株価
いすゞ自動車とは

いすゞ自動車は、1916年創業という日本でも最も歴史ある自動車メーカーの一つであり、特に商用車分野に強みを持つ企業として知られている。トラック・バス・ピックアップトラック・産業用エンジンなど、物流・交通インフラの根幹を支える製品を中心に事業を展開しており、商用車に特化したメーカーとしては国内トップクラス、そして世界的にも有数の存在である。東京都品川区に本社を置き、日本国内はもちろん、アジア・北米・中南米・中東・アフリカなど幅広い地域で事業を伸ばしており、まさに“商用車のグローバルブランド”として確固たる地位を築いている。
事業の中心となるのは、小型トラック「エルフ」、中型トラック「フォワード」、大型トラック「ギガ」などの商用車で、これらは日本の物流産業を長年支えてきた定番車種となっている。耐久性・燃費性能・整備性の高さからユーザーの信頼が厚く、国内はもちろん海外でも高い評価を受けている。また、東南アジアやオセアニアを中心に販売されているピックアップトラック「D-MAX」やSUV「MU-X」も人気が高く、これらの海外販売がいすゞの収益基盤を支えている。
さらに、いすゞはディーゼルエンジンメーカーとしても世界的に高い評価を持っている。商用車向けディーゼルはもちろん、建機・産業用エンジンとしても供給され、耐久性や燃費性能、排出ガス規制への対応力など、その品質は世界中の企業に支持されている。多くの自動車メーカーが電動化に大きく舵を切る中で、いすゞはディーゼルエンジンという強みを持ちながらも、脱炭素時代に向けてEVトラック・燃料電池車(FCV)の開発にも力を入れている。物流業界の環境規制は一段と厳しくなるため、いすゞにとって電動化対応は成長戦略の中核の一つとなっている。
また、トヨタ自動車・日野自動車との協業により、次世代商用車の開発や水素社会の実現に向けた技術共有も進んでいる。商用車業界は環境対応コストが非常に重く、単独企業で対応するには限界があるため、同業他社との協力関係は競争力維持の鍵となっている。さらに、車両の稼働率が重要となる商用車ビジネスでは、アフターサービスや部品供給の速さが強い収益源となっており、いすゞは国内外で広範囲なサービスネットワークを構築している。
総合すると、いすゞ自動車は「商用車×ディーゼル×グローバル市場」に強みを持つ企業で、一般乗用車とは異なり景気や物流需要に密接に連動するビジネスモデルを採用している。一方で、世界的な電動化の波や環境規制の強化など、変革期の中で新たな成長戦略が問われている企業でもある。商用車という産業の要を支えながら、電動化や水素技術の挑戦に取り組む、非常に重要なポジションにある会社だと言える。
いすゞ自動車 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 3,195,537 | 253,546 | 269,872 | 151,743 | 195.8 | 79 |
| 2024/3 | 3,386,676 | 293,085 | 313,039 | 176,442 | 229.9 | 92 |
| 2025/3 | 3,208,084 | 229,109 | 248,231 | 134,363 | 183.0 | 92 |
| 2026/3(予) | 3,300,000 | 210,000 | 220,000 | 130,000 | 184.9 | 92 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023/3 | 227,085 | -80,527 | -140,372 |
| 2024/3 | 298,568 | -155,080 | -144,977 |
| 2025/3 | 217,658 | -177,891 | -64,591 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 7.9% | 11.5% | 4.9% | ― | ― |
| 2024/3 | 8.6% | 12.0% | 5.4% | ― | ― |
| 2025/3 | 7.1% | 9.3% | 4.0% |
高値平均:10.5倍 安値平均:7.6倍 |
1.15倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
いすゞ自動車の直近3年間の決算と主要指標を見ると、「利益水準は高水準を維持しながらも、ややピークアウト感が出てきた」というのが正直な評価となる。まず業績面では、2023年~2024年にかけて売上・利益ともに大きく伸び、営業利益率も7.9% → 8.6%と順調に改善した。しかし2025年には営業利益2291億円、営業利益率7.1%とやや減速し、純利益も一時より低い水準となった。それでも商用車メーカーとして営業利益率7%前後は十分に高く、収益性自体は依然として業界トップクラスに位置する。
ROEも2023年11.5%、2024年12.0%と非常に水準が高く、企業の資本効率は極めて良好だった。2025年は9.3%へ低下したとはいえ、依然として投資家から評価される“合格ライン(ROE8%)”を上回っており、稼ぐ力は維持できている。ROAも4.0〜5.4%と安定して高く、総資産を有効に使えている点も強みだ。
株価指標に目を向けると、2025年の実績PERは高値平均10.5倍、安値平均7.6倍となっており、商用車メーカーとして妥当〜やや割安の評価がされている。いすゞは業績が比較的安定しているため、PER7〜10倍あたりは市場が“通常の評価レンジ”として見やすい。またPBR1.15倍は、利益成長に対して適正〜やや高めの水準であり、株価がすでに一定の期待を織り込んでいることがわかる。
総合すると、いすゞ自動車は「利益体質が強く、財務健全性も高く、商用車市場で揺るぎない地位を持つ優良企業」である一方、「今後数年間の成長スピードは緩やか」であり、爆発的な成長よりも安定的な収益を期待する銘柄であると言える。営業利益率7%前後・ROE9〜12%の水準は非常に優秀で、中長期で“安定して稼ぐ企業”として魅力がある。
ただし、気をつけるポイントは以下の通り。
・2024年が高利益期で、2025年にややピークアウト感がある
・商用車市場は景気動向や物流需要の影響を強く受ける
・電動化投資の負担がじわじわ利益を圧迫する可能性がある
とはいえ、総合的に見ると「堅実で業績が読める優良銘柄」で、過度な期待は不要だが安定的な投資先としては十分に魅力がある。PER7〜8倍付近の安値レンジは割安感が強く、長期投資の仕込み場として狙いやすい水準だと言える。
配当目的とかどうなの?
いすゞ自動車を配当目的で考える場合、結論としては「かなり相性が良い銘柄」だと言える。予想配当利回りは2026年3月期・2027年3月期ともに3.96%で、東証プライムの平均利回り(約2%前後)を大きく上回っており、配当株として十分に魅力的な水準にある。商用車メーカーは比較的景気の影響を受けることもあるが、いすゞは高い利益体質を持つため、配当の安定性は他社よりも高いのが特徴だ。
実際に業績推移を見ると、営業利益率は7〜8%台、ROEも9〜12%と安定して高く、企業として「稼ぐ力」がしっかりしている。これだけ利益率の高い商用車メーカーは世界的にも珍しく、安定配当を実現する背景には強い収益力がある。また、2023〜2025年の3年間で一株配当は79円 → 92円 → 92円と高い水準を維持しており、配当性向も無理のない範囲で運営されている。2026年・2027年についても同じ92円を維持する予想となっており、減配リスクが比較的低いことも魅力のひとつだ。
さらに、いすゞはキャッシュフローが堅調で、営業CFは毎年2,000億円前後を安定的に確保している。商用車メーカーは設備投資が必要だが、いすゞは財務体質が強く、投資CFや財務CFも過度な負担になっていない。配当維持能力が高く、短期的な売上の変動があっても配当が揺らぎにくい構造になっている。
もちろん、注意点もある。商用車市場は景気や物流需要に左右されやすいため、世界的な景気後退や原材料高騰が起これば業績が一時的に落ち込む可能性はある。また、今後は電動化投資が本格的に必要となるため、EVトラックや水素技術への資本投入が増えると、配当余力が削られるリスクもゼロではない。しかし、いすゞは高ROE体質で利益が安定しているため、他社と比べると配当の持続性は高いと判断できる。
総合すると、いすゞ自動車は「高配当 × 安定業績 × 強固な財務」という3拍子が揃った銘柄で、配当目的の長期投資家にとってはかなり有力な候補となる。利回り3.9%前後は魅力的で、今後も安定的にキャッシュを生み出せるため“保有して配当を受け取りながら、株価の緩やかな上昇も期待できる”というタイプの銘柄だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
いすゞ自動車の現在値2,318.5円から、今後5年間の株価推移をします。
まず「良い場合」では、商用車の需要が世界的に拡大し、特に物流・インフラ整備・EVトラックへのシフトが進む中で、いすゞがその波をうまく取り込み、営業利益率が8%超、ROEも12%以上を維持できるケースである。こうした場合、市場評価もPER10〜12倍程度まで上がる可能性があり、株価は 3,500〜4,000円 前後まで上昇してもおかしくない。現在値から見て+50〜+70%という大きなリターンも想定できる。
次に「中間の場合」は、現状維持もしくはやや改善というシナリオだ。商用車需要は安定しているが、EV化・規制対応・部品価格高騰などが足かせとなり、営業利益率は7〜8%、ROEは9〜10%程度で横ばい〜緩やか改善という状況だ。この場合、市場評価はPER8〜10倍程度で落ち着くと考えられ、株価は 2,300〜2,800円 の範囲で推移する可能性が高い。現在の2,318.5円から少し上方向の余地はあるが、大きな飛躍は期待しづらい、堅実な展開となる。
最後に「悪い場合」は、世界的な景気後退、物流需要の減速、電動化対応コストの増大、円安・部品価格高騰などが重なり、営業利益率が6%未満、ROEが8%以下に低下するケースである。こうした状況では、市場評価がPER6〜7倍に低下し、株価は 1,600〜1,800円 程度まで下振れする可能性がある。現在値からすると▲30〜▲40%という下落リスクを伴う展開となり、投資には慎重さが求められる。
総合的に見れば、いすゞ自動車は「堅実成長+配当利回り3.9%」という魅力的な組み合わせを持つ銘柄で、現在値2,318.5円は中期保有を前提とした投資には十分検討対象となる。ただし、次の5年間を通じて「大きな飛躍」を期待するには条件がそろっている必要があり、逆に環境悪化となった場合には調整リスクも無視できない。したがって、今買うなら“中間~良いシナリオ”を想定しつつも、業績動向と世界経済の動きを注意深くチェックしながら保有したい銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す