株価
カナデビアとは

カナデビアは、日本のインフラ・環境設備を支える代表的なプラントメーカーで、特に「ごみ焼却発電施設」の分野では世界トップクラスの実績を持つ企業です。昔は日立造船という名前で造船企業として知られていましたが、現在は造船事業から完全に撤退しており、環境プラント・エネルギー設備・インフラ機械の総合メーカーへと大きく事業転換を果たしています。会社名称も“社会課題をテクノロジーで解決する”姿勢を明確にするため、カナデビア(Kanadevia)という新ブランドに刷新されました。
事業の中心は、自治体のごみ処理施設やごみ焼却発電施設の設計・施工・維持管理で、国内外で圧倒的なシェアを持っています。特に、廃棄物を燃やすだけでなく、発電まで行う「ごみ焼却発電プラント」は、カナデビアの技術力が業界内で強く評価されている分野です。また、環境分野は世界的に伸び続けている領域で、カーボンニュートラル・脱炭素化の流れを追い風にカナデビアの設備需要も着実に拡大しています。
環境プラント以外にも、上下水道設備、海水淡水化設備、汚泥再生処理、水門・橋梁などインフラ機器、風力発電設備、そして脱炭素の鍵とされる「水電解装置」や「メタネーション設備」など次世代エネルギー技術も手掛けています。特に水電解装置は“水から水素をつくる”クリーンエネルギー技術として世界的な注目を集めており、カナデビアはこの分野で国内トップクラスの技術力を持つ企業の一つです。
さらに、舶用機器、精密機械、プレス機・産業用装置など、メーカー向け機械事業も一定の規模で展開しており、インフラ・環境・エネルギー・産業設備と多方面の市場をカバーしています。国内外に多数の拠点を持つため、海外プロジェクトの実績も豊富で、特にアジアや欧州の自治体からの受注も多い企業です。
企業としての強みは、「環境インフラという景気に左右されにくい公共系事業」と、「脱炭素という世界的な長期テーマ」という2つの成長軸を持つ点にあります。そのため、他の製造業・機械メーカーと比べると比較的業績が安定しており、長期視点で強さを発揮しやすい特徴があります。会社としては今後、海外展開や水素関連の拡大を重点戦略として位置付けており、政府の脱炭素政策の影響を受けながら着実に需要が見込める分野と言えます。
総合すると、カナデビアは“環境×インフラ×脱炭素”という非常に需要が強い領域に特化した企業であり、公共事業の基盤を支えつつ、大型成長テーマにも乗っている企業です。従来の造船会社というイメージから大きく進化し、今ではグローバルに環境技術を供給する総合プラントメーカーとしての存在感を高めています。
カナデビア 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 492,692 | 20,056 | 17,834 | 15,577 | 92.4 | 18 |
| 連24.3 | 555,844 | 24,323 | 25,646 | 18,999 | 112.7 | 23 |
| 連25.3 | 610,523 | 26,946 | 24,329 | 22,103 | 131.3 | 25 |
| 連26.3予 | 620,000 | 27,000 | 23,000 | 16,000 | 95.1 | 25 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 28,008 | -2,462 | -7,841 |
| 2024 | 478 | -21,491 | -2,606 |
| 2025 | 24,769 | -56,573 | 30,150 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均) | PER(安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.0% | 11.1% | 3.2% | – | – | – |
| 2024 | 4.3% | 11.6% | 3.5% | – | – | – |
| 2025 | 4.4% | 11.6% | 3.6% | 10.9倍 | 6.8倍 | 0.89倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
カナデビアの直近3年の数字を総合して評価すると、全体として「安定性は高いが、利益成長が強いとは言えない、堅実タイプのインフラ企業」という印象が強い銘柄です。売上高は2023年の約4,926億円から2025年には約6,105億円へと順調に伸びていますが、利益面の伸びは比較的穏やかで、特に2025年予想では純利益が2,210億円から1,600億円へ減少する見通しとなっている点は注意材料です。
営業利益率は 4.0% → 4.3% → 4.4% とわずかに改善傾向ですが、製造業・プラント業界としては「並レベル」の収益性です。高収益企業のようなダイナミックな伸びはありませんが、公共案件・インフラ案件が中心のため、景気敏感度が低く安定性を重視する企業らしい動きです。
ROEは11%前後を安定的にキープしており、ROAも3~3.6%程度と、資本効率はインフラ企業としては比較的良好な水準です。急成長はしないが、着実に利益を積み上げ続けるタイプで、財務基盤も堅い点から“倒れにくい企業”であることは数字から読み取れます。
株価指標を見ると、2025年度のPERは高値平均10.9倍、安値平均6.8倍で、かなり割安圏に入りやすい株になっています。PBRも0.89倍と1倍を割り込んでおり、市場は「資産価値より株価が低い」と判断している状態です。これは企業価値の毀損ではなく、むしろ“インフラ企業特有の地味さ”と“成長期待の控えめさ”による割安放置の傾向が強いと言えます。
総合的に見ると、カナデビアは“安定した公共案件・環境インフラ企業”として長期的に堅実な収益を上げ続ける可能性が高い一方で、短期的な株価成長や急激な利益の拡大は期待しづらい銘柄です。PERやPBRから見ると「明確に割安」であり、ROEも10%台を維持しているため、バリュー株としての魅力は十分にあります。
結論として、カナデビアは“成長株ではないが、割安かつ安定性の高い堅実株”としてポートフォリオの安定要員に向いている企業です。リスクが低めで長期保有しやすい銘柄と言えますが、株価の大幅な上昇を狙うよりも、安定的な業績と割安評価を武器にじっくり育てるスタイルの投資が適しています。
配当目的とかどうなの?
カナデビアを配当目的で考える場合、利回りは決して高くありませんが、企業の性質を踏まえると“じっくり長く持つタイプの安定配当銘柄”として悪くない選択肢になります。予想配当利回り(2026・2027年度)は 2.64% と、高配当株と呼ぶにはやや物足りない水準ですが、インフラや環境プラントを中心に手掛ける企業としては、比較的安定した利回りと言えます。
この会社の魅力は、何といっても売上の多くが自治体向けの公共案件である点です。景気の波を強烈に受ける民間企業とは違い、インフラ整備やごみ処理、上下水処理といった需要は不況でも止まらず、業績が大崩れしにくいという特徴があります。そのため、多少業績が上下しても大きく赤字に転落することは少なく、結果的に配当が大きく不安定になるリスクも低めです。
また、EPS(1株利益)は年によって波がありますが、中期的には一定の水準をしっかり確保しており、無理に配当を増やしたり減らしたりせず、堅実に株主還元を行う姿勢が見て取れます。配当性向にも余力があり、突然の減配を心配する必要があるタイプの企業ではありません。
ただし、利回りだけを見て「配当で稼ぎたい」と考える人には向きません。商社や銀行、通信株のような3〜5%の高配当を求めるなら、他の銘柄の方が合理的でしょう。カナデビアの場合は、利回りそのものよりも、“安定して長期に持てる銘柄で配当を受け取っていく”というスタンスの方がしっくりきます。
結局のところ、カナデビアは「配当でガッツリ稼ぐ銘柄」ではなく、「大きく崩れず安定したビジネスを背景に、じっくり長期で配当を受け取り続けたい人」に向いた企業です。インフラや環境プラントという、長期で需要が続きやすい分野を扱っているため、極端な不景気時でも安心して持ちやすいのも魅力のひとつです。
今後の値動き予想!!(5年間)
カナデビアの株価を現在値944円から今後5年間でどう動くかを考えると、この企業特有の「安定した公共案件」「長期テーマである環境・脱炭素」という特徴から、急騰するタイプではないものの、底堅さを持ちながら緩やかに推移する展開が見込まれます。ここでは、良い場合・中間の場合・悪い場合の3パターンで整理します。
まず 良い場合 ですが、国内外の環境インフラ需要が想定以上に伸び、ごみ焼却発電施設、水処理、海水淡水化、さらには水電解装置やメタネーションのような脱炭素関連設備の受注が大きく増えるパターンです。政府のグリーン政策拡大や自治体の更新需要が重なれば、業績は順調に伸び、株価は市場評価の改善とともにゆっくり上に動く可能性があります。この場合、5年後の株価は 1,400〜1,600円台 まで上昇するシナリオが現実的です。
次にもっとも可能性が高い中間の場合は、現状の安定した事業を維持しつつ、公共案件の増減に合わせて業績が緩やかに上下するというものです。利益は急成長しないものの大きく落ち込むこともなく、配当と安定収益に支えられながら、株価も落ち着いたレンジで推移します。このシナリオでは、5年後の株価は 1,050〜1,250円 程度の、やや上向きの動きがもっとも想定しやすい流れです。
最後に悪い場合は、世界的な景気減速や自治体の予算縮小などで大型案件が遅れたり、資材価格上昇で採算が圧迫されるケースです。環境関連設備の需要が弱まると受注が読みづらくなり、利益率が低下して市場の評価も下がります。とはいえ、この企業は公共案件が多いため極端な下落をしにくい特徴があり、大崩れの可能性は低めです。それでもこのケースでは、株価は 750〜850円 付近まで下がるシナリオになります。
総合すると、カナデビアは急成長するタイプではありませんが、底堅く安定した事業を持っているため、大きな暴落が起きにくい銘柄です。5年間のスパンで見ると“じわっと上がりやすい中間シナリオ”が一番現実的で、長期保有の安心感を求める投資家には悪くないポジションを取れる企業と言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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