株価
シスメックスとは

シスメックス株式会社は、兵庫県神戸市に本社を置く臨床検査機器・試薬メーカーで、病院や検査センターで行われる血液検査を中心とした体外診断(IVD)分野を主力とする医療インフラ企業である。世界190か国以上に展開し海外売上高比率は80%を超えており、日本企業でありながら事業の中心は欧米・中国・アジアなど海外市場にあるグローバル企業となっている。
ヘマトロジー(血球計数)、血液凝固検査、尿沈渣検査の分野では世界トップシェアを持ち、装置販売だけでなく専用試薬の継続使用によって収益が積み上がるストック型に近いビジネスモデルが特徴となっている。
起源は1961年の東亜特殊電機の研究室で、1968年に前身の東亞医用電子として設立され、1978年にSysmexブランドを確立し血液分析装置の開発を本格化した。1998年にブランド名を社名とし現在のシスメックス株式会社へ変更。現在は血液分析装置、血液凝固測定装置、尿検査装置、免疫検査装置など幅広い検体検査機器と試薬を展開し、病院の検査業務を自動化する装置群を提供している。
装置導入後は試薬消費、保守サービス、ソフトウェア更新、検査データ管理などが継続的に発生するため、景気よりも医療需要に連動した収益構造になりやすい。主力のヘマトロジー分野では血球数や白血球分類など日常診療で必須となる検査を扱い、病院の検査数の増加に比例して試薬需要が増える構造となる。血液凝固検査では血栓症や手術前検査に使用され、尿検査は健康診断や慢性疾患管理で継続的に使われるため、いずれも検査件数に連動した消耗品収益が発生する。
免疫検査ではがんマーカーや感染症検査など検査項目拡張が進み、単価の高い検査分野へ拡大している。さらに遺伝子・分子診断領域を次の成長源と位置づけ、大学発スタートアップのメガカリオンを子会社化するなど先端医療分野の取り込みも進めている。
研究開発面では検査データの解析やAI活用による診断支援、データソリューション分野にも展開しており、単なる機器メーカーから医療データ企業への拡張を志向している。また川崎重工業との合弁会社メディカロイドを通じ、hinotori手術支援ロボットなど医療ロボット分野にも関与している。国内では神戸市西区の研究所と加古川工場を拠点とし、2028年には神戸三宮地区への本社移転を予定している。
このように装置販売、試薬供給、保守、ソフトウェア、データ活用まで一体化したトータルソリューション型の事業構造を持ち、医療機関の検査業務に深く組み込まれることで継続収益が発生する医療インフラ型企業として位置付けられる。検査需要は高齢化や慢性疾患管理の拡大に影響されやすく、地域景気よりも医療需要に依存する収益特性を持つ企業である。
シスメックス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度(単位:百万円) | 売上高 | 営業利益 | 税前利益 | 純利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 305,073 | 51,792 | 48,033 | 33,142 | 52.9 | 24 |
| 22.3 | 363,780 | 67,416 | 64,346 | 44,093 | 70.3 | 25.3 |
| 23.3 | 410,502 | 73,679 | 68,713 | 45,784 | 72.9 | 27.3 |
| 24.3 | 461,510 | 78,382 | 74,600 | 49,639 | 79.3 | 28 |
| 25.3 | 508,643 | 87,583 | 79,221 | 53,669 | 86.1 | 32 |
| 26.3予 | 510,000 | 76,000 | 71,000 | 45,000 | 72.2 | 38 |
| 27.3予 | 525,000 | 85,000 | 80,000 | 51,000 | 81.8 | 39〜40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 68,835 | -51,751 | -24,234 |
| 24.3 | 63,905 | -54,970 | -9,013 |
| 25.3 | 88,246 | -52,488 | -24,322 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 17.9% | 11.8% | 8.6% | – | – |
| 24.3 | 16.9% | 11.4% | 8.0% | – | – |
| 25.3 | 17.2% | 11.5% | 8.0% | 28.9〜42.1倍 | 2.04倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益規模の推移を見る。2024年は営業利益783億、経常利益746億、純利益496億。2025年は営業利益875億、経常利益792億、純利益536億で増益。しかし2026年予想は営業利益760億、経常利益710億、純利益450億まで減る見込みになっている。稼ぐ力そのものが崩れているわけではないが、成長の加速局面は終わり、循環的に利益が調整に入る前提の数字になっている。売上が大きく伸びない中で利益だけが上下しているため、構造的成長よりも需要やコストの影響を受けやすい安定成熟型に近い挙動と読める。
収益性を見ると営業利益率は17.9%→16.9%→17.2%とほぼ横ばい圏で17%前後のレンジに収まっている。ROEも11.8%→11.4%→11.5%、ROAは8.6%→8.0%→8.0%と変化が小さい。この動きは典型的な安定企業の数値で、利益率が改善して株価が上がる段階ではなく既に安定域に入っている企業のパターンである。逆に言えば収益性が急激に上がる余地も小さく、株価上昇のドライバーは利益拡大ではなく評価倍率の変化になりやすい状態になっている。
次に株価評価を考える。PERは28.9〜42.1倍のレンジ、PBRは2.0倍。ROE11.5%に対してPBR2倍は理論上割安ではない。さらに来期減益予想が出ている状況でPER30倍台は、利益成長を前提にした価格帯に近い。現在の株価は業績回復や安定性に対する信頼を織り込んだ品質プレミアムの位置であり、業績が横ばいなら妥当、減速すれば重くなりやすい水準になる。
ここから読み取れる株価特性は、利益は安定しているため急落しやすいタイプではないが成長率が高くないため大幅上昇もしにくいという形になる。評価倍率が既に高いため上昇は利益拡大待ち、下落は期待剥落で起きる構造になり、ディフェンシブ寄りの値動きになりやすく株価は業績の変動より期待の変化に反応しやすい段階にある。
数値のみからの結論として、この銘柄は割安株ではなく高品質安定株の評価ゾーンにあり、投資判断は成長期待を取るか安定性を取るかで分かれる位置にある。利益が再び増益トレンドに戻れば評価維持または上振れ、横ばいなら停滞、減益が続けば評価修正が起きやすい価格帯と判断できる。
配当目的とかどうなの?
配当利回りは26.3期予想2.39%、27.3期予想2.46%で、おおむね2%台前半の水準になる。日本株の配当銘柄として見ると中配当ゾーンで、高配当株に分類される3.5〜5%クラスとは明確に性格が違う。
利益との関係を見ると、2025年は純利益536億に対し配当32円、2026年は純利益450億へ減益予想にもかかわらず配当は38円へ増配予定になっている。つまり配当は利益連動型というより安定配当志向で、業績の上下より株主還元方針を優先している形になる。減益局面でも減配していない点から、会社は配当を株価の信頼性維持の役割として使っていると読める。
ただし利回り水準が2%台のため、インカム収入を主目的にする投資には向きにくい。仮に株価が横ばいなら年率リターンは2%前後にとどまり、銀行金利よりは高いが高配当株の代替にはならない。一方で配当の安定性は高く、業績変動による減配リスクは比較的小さいタイプと考えられる。
結論として、この銘柄の配当は「収入を得るための銘柄」ではなく「株価変動を緩和するための配当」に近い位置づけになる。キャピタルゲインを主体にしつつ、保有中の下落耐性を少し高める目的なら適しているが、配当収入中心の投資対象としては物足りない水準と判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価は1,584円で、シスメックスは売上4,615億円から5,086億円へ拡大し、5,100億円前後の横ばい予想となっている。大きな減収はないが高成長でもなく、医療需要に沿って緩やかに積み上がる推移にある。
一方で営業利益は783億円から875億円へ増加した後、760億円予想と減益見込みとなっており、直線的な成長ではなく投資やコストの影響を受けて上下する安定循環型の収益構造となっている。営業利益率は17%前後、ROEは11%台、ROAは8%前後で推移しており収益性は高い水準で安定しているが、急拡大局面の企業の数値ではなく成熟領域に近い水準にある。
良い場合は、検査需要の拡大や新分野の寄与で再び増益トレンドへ入り、利益率17〜18%が維持されながらROEが12%台へ上昇するシナリオである。市場が安定成長株として評価を維持しPERが35倍前後で推移すると、評価維持型の上昇となり5年後の株価は2,500円から2,900円程度まで上昇する可能性がある。急騰ではなく業績の積み上がりに沿った緩やかな上昇トレンドになりやすい。
中間の場合は、利益が増減しながら横ばい圏で推移するシナリオである。営業利益率17%前後、ROE11%前後で安定し、評価はPER28〜32倍の範囲に収まる。この場合5年後の株価は1,500円から2,000円程度のレンジで推移しやすく、配当と安定性が意識されるボックス相場になりやすい。
悪い場合は、利益成長が鈍化し減益基調が続くシナリオである。ROEが10%前後へ低下し成長株評価が弱まるとPER20〜24倍まで低下する可能性がある。この場合5年後の株価は1,100円から1,500円程度まで下落する可能性がある。赤字転落の可能性は低いが、評価修正による緩やかな下落になりやすい。
総合すると現在値1,584円は割安圏ではなく安定性を評価された価格帯にある。上昇余地は利益の再成長による評価維持に依存し、大幅上昇より緩やかな上昇に留まりやすい一方、医療需要と収益安定性によって下値も限定されやすい。株価は短期材料より成長率の変化に反応しやすく、長期では上下を繰り返しながら水準を変えていくタイプの値動きの銘柄と整理できる。
この記事の最終更新日:2026年2月12日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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