株価
ルネサスエレクトロニクスとは

ルネサスエレクトロニクスは、日本を代表する大手半導体メーカーであり、現在の会社は「日立製作所」「三菱電機」「NEC」という日本の三大電機メーカーの半導体部門が段階的に統合された結果として成立した企業です。最初に日立製作所と三菱電機の半導体部門が統合し、2003年に「ルネサステクノロジ」が設立され、その後2009年にNECエレクトロニクスと経営統合する形で現在のルネサスエレクトロニクスが誕生しました。日本の半導体技術が一つにまとまった象徴的な企業であり、特にマイコン(MCU)や車載向け半導体に強い競争力を持っています。
同社は、自動車、産業機器、家電、通信機器など幅広い分野の制御を担う「マイクロコントローラ(MCU)」を中心に、パワー半導体、アナログ半導体、SoCなどを提供しています。自動車分野では、エンジン制御、ADAS、安全装置、車体制御など幅広く採用されており、世界トップクラスのシェアを持つ企業です。また、産業機器向けでは工場の自動化、ロボット制御、インフラ制御などで重要な役割を果たしています。
近年はM&Aにも積極的で、Intersil、IDT、Dialogなど海外の半導体企業を買収することで、アナログ・パワー・無線通信・電源制御といった製品ポートフォリオを大幅に強化しました。これにより「車載×パワー」「産業×アナログ」など高付加価値領域への展開が一層加速しており、競争力の底上げにつながっています。ソフトウェア企業の買収も進めており、ハード/ソフトのセットでソリューションを提供する戦略を明確にしている点も特徴の一つです。
ルネサスは従来の「日本の半導体メーカー」という枠を超えて、グローバル市場で存在感を強めている企業です。特に車載半導体はCASE(電動化・自動運転化の波)により需要が増え続けており、ルネサスにとっては長期的な追い風となっています。また、産業用途でもIoT化や工場の自動化需要に応えることで市場を拡大。海外売上比率も高く、世界的な半導体サプライチェーンの中で重要なポジションを確立しています。
同社はまた、半導体の製造プロセスにおいて外部ファウンドリを活用する「ファブレス寄り」のビジネスモデルを採っており、資産負担を抑えながら製品開発と設計に注力できるのが特徴です。国内工場も残しているものの、世界的な需給変化にも柔軟に対応できる構造になっています。
総じて、ルネサスエレクトロニクスは日本の半導体産業の集約企業として成立し、現在では車載・産業向けの強力なポートフォリオを持つ世界的半導体企業として成長し続けています。M&Aで技術を取り込みながら市場を拡大し、次世代の電子機器や自動車産業を支える中心的な存在となっている企業です。
ルネサスエレクトロニクス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 配当金 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022/12 | 1,500,853 | 424,170 | 362,299 | 256,632 | 137.7 | 0 |
| 2023/12 | 1,469,415 | 390,766 | 422,173 | 337,086 | 189.8 | 28 |
| 2024/12 | 1,348,479 | 222,977 | 263,833 | 219,084 | 122.5 | 28 |
| 2025/12(予) | 1,300,000 | 147,000 | -100,000 | -100,000 | -55.3 | 28 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022 | 479,325 | -97,523 | -294,770 |
| 2023 | 496,627 | -267,492 | -181,247 |
| 2024 | 340,484 | -1,284,105 | 677,345 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績/予想) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 26.5% | 16.8% | 10.6% | ― | ― |
| 2024 | 16.5% | 8.6% | 4.8% |
高値平均 18.1倍 安値平均 9.8倍 |
1.56倍 |
| 2025 | 11.3% | -4.0% | -2.3% | 予想PER ― | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ルネサスは、売上規模こそ1.3兆円前後と半導体大手としての存在感は維持しているものの、ここ3年の業績推移を見ると、典型的な「半導体サイクルの下り局面」をそのまま反映した動きになっています。
2022〜2023年は営業利益率26%を超える非常に高い水準が続き、ROE・ROAもしっかり伸びており、好調な自動車半導体需要と円安の追い風を受けて高収益体質が際立っていました。ただ2024年に入ると明確に減速し、営業利益率は11%台まで縮小、ROEは-4%へ落ち込み、ROAもマイナス化しており、利益面での勢いがかなり弱まっています。
経常利益・純利益の推移を見ても、2022→2023は好調でしたが、2024年で利益が大きく落ち、2025年の会社予想では純利益がマイナスに転落する見込みになっています。つまり、短期的な収益悪化を示すシグナルがハッキリ出ている状況です。
一方で、財務指標をみるとPBRは1.5倍前後とそこまで割高ではなく、過去のPERレンジも高値18倍・安値9倍あたりで推移していました。ただし2025年は純利益が赤字予想のためPERが計算不能になり、バリュエーション判断は難しくなっています。PERが使えないということは「企業価値評価が利益水準の回復を前提にしている」と見なされ、今の株価が割安とも割高とも言い切りにくい微妙な状態です。
総合すると、ルネサスは自動車半導体・産業向けで世界的な需要はあるものの、現在は業績の谷に入りつつあり、短期の投資妙味はやや薄めという印象です。ただ、半導体サイクルは必ず回復局面が来るため、中長期的には復活の余地が大きい銘柄です。2024〜2025の利益悪化が「一時的か構造的か」で評価が大きく変わります。もし今後の四半期で受注回復やASP上昇が見えれば再び利益率が改善し、株価も戻りやすい特徴があります。
現時点では「谷の真ん中にいる」印象が強く、短期では値動きが不安定になりやすいが、業績回復が確認されたタイミングで仕込むとリスクとリターンのバランスが取りやすい銘柄です。逆に今の時期は強気一本で買いに走るにはリスクが高い局面という判断になります。
配当目的とかどうなの?
ルネサスエレクトロニクスの配当についてまとめると、現状は「株主還元を強化しつつも、まだ大幅増配を狙うタイプではない」という立ち位置にあります。予想配当利回りは25.12期・26.12期ともに1.44%で、利回りとしては日本株全体の中で“高配当株”とは言えない水準です。もともと同社は長年無配だった期間があり、ようやく安定して配当を出せる財務体質に変わってきた段階なので、「利回りで稼ぐ銘柄」ではなく「業績連動で少しずつ増配を狙う銘柄」という方が正確です。
特に足元では2025年の純利益が赤字予想になっていることもあり、無理に配当性向を引き上げるような姿勢ではありません。業績の浮き沈みが激しい半導体企業という性質上、安定した高配当を求める投資家とは相性がよくありません。あくまで配当は“おまけ”で、企業としては設備投資・研究開発・買収など成長投資を優先する方針が強い状態です。
そのため、ルネサスを配当目的で買うメリットは小さく、どちらかといえば「株価上昇や成長ドライバーを狙う投資」の方が向いています。利回りだけを見ると、他の高配当株の方が明らかに効率は良いです。ルネサスの配当は今後安定して増える可能性はありますが、短期的に大きく育つ見込みは薄いので、配当目的の投資判断としては控えめな評価になります。
今後の値動き予想!!(5年間)
ルネサスエレクトロニクスの株価は現在1,935円ですが、今後5年間の見通しは、半導体サイクルと自動車向け半導体の需要動向に強く左右される展開になると考えられます。直近の決算では売上がピークアウト気味で、2025年予想も営業利益・経常利益の大幅な縮小、さらには純利益の赤字予想が示されているため、まず当面は調整圧力が強い状態です。これを踏まえて良い場合・中間・悪い場合の3パターンを整理します。
良い場合のシナリオでは、世界的な半導体需要が回復し、特に自動車向け・産業向けMCUが再び成長軌道に乗ることが前提になります。さらにルネサスが続けている海外企業の買収が成功し、シナジー効果によって利益率が改善するなら株価は大きく上昇する可能性があります。この場合、現在の1,935円から5年間でおよそ 3,200~3,800円前後 まで上昇するイメージです。PERが再び15倍〜20倍台へ戻り、ROEも10%以上を安定的に確保できれば十分射程圏内に入ります。
中間のシナリオでは、半導体市場は回復するものの急激な上振れまでは至らず、ルネサスも増収・増益ペースは緩やかという展開です。買収による成長も進むが、収益性改善までは時間がかかるケースです。この場合、株価は現在からゆるやかな上昇で、5年後には 2,300~2,700円程度 が目安になります。大幅な成長はないものの、安定的な業績を維持できれば株価もじわじわ評価されていくパターンです。
悪い場合のシナリオは、半導体市況の回復が遅れたり、自動車向け需要が構造的に減速したり、買収した企業の統合がうまく進まないケースです。また2025年に純利益が赤字予想となっている点から、ここが長期化するリスクもゼロではありません。この場合、株価は今の1,935円から下落して 1,200~1,600円程度 に位置する可能性があります。ROEやROAが低水準にとどまり、投資家評価が縮小すると株価は大きく伸びにくくなります。
総合的には、ルネサスエレクトロニクスは「世界的な半導体サイクルの回復次第で伸びる余地はあるが、短期ではリスクが比較的高い銘柄」という位置付けになります。業績の振れ幅が大きい会社のため、5年間の株価も上振れ・下振れの差がはっきり出るタイプです。将来の成長ストーリーがうまく回れば株価は大きく化ける可能性があり、逆にシナジーが出なければ長期停滞に入ることも十分あり得ます。
この記事の最終更新日:2025年11月15日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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