株価
NECとは

NEC(日本電気株式会社)は、日本を代表するICT・ネットワークインフラ企業で、官公庁や自治体、金融機関といった公共性の高い顧客に向けて、ITサービスから通信インフラ、AI、セキュリティ、社会インフラまで、非常に幅広い領域をカバーしている会社です。創業は1899年と非常に長い歴史を持ち、もともとは通信機器メーカーとしてスタートしましたが、現在は「社会を支えるテクノロジー企業」という立ち位置にシフトしてきています。企業のデジタル化(DX)や行政システムの刷新、5Gインフラ、顔認証などの先端技術といった、日本のインフラを裏側で支えている存在です。
NECの事業の特徴は、とにかく「社会インフラ色が強い」という点です。企業の業務システム、官公庁の行政システム、自治体の防災通信ネットワーク、通信キャリアの基幹ネットワーク、空港の出入国管理、都市の監視システムなど、とにかく“止まってはいけないシステム”を幅広く担っているため、事業の安定性が非常に高いのが特徴です。
事業構造としては大きく ITサービス事業 と ネットワーク・社会インフラ事業 に分かれます。
まずITサービス事業では、企業や官公庁のデジタル化に関わる業務を一手に担っています。システムインテグレーション(SI)、クラウド導入支援、運用・保守、アウトソーシングなどが中心ですが、近年は「データ活用」「AI」「セキュリティ」などの先端領域にも力を入れています。NECは顔認証分野で世界トップクラスの技術を持ち、空港や国境管理などでも採用されているため、この技術は社会インフラ向けソリューションと相性が良く、事業の柱になりつつあります。
次にネットワーク・インフラ事業ですが、こちらは日本国内の大手通信キャリア向けに、基地局設備やコアネットワーク、光伝送装置などを提供しています。また、NECは世界的に見ても海底ケーブル事業に強く、各国をつなぐ国際通信インフラの構築に深く関わっています。スマホやインターネットが当たり前に使える裏側には、NECの技術が入っていることが非常に多いという特徴があります。
さらに最近では「官公庁のDX」「自治体システムのクラウド化」「デジタルガバメント」「スマートシティ」など、“公共×ICT” の領域が世界中で広がっており、NECの強みと直結しています。少子化や人手不足の進行で、行政業務のデジタル化が避けられない中、NECは長い歴史で築いた公共分野の信頼を活かしながら、新しい市場を獲得している最中です。
NECのもうひとつの特徴は「日本国内だけでなく、世界で戦っている会社」という点です。東南アジアや欧州、中南米などでも、通信インフラや公共システムの導入を手がけており、グローバル売上比率も高まっています。海外の都市向け監視システムや空港向け顔認証システムなどはNECの得意領域で、社会インフラの高度化という世界的な流れと相性がよく、今後の成長余地も大きい分野です。
まとめると、NECは「表に出る家電メーカー」ではなく、「社会を裏側で支えるICTインフラ企業」です。一般消費者が直接触れる製品は少ないですが、実は社会のあらゆる場面にNECの技術が使われています。DX、AI、セキュリティ、5G、行政システムなど、今後も需要が伸び続ける分野に強く、時代に合った事業構造になっていると言えます。
NEC 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 3,313,018 | 170,447 | 167,671 | 114,500 | 84.9 | 22 |
| 2024.3 | 3,477,262 | 188,012 | 185,011 | 149,521 | 112.3 | 24 |
| 2025.3 | 3,423,431 | 256,497 | 239,771 | 175,183 | 131.5 | 28 |
| 2026.3(予) | 3,360,000 | 288,000 | 278,000 | 190,000 | 142.6 | 32 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 152,127 | -49,591 | -122,786 |
| 2024 | 271,228 | -76,015 | -155,508 |
| 2025 | 344,408 | -131,164 | -103,974 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.1% | 7.0% | 2.8% | ー | ー |
| 2024 | 5.4% | 7.8% | 3.5% | ー | ー |
| 2025 | 7.4% | 8.9% | 4.0% | PER高値 19.4倍 PER安値 11.3倍 |
4.04倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
NECのここ数年の数字をじっくり眺めてみると、会社が明らかに“変わりつつある”ことがよくわかります。以前のNECといえば、どうしても「売上は大きいけど利益が薄い」「公共案件が多くて収益性が低い」といったイメージが強かったのですが、直近3年間の業績を見ると、その印象を大きく塗り替えるような改善が進んでいます。
まず営業利益がしっかりと増えている点が特徴的で、1700億 → 1880億 → 2560億円へと大幅に伸びています。売上は大きく変わっていないのに利益だけが伸びているということは、構造改革と収益性の改善が確実に効いているという証拠です。これに連動して営業利益率も5.1% → 5.4% → 7.4%と綺麗に上昇しており、ICT企業としては十分に評価できるレベルに到達しています。
ROEも7.0% → 7.8% → 8.9%と右肩上がりで、ようやく日本企業の平均を上回り、“資本効率が良い会社”に近づいてきました。ROAも2.8% → 3.5% → 4.0%と、資産の使い方が上手くなっているのが数字に出ています。ここまで見れば、NECが長年課題としてきた「低収益体質」から確実に脱却しつつあるのは間違いありません。
一方で、株価面の評価を見ると、市場はこの改善をかなり強気に織り込んでいるようです。2025年の実績PERは高値平均で19.4倍、安値平均でも11.3倍と、割安株というよりは「成長期待を持たれたICT銘柄」という評価になっています。さらにPBRが4.04倍というのは、メーカー系企業としては珍しいほどの高さで、市場が大きな期待を寄せている証拠です。
ただ、こうした高いPBR・PERが示しているのは、「NECの改善が今後も続くかどうか」が株価に直結するということです。利益率がさらに上がったり、行政DX・企業DX・5G/光ネットワークの分野で成長が加速すれば株価は評価され続けますが、逆に改善が止まれば一気に評価が下がる可能性もある“プレミアム評価”になっています。
とはいえ、営業キャッシュフローが15万 → 27万 → 34万百万円と大幅に伸びている点を見ると、本業の稼ぐ力が急速に強くなっているのは確かで、企業体力という面では安心感があります。利益率を上げながらキャッシュも積み上がっているので、会社の中身はしっかり良い方向に変わっています。
総合的に見ると、NECは「売上で勝負する会社」から「利益率と付加価値で勝負する企業」へと変わってきたタイミングにあり、長年の課題だった収益性の改善が数字として着実に結果として表れています。そのため、成長企業とは言えないまでも、成熟したICT企業としての存在感は確実に増していて、安定性と成長性のバランスが取れた銘柄になりつつあります。
ただし、株価はすでに期待を織り込んだ水準にあるため、割安で買える銘柄ではありません。市場の期待が大きいぶん、良いときは伸びますが、業績が停滞したときの調整も大きくなりやすいタイプです。結局、今のNECは“業績改善を信じる人が買う銘柄”であり、“割安を探す人が買う銘柄ではない”という位置づけになります。
配当目的とかどうなの?
NECを配当目的で考えると、正直なところ「配当でこの銘柄を選ぶ理由はほぼない」という結論になります。予想配当利回り(2026・2027年度)が0.5%台というのは、東証プライムの中でもかなり低い水準で、配当を重視する投資家からすると、ほぼ対象外に近い数字です。NECはもともと配当で魅せる会社ではなく、事業投資や研究開発を優先するタイプなので、高利回りでホルダーを惹きつけるというようなスタイルではありません。
もちろん、配当自体は少しずつ増えていて、22円 → 24円 → 28円 → 32円(予想)と増配傾向にはあります。ただ、それでも株価が高いので利回りは0.5%前後からまったく上がりません。配当狙いの投資家にしてみれば、「わざわざNECで配当を取る必要はない」というのが素直な印象でしょう。
NECの場合はむしろ、配当よりも“会社の中身が良くなり続けている”ことの方が重要です。営業利益率もROEも改善してきていて、構造改革やDX事業の拡大で、数字の質が明らかに良くなっているタイミングにあります。こうした状況で、内部留保を設備投資やサービス強化に使うのは合理的なので、配当を惜しんでいるというより「今は成長フェーズだからそっちを優先します」というメッセージに近いです。
結局のところ、NECは配当を楽しむ銘柄ではなく、これからの事業成長や収益性の改善を期待して持つ銘柄です。「配当目的で買うなら他を選ぶべきだけど、企業成長に期待して長く持つならアリ」という立ち位置になります。少し極端に言えば、NECの配当はおまけのようなもので、主役は業績と事業の強化。だから利回りだけで見ると弱いけれど、それがNECにとっては自然な姿でもあります。
今後の値動き予想!!(5年間)
NECの現在値が5,980円というところから、この先5年間の株価の動きを考えていくと、やはりポイントになるのは「NECがこのまま利益体質を強化し続けられるかどうか」という部分に尽きます。NECはここ数年で営業利益率やROEが着実に改善してきていて、構造改革の効果がようやく数字に表れはじめたタイミングです。そのため、今の株価にはすでに“期待値”がかなり織り込まれており、良い意味でも悪い意味でも、業績次第で大きく動くタイプになっています。
まず、業績が順調に伸び続ける「良い場合」を考えると、5年後の株価が8,000〜10,000円あたりまで届く可能性があります。NECは官公庁や自治体のDX、通信インフラ、海外の公共案件など、安定した案件が多いので、もし利益率の改善が継続し、営業利益率が8〜9%台まで乗ってくるような展開になれば、市場からの評価もさらに高まりやすく、株価が1万円を超えるシナリオも十分にあり得ます。NECは収益構造が改善してきたばかりなので、その勢いが続けばこれは“普通に現実的”な強気パターンです。
次に、もっとも可能性の高い「中間のシナリオ」ですが、こちらは6,200〜7,200円あたりが妥当なレンジになります。NECは急成長するベンチャー企業のような爆発力はありませんが、安定した公共案件と企業向けITで堅く利益を積み上げていける会社です。そのため、派手さはないかわりに極端に崩れにくく、緩やかに右肩上がりを続けるタイプの動きになります。利益率が今の7%前後を維持し、ROEも8〜10%あたりに落ち着くようなら、この“安定成長路線”が続くと考えるのが自然です。
そして、注意しておきたい「悪い場合」のシナリオでは、5年後の株価が4,200〜5,000円あたりまで下がる可能性もあります。NECは現在PBR4倍というかなり高い評価を受けている銘柄なので、もしDXの案件が減ったり、公共事業の更新サイクルが鈍化したり、利益率改善が止まるようなことがあれば、今の“期待プレミアム”が剥がれ落ちる可能性があります。そうなると、株価が一度大きく調整されることも考えられます。ただ、NECは財務体質が強く、キャッシュフローも良好なため、落ちたまま戻らないようなタイプではありません。
こうして3つのパターンを並べてみると、NECは短期で上下に激しく振れる銘柄というより、会社の収益性の改善が続く限り、長期でじわじわ評価されていくタイプの銘柄だと分かります。特に中間シナリオの実現可能性が高く、5年後には今より少し上がった位置で落ち着いているというのが一番しっくりくる未来です。
配当が低いぶん、株主へのリターンはどうしても株価上昇頼みになりますが、そのぶんNECの今後の業績改善やDX領域の伸びに期待する長期投資家に向いた銘柄だと言えます。まとめると、「爆発力はないけれど、じっくり育てていくには悪くない銘柄」という位置づけになります。
この記事の最終更新日:2025年11月15日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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