株価
TPRとは

TPR株式会社は、東京都千代田区丸の内に本社を置く自動車部品メーカーで、ピストンリングとシリンダーライナーを中核製品とする内燃機関部品の大手である。特にシリンダーライナーでは世界首位のシェアを持ち、ピストンリングでも日系メーカー向けの有力サプライヤーの一角を占めている。主要顧客にはトヨタ自動車をはじめとする完成車メーカーが名を連ね、トヨタ向け売上は全体の約3割を占める。芙蓉グループ、いわゆるみずほグループに属する企業でもある。
TPRの起源は1908年に田中源太郎が創業した田中源太郎商店にさかのぼる。創業当初は米国アチエソン社の日本総代理店として潤滑油・潤滑剤の販売を手がけていたが、昭和期に入り航空機や船舶用エンジンの重要性が高まる中で、エンジン性能向上の鍵となるピストンリングの国産化に注力するようになった。1939年には海軍航空技術廠向けに国産エンジン用リングを提出し、海外製品を大きく上回る評価を得たことを契機に田中ピストンリング株式会社が設立され、これが現在のTPRへとつながっている。
現在のTPRは、80年以上にわたる技術蓄積を背景に、パワートレイン部品を中心とした総合自動車部品メーカーへと発展している。主力のピストンリング、シリンダーライナーに加え、バルブシート、バルブガイド、各種シールリングなどエンジン周辺部品を幅広く展開している。さらに、アルミ部品、樹脂・ゴム部品、内外装部品、足回り部品、電子電装部品などへも事業領域を広げ、自動車1台あたりの搭載点数を増やす戦略を取っている。
技術面では、燃費向上や排ガス規制対応を目的とした摩擦低減技術、耐久性向上技術に強みを持ち、トヨタの新世代車両設計思想であるTNGAへの対応も加速している。内燃機関の高度化に伴う高精度部品の要求に応える一方で、電動化の進展を見据え、エンジン以外の分野でも培った材料技術や加工技術を応用した製品開発を進めている。
生産・開発体制としては、国内に工場と技術センターを持つほか、海外にも多数の生産拠点と関連会社を展開している。関連会社は国内20社、海外34社の計54社に及び、グローバルな供給体制を構築している点も特徴である。これにより、日系完成車メーカーの海外生産にも密着した形で対応できる体制を整えている。
総合すると、TPRはピストンリングとシリンダーライナーという内燃機関の核心部品で世界トップクラスの競争力を持つ一方、事業領域を多角化しながら自動車産業の構造変化に適応を進める老舗技術企業である。内燃機関需要の影響を受けやすい側面はあるものの、長年にわたる顧客基盤と技術力を背景に、安定した事業基盤を維持している企業と位置付けられる。
TPR 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 152,002 | 9,896 | 14,138 | 5,466 | 77.3 | 22 |
| 連22.3 | 163,537 | 10,701 | 14,633 | 8,087 | 117.3 | 29 |
| 連23.3 | 178,619 | 6,856 | 10,215 | 3,843 | 56.5 | 29 |
| 連24.3 | 193,834 | 12,526 | 16,066 | 8,195 | 121.5 | 35 |
| 連25.3 | 192,494 | 11,214 | 15,790 | 8,866 | 131.9 | 50 |
| 連26.3予 | 183,400 | 9,400 | 12,900 | 7,300 | 112.1 | 50 |
| 連27.3予 | 190,000 | 9,800 | 13,300 | 7,900 | 121.3 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 21,088 | -14,568 | -3,919 |
| 連24.3 | 24,386 | -9,611 | -10,547 |
| 連25.3 | 21,743 | -4,582 | -9,932 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 3.8 | 2.8 | 1.4 | – | – |
| 連24.3 | 6.4 | 5.2 | 2.8 | – | – |
| 連25.3 | 5.8 | 5.4 | 3.0 | 7.6〜10.9 | 0.56 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の規模感を見ると、連24.3の売上高は約1,938億、営業利益は125億、経常利益は160億、純利益は81億である。連25.3は売上高約1,924億、営業利益112億、経常利益157億、純利益88億と、売上は横ばいだが利益はやや改善している。連26.3予想では売上高1,834億、営業利益94億、経常利益129億、純利益73億と減益予想になっており、自動車市況の減速を織り込んだ慎重な見通しであることが分かる。
収益性を見ると、営業利益率は2023年3.8%、2024年6.4%、2025年5.8%と、23年の低迷からは回復したものの、依然として5%台後半にとどまっている。世界首位のシリンダライナーを持つ企業としては高収益とは言いにくく、事業構造上、価格交渉力が限定的である点が数字に表れている。
資本効率の面では、ROEが2.8%、5.2%、5.4%、ROAが1.4%、2.8%、3.0%と、こちらも改善傾向ではあるが水準自体は低い。株主資本を使って大きく利益を生むフェーズにはなく、成熟した部品メーカーらしい安定型だが低効率な構造である。
一方でバリュエーションを見ると、2025年実績PERは高値平均10.9倍、安値平均7.6倍、PBRは0.56倍と明確な割安水準にある。PBR0.56倍は、資産価値や継続的な黒字を前提にすると市場がかなり慎重に評価している状態であり、業績悪化がある程度織り込まれていると考えられる。
総合すると、TPRは成長性や高収益性を評価して買う銘柄ではない。営業利益率、ROE、ROAはいずれも低く、今後も急激な改善を期待できる数字ではない。一方で、売上規模1,800億超、安定した黒字、世界首位製品を持つ事業基盤、そしてPBR0.56倍という評価を踏まえると、下値リスクは比較的限定的と考えられる。
この数値だけで判断するなら、TPRは「高成長狙いの投資対象」ではなく、「業績は横ばい〜緩やか減速を前提に、割安さと財務の安定性を評価して中長期で構えるバリュー寄り銘柄」という位置付けになる。景気循環の底打ち局面や自動車市況の回復局面では、評価修正による株価反発を狙える余地はあるが、常に高いリターンを生む銘柄ではない、というのがこの数字から導ける結論になる。
配当目的とかどうなの?
まず水準として、連26.3、連27.3ともに予想配当利回りは3.60%と、製造業の中では比較的高めの水準にある。直近では一株配当が50円まで引き上げられており、ここ数年で株主還元姿勢は明確に改善している。高配当株とまでは言えないが、インカム目的として最低限以上の魅力はある水準と言える。
利益との関係を見ると、連25.3の純利益は約88億円、連26.3予想でも約73億円と減益見通しではあるものの、赤字転落を心配する状況ではない。営業キャッシュフローは毎年200億円前後を安定して確保しており、配当原資となる現金創出力には余裕がある。投資キャッシュフローのマイナス幅も年々縮小しており、設備投資負担によって配当が圧迫される局面ではない。
一方で、配当成長という観点では限界も見える。営業利益率は5%台、ROEは5%台と収益力そのものは高くなく、事業構造上、配当を大きく増やしていけるタイプではない。自動車部品メーカーという業態から、市況悪化局面では業績が振れやすく、増配よりも配当維持を優先するスタンスになりやすい点は意識しておく必要がある。
評価面ではPBRが0.56倍と大きく割安な水準にあり、株価が大きく下落しにくい構造にあることは配当投資との相性が良い。株価が急伸しなくても、3.5%前後の配当を受け取りながら、市況回復や評価修正を待つという戦略は成立しやすい。
総合すると、TPRは配当を毎年大きく伸ばしていく成長型の配当銘柄ではないが、業績が大きく崩れにくい中で、3.6%前後の利回りを安定的に受け取る目的には適した銘柄である。値上がり益を狙うより、割安水準で仕込み、配当を受け取りながら中長期で保有する、地味だが堅実な配当目的向けの銘柄と位置付けられる。
今後の値動き予想!!(5年間)
TPR株式会社の現在値1,386.0円を基準に、今後5年間の株価の値動きを考える。同社はピストンリングとシリンダライナーを主力とする自動車部品メーカーで、世界首位製品を持つ一方、収益性や成長性は高くなく、市況の影響を受けやすい典型的な循環型企業である。PBRは0.56倍と低く、すでに慎重な評価が株価に織り込まれている点が前提となる。
良い場合は、自動車生産台数が底打ちし、内燃機関向け需要が想定以上に粘るシナリオである。営業利益率は6%前後で安定し、ROEも6%台まで改善する。純利益は80億円前後を確保し、EPSは120円台で推移する。この場合、市場は過度な悲観を修正し、PBRは0.8倍前後、PERは10〜11倍程度まで評価が戻る可能性がある。EPS120円×PER11倍を前提にすると、5年後の株価は1,800円〜2,000円程度まで回復する展開が想定される。配当利回り3%台後半を維持しながら、じり高で評価が戻る形になる。
中間のケースでは、自動車市況は大きく悪化しないものの、成長も限定的で、業績は横ばいから緩やかな減益傾向となる。営業利益率は5%台、ROEは5%前後で推移し、純利益は70億円前後で安定する。市場評価は現在と大きく変わらず、PBRは0.5〜0.6倍、PERは8〜9倍程度にとどまる。この場合、株価は1,200円〜1,600円程度のレンジ内で推移し、値上がり益よりも配当を受け取りながら保有する展開が中心となる。
悪い場合は、自動車生産の減速が長期化し、エンジン関連部品の需要減少が想定以上に進むシナリオである。営業利益率は4%台まで低下し、ROEも4%前後にとどまる。純利益は50億円台まで縮小し、EPSは80円前後に低下する。市場は事業の将来性をより厳しく見て、PBRは0.4倍前後、PERは7倍程度まで低下する可能性がある。この場合、株価は900円〜1,100円程度まで調整する展開も想定される。配当は維持される可能性が高いが、株価回復には市況改善を待つ必要がある。
総合すると、TPRの株価は現在値1,386.0円において、業績の弱さと割安さの両方を織り込んだ水準にある。今後5年間は大きな成長を期待する銘柄ではなく、下値の限定性と配当を重視しつつ、市況回復時の評価修正を狙うスタンスが現実的である。高いリターンを狙うより、割安水準で保有し、インカムと緩やかな戻りを待つ銘柄として位置付けられる。
この記事の最終更新日:2026年1月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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