株価
ジャノメとは

ジャノメは、日本初の国産ミシンメーカーとして誕生した老舗企業であり、家庭用ミシン分野では国内シェア1位に位置する。現在の本社は東京都八王子市にあり、2021年に創業100周年を迎えたことを機に、社名を従来の「蛇の目ミシン工業株式会社」から「株式会社ジャノメ」へ変更している。日本ではブラザー工業、JUKIと並ぶ大手3大ミシンメーカーとして広く知られている。
社名の由来となった「蛇の目」は、同社が販売していたミシンの糸巻き形状が蛇の目紋に似ていたことからブランド名として採用されたものである。海外ではエルナやニューホームといったブランド名でもミシンを展開しており、家庭用ミシンメーカーとしての認知度は国内外で高い。生産は日本、タイ、台湾を中心に行われ、品質重視の体制を維持している。
事業の中核は家庭用ミシンであり、世界で初めて家庭用刺繍ミシンを開発・販売するなど、技術力を背景に高付加価値製品を展開してきた。訪問販売を中心とした独自の販売網を長年構築してきたことも特徴で、国内では安定したブランド力を持つ。一方で、女性の就業構造の変化やライフスタイルの変化により、家庭用ミシン市場そのものは成熟・縮小傾向にあり、同社は早くからミシン以外の分野への多角化を進めてきた。
かつては24時間風呂「湯名人」を第2の主力事業として育成し、一時はテレビCMなども積極的に展開したが、レジオネラ症問題をきっかけに事業環境が悪化し、現在は製造・販売を終了している。このほか、過去には白物家電や寝具など幅広い分野に進出した経緯があり、事業の試行錯誤を重ねてきた企業でもある。
現在の第2の柱となっているのが産業機器事業である。ミシンで培った精密制御技術やモーター制御技術を応用し、卓上ロボット、サーボプレス、スカラロボット、インプリンター、ダイカスト関連製品などを展開している。特に卓上ロボットは電子部品組立や製造現場の省人化ニーズを背景に導入が進んでおり、家庭用ミシンとは異なる法人向けの収益源として位置付けられている。ダイカスト事業も含め、産業機器分野は景気変動の影響を受けつつも、長期的には成長余地を持つ分野とされている。
同社は過去に仕手集団による株買い占め事件や巨額損失を経験し、1990年代から2000年代にかけて深刻な経営危機に直面した。その過程で本社ビルの売却や拠点再編を進め、現在は八王子市の工場敷地内に本社機能を集約するなど、固定費削減と財務体質の立て直しを図ってきた。こうした歴史から、同社の経営は保守的で慎重な色合いが強い。
全体としてジャノメは、家庭用ミシンという成熟市場で国内トップの地位を維持しつつ、産業機器分野を第2の収益基盤として育成している企業である。家庭用ミシン事業は安定的だが成長余地は限られ、今後の事業拡大は卓上ロボットやダイカストなど産業機器分野の伸びにどこまで依存できるかが重要なポイントとなる。長い歴史とブランド力を持つ一方で、事業構造転換の途上にある企業と位置付けられる。
ジャノメ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 43,839 | 4,931 | 5,032 | 3,945 | 204.1 | 25 |
| 連22.3 | 42,916 | 3,659 | 3,824 | 2,549 | 131.9 | 40 |
| 連23.3 | 38,571 | 2,120 | 2,400 | -393 | -20.3 | 25 |
| 連24.3 | 36,476 | 1,716 | 1,763 | 1,131 | 60.1 | 25 |
| 連25.3 | 36,340 | 2,224 | 2,261 | 1,794 | 98.9 | 40 |
| 連26.3予 | 35,000 | 1,300 | 1,200 | 200 | 11.2 | 55 |
| 連27.3予 | 36,000 | 1,400 | 1,300 | 800 | 44.8 | 55 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー (百万円) |
投資キャッシュフロー (百万円) |
財務キャッシュフロー (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 3,361 | -523 | -2,464 |
| 連24.3 | 2,068 | 230 | -2,432 |
| 連25.3 | 2,625 | -373 | -2,906 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER (高値平均/安値平均) |
PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.4% | -1.3% | -0.8% | – | – |
| 2024 | 4.7% | 3.3% | 2.2% | – | – |
| 2025 | 6.1% | 5.1% | 3.6% | 12.7倍/7.7倍 | 0.63倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見る。連24.3の売上高は364億円、営業利益17億円、経常利益17億円、純利益11億円である。連25.3では売上高363億円とほぼ横ばいで推移する一方、営業利益22億円、経常利益22億円、純利益17億円と利益面は改善している。連26.3予では売上高350億円、営業利益13億円、経常利益12億円、純利益2億円が見込まれており、売上・利益ともに減少する前提となっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年5.4%、2024年4.7%、2025年6.1%となっている。24年に一度低下した後、25年には再び改善しており、直近では売上規模が伸びない中でも利益率を引き上げようとする動きが数字に表れている。ただし、26.3期予想では利益額が大きく落ち込む前提であり、この水準が継続するかは不透明である。
資本効率の指標では、ROEが2023年-1.3%、2024年3.3%、2025年5.1%とマイナス圏からプラス圏へと改善している。ROAも2023年-0.8%、2024年2.2%、2025年3.6%と同様に改善傾向にある。赤字局面から脱し、資本・資産に対して一定の利益を生み出せる状態にはなっているが、水準そのものは高いとは言えない。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均12.7倍、安値平均7.7倍とされている。利益水準が安定しない中で、相場環境によって評価が大きく振れやすいレンジにあることが分かる。PBRは0.6倍であり、純資産に対しては低い評価水準にとどまっている。
以上を総合すると、ジャノメは売上規模が横ばいから緩やかな減少傾向にあり、利益は25.3期にかけて改善したものの、26.3期予想では再び縮小する前提となっている。営業利益率、ROE、ROAはいずれも改善しているが、水準は中低位で、安定成長企業と評価できる段階には至っていない。一方で、PBRは0.6倍と低く、資産価値面では慎重な評価が続いている。投資判断としては、割安感は見られるものの、利益の持続性が弱く、評価の見直しには安定した収益水準の定着が前提となる局面にあると整理できる。
配当目的とかどうなの?
まず配当利回りを見ると、連26.3および連27.3の予想配当利回りはいずれも4.47%とされている。国内株の中では比較的高めの水準であり、表面上はインカム狙いとして目を引く利回りである。
一方で、利益との関係を見る必要がある。連25.3の純利益は17億円であったが、連26.3予では純利益2億円まで大きく減少する前提となっている。一株益も98.9円から11.2円へ大きく低下する想定であり、配当55円は利益水準と比べると相対的に高い。数値上は、利益成長を背景とした配当というより、配当を優先して維持する設計に近い。
キャッシュフローを見ると、直近3年間はいずれも営業キャッシュフローがプラスで推移しており、配当の原資を全く欠いている状況ではない。ただし、営業CFは年によって変動があり、財務キャッシュフローは継続的な支出超過となっているため、余裕のある配当余力とは言い切れない。
また、ROEは2025年時点で5.1%、ROAは3.6%と、資本効率は改善しているものの高水準ではない。PBRは0.6倍と低く、株価は資産価値に対して慎重に評価されているが、その背景には利益水準の不安定さが反映されていると考えられる。
以上を踏まえると、ジャノメは「業績が安定して増配を続ける高配当株」というより、利益が振れやすい中で配当水準を維持しているタイプの銘柄と整理できる。4%台後半の利回りは魅力的だが、配当の持続性は利益の回復・安定が前提となる。配当目的で保有する場合は、利回りの高さだけでなく、今後の利益水準がどこで定着するかを継続的に確認する前提で向き合う銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ジャノメの現在値1,230.0円を基準に、今後5年間の株価の値動きを考える。同社は家庭用ミシンで国内首位の地位を持つ老舗メーカーであり、日本・タイ・台湾に生産拠点を持つ。一方で、家庭用ミシン市場は成熟・縮小傾向にあり、現在は卓上ロボットやサーボプレス、ダイカストなどの産業機器事業を第2の柱として育成している。事業構造は安定性と景気感応度が混在しており、成長株というよりは収益の振れやすい中堅製造業という性格が強い。
良い場合は、家庭用ミシン事業が国内外で底堅く推移し、価格競争の中でも利益率を維持できるシナリオである。これに加えて、卓上ロボットを中心とした産業機器事業が電子部品・製造業向けの省人化需要を取り込み、売上・利益ともに着実に拡大する。営業利益率は6%前後で定着し、ROEも5%台まで改善すれば、市場からは「安定収益+高配当」の製造業として再評価される。この場合、PBR0.6倍台という低評価が修正され、5年後の株価は1,800円〜2,200円程度まで上昇する展開が考えられる。
中間のケースでは、家庭用ミシン事業は横ばいから緩やかな減少が続くものの、産業機器事業が下支えとなり、全体の業績は大きく崩れない。営業利益率は4%台後半〜5%前後、ROEは3〜5%程度で推移し、業績は安定するが成長力は限定的となる。この場合、評価倍率は現在水準近辺で落ち着き、株価は大きなトレンドを作らず、1,000円〜1,500円程度のレンジでの推移が中心となる。リターンの主軸はキャピタルゲインよりも配当となり、値動きは比較的穏やかになりやすい。
悪い場合は、家庭用ミシン市場の縮小が想定以上に進み、産業機器事業も市況悪化や設備投資抑制の影響を受けるシナリオである。利益率は低下し、営業利益率は3%台まで落ち込み、ROE・ROAも伸び悩む。この場合、市場は成長期待を引き下げ、PBRは低位のまま固定化される可能性がある。5年後の株価は700円〜1,000円程度まで下振れする展開も想定される。
総合すると、ジャノメの株価は現在値1,230.0円において、低PBRと高配当利回りを背景に一定の下値余地は限定されている一方、事業成長が明確に見えなければ大きな上昇も期待しにくい水準にある。今後5年間は、家庭用ミシン事業の安定維持と、産業機器事業がどこまで利益成長に貢献できるかが最大の評価軸となる。投資スタンスとしては、成長株というよりも、配当を意識しつつ業績の底堅さと評価水準の変化を見極める中長期目線の銘柄と位置付けられる。
この記事の最終更新日:2026年1月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す