株価
ロームとは

ローム株式会社は、京都に本社を構える日本屈指の半導体メーカーで、創業は1958年と歴史のある企業です。もともとは抵抗器メーカーとしてスタートしましたが、その後は早い段階から半導体事業へ軸足を移し、現在ではアナログ半導体、パワー半導体、IC、トランジスタ、ダイオードなど多岐にわたる製品を製造する大手総合半導体企業へと成長しました。とくにアナログ系や電源制御系の半導体に強く、自動車・産業機器・家電・通信機器と、あらゆる分野にロームの技術が組み込まれています。
ロームの特徴的な点として、自社で開発から製造までを一貫して行う“垂直統合型”のビジネスモデルがあります。半導体は供給不足が起こりやすい分野ですが、ロームは主要工程を自社グループ内で完結できるため、品質の高さと安定供給に強いこだわりを持っています。このモデルがあることで、自動車メーカーや産業機器メーカーなど、品質要求が厳しい企業から大きな信頼を得ていると言われています。
事業としては、LSI(集積回路)事業、ディスクリート事業、モジュール事業などに分かれて展開しています。LSIの分野では電源IC、モータードライバIC、センサーIC、通信系ICなど幅広く手がけ、電子制御が求められるあらゆる製品に採用されています。ディスクリートではMOSFET、IGBT、ダイオードなどのトランジスタ系の半導体を扱い、自動車の制御機構や産業用装置に欠かせない重要部品を供給しています。
さらに近年のロームを語る上で欠かせないのが、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体です。これは従来のシリコン半導体よりも高電圧・高温に強く、電力損失を大幅に減らせる次世代パワーデバイスで、電気自動車(EV)、急速充電器、太陽光インバーター、産業ロボットなど、これからの成長分野に欠かせない存在です。ロームはこのSiCの分野に長年注力しており、国内外から技術力と供給力を高く評価されています。特にトヨタグループ関連や欧州自動車メーカーとの協業も進み、世界的に存在感が増しています。
また、ロームは半導体の製造工程の難しさを背景に、生産能力強化にも積極的で、宮崎や福岡など国内工場の増強を継続しています。サプライチェーンの安定化や地政学リスクへの備えも進めており、国内回帰の流れにも沿う形で生産投資を加速させています。海外にも販売拠点を広く構え、グローバル市場で戦える体制が整っているのも強みです。
全体としてロームは、最先端半導体だけでなく、長く使われ続ける汎用半導体まで幅広く取り扱うバランス型のメーカーであり、同時にSiCという成長テーマも持つ企業です。ブランド力に加えて技術の奥行きも深く、安定感と成長性を兼ね備えた半導体メーカーとして知られています。
ローム株式会社 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3* | 507,882 | 92,316 | 109,530 | 80,375 | 204.7 | 50 |
| 連24.3* | 467,780 | 43,327 | 69,200 | 53,965 | 138.8 | 50 |
| 連25.3 | 448,466 | -40,061 | -29,698 | -50,065 | -129.8 | 50 |
| 連26.3予 | 440,000 | 4,000 | 11,000 | 7,000 | 18.1 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 98,628 | -88,738 | -22,153 |
| 2024 | 82,858 | -431,952 | 265,063 |
| 2025 | 83,956 | -115,678 | 39,052 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均) | PER(安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 18.1% | 8.7% | 7.1% | – | – | – |
| 2024 | 9.2% | 5.5% | 3.6% | – | – | – |
| 2025 | -9.0% | -5.7% | -3.5% | 20.0倍 | 13.6倍 | 0.91倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ロームの直近3年間の数字を見ると、同社がいま大きな転換期にいることがよく分かります。2023年までは営業利益率18%台、ROE8%台と十分な水準を維持し、半導体メーカーとして安定した収益力を持っていました。しかし2024年になると業績は一段落ち込み、営業利益率9.2%、ROE5.5%まで低下しています。そして2025年に関しては、営業利益・経常利益・純利益のすべてが赤字転落というかなり厳しい数字になっており、営業利益率は -9.0%、ROEは -5.7%、ROAも -3.5%へと大きく悪化しています。
この原因として大きいのは、半導体市況の調整、特にパワー半導体と産機向け需要の鈍化、それに伴う在庫調整、さらに設備投資の積極化によるコスト増など複数要因が重なったことです。ロームはSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体に強みを持つ企業ですが、この分野は非常に将来性がある一方で、短期的には投資負担が大きく、2025年の赤字はまさにその「育成投資の負担」が表面化した形といえます。
一方で、株価指標を見てみると2025年のPERは高値20倍、安値13.6倍と“決して割高ではない”水準になっており、PBRも0.91倍と1倍を割るところまで評価が落ちています。これは市場が短期的な赤字を相当程度織り込んでおり、「ロームの本来の収益力はもっと上」という前提で株価が形成されていることを意味します。つまり、今は業績の底に近い可能性があるということです。
ただし注意すべきなのは、2025年が赤字だからといって直ちに悪材料とは言えない点です。ロームが力を入れるSiCパワー半導体は、EV・再エネ・産業ロボットなど中長期のテーマに直結した分野であり、世界的に需要が伸びていく市場です。短期は赤字でも、長期の成長のために投資している段階で、決して業績が崩壊したわけではありません。
総合的に見ると、ロームは「短期は厳しく、中期以降は持ち直しの余地が大きい」銘柄です。財務は健全で倒れるリスクは低く、技術力も確かで、SiCという強い成長テーマを持っています。ただし2024〜2025年のように、半導体市況の変動や設備投資負担で業績が激しくぶれる可能性が高い企業でもあります。
したがって投資スタンスとしては、今のように指標が悪化し株価が評価されづらい時期は“長期目線で仕込むには悪くない環境”といえますが、短期での値上がりは期待しにくく、数年単位で見ながら回復を待つ必要があります。成長テーマは強いが業績はぶれやすい、そんなロームらしい局面であり、買うなら「長期視点・余裕資金・押し目狙い」が適した銘柄です。
配当目的とかどうなの?
ロームの配当を目的とした投資を考える場合、結論から言うと「高配当株として積極的に狙う銘柄ではないが、長期の成長テーマを信じる人には一定の魅力がある」といった立ち位置になります。
まず予想配当利回りを確認すると、連26.3期:2.34%、連27.3期:2.34%となっており、利回り自体はそこまで高くありません。日本株の中で“配当目的”として人気を集める銘柄は3〜4%台が多いため、その視点で見るとロームは配当に特化した銘柄ではありません。
さらに注意点として、ロームは直近の業績が大きく悪化しており、2025年は純利益が▲500億円の赤字という厳しい内容でした。それでも配当が維持されているのは、同社が長年安定した財務基盤を持ち、無理のない範囲で株主還元を続けているためです。ただし、業績が赤字でも配当を据え置いたという点は、今後も“絶対に減配しない”ことを保証するものではありません。半導体市況の波が大きい企業なので、業績次第で減配リスクは常に存在します。
とはいえ、ロームは財務が非常に健全で、自己資本比率も高いため、短期的な赤字でいきなり大きく配当を切るような企業でもありません。中長期で見れば、SiCパワー半導体の需要拡大が本格化すれば利益も再成長し、将来的に増配の可能性もあります。つまり「今の利回りでは物足りないけれど、将来の成長と一緒に配当も伸びることを期待するタイプの企業」です。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在のローム(6963)の株価は2,135.5円ですが、今後5年間の値動きを考えると、半導体市況や世界景気、そして同社が注力しているSiCパワー半導体の伸びによって、かなり広いレンジで動く可能性があります。良い場合、中間の場合、悪い場合に分けて考えると、より実際の値動きに近いイメージが持てます。
まず良い場合ですが、SiCパワー半導体の需要が本格的に立ち上がり、EVや再生エネルギー関連でロームの技術が一気に評価される展開です。半導体市況も回復し、業績も安定して黒字化していけば、株価は3,200円〜3,800円くらいまで戻す可能性があり、勢いが強ければ4,000円台に乗る可能性も十分あります。今の株価からみると、1.5倍〜2倍近い上昇余地が見えてくるパターンです。
次に中間の場合は、半導体市況は悪くないけれど爆発的な成長には至らず、ロームの業績もゆるやかに回復していくイメージです。急成長ではないものの、堅実な回復が続くようであれば、株価は2,500円〜3,000円付近が妥当で、緩やかに底固めしながら徐々に上へ向かう展開になります。大幅な上昇は見込みにくいですが、配当を受け取りつつ値上がりを待つような投資スタイルには合っている動きです。
最後に悪い場合ですが、世界景気が冷え込み、特に中国や米国の設備投資がしぼみ、半導体需要全体が重くなるケースです。ロームの強みであるパワー半導体も投資サイクルの遅れが続き、業績回復が遠のくと、株価は1,400円〜1,800円くらいまで下がるリスクがあります。ただしロームは財務基盤が強く、借金依存の会社ではないため、急落後にさらに底抜けしていくような危険性は比較的低いと考えられます。
総合すると、今のロームは“短期は不安定、中長期は回復の可能性あり”というポジションで、株価の5年間レンジは1,400円台〜4,000円台までと幅が広い銘柄です。SiC市場が本格的に成長すれば大きく戻るシナリオがありますし、逆に世界景気の停滞が続くと長引く調整も考えられます。そのため、長期の成長テーマを信じてゆっくり保有するか、株価が落ち込んだ場面だけで拾うか、投資スタイルによってアプローチが変わってくる銘柄と言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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