるのがバリュエーションである。2024年の実績PERは高値平均で38.3倍、安値平均でも26.8倍と非常に高い。2025年予想PERも33.4倍と、利益回復を織り込んだとしてもかなりの高評価が付いている。ROEが5%台の企業に対して、このPER水準は明らかに割高感が強い。PBRも1.8倍で、ROEとのバランスを考えると妥当とは言いにくい。
配当については、利益水準に対して80円前後と比較的安定しており、配当性向は高めである。これは経営として株主還元を重視している姿勢の表れとも言えるが、株価水準とPERが高いため、配当利回りが投資判断を大きく支える存在にはなっていない。高配当株として評価するのは難しい。
これらを総合すると、ナブテスコは事業基盤が強く、世界シェアの高い製品を持つ安定企業である一方、数字だけを見る限りでは収益性と資本効率が低く、その割に市場評価が非常に高い状態にある。成長株として見るにはROEと利益率が物足りず、バリュー株として見るにはPERが高すぎる。
結論として、この数値だけで判断するなら、ナブテスコは守りは強いが攻めのリターンは期待しにくい銘柄であり、現在の評価水準では新規で積極的に買う理由は乏しい。長期で安定企業として保有する選択肢はあるものの、投資妙味という観点では慎重姿勢が妥当、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
まず、予想配当利回りが2025年、2026年ともに1.89%という点から見ると、配当目的としての魅力は高くない。一般的に配当狙いで株を選ぶ場合、3%前後は最低限ほしい水準であり、それと比べるとこの利回りは明らかに低い。インカムを重視する投資家にとっては、最初の時点で候補から外れやすい水準と言える。
一方で、配当の安定性という面では評価できる。利益は年によって上下しているが、配当は80円前後でほぼ横ばいを維持しており、会社として減配を極力避ける姿勢がうかがえる。業績が一時的に悪化しても配当を大きく削らない方針は、長期保有を考える投資家にとっては安心材料ではある。
ただし、その安定性の裏側として、配当性向は高めになりやすい。ROEが5%前後と低く、利益成長力が強い企業ではないため、配当を大きく増やす余地は限られている。今後も配当が大幅に増配され、利回りが魅力的な水準まで上がる可能性は低いと見るのが自然である。
また、株価水準との関係も配当目的には不利である。PERは30倍前後と高く、PBRも1.8倍程度と割高感があるため、配当利回りが低い状態のまま株価が維持されている。もし業績が伸び悩み、評価が切り下がる局面に入れば、配当があっても株価下落を補う効果は小さい。
総合すると、ナブテスコは配当が安定している点は評価できるものの、利回りは低く、配当目的で積極的に選ぶ銘柄ではない。配当はあくまで付加的な要素であり、主な投資理由は事業の安定性や長期での安心感に置くべき銘柄である。インカム重視の投資であれば、他により適した選択肢がある、という結論になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ナブテスコの現在値は4,218円である。この水準を起点に今後5年間の値動きを考えると、同社の株価は景気循環や設備投資動向の影響を受けつつも、野村マイクロ・サイエンスのような強い業績サイクル型というより、事業ポートフォリオの分散による「緩やかな循環型」で推移しやすい特徴を持つ。産業用ロボット向け精密減速機、自動ドア、鉄道用ブレーキ・ドア装置、航空機部品といった複数分野を抱えており、特定分野の不調が即座に全社業績を直撃しにくい一方、急激な業績拡大も起こりにくい構造である。
良い場合は、世界的な自動化投資の再加速により産業用ロボット需要が拡大し、精密減速機事業が再び成長エンジンとして機能するシナリオである。加えて、鉄道更新需要や自動ドア、航空機関連の回復が重なれば、全体として利益率がじわじわ改善する可能性がある。この場合、営業利益率は6〜7%台へ定着し、ROEも6%前後まで回復する。成長期待が高まれば市場評価も切り上がり、PERは現在の30倍前後を維持、あるいは30倍台後半まで許容される余地がある。これが続けば、5年後の株価は6,000円〜7,000円程度まで上昇する展開も考えられる。配当は高くないが、株価上昇によるトータルリターンが主な投資成果となる。
中間のケースは、ロボット・インフラ関連需要が底堅く推移するものの、目立った成長ドライバーは現れず、業績が安定横ばいに近い動きを続けるシナリオである。営業利益率は5%前後、ROEは5%台で推移し、利益は緩やかな増減にとどまる。市場評価は次第に落ち着き、PERは20倍前後まで低下する可能性がある。この場合、5年後の株価は3,800円〜4,800円前後のレンジでの推移が想定され、現在値4,218円はこの中間シナリオのほぼ中心に位置する水準といえる。大きな値上がりは期待しにくいが、事業の安定性を前提とした長期保有向きの値動きとなる。
悪い場合は、世界景気の後退や設備投資の縮小により、ロボット向け減速機の需要が想定以上に落ち込み、鉄道・航空関連も回復が遅れるシナリオである。この場合、利益率は再び4%台へ低下し、ROEも4%を下回る水準に落ち込む可能性がある。成長期待が剥落すれば市場評価は厳しくなり、PERは15倍〜18倍程度まで切り下げられることも考えられる。この水準が続けば、5年後の株価は2,800円〜3,500円程度まで下押しされるリスクがある。配当は維持される可能性が高いが、利回りは株価下落を補うほどの防波堤にはなりにくい。
総合すると、ナブテスコは高成長で大きく跳ねる銘柄というより、世界シェアの高い製品群を背景に安定性を重視した企業である。現在値4,218円は、成長期待を一定程度織り込んだ水準であり、良いシナリオでは着実な上値余地がある一方、悪化シナリオでは評価修正による下振れも想定される。今後5年間の投資成否は、ロボット需要の回復度合いと市場が許容する評価水準の変化をどう見極めるかに左右される株といえる。
この記事の最終更新日:2026年1月17日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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