株価
ソシオネクストとは

ソシオネクストは、富士通とパナソニックのシステムLSI事業を統合して誕生した、日本を代表するファブレス半導体メーカーです。2014年に設立され、2022年に東証プライム市場へ上場した新興銘柄ですが、実際には両社が長年蓄積してきた半導体設計技術を土台に持つため、業界内でも非常に高い技術力を持つ企業として知られています。本社は神奈川県横浜市に置かれ、国内外に開発拠点を持ちながら、最先端の半導体開発に特化した事業を展開しています。
同社の最大の特徴は、メーカーとは異なる “ファブレス” というビジネスモデルにあります。ファブレスとは、自社で半導体工場(ファブ)を持たず、TSMCやグローバルファウンドリーズなどの大手ファウンドリに製造委託するスタイルです。これにより、ソシオネクストは巨額の設備投資リスクを抱えることなく、設計力と開発スピードに集中することができ、高性能で高付加価値のSoC(System on Chip)を効率的に市場へ提供しています。
ソシオネクストの事業の中心は カスタムSoC事業 で、これは特定の大手顧客向けに、その企業専用の半導体チップをゼロから設計し提供するというものです。一般消費者向けの半導体ではなく、BtoBの特殊・専門用途に特化した商材を扱っており、顧客企業と初期の企画段階から密に連携し、仕様策定から設計、検証、製造工程の管理までを一貫支援します。この深い顧客密着モデルこそが同社の強みで、一度取引関係が確立されると長期的なビジネスにつながりやすく、高い収益性を確保する要因となっています。
同社のSoC技術は幅広い産業に応用されています。まず 映像・画像処理分野 では、放送機器やプロフェッショナル用映像機器、監視カメラ、産業用画像処理装置などで採用されており、同社が長年蓄積してきた独自の映像処理IPは高く評価されています。超高精細映像や次世代放送規格への対応も進めており、映像技術に関するリーディングカンパニーとしての存在感があります。
また、近年特に伸びているのが データセンター・HPC(高性能コンピューティング)向けのカスタムSoC です。AI、クラウド、機械学習、5G通信、ビッグデータ処理といった分野でデータ量が急増しており、それに対応するための高性能チップへの需要が世界中で高まっています。ソシオネクストは大手海外企業向けに高性能SoCを提供しており、この分野が同社の業績を牽引する重要な柱となっています。
さらに 車載向けSoC(ADAS/自動運転関連) も強化している領域です。車載カメラ向けの画像処理チップや、運転支援システムに必要な高信頼性の半導体を提供しており、自動車業界の電動化・自動化の流れが追い風となっています。車載向け半導体は信頼性基準が厳しいため、高品質な設計力を有する企業は限られており、その意味でもソシオネクストは競争優位性を持っています。
全体として、ソシオネクストは「設計力 × 顧客密着 × ファブレス」という3つの強みを組み合わせ、高成長市場で確実にシェアを伸ばしている企業です。半導体の設計専門企業という立場から、製造に巨額の設備投資を必要とする競合と異なり、利益率も高く、世界的な半導体需要の拡大に合わせて成長できる柔軟性を持っています。まだ歴史の浅い上場企業ですが、技術力・市場成長性ともに注目度の高い銘柄と言えます。
ソシオネクスト 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3* | 192,767 | 21,711 | 23,440 | 19,763 | 117.4 | 42 |
| 連24.3* | 221,246 | 35,510 | 37,122 | 26,134 | 148.4 | 48 |
| 連25.3 | 188,535 | 25,000 | 25,118 | 19,600 | 109.8 | 50 |
| 連26.3予 | 190,000 | 18,500 | 18,500 | 13,000 | 73.7 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 18,019 | -19,725 | -333 |
| 2024 | 52,882 | -23,155 | -6,624 |
| 2025 | 31,866 | -14,552 | -13,825 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 11.2% | 17.9% | 10.1% | — | — |
| 2024 | 16.0% | 19.9% | 13.9% | — | — |
| 2025 | 13.2% | 14.3% | 11.5% |
実績PER 高値平均:34.6倍 実績PER 安値平均:11.5倍 |
実績PBR:3.06倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ソシオネクストの業績を見ていくと、同社が非常に「波のある成長企業」だということがはっきり分かります。まず営業利益の推移を見ると、23.3期が217億円、24.3期には355億円と大幅に伸びており、この時期の会社の勢いがかなり強かったことを示しています。しかし25.3期は250億円と前期比で減益となり、ここで成長の勢いが一度落ち着いていることがわかります。予想である26.3期は185億円とさらに落ち込む見込みで、足元の業績は明確に調整局面に入っています。
営業利益率を見ても同じ傾向が出ており、23.3期の11.2%から24.3期には16.0%という素晴らしい水準に伸びています。この時期は市場の半導体需要も強く、特にデータセンター向けのカスタムSoC事業が大きく伸びたことが背景です。しかし25.3期は13.2%へ低下し、26.3期予想ではさらに低下が想定されています。これは世界的な半導体需要の調整、データセンター向け投資の一服、主要顧客との案件の山谷などが影響したものと考えられます。
一方で、ROE・ROAはかなり優秀で、特に24.3期のROE19.9%・ROA13.9%は半導体設計企業としてトップクラスの収益性を示しています。25.3期でROEは14.3%、ROAは11.5%まで落ちてはいるものの、それでも一般企業と比較すれば非常に高い水準です。つまり業績が調整に入っても、本質的な収益力は依然として高く、企業としての質は変わっていないと言えます。
PERを見ると、2025年は高値平均で34.6倍、安値平均で11.5倍と、評価の振れ幅が非常に大きいのが特徴的です。市場が強気になると一気に割高評価されて買われますが、業績が一服するとすぐにPER10倍台まで放り出されるため、まさにマーケットが「成長株」として見るか「普通の半導体株」として見るかで評価がブレる典型例です。PBR3.06倍というのは、日本株の中ではかなり高い水準で、これは市場が同社の成長性に期待している証拠でもあります。
総合すると、ソシオネクストは「業績の波は大きいが、中長期の成長ポテンシャルは非常に高い企業」と評価できます。足元は減益で調整局面ですが、ファブレスでありながら顧客密着型のカスタムSoC事業という独自モデルを持っており、一度大型案件が入れば業績が一気に跳ねる可能性もあります。AI・データセンター向け・車載向けといった伸びる市場のど真ん中にいるため、世界的な半導体需要が再加速すれば、再び高い成長率と利益率を取り戻す余地は十分にあります。
株価としては、短期では業績調整を織り込んで上下が激しくなりやすいですが、中期的には再び上向く可能性が高い「テーマ性の強い半導体株」です。PERの変動幅が大きいことから、買うタイミングが非常に重要な銘柄でもあります。安い時はPER10倍台まで放置されるため、調整局面はむしろ拾い場になる可能性があります。
結論としては、「短期は乱高下・中長期では成長株」。業績の波は避けられないが、テーマ性と技術力の両方が揃っており、長期投資する価値は十分にある銘柄といえます。
特にAI・データセンター関連の需要が本格再加速する局面では大きな上昇余地が期待できます。
配当目的とかどうなの?
ソシオネクストを配当目的で見た場合、率直に言えば「配当だけを目的に買う銘柄ではない」という評価になります。予想配当利回り(2026・2027年度)は2.19%で、決して悪い数字ではありませんが、日本株全体で見れば“ほどほど”の水準で、高配当株として分類されるほどではありません。むしろソシオネクストは典型的な“成長株”であり、企業としても配当で魅せるタイプではなく、将来の成長を見据えて内部留保や研究開発に積極的に資金を回す会社です。
同社はファブレス半導体メーカーという性質上、配当よりも“事業拡大”を優先します。カスタムSoCは開発費も人材確保も費用がかかるため、利益が出てもすぐに大きく配当を上げるより、次の案件の開発力強化に回す方が企業価値を高めやすいビジネスモデルです。そうした背景から、配当の伸び方も比較的控えめで、毎年安定して増配していくようなタイプではありません。
とはいえ、ソシオネクストが“配当を軽視している企業”というわけではありません。設立からの歴史が浅い企業にもかかわらず、安定して配当を出しており、2.19%という利回りは機械株や半導体株の中ではむしろ高い部類です。さらに、財務体質も健全で、利益率も高く、ROE・ROAも優秀なため、“急減配のリスクが低い企業”ではあります。つまり、高配当株として魅力的ではないものの、安定企業としての配当維持力は十分にあります。
ただ、やはりソシオネクストの本質は「自動車・AI・データセンター向けのカスタムSoC設計企業」という成長テーマにあり、配当で長期保有するというよりは、株価成長を狙う銘柄と言った方が正確です。AI関連のビッグテーマに直結する企業なので、株価の上昇余地は利回り以上に大きく、中長期で持つなら“キャピタルゲイン重視”が正しいスタンスになります。
総合すると、ソシオネクストは配当目的だけで買うにはやや物足りないものの、業績・財務ともに優秀で、一定の配当を維持しつつ成長を期待できるバランス型の銘柄です。強いテーマ性と技術力を背景に株価の成長を狙いながら、2%前後の配当を“おまけ感覚”で受け取る、という投資スタイルが一番しっくりくる企業だと言えます。
今後の値動き予想!!(5年間)
ソシオネクストの現在の株価(2,275円)が今後5年間でどう動くかを考えると、この会社の特徴である「業績の波の大きさ」と「成長テーマの強さ」を両方見ながら判断する必要があります。カスタムSoCという事業モデルは非常に魅力的で、AI・データセンター・車載向けといった伸び続ける市場と直結していますが、その一方で大口顧客の案件のタイミングに左右されやすく、決算が良い時と悪い時の差が大きい、まさに“波のある成長株”というタイプです。
まず良い場合ですが、世界的にAI需要が一段と伸びていき、データセンター向けの高性能チップが大量に必要になるような展開です。ソシオネクストはファブレス企業として設計力に強みがあり、大手顧客から複数の大型案件を取り続けることができれば、業績は一気に再加速します。もし営業利益率が再び15〜16%台まで戻り、PER30倍前後の“成長株プレミアム”がつくような状況になれば、株価は現在の2,275円から大きく伸び、5年後には4,500〜6,000円あたりまで上昇する可能性があります。これは事業環境と市場評価がうまく噛み合った時のパターンです。
次に中間の場合ですが、これが一番現実的なシナリオです。半導体需要は波がありながらも全体としては拡大傾向にあり、データセンター向けも車載向けも徐々に成長していくため、ソシオネクストも堅実に売上と利益を積み上げていく展開です。劇的ではないものの安定した成長を続け、営業利益率も13〜14%程度、PERは20〜25倍くらいに落ち着くような状態です。この場合、株価は5年後に3,000〜3,800円あたりまで上昇する可能性が高く、今の株価から見れば堅実な成長と言えるでしょう。
最後に悪い場合ですが、これは世界景気が弱い状態が長引き、データセンター向け投資も鈍化し、車載関連の立ち上がりも遅れるケースです。ソシオネクストは案件の山谷が激しいため、大口案件が一巡すると業績が落ち込むことがあり、その状態が続いてしまうと、営業利益率が10〜11%程度に低下し、PERも10倍前後と低評価を受ける可能性があります。その場合、株価は現在の2,275円からあまり伸びず、むしろ1,800〜2,300円の間で停滞することも考えられます。
総合すると、ソシオネクストは「上に振れれば大きいが、下に振れるときもある」という典型的な成長株です。ただしAIやデータセンターといった強いテーマを持っているため、長期で見れば上方向の可能性の方が大きい企業だと考えられます。5年後の株価としては、悪い場合でも大きく崩れにくく、中間では3,000円台、好調なら6,000円近くまで伸びるシナリオが見込めるため、成長性を重視する投資家に向いた銘柄と言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月15日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す