株価
三井E&Sとは

三井E&S株式会社は三井グループに属する重工業メーカーで旧三井造船。1917年に三井物産の造船部として岡山県玉野で創業し、日本の海運・造船産業の発展とともに拡大してきた企業である。かつては造船・海洋開発・プラント・橋梁などを幅広く手掛ける総合重工だったが、大型火力発電所案件で2000億円超の損失を計上したことを契機に経営再建を進め、不採算事業の売却と選択集中を実施。艦艇は三菱重工業、商船は常石造船、プラントはJFEエンジニアリング、橋梁は三井住友建設などへ譲渡し、造船事業から事実上撤退した。
売上規模は1兆円規模から大きく縮小したが、収益性を重視した産業機械メーカーへ体質転換している。2023年に持株会社制を解消し現在の三井E&Sへ社名変更。現在の中核は舶用エンジン事業。大型商船向け低速ディーゼルエンジンを製造し国内トップクラスのシェアを持つ。MAN Energy SolutionsとWinGDのライセンスを併せ持つ数少ないメーカーで、LNG・LPG・メタノール燃料エンジンを実用化済み、アンモニアや水素燃料エンジンの開発も進めている。
IHI原動機から継承したエンジン事業は子会社三井E&S DUが担う。船の建造量や海運市況に大きく連動する典型的な海運サイクル型ビジネスで、受注タイミングによって利益が大きく変動する特徴を持つ。港湾物流システム事業は世界のコンテナ港向け大型クレーンを供給する分野で、ガントリークレーンやトランスファークレーンなどを海外中心に展開。
貿易量の増減や港湾投資に連動する景気敏感型事業だが、近年は自動化ターミナル需要の増加により無人搬送・遠隔操作設備の比率が上昇している。世界シェア上位に位置する主力事業の一つである。
機械・システム事業では圧縮機、産業機械、発電関連設備、化学プラント機器、エンジニアリングサービスなどを扱う。エネルギー・石油化学・社会インフラ向け設備が中心で案件単位の収益となるため年度ごとの振れが大きい。また造船向け製造システムや各種設計受託などエンジニアリング技術を活かした事業も行う。
この会社の特徴はストック収益が少なく、海運・資源・設備投資の循環に強く連動する重工業型の収益構造にある点である。一方で従来の「船を造る会社」から「船を動かすエンジン」と「港を動かす設備」を提供する企業へ事業の軸が移っており、現在は海上物流インフラ機械メーカーとしての性格が強い企業となっている。
三井E&S 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 663,834 | -12,243 | -8,223 | 134 | 1.7 | 0 |
| 連22.3 | 579,363 | -10,029 | -25,742 | -21,825 | -269.9 | 0 |
| 連23.3 | 262,301 | 9,376 | 12,532 | 15,554 | 177.5 | 3 |
| 連24.3 | 301,875 | 19,630 | 20,711 | 25,051 | 255.7 | 5 |
| 連25.3 | 315,112 | 23,130 | 27,756 | 39,074 | 385.4 | 20 |
| 連26.3予 | 340,000 | 31,000 | 33,000 | 27,500 | 272.6 | 30〜40 |
| 連27.3予 | 370,000 | 33,500 | 35,500 | 28,000 | 277.5 | 40〜55 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -15,043 | -2,999 | 9,515 |
| 2024 | -34,435 | -354 | 24,110 |
| 2025 | 14,852 | 60,902 | -76,566 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 3.5% | 3.5% | 14.6% | ― | ― |
| 2024 | 6.5% | 5.3% | 17.6% | ― | ― |
| 2025 | 7.3% | 8.6% | 23.0% | ― | 3.59倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益規模の推移を見る。2024年は営業利益196億、経常利益207億、純利益250億。2025年は営業利益231億、経常利益277億、純利益390億まで増加しており、営業段階・経常段階ともに拡大している。2026年予想は営業利益310億、経常利益330億と本業の利益はさらに増える見込みだが、純利益は275億へ減少予想となっている。つまり本業は伸びているが、最終利益は一時益や特別要因の影響が大きいタイプの利益構造と読み取れる。
収益性の改善はかなりはっきりしている。営業利益率は3.5%から6.5%から7.3%と短期間で倍以上に上昇しており、事業再編によって低採算事業が整理された影響が表れている。ROEは14.6%から17.6%から23.0%と急上昇、ROAも3.5%から5.3%から8.6%へ上昇しており、資産効率と資本効率の両方が改善している。重工系企業として見るとROE20%台はかなり高く、再建企業特有の効率改善フェーズに入っている状態といえる。
ただし利益の質には特徴がある。営業利益は2024年196億から2025年231億から2026年310億と安定して増えているのに対し、純利益は250億から390億から275億と振れが大きい。これは営業外損益や特別利益の寄与が大きいことを示しており、毎年同じ利益が積み上がるタイプではない。つまり安定成長企業というより、案件・売却・市況の影響を受けやすい循環性の残る企業である。
収益構造としては、売上は拡大しているが利益のブレが残る一方で、利益率と資本効率は急改善している段階にある。再建後の正常化フェーズに入っており、本業の収益力自体は向上しているが、まだ完全な安定収益企業には移行していない途中段階と解釈できる。
総合すると、利益額の絶対水準は拡大しており、特に営業利益の伸びは継続しているため本業の競争力は回復している。一方で最終利益は変動が大きく、継続的な増益トレンドを前提に評価するタイプではなく、景気や案件タイミングで評価が変わる性格が強い。したがって安定収益株というより、構造改革後の収益改善企業として扱うのが適切な状態と判断できる。
配当目的とかどうなの?
配当面を見ると利回りは連26.3予0.68%、連27.3予0.68%とかなり低い水準に留まっている。日本株では一般的に配当株と呼ばれる水準が3〜4%前後であることを考えると、インカム収入を目的に保有する銘柄とは性格が大きく異なる位置にある。
利益は拡大しているが質に特徴がある。純利益は250億から390億から275億と振れが大きく、毎年安定して積み上がる構造ではない。一方で営業利益は196億から231億から310億と増加しており本業は回復しているが、最終利益は特別要因の影響を受けやすい。このタイプの企業は配当性向を固定しにくく、安定配当政策を取りづらい傾向がある。
収益性は営業利益率3.5%から6.5%から7.3%、ROE14.6%から17.6%から23.0%、ROA3.5%から5.3%から8.6%と急改善しているが、これは成熟企業の株主還元強化局面ではなく、事業再編後に収益体質が正常化していく過程の動きに近い。つまり利益が出始めた段階であり、企業側の優先順位は配当よりも財務体質の安定化や事業投資に置かれやすい状態にあると読み取れる。
また重工業系企業は受注サイクルの影響が強く、景気や設備投資動向によって利益が上下しやすい。安定配当株は利益変動が小さい業種に多いが、この会社はむしろ業績変動型の収益構造にあるため、配当の継続性より業績回復の進み具合が重視されるタイプになる。
したがって配当目的としての適性は低く、配当収入を積み上げる銘柄ではない。位置付けとしては高配当株やインカム株ではなく、業績改善に伴う株価変動を前提とした回復株の性格が強い銘柄と考えられる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価は7,292円で、三井E&Sは売上3,018億円から3,151億円、3,400億円予想へと増収が続いており、事業再編後に事業規模が拡大局面へ入っている。一方で営業利益は196億円から231億円、310億円予想と本業の利益は伸びているが、純利益は250億円から390億円の後275億円予想と振れが大きく、直線的な成長ではなく特別要因や受注タイミングに左右される推移になっている。営業利益率は3.5%から6.5%から7.3%へ改善し、ROEも14.6%から23.0%まで上昇しているが、これは安定高収益企業というより再建後の効率改善局面に近い動きである。
良い場合は、脱炭素燃料対応エンジンの需要拡大と港湾自動化投資が続き営業利益率が8%から10%台へ上昇、ROEが20%台を維持するシナリオである。本業の安定成長が認識されると評価倍率が切り上がり、循環株から成長株寄りの扱いに近づく。この場合5年後の株価は12,000円から15,000円程度まで上昇する可能性がある。上昇は急騰ではなく、業績確認に合わせて段階的に切り上がる推移になりやすい。
中間の場合は、受注と市況に応じて利益が上下しながら拡大基調を維持するシナリオである。営業利益率は6%から8%、ROE15%前後で推移し、評価は景気敏感株として一定レンジに収まる。この場合5年後の株価は6,000円から9,500円程度のレンジで推移しやすく、上昇と下落を繰り返すボックス相場になりやすい。
悪い場合は、海運市況の悪化や設備投資減速で受注が鈍化し営業利益率が5%前後へ低下するシナリオである。利益変動が大きい企業のため評価が縮小しやすく、この場合5年後の株価は3,500円から6,000円程度まで下落する可能性がある。赤字転落の前に評価修正で株価が先に調整するタイプの下落になりやすい。
総合すると現在値7,292円は安定成長を織り込んだ価格ではなく、収益改善期待を反映した景気敏感株の評価帯に近い。上昇余地は利益率の定着と受注環境に依存し、大幅上昇よりも循環的な値動きになりやすい一方、利益水準が維持されれば下値も限定されやすい。株価は短期材料より業績サイクルに反応しやすく、長期ではレンジを切り上げながら上下を繰り返すタイプの値動きの銘柄と整理できる。
この記事の最終更新日:2026年2月15日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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