株価
日機装とは

日機装は、産業用特殊ポンプ、血液透析装置、航空機用部品を主力とする日本の大手工業メーカーであり、流体を「送る」「制御する」技術と、炭素繊維強化複合材(CFRP)加工技術を中核に事業を展開している。本社は東京都渋谷区恵比寿に置き、エネルギー、産業、航空宇宙、医療といった社会インフラ性の高い分野を事業領域としている点が特徴である。
インダストリアル分野では、産業用特殊ポンプのリーディングカンパニーとして、高圧・無漏洩・極低温といった過酷な条件下で使用されるポンプや流体制御システムを手掛けている。天然ガスの開発・採掘からLNG輸送、受入基地、石油精製、化学プラント、医薬品・食品製造まで幅広い工程で採用されており、特にLNG関連の極低温ポンプでは世界的に高い評価を受けている。また、発電所向けの水質調整装置など、電力インフラを支える設備も提供しており、エネルギー投資動向に業績が左右されやすい一方で、技術参入障壁の高い分野を主戦場としている。
精密機器分野では、粉粒体測定装置やセラミック基板製造プロセス用装置、水や空気の浄化システムなどを展開している。スマートフォンや半導体、電子デバイス関連の製造工程で使われる装置も含まれており、電子部品産業の設備投資動向の影響を受ける事業である。産業インフラから先端デバイス製造まで対応できる点は、日機装の技術領域の広さを示している。
航空宇宙分野では、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた航空機部品を手掛けている。1983年に世界初となるCFRP製カスケードの開発に成功して以降、技術・品質・納期対応力が評価され、同分野では世界シェア90%以上を誇る製品を持つ。現在もジェットエンジン周辺部品などを中心に事業を展開しており、航空機生産台数や航空需要の回復局面では業績への寄与が大きくなる一方、景気循環性の強い事業特性を持つ。
メディカル分野は日機装を特徴付ける重要な事業であり、血液透析装置では国内シェア約70%と首位に位置している。ダイアライザー、透析用血液回路、透析用剤など関連消耗品も幅広く手掛けており、装置販売後も継続的な収益が見込めるビジネスモデルを構築している。海外市場でもトップクラスのポジションを持ち、人工腎臓に加えて人工膵臓や腹膜透析関連製品、周術期・救急分野、外科領域へと事業領域を拡大している。腎不全や糖尿病患者の生命を支える社会的意義の高い事業であり、他事業と比べると需要の安定性が高い。
全体として日機装は、産業用特殊ポンプというニッチだが不可欠な分野、航空機向けCFRP部品という高付加価値分野、そして血液透析を中心とする医療インフラ分野を併せ持つ企業である。事業ごとに景気感応度は異なるものの、エネルギー・産業・航空・医療と分散された事業構成により、単一分野への依存を抑えたポートフォリオを形成している点が特徴といえる。
日機装 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
税前利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇22.12 | 177,109 | 34,222 | 32,682 | 13,639 | 195.2 | 25 |
| ◇23.12 | 192,629 | 5,885 | 11,626 | 9,071 | 137.1 | 27.5 |
| ◇24.12 | 213,379 | 6,398 | 10,010 | 7,957 | 120.2 | 30 |
| ◇25.12予 | 230,500 | 14,000 | 14,100 | 10,800 | 163.0 | 36 |
| ◇26.12予 | 248,000 | 16,000 | 16,700 | 12,800 | 193.2 | 36〜40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 8,384 | 76,762 | -68,683 |
| 2023年 | 14,245 | -9,225 | -14,551 |
| 2024年 | -6,568 | -4,985 | 13,358 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 3.0% | 3.0% | 7.2% | – | – |
| 2024年 | 2.9% | 2.4% | 5.6% | 5.7~8.1倍 | 0.81倍 |
| 2025年 | 6.0% | 3.3% | 7.7% | 11.69倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見る。2023年12月期は営業利益58億、経常利益116億、純利益90億となっている。2024年12月期は営業利益63億、経常利益100億、純利益79億で、売上は伸びているものの、経常利益と純利益は前年を下回っている。利益率の低さがそのまま数字に表れており、規模の割に稼げていない状態が続いていたことが分かる。
一方、2025年12月期予想では営業利益140億、経常利益141億、純利益108億と大幅な回復が見込まれており、2026年12月期予想では営業利益160億、経常利益167億、純利益128億と増益基調が続く前提になっている。2025年以降は明確に利益構造が変わる想定が置かれている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年3.0%、2024年2.9%と非常に低い水準にとどまっていたが、2025年は6.0%まで改善する想定となっている。過去2年は利益が出にくい体質だったことが明確で、改善幅の大きさは評価できる一方、計画の実現度合いが強く問われる数字でもある。ROEは7.2%から5.6%に低下した後、2025年は7.7%まで回復する見通しで、資本効率は改善方向だが、なお高水準とは言い切れない。ROAも3.0%、2.4%、3.3%と推移しており、総資産に対する収益性は低めで推移している。
株価指標を見ると、2024年実績のPERは高値平均8.1倍、安値平均5.7倍、PBRは0.8倍とかなり低い水準で評価されていた。これは業績の低迷と利益の不安定さが強く意識されていた局面といえる。一方で2025年予想PERは11.6倍まで上昇しており、株価はすでに業績回復をある程度織り込み始めている状態にある。利益回復が計画通りに進めば割高とは言えないが、未達になれば評価が再び下がりやすい水準でもある。
以上を踏まえると、日機装は2023年から2024年にかけては低収益・低評価の局面にあったが、2025年以降は利益水準と利益率の回復を前提とした転換期にある銘柄といえる。安定して高収益を上げる企業というより、事業構造の立て直しがどこまで実を結ぶかを見極める段階にあり、投資判断は「回復が数字として定着するかどうか」に大きく左右される。現時点では、回復シナリオが実現すれば評価は妥当、未達であれば再び低評価に戻りやすい、振れ幅の大きい局面にあると考えられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると、日機装は積極的に狙うタイプの銘柄とは言いにくい。年25.12、26.12ともに予想配当利回りは1.97%と、製造業全体で見ても低めの水準にある。高配当株と呼ばれる4〜5%台はもちろん、安定配当株とされやすい3%前後にも届いていない。数字だけを見る限り、インカムゲインを主目的に保有する銘柄ではないことは明確である。
配当水準の背景を業績とあわせて見ると、2023年から2024年にかけては利益率が低く、収益力が弱い状態が続いていた。その中でも配当は緩やかに引き上げられており、会社としては一定の株主還元意識を持っていることはうかがえる。ただし、2025年以降は利益回復を前提とした局面にあるものの、配当利回り自体は2%弱にとどまっており、利益回復分を大きく配当に振り向ける方針ではないと読み取れる。
ROEは2025年予想で7.7%と、資本効率が高いとは言えず、内部留保を厚くしながら事業立て直しや成長投資を優先している段階にあると考えられる。そのため、今後も急激な増配が続くというよりは、業績を見ながら慎重に配当を積み上げていく姿勢が基本になる可能性が高い。
以上を踏まえると、日機装は配当目的で「持って安心」「利回りを取りに行く」銘柄ではない。投資スタンスとしては、配当はあくまで補助的な位置付けであり、主眼は2025年以降の利益回復が本物かどうか、事業構造の改善が定着するかを見極めたうえでのキャピタルゲイン寄りになる。配当重視の投資家にとっては優先度は低く、業績回復局面を取りに行く投資家向けの性格が強い銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日機装の現在値1,826.0円を基準に、今後5年間の株価の値動きを考える。同社は産業用特殊ポンプ、血液透析装置、航空機用CFRP部品を主力とする工業メーカーであり、エネルギー・産業・医療・航空宇宙といった社会インフラ性の高い分野を事業領域としている。
特に産業用特殊ポンプでは高圧・無漏洩・極低温といった厳しい条件下での用途に強みを持ち、医療分野では血液透析装置で国内首位、海外でもトップクラスの地位を確立している。一方で、インダストリアル事業や航空宇宙事業は設備投資や景気循環の影響を受けやすく、年度ごとに利益の振れが出やすい性格を持つ。
直近の業績を見ると、売上は拡大傾向にあるものの、2023年から2024年にかけては営業利益率が3%前後と低水準にとどまり、ROE・ROAも伸び悩んでいた。株価も低PER・低PBRで推移しており、高成長期待というよりは、業績低迷を織り込んだ慎重な評価局面にあった。一方で、2025年以降は営業利益率の改善と大幅な増益が計画されており、株価は「回復局面入り」をどう評価するかの分岐点にある。
良い場合は、エネルギー関連投資やLNG分野での需要回復を背景に、産業用特殊ポンプの受注が想定以上に積み上がるシナリオである。加えて、血液透析装置を中心とするメディカル事業が安定的に利益を積み上げ、航空宇宙分野でも民間航空機需要の回復が寄与する。この場合、営業利益率は6%台が定着し、ROEも8%前後まで改善する。市場からは「業績回復が定着したインフラ・医療複合企業」として評価されやすくなり、PERは12〜15倍程度まで許容される可能性がある。このシナリオでは、5年後の株価は2,800円〜3,500円程度まで切り上がる展開が想定される。配当利回りは高くないものの、キャピタルゲインが主なリターンとなる。
中間のケースは、メディカル事業が安定的に下支えする一方で、産業用・航空宇宙向けは回復と停滞を繰り返し、全体としては緩やかな改善にとどまるシナリオである。営業利益率は5%前後、ROEは6〜7%程度に落ち着き、業績は回復基調だが力強さには欠ける。市場評価も大きくは変わらず、PERは10倍前後、PBRは1倍弱で推移しやすい。この場合、株価は現在値を中心としたレンジ推移となり、5年後の水準は1,900円〜2,400円程度に収れんする可能性が高い。
悪い場合は、エネルギー・半導体関連の設備投資が想定以上に低迷し、産業用特殊ポンプや精密機器分野の受注が伸び悩むシナリオである。航空宇宙分野の回復も遅れ、利益改善が計画通り進まない。医療事業は一定の安定性を持つものの、全体の収益性を押し上げるには至らず、営業利益率は再び4%前後にとどまる。この場合、市場評価は慎重化し、PERは7〜8倍、PBRも0.7倍前後まで低下する可能性がある。5年後の株価は1,200円〜1,600円前後まで下振れする展開が想定される。
総合すると、日機装の株価は現在値1,826.0円において、安定高成長を前提とした評価ではなく、「業績回復が本物かどうか」を見極める段階にある水準といえる。今後5年間は、産業用特殊ポンプと航空宇宙の回復度合い、そしてメディカル事業がどこまで全体の収益安定に寄与できるかが最大の評価軸となり、回復が定着すれば上方向、未達であれば横ばいから下振れという値動きになりやすい銘柄と位置付けられる。
この記事の最終更新日:2026年1月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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