株価
TDKとは

TDK株式会社は、日本を代表する電子部品メーカーであり、世界でもトップクラスの技術力を持つグローバル企業です。創業は1935年、東京大学で開発された磁性材料「フェライト」を世界で初めて工業化した企業としてスタートしました。会社名の「TDK」は、創業名である「東京電気化学工業」に由来します。現在ではフェライト技術を核に、材料技術・プロセス技術・評価技術・製品設計・製造技術といった“5つのコア技術”を柱として、多様な電子部品を世界中に供給する巨大サプライヤーへと成長しています。
事業は大きく4つに分かれています。1つ目は パッシブコンポーネント事業 で、セラミックコンデンサ・インダクタ・高周波部品など、あらゆる電子機器に不可欠な部品を製造しています。これらは自動車、スマートフォン、家電、産業ロボットなど、あらゆる分野で使用されており、TDKの基盤となる中心事業です。2つ目は センサー応用製品事業 で、MEMSセンサー、磁気センサー、温度・圧力センサーなどを展開しており、自動車(特にEVやADAS)やスマートデバイス向け需要が急増しています。3つ目は 磁気応用製品事業 で、HDDヘッドや磁気部品、強力磁石などを扱い、長年の磁性材料技術が活かされています。4つ目は エネルギー応用製品事業 で、電源装置、リチウムイオンバッテリー、産業用電源、車載用電源部品など、エネルギー変革(EX)分野で重要となる製品を展開しています。
TDKの特徴は、とにかく「部品メーカーとしての総合力」が極めて高い点です。電子部品、センサー、電池、電源と、多くの領域をカバーし、しかも世界レベルの競争力を維持しています。また、研究開発にも積極的で、世界30か国以上に研究開発・製造拠点を持ち、グローバル体制を構築しています。最近では「自動車の電動化」「再生可能エネルギー」「5G・6G・IoT」「AI端末」「産業機器向け需要」など、世界的な成長分野をターゲットにしており、中期経営計画でもEX(エネルギー変革)とDX(デジタル変革)をキーワードとして成長投資を進めています。
また、磁性材料・センサー・電源・電池・電子回路部品など、異なる技術領域を組み合わせた複合ソリューションの提供にも力を入れています。グループ従業員は10万人超と規模も非常に大きく、素材開発から部品製造まで垂直統合型で展開しているのが強みです。
総じて、TDKは日本の電子部品業界の中心的存在であり、世界的な自動車電動化、ICTインフラ、スマートデバイス、エネルギー管理分野の拡大を追い風に、長期的な成長が期待される企業と言えます。
TDK 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 2,180,817 | 168,827 | 167,219 | 114,187 | 60.2 | 21.2 |
| 2024.3 | 2,103,876 | 172,893 | 179,241 | 124,687 | 65.7 | 23.2 |
| 2025.3 | 2,204,806 | 224,192 | 237,808 | 167,161 | 88.1 | 30 |
| 2026.3予 | 2,160,000 | 202,500 | 215,500 | 152,500 | 80.4 | 30 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 262,772 | -234,402 | 14,947 |
| 2024 | 447,007 | -216,592 | -146,368 |
| 2025 | 445,839 | -244,842 | -143,333 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.7% | 7.8% | 3.6% | ― | ― |
| 2024 | 8.2% | 7.3% | 3.6% | ― | ― |
| 2025 | 10.1% | 9.2% | 4.7% |
高値平均 22.7倍 安値平均 13.8倍 |
2.51倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
TDK は、この3年間の収益指標を見る限り、電子部品メーカーとして堅実に利益体質を強化している企業だと言える。まず、営業利益・経常利益・純利益の推移を見ると、23.3期から25.3期にかけて利益は着実に伸びており、特に25.3期の営業利益率が 10.1% と二桁に乗っている点は大きな評価ポイントだ。電子部品業界は市況の波が大きく、景気後退局面では利益が大きく削られがちだが、その中でも営業利益率が改善しているのは、製品構成の高度化・自動車向けセンサー需要の強さ・高付加価値部品への戦略転換が機能している結果と判断できる。
ROE・ROA に関しても安定しており、ROE が 7.8% → 7.3% → 9.2% と推移しているのは、資本効率を維持・改善しながら利益を稼いでいる証明になる。ROA も同様に改善傾向で、資産効率の観点でも一定の評価ができる。電子部品業界では ROE10%前後なら標準~やや良好という位置づけなので、TDK はまさにその領域へ近づいている段階と言える。
一方で、PER は 2025年実績ベースで「高値平均 22.7倍 / 安値平均 13.8倍」という水準で、PBRは 2.51倍。これをどう見るかが投資判断のポイントになる。PER20倍前後は“成長期待株”としての評価が織り込まれつつある水準で、業績の伸びが鈍れば、一転して割高評価の修正(株価調整)が起きる可能性がある。つまり、数値上は良好だが「価格に期待がかなり乗っている」という側面も無視できない。
総合して、TDK は“業績は着実に改善・体質強化を進めているが、株価指標はやや高めで、成長期待を織り込んだ価格帯にある”という評価になる。
成長力・収益改善を重視する投資家にとっては魅力があるが、割安性を求める投資家にとっては少し慎重になる局面かもしれない。
結局のところ、「このまま利益成長を維持できるか」が中期保有の最大のカギであり、その見通しが立てば投資妙味は高まり、反対に成長鈍化が見え始めるとPER・PBRの高さが重荷になる可能性がある。
配当目的とかどうなの?
TDKの配当について考えると、まず前提として予想配当利回り(2026・2027年度)が1.26%という数字は、日本株の中ではやや低めの水準に入ります。高配当株として保有するには正直魅力は強くありません。配当金そのものは安定的に増配傾向にあるものの、利回りが低いため、配当収入に重きを置く投資家からすると物足りない銘柄と言えます。
ただし、TDKの配当政策は「急激に増やすタイプ」ではなく、「業績と連動しながら着実に増配を続けるタイプ」に近いので、長期的に見ると配当がじわじわ伸びていく可能性はあります。直近3年の利益水準が着実に改善し、営業利益率やROEも上昇してきているため、企業としての稼ぐ力が強化されている点はプラス要素です。今後も利益成長を見せることができれば、配当金が増えて利回りが改善する可能性はあります。
また、TDKは電子部品・センサー・EV向け電源デバイスなど成長期待のある分野に強みを持っているため、「成長企業として株価上昇によるキャピタルゲインを狙いつつ、ついでに少しだけ配当がもらえる銘柄」と捉える方が実態に近いです。いわゆる高配当株と違って、毎年の配当収入を目的に買う銘柄ではありません。
まとめると、TDKは配当目的だけで買うには利回りが低く魅力は薄いが、利益成長が続くなら将来的な増配余地はあるため、「成長+小さな配当のセット」で考えるなら悪くないという位置づけになります。完全な配当狙いの観点だと優先度は低く、どちらかと言えば業績拡大や株価成長を期待しながら保有するタイプの銘柄だと言えるでしょう。
今後の値動き予想!!(5年間)
TDKの現在値は2,535.5円だが、今後5年間の株価は、事業環境の変化によって大きく振れる可能性がある。特に同社はセンサー、受動部品、電池、電源など幅広い電子部品を扱っており、自動車の電動化、産業機器、スマートフォン、データセンター、再エネ用部材など複数の市場の景気に左右される構造だ。営業利益率は最近10%程度まで改善しており、ROEも9%前後まで上がっているため、収益体質は以前より強くなっている。一方で、電子部品業界は景気変動が大きく、業績が伸びるときは急成長し、逆に落ち込むときは急減速する特徴がある。
良い場合は、今後5年間でEV需要が世界的に再加速し、センサー・電池・受動部品の需要が伸び続けるシナリオでは、株価は今の2,535円から3,800〜4,500円程度まで上昇する余地がある。TDKは自動車向け部品の比率が高いため、世界の自動車市場の電子化が再加速すれば直接恩恵を受ける。またROEが10%台に定着して市場評価が上がり、PBRが現状2.5倍から3倍近くまで見直されるケースでは、株価上昇が現実的になる。
中間の場合は、成長はするものの急加速までは至らず、電子部品の需給に波がありながら穏やかに進む展開。この場合、株価は2,800〜3,300円程度のレンジで推移すると考えられる。営業利益率は今の10%前後を維持しつつも、競争環境やコストの影響で大幅改善までは至らないイメージだ。このシナリオでは株価が大きく崩れることは少ないが、上昇幅も限定的になる。
悪い場合は、世界的な景気後退、EV伸び悩み、スマホ需要の鈍化、原材料高騰、為替の逆風などが重なったケース。この場合、部品需要が冷え込み、収益性も低下し、株価は1,700〜2,300円程度まで下がる可能性がある。電子部品業界は外部環境の影響を強く受けるため、1〜2年単位で大きく減速するリスクは常にある。市場評価も低下し、PBRが2倍台から1倍台後半に落ち込む可能性も否定できない。
以上のように、TDKの株価は業績次第で大きく動く可能性があるが、基本的には「中期的には堅実に成長しやすいが、景気に振られやすい」性質の銘柄といえる。電子部品セクターの循環性を理解した上で、中期のテーマに沿って保有するかどうかを判断すると良い。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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