株価
荏原実業とは

荏原実業株式会社は、ポンプや空調機器などの機器卸を祖業としながら、水処理施設の設計・施工、さらには環境関連機器のメーカー機能まで事業領域を広げてきた、環境分野に特化した機械・エンジニアリング企業である。本社は東京都中央区銀座にあり、東京証券取引所プライム市場に上場している。創業以来、荏原製作所とは有力な取引関係を持つものの、現在は資本関係は希薄で、独立した事業運営を行っている。
同社の事業は大きく、メーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業の3領域に分かれる。共通する軸は「水」と「空気」であり、生活環境の向上と環境負荷低減をテーマに事業を展開している点が特徴である。
メーカー事業は、研究開発に特化したファブレスモデルが特徴である。自社工場は持たず、中央研究所や環境計測技術センターなど複数の研究拠点で製品開発を行い、実際の製造は約70社の協力会社に委託している。オゾン濃度計やオゾン発生器、脱臭装置、水処理関連機器、計測・分析機器、水産・栽培漁業関連装置などを手掛けており、水処理、脱臭、省エネ、環境計測といった分野で独自性の高い製品を提供している。市場ニーズを先取りした商品企画力が強みで、研究開発型メーカーとしての色合いが濃い。
エンジニアリング事業は、上下水道や産業排水処理施設などの公共水インフラ設備を中心とした設計・施工・保守を担う事業である。1956年にスタートし、全国の自治体向けに上下水道施設、水処理施設、清掃施設、農業・漁業集落排水処理施設などを数多く手掛けてきた。社員の多くが公的技術資格を有しており、提案、設計、施工、メンテナンスまで一貫して対応できる体制を持つ。インフラ更新需要や老朽化対策、環境規制対応といった長期テーマに支えられ、比較的安定した需要が見込める分野である。
商社事業は、荏原製作所グループ製品を中心としたポンプ、送風機、圧縮機、冷熱・空調機器などの代理店業務を担う。建築、化学、石油、鉄鋼、食品など幅広い産業分野向けに、給排水設備や空調設備の販売・施工を行っており、戦後の復興期から続く同社の基盤事業である。長年の取引実績と技術知見を活かし、安定的な収益源として機能している。
地域展開としては、本社・東京支社を銀座の自社ビルに構え、北海道から九州まで全国各地に事業所を配置している。連結子会社としては、関連業務を担う株式会社エバジツを有する。
総じて荏原実業は、単なる機器商社ではなく、研究開発型の環境メーカー機能と、水インフラを支えるエンジニアリング機能を併せ持つ点が最大の特徴である。景気変動の影響を受けやすい商社的側面と、公共インフラ更新に支えられた安定性の高い事業を併存させた構造を持ち、「水」と「空気」という社会インフラに不可欠な分野で、堅実かつ持続的な事業展開を行っている企業と位置付けられる。
荏原実業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 30,229 | 2,756 | 2,929 | 2,169 | 177.2 | 85 |
| 連23.12 | 36,280 | 4,025 | 4,164 | 3,141 | 263.1 | 85 |
| 連24.12 | 37,503 | 4,251 | 4,443 | 3,157 | 264.2 | 95 |
| 連25.12予 | 40,000 | 5,100 | 5,250 | 3,650 | 303.4 | 120〜125 |
| 連26.12予 | 44,000 | 5,500 | 5,600 | 3,950 | 328.3 | 120〜140 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022 | 1,615 | 9 | -1,614 |
| 2023 | 4,712 | -143 | -1,680 |
| 2024 | 1,968 | -187 | -1,566 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 11.0 | 14.9 | 7.4 | — | — |
| 2024 | 11.3 | 13.4 | 7.3 | 高値平均15.2 / 安値平均10.3 | 2.09 |
| 2025 | 12.7 | 15.5 | 8.4 | 16.33(予) | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見る。連23.12の営業利益は40億、経常利益41億、純利益31億である。連24.12は営業利益42億、経常利益44億、純利益31億と小幅ながら増益基調が続いている。連25.12予では営業利益51億、経常利益52億、純利益36億と増益が加速し、連26.12予では営業利益55億、経常利益56億、純利益39億と、さらに一段の成長が見込まれている。売上規模に対して利益が着実に積み上がっており、利益の絶対額は安定的に拡大している。
次に収益性を見る。営業利益率は2023年11.0%、2024年11.3%、2025年12.7%と着実に改善している。二桁前半ではあるが、インフラ・環境関連企業としては堅実な水準であり、利益率の改善トレンドは評価できる。ROEは14.9%から13.4%、15.5%と推移しており、多少の上下はあるものの15%前後を確保できている。ROAも7.4%、7.3%、8.4%と緩やかに改善しており、資産効率は安定的である。高収益企業ではないが、事業の性質を踏まえると十分に健全な収益力といえる。
バリュエーションを見ると、2024年の実績PERは高値平均15.2倍、安値平均10.3倍で、PBRは2.09倍である。2025年予想PERは16.3倍とやや上昇する見込みだが、利益成長を前提とすれば過度に割高な水準ではない。PBR2倍前後はROE15%前後という数値と整合的であり、市場からは「安定成長の優良中型株」として妥当な評価を受けている状態といえる。
以上の数値だけで総合判断すると、荏原実業は急成長株ではないものの、売上・利益ともに着実な拡大が続き、営業利益率、ROE、ROAが緩やかに改善している点が強みである。一方で、PER16倍前後、PBR2倍超という水準は、すでに安定成長と堅実性を織り込んだ評価であり、明確な割安感がある局面ではない。
投資判断としては、短期的な大幅上昇を狙う銘柄というより、業績の安定性と緩やかな成長を前提に中長期で保有するタイプの企業であり、株価が市場全体の調整などでPER10倍台前半まで下がる局面があれば、堅実な投資対象として魅力が高まる、という位置付けになる。
配当目的とかどうなの?
まず数字を見ると、連25.12、連26.12ともに予想配当利回りは2.60%となっている。この水準は日本株全体の中では中位クラスであり、高配当株と呼べるほどではないが、低配当とも言えない現実的な水準である。インフラ・環境関連という事業特性を踏まえると、無理のない範囲で配当を出している印象が強い。
業績面を見ると、営業利益、経常利益、純利益はいずれも拡大基調にあり、営業利益率も11%台から12%台へと改善している。ROEは15%前後、ROAも8%台まで上昇しており、収益力と資本効率は安定している。こうした数字からは、配当の原資となる利益は十分に確保できており、配当の持続性という点では不安は小さい。
一方で、PERは15〜16倍前後、PBRは2倍超と、株価はすでに「堅実成長・安定企業」として一定の評価を受けている。利回り2.6%は株価上昇による含み益を前提にすれば悪くないが、配当そのものを主目的にする場合、もう一段高い利回りを求める投資家にとってはやや物足りない水準でもある。
以上を踏まえると、荏原実業は純粋な高配当株ではなく、配当を重視しつつも業績の安定性と緩やかな成長を同時に取りに行く「中配当・安定型」の銘柄と位置付けるのが妥当である。配当目的での投資は十分に成立するが、配当利回りだけで飛びつく銘柄ではなく、株価が調整して利回りが3%近くまで上がる局面であれば、より魅力が増すタイプの株だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
荏原実業株式会社の現在値2,305.0円を基準に、今後5年間の株価の値動きを考える。荏原実業は水処理・環境関連設備を軸としたエンジニアリング企業であり、上下水道や産業排水といった公共性の高い分野を主戦場としている。商社機能、メーカー機能、エンジニアリング機能を併せ持つ点が特徴で、景気変動の影響を受けにくい一方、急成長よりも堅実成長が基本となる企業である。近年は利益率の改善と増配が進んでおり、株価は「安定成長+中配当」という評価軸で動きやすい。
良い場合は、上下水道の老朽化更新や環境規制対応が想定以上に進み、公共インフラ投資が中長期で拡大するシナリオである。加えて、環境計測、脱臭、水処理関連のメーカー事業が堅調に伸び、エンジニアリング事業の採算も改善する。営業利益率は12%台後半から13%台へ上昇し、ROEは15%前後、ROAも8%台後半を維持できる。この場合、市場からは安定成長の優良インフラ株として評価され、PERは17倍前後まで許容されやすくなる。業績の積み上がりと評価の切り上がりが重なれば、5年後の株価は3,200円〜3,800円程度まで上昇する可能性がある。配当利回りも2.5%前後を維持でき、値上がり益とインカムの両立が期待できる展開となる。
中間のケースは、公共投資や環境関連需要は安定的に推移するものの、大きな成長はなく、売上・利益ともに緩やかな増加にとどまるシナリオである。営業利益率は11%台後半から12%台前半、ROEは14%前後で安定し、事業の堅実さは維持される。この場合、市場評価は落ち着き、PERは14倍〜16倍程度に収れんしやすい。株価は2,100円〜2,800円程度のレンジで推移し、5年後は2,600円〜3,000円前後に収まる可能性が高い。大きな値上がりは期待しにくいが、配当を受け取りながら安定的に保有する投資には適した展開である。
悪い場合は、公共投資の抑制や価格競争の激化により、エンジニアリング案件の採算が悪化するシナリオである。利益率の改善が止まり、営業利益率は10%台前半まで低下、ROEも12%前後に下がる可能性がある。この場合、市場の評価は慎重となり、PERは10倍〜12倍程度まで切り下げられる。配当は維持される可能性が高いものの、成長期待は後退し、5年後の株価は1,600円〜1,900円程度まで下落するリスクがある。下値は比較的限定的だが、長期間の低迷も想定される。
総合すると、荏原実業の株価は急騰を狙うタイプではなく、公共インフラと環境投資を背景にした安定成長と中配当をどう評価するかで決まる。現在値2,305円は、堅実成長と配当利回り2%台後半をある程度織り込んだ水準であり、割安とは言い切れないが割高感も強くない。今後5年間は、環境・インフラ投資の持続性と利益率改善が続くかどうかが株価推移の鍵となり、基本的には中間シナリオを軸に、上振れ・下振れを許容できる投資家向けの銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2026年1月19日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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