株価
アドバンテストとは

アドバンテスト株式会社は、1954年に創業した日本を代表する半導体検査装置メーカーで、本社を東京都千代田区に構えるグローバル企業です。半導体産業の「最後の品質保証」を担う企業として知られており、半導体が正常に動くかどうかを最終工程でチェックする“自動テスト装置(ATE)”の分野で世界トップクラスのシェアを誇っています。とくにロジック半導体向けテスト装置では、アドバンテストは世界的リーダーとしての地位を確立しており、インテルやTSMC、サムスン、エヌビディアなど世界の大手半導体メーカーやファウンドリに製品が多数採用されています。
半導体は微細化・複雑化が進むほど不良率が上がりやすく、製造後のテストは必須の工程です。高性能CPUやGPU、5G向け通信IC、AI向けチップ、車載向け半導体などは非常に高度な品質が求められるため、製造ラインにおいてアドバンテストのテストシステムが果たす役割は年々重要になっています。半導体の性能向上はイコールでテスト技術の高度化を意味するため、アドバンテストの技術力は半導体業界全体の進化とともに需要が増え続けています。
同社の事業の中心となるのは「半導体テストシステム事業」です。ここではロジックICやメモリチップ、AIチップ、通信チップなど幅広い半導体を検査する装置を提供しており、特にロジック系で強く、エヌビディアのGPUやハイパワーAIプロセッサの需要増により、同社のテスト需要も世界的に伸びています。また半導体の微細化に伴い、テストの項目数や複雑さも増えているため、アドバンテストの高速・高精度テスト技術はまさに業界の基盤と言える存在です。
次に「メモリテスト事業」では、DRAMやNANDフラッシュなどのメモリ製品のテスト装置を提供しています。世界のデータセンター需要が伸び続け、AI・クラウド・サーバー市場が拡大する中で、メモリの生産量が急増しており、アドバンテストのメモリテスト装置も安定した需要があります。とくにハイエンドのサーバーメモリや高性能ストレージ向けメモリは品質要求が高く、テスト工程が省略できないため、今後も長期的な需要が見込まれています。
さらに「計測・デバイス事業」では、半導体製造工程で使われる測定装置やハンドラ、電子計測器などを提供しており、テスト工程全体を自動化・効率化する役割を果たしています。また「サービス・ソリューション事業」では、テスト工程の最適化、テストデータの解析ソフト、AI活用による歩留まり改善など、製造現場の運用を支えるソリューション提供も強化しています。テスト装置の保守やアップグレードサービスも安定的な収益源になっており、装置販売だけに頼らないビジネスモデルの強さが際立っています。
アドバンテストの強みは、なんと言っても「半導体業界の構造的な成長」と「テスト工程の重要性上昇」の両方に支えられている点です。AI半導体、データセンター、EV、自動運転、ロボット、5G/6Gなど次世代産業はすべて高度な半導体を必要とするため、今後も半導体市場は長期的な成長が見込まれています。そして半導体が進化するほどテスト工程が複雑になり、アドバンテストの装置は必要不可欠になっていきます。
つまり、アドバンテストは半導体バブルの波に乗るだけでなく、半導体製造の“根幹に近いポジション”にいるため、市場の好景気が続く限りテスト需要が止まることはありません。また自動テスト装置は参入障壁が非常に高い分野で、新規参入はほぼ不可能に近く、既存の大手メーカーしか競争できない世界です。その中でもアドバンテストはトップクラスのシェアを持ち、技術力・信頼性・実績すべてが揃った企業として業界で強固な立場を築いています。
総合的に見ると、アドバンテストは「半導体の進化が続く限り長期で成長が見込める企業」であり、AI時代・半導体需要増大時代の恩恵を大きく受ける代表的な日本企業です。半導体業界に欠かせない“影の主役”として、今後も世界の半導体生産を支え続ける重要な存在と言えます。
アドバンテスト 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 560,191 | 167,687 | 171,270 | 130,400 | 174.4 | 33.8 |
| 24.3 | 486,507 | 81,628 | 78,170 | 62,290 | 84.5 | 34.3 |
| 25.3 | 779,707 | 228,161 | 224,774 | 161,177 | 218.7 | 39 |
| 26.3予 | 835,000 | 300,000 | 297,000 | 221,500 | 302.7 | 39〜60 |
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 70,224 | -26,706 | -77,434 |
| 2024 | 32,668 | -27,940 | 10,760 |
| 2025 | 285,971 | -42,189 | -82,818 |
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 29.9% | 35.3% | 21.7% | ― | ― |
| 2024 | 16.7% | 14.4% | 9.2% | ― | ― |
| 2025 | 29.2% | 31.8% | 18.8% | 高値平均 51.3倍 安値平均 20.8倍 |
23.27倍 |
投資判断
アドバンテストは、あらゆる半導体製造ラインの最終工程で使われる“テスト装置”の分野で世界トップクラスのシェアを持つ企業です。その特殊なビジネスモデルから「半導体が作られれば必ずアドバンテストの装置が必要」という構造になっており、半導体の需要が伸びる限り長期で成長し続けるポテンシャルを持っています。実際に直近3年間の業績を見ても、世界の半導体サイクルに合わせて利益は上下しながらも、最終的には力強く成長していることがわかります。
まず業績面では、2023年は売上5,602億円に対し営業利益1,676億円、営業利益率は驚異の29.9%を記録しており、製造業としては突出した高収益体質を持っていました。2024年は半導体全体の調整局面で利益率が落ち込み、営業利益率は16.7%まで下がりましたが、これは世界の半導体市況の影響であり、同社特有の問題というわけではありません。そして2025年には売上が7,797億円、営業利益2,281億円へと急回復しており、営業利益率も29.2%へ再び戻っています。半導体業界の回復とAI需要の急増が背景にあり、同社のビジネスモデルがいかに景気回復局面で強いかが分かる数字です。
ROEやROAの動きも非常に特徴的で、2023年がROE35.3%・ROA21.7%という非常に高い水準を記録し、2024年は半導体市況悪化で一時的に落ち込むものの、それでもROE14.4%・ROA9.2%と優秀な数字を維持。そして2025年にはROE31.8%・ROA18.8%と再び跳ね上がり、高収益企業としての本領を発揮しています。これほどROEが高い企業は日本市場の中でも上位数%しかなく、資本効率が極めて高い、まさに“稼ぐ力が桁違いの企業”と言えます。
一方でバリュエーションは既にかなりの高さにあります。2025年の実績PERは高値平均51.3倍、安値平均20.8倍という非常に幅広い値動きを示しており、PBRも23.27倍と極めて高い水準になっています。これは「成長期待の塊のような企業」であり、半導体市場の波、特にAIやデータセンター需要が強まる局面では過熱気味に買われやすい銘柄だということを示しています。要するに、良いときはとことん買われ、悪いときはしっかり下がる“ハイベータ成長株”の典型です。
総合すると、アドバンテストは業績・収益性・資本効率すべてが日本企業の中でもトップクラスで、長期的な成長期待が非常に大きい銘柄です。ただし、PERやPBRが非常に高いため、割安株として買う銘柄ではなく、「半導体の上昇局面で乗る成長株」「AI需要が続く限り恩恵を受ける大型テーマ株」という位置づけが正しいと言えます。短期的には市況に振られるものの、長期では半導体需要の拡大とともに株価が成長し続ける可能性が高いです。
結論として、アドバンテストは“世界の半導体需要に長期で賭ける”投資家には非常に魅力的な銘柄であり、半導体サイクルの調整時やPERが下がったタイミングで拾うと大きなリターンが期待できる成長株です。
配当目的とかどうなの?
アドバンテストを配当目的で考える場合、率直に言って“配当狙いにはまったく向かない銘柄”です。予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに0.25%しかなく、東証プライムの平均利回り(約2%前後)と比べても極端に低い水準です。単純に配当金だけを求めて買うのであれば、他にもっと利回りが高く、安定配当を継続している企業が数多くあるため、配当目当ての投資には適していません。
ただし、アドバンテストの場合は配当の低さがデメリットというよりは“会社の性格そのもの”を示しています。同社は高成長が期待される半導体テスト装置の世界トップ企業であり、利益の多くを設備投資・研究開発・事業強化に回すことで、将来の成長を最大化する戦略をとっています。実際に半導体業界は数兆円単位で技術投資が必要な世界であり、アドバンテストが競争力を維持するためには、巨額の再投資が欠かせません。そのため、配当性向は低めに抑えられ、利回りも非常に小さくなる構造になっています。
言い換えると、アドバンテストは「配当金を受け取りながら資産を増やす株」ではなく、「株価の成長そのものを狙うタイプの成長株」です。AI・データセンター・ロジック半導体といった超成長分野の恩恵をダイレクトに受けられる企業であり、配当ではなく株価上昇によるキャピタルゲインで利益を狙うのが主な投資手法になります。
もちろん、低配当という点は人によってはメリットにもなり得ます。会社としては利益を溜め込みながら積極的に次の成長へ投資しているため、中長期で見ると業績の伸びとともに株価が大きく上がる可能性があります。実際、過去のアドバンテストも配当より株価の成長で投資家に大きなリターンをもたらしてきました。
まとめると、アドバンテストは配当目的で買う銘柄ではなく、半導体の長期成長を見据えて株価上昇を狙うタイプの成長株であり、配当利回りはおまけ程度として考えるのが妥当です。「配当重視の投資家には全く向かないが、成長重視の投資家には非常に魅力的な銘柄」それがアドバンテストの正しい評価です。
今後の値動き予想!!(5年間)
アドバンテストの株価は、半導体市場のサイクルとAI需要に大きく左右される典型的な成長株で、良い時には強烈に買われ、悪い時には大きく調整するというメリハリの強い動きが特徴です。現在の株価19,530円は、半導体市況の回復とAIデータセンター需要の拡大が追い風となって引き上げられた水準であり、決して割安とは言えません。ただし、今後5年間という長期目線では、半導体の需要そのものがさらに増える可能性が高く、アドバンテストにとっては引き続き成長余地が十分にある状況です。
まず良い場合のシナリオでは、AI市場がさらに拡大し、NVIDIAやAMDのような高性能半導体の出荷が長期で伸び続けるケースが想定されます。こうした高性能ロジック半導体は必ず高度なテスト工程を必要とするため、アドバンテストへの恩恵は非常に大きいです。加えて、世界中でデータセンターの新設・増設が加速し、AI向けGPU需要が膨らめば、アドバンテストのテスト装置の需要は継続して伸びます。このシナリオが続く場合、株価は右肩上がりで推移し、5年後には25,000〜32,000円台に乗ってくる可能性があります。AIテーマ株として市場が過熱する局面では、35,000円を狙う動きがあっても不思議ではありません。
次に最も現実的な中間シナリオでは、半導体市場は成長トレンドを維持しつつも、何度か循環的な調整を挟みながら進むケースです。半導体業界は2〜3年ごとに在庫調整や設備投資の波が発生するため、毎年が順調というわけではありません。アドバンテストの場合、この波に合わせて売上と利益が上下しやすい構造があるため、株価も上がったり下がったりを繰り返すでしょう。それでも長期では成長基調で推移するため、5年後には18,000〜23,000円前後に収まる可能性が高く、現在値付近での安定的な推移が予想されます。急激に上がらなくても、確実に半導体産業の成長を取り込みながら進む形です。
一方で悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速や地政学リスクによって半導体の設備投資が縮小し、在庫調整が長引くケースが考えられます。特にメモリメーカーなどが投資を絞り込むと、アドバンテストの受注も大きく減少し、短期的に業績が冷え込みます。また円高が急速に進んだ場合も利益が圧迫されやすく、市場の評価(PER)も切り下がりやすくなります。この場合、株価は14,000〜16,000円台まで下がる可能性があります。ただし、アドバンテストは半導体業界の中でもトップ級の技術力と需要の基盤があり、構造不況に陥る可能性は低く、長期的には再び成長軌道に戻ると考えられます。
総合すると、アドバンテストは“上がる時は大きく上がるが、下がる時もそれなりに下がる”という典型的なハイベータ半導体株です。しかし、長期トレンドとしてはAI・データセンター・ロジック半導体の成長が止まらない限り、5年というスパンでは上向きに推移しやすい銘柄と言えます。現時点から見ても、短期の調整を挟みながら中長期では上昇基調を維持する可能性が高く、成長株としての魅力は非常に高いと言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す