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シャープとは

シャープ株式会社は、日本を代表する総合電機メーカーとして発展してきた企業であり、本社は大阪府堺市に構えています。もともとは万年筆の芯が折れない「エバー・レディ・シャープ・ペンシル」のヒットで事業基盤を築き、その“シャープペンシル”が社名の由来となっています。その後は家電、通信機器、ディスプレイ、電子部品など幅広い事業領域へ拡大し、日本の家電産業を支える大手企業として長い歴史を歩んできました。
現在のシャープは、国内メーカーでは珍しく台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)を親会社とするグローバル企業となっており、世界規模の調達力・生産力・サプライチェーンを武器に事業運営しています。これは2016年前後の経営危機をきっかけに鴻海の支援を受け入れ再建を進めた流れで、シャープにとっては大きな転換点となりました。
事業構成としては、大きく「ブランド事業」と「デバイス事業」に分かれており、ブランド事業にはテレビ(AQUOS)、エアコン・冷蔵庫・洗濯機などの白物家電、オフィスソリューション、ヘルスケア機器、スマートフォンなどが含まれます。特にAQUOSブランドは国内外で高い知名度を持ち、ディスプレイ開発の歴史が長いシャープの象徴でもあります。また、プラズマクラスターなどの独自技術を活用した空調・空気清浄分野は依然として強みがある領域となっています。
一方のデバイス事業では、液晶パネルを中心としたディスプレイ関連製品が主力で、堺工場や亀山工場を軸に高精細パネルの生産を行っています。以前は世界トップレベルの技術力を誇っていましたが、ディスプレイ市場の競争激化や価格下落により、収益性には波が見られます。それでもなお、産業用・車載向けパネルでは一定の存在感を保ち、家電・通信・産業用途に幅広く供給しています。
近年のシャープは、構造改革を進めながら「スマートライフ(家庭)」「スマートワークプレイス(オフィス)」「通信」「デバイス」という4分野に重点を置き、AI・IoT・エネルギー関連など新たな価値創出を目指した事業再編を進めています。特に、プリンター、複合機、オフィスソリューション、ヘルスケア機器などは比較的安定した収益源となっており、中期経営計画でも継続的な強化が示されています。
ただし、テレビ事業・ディスプレイ事業は市場全体の競争環境が厳しく、収益改善が最大の課題となっています。鴻海グループの資本を活用しながら、海外販路の強化と事業構造の見直しを進め、利益体質の改善を狙っています。また、AI家電、ロボティクス、環境・エネルギー技術への展開など、新分野の育成にも積極的に取り組んでいます。
このようにシャープは、老舗メーカーとしての厚い技術基盤を持ちながらも、市場の変化に合わせて事業の再構築を続けている最中の企業です。鴻海グループの一員としてグローバルなバックアップがある点も特徴であり、国内メーカーの中でも独自のポジションを築いています。
シャープ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 2,548,117 | -25,719 | -30,487 | -260,840 | -407.3 | 0 |
| 連24.3 | 2,321,921 | <-20,343 | -7,084 | -149,980 | -231.0 | 0 |
| 連25.3 | 2,160,146 | 27,338 | 17,653 | 36,095 | 55.6 | 0 |
| 連26.3予 | 1,870,000 | 30,000 | 27,000 | 32,000 | 49.3 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 14,746 | -40,967 | -18,483 |
| 2024 | 124,495 | 10,875 | -149,668 |
| 2025 | -1,590 | 103,743 | -74,768 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | -1.1% | -125.2% | -14.8% | ― | ― |
| 2024 | -0.9% | -105.4% | -9.5% | ― | ― |
| 2025 | 1.2% | 23.5% | 2.4% | ― | 2.70倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
シャープの直近3年間の数値を見ると、まず最初に目立つのは「連23.3 と連24.3 の2年連続の赤字」と、そこからようやく黒字転換した連25.3 という流れです。営業利益率も2023年が -1.1%、2024年が -0.9%とマイナスが続き、2025年にようやく 1.2%とプラスへ転じていますが、依然として非常に低い水準で、事業としての収益体質がまだまだ弱いことを示しています。経常利益も似たような推移で、2023・2024 ともに赤字、2025年でやっと17億円弱の黒字。このレベルだと「復活」というよりも「底を抜けた直後」という印象に近い状態です。
純利益も、23.3では -2608億円という極めて大きな赤字、24.3でも -1499億円と依然として巨額の損失を抱えています。25.3で36億円の黒字ですが、前2年の赤字規模が非常に大きいため、財務体力はまだ完全に回復したとは言えません。ROEもマイナス125%、マイナス105%と非常に厳しい水準から、25.3でようやく 23.5%とプラスにはなったものの、これは「利益が小さいのに自己資本も大きく毀損している」ことによって数字が歪むケースであり、強い収益力で稼ぎ出したROEというよりも、財務構造の影響を強く受けた数字と判断するべきです。ROAも -14.8% → -9.5% → 2.4% と推移しており、事業全体の総資産に対する稼ぐ力がようやくプラスに戻った程度です。
PER については、23.3・24.3 が赤字なので算出不能、25.3は黒字ですが市場がまだ評価をしきれておらず、実績PERは「―」となっています。PBRだけは 2.70倍という比較的高めの数字がついていますが、これは「株価が高い」というよりも、「自己資本が赤字続きで目減りし、分母が小さくなっているためにPBRが高く出ている」ケースです。つまり、“割高に見えるが、実態は財務弱体化によって数値が歪んでいる” という状態です。
総合的に見ると、現時点でのシャープは「事業再生の途中段階で、黒字化したがまだ本格回復とは言えない」という評価になります。業績の底打ち感はあるものの、営業利益率・経常利益率・財務CF の動きなどを見ると、安定して利益を積み上げる体質にはまだ程遠い印象です。過去数年の赤字幅が非常に大きく、財務の回復スピードも鈍いため、投資家側から見ると「リスクが高い再生局面の銘柄」という位置づけになります。
つまり、現時点でシャープに投資する場合は、「再建が本当に成功するかどうか」を強く問われる投資であり、“成長株として買う” というより “再生転換に賭ける” というイメージに近いです。ハイリスク・ミドルリターンあるいはハイリスク・ローリターンのどちらに転ぶか分からない局面で、業績がまた悪化すれば株価が大きく崩れる可能性も残っています。
結論として、足元の数字から判断する限り、安定投資や配当狙いの銘柄ではなく、業績再生シナリオに期待する人向けの「リスク型銘柄」。安全性を求める投資家には向かず、慎重姿勢が必要な銘柄だと言えます。
配当目的とかどうなの?
シャープは現時点で配当を全く出しておらず、今後2年間の予想配当利回りも「0.00%」となっているため、配当目的の投資先としては完全に不向きな銘柄と言える。業績が赤字続きだった期間が長く、ようやく黒字に転じたとはいえ、財務基盤は依然として脆弱であり、内部留保の再構築や事業再建を優先している状況が続いている。したがって株主還元に回す余裕はほぼなく、利益が安定化するまで無配が継続する可能性が高い。
さらに、ROEが2023・2024年度で大幅なマイナスとなっており、利益水準が不安定である以上、再び配当を出せる体力を取り戻すには時間がかかると考えられる。2025年度に黒字を回復したとしても、すぐに配当復活に踏み切るとは考えにくく、設備投資や構造改革費用を優先せざるを得ない状況だ。結果として、安定した配当収入を求める投資家にとっては、現段階のシャープは選択肢に入りにくい。
配当狙いの投資であれば、同じ電機・電子部品セクターでも高配当を維持している企業はいくつも存在するため、シャープをあえて選ぶ理由は薄い。もしシャープに投資する場合は配当ではなく、本当に企業再建が成功して業績が上向くかどうか、つまり「キャピタルゲイン狙い」での投機的な判断にならざるを得ない。
まとめると、シャープは配当を期待する銘柄ではなく、復活を賭けて株価の上昇を待つタイプのハイリスク銘柄であり、配当目的ではまったく適さない。
今後の値動き予想!!(5年間)
シャープの現在値は863.6円で、直近の決算を見るとまだ再建途中という位置づけです。売上は2兆円台から縮小傾向で、営業利益率もようやくプラスに戻った段階です。ROE・ROAに関しては過去2年間が大幅な赤字で、ようやく25.3期に黒字化したとはいえ、企業としての収益体力は依然として回復途上と言えます。PBRは2.70倍と資産価値に対してはやや割高で、バリュー株というよりは「再建期待を織り込んだ株価」という評価の方が近い状態です。配当も0円が続いており、投資家への還元は実質ゼロなので、キャッシュリターン目的で保有するのには向きません。
良い場合のシナリオでは、構造改革が進み、デバイス事業やスマートライフ事業が黒字化を維持し、為替にも追い風が出た場合には、5年かけて株価が1,200円〜1,500円程度まで回復していく可能性があります。過去の赤字の影響が消え、営業利益率が安定して3〜5%に戻れば、今の期待先行のPBR2.7倍を維持したまま増益を背景に株価が伸びる形です。再建が順調に進めば2倍近い伸びもあり得ます。
中間シナリオでは、黒字化は維持するものの売上の縮小傾向が止まらず、利益も横ばいで推移する場合、株価は900〜1,100円のレンジに収まると考えられます。つまり今より少し上がる程度で、会社としての再建余地が残りつつも大きな成長を描くまでには至らないというパターンです。この場合はPBR2倍前後まで正常化し、株価も緩やかな推移になるでしょう。
悪い場合のシナリオでは、再び赤字に逆戻りする、構造改革が不十分、円高で利益圧迫、世界需要低迷などが重なると、株価は600〜750円程度まで下落してもおかしくありません。すでにPBRが高めなので、収益が崩れた瞬間に評価が下がり、株価も一気に売られるリスクがあります。配当が0円であることも含め、株価下支えの材料が弱いため、悪い方に傾くと下落しやすい構造と言えます。
以上のように、シャープは再建株としての位置づけが強く、収益改善が進むかどうかで5年後の株価は大きく差がつきます。成長株として買うなら上昇余地はある一方、リスクも大きい銘柄です。安全性を重視したい投資家よりも、ある程度リスクを取って再建シナリオに賭けるタイプの投資家向きと言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月15日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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