株価
秋川牧園とは

秋川牧園は、山口県山口市を拠点に「安心・安全な食づくり」を徹底してきた食品メーカーで、国産の鶏肉・卵・野菜・乳製品を中心に、自社農場を軸とした一貫生産体制が最大の特徴になっている。一般的に食品メーカーは原材料を外部から仕入れて加工することが多いが、秋川牧園は自社で農場を持ち、契約農家とも密接に連携しながら、原材料の生産から加工、流通、販売までのすべてをグループ内で完結させる体制を構築している。これにより、生産過程の透明性が高く、消費者が安心して口にできる高品質な食品を提供できる点が大きな強みとなっている。
特に鶏肉や卵の分野では、抗生物質や合成抗菌剤に頼らずに育てる「無投薬飼育」を早期に実践してきたパイオニア的存在で、遺伝子組換え飼料を使用しないなど、食の安全性にこだわった取り組みを長年続けている。また、野菜についても化学農薬や化学肥料の削減に徹底して取り組んでおり、環境負荷が少ない農業に力を入れている。こうした姿勢は近年の健康志向・安全志向の高まりと相性が良く、ミールキットや冷凍食品、チルド加工品など、付加価値を乗せやすい商品群の売上拡大につながっている。
さらに秋川牧園の特徴として、宅配・通販事業の強さがある。自社ECや宅配向け商品開発に積極的で、スーパーなどの店頭販売に依存しない販売チャネルを持つことで、景気変動に左右されにくい安定した収益基盤を築いている。コロナ以降は家庭内調理需要が増えたことを背景に、冷凍食品や簡便調理食品の売上が伸びており、従来の生鮮食品に加えて加工食品事業が第二の柱として成長している。
長期的には、食の安心・安全というテーマが今後も継続すると見られるため、秋川牧園のようにブランド価値と一貫生産体制を武器にする企業は、ニッチながらも安定した需要を取り込みやすい立ち位置にある。大手食品会社の大量生産・低価格路線とは異なる“こだわり型・高付加価値型”の市場で確固たる存在感を持つ企業であり、地域発のメーカーながら全国的にファンが多いことも特長と言える。
秋川牧園 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 7,070 | 19 | 242 | 156 | 37.4 | 10 |
| 連24.3 | 7,392 | 11 | 153 | 98 | 23.6 | 10 |
| 連25.3 | 7,957 | -3 | 51 | 28 | 6.8 | 10 |
| 連26.3予 | 8,300 | 100 | 120 | 70 | 16.8 | 10 |
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 449 | -708 | 172 |
| 2024 | 393 | -1,114 | 637 |
| 2025 | 725 | -451 | -4 |
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.2% | 7.3% | 2.5% | – | – |
| 2024 | 0.1% | 4.4% | 1.3% | – | – |
| 2025 | -0.1% | 1.2% | 0.3% | 79.5倍 / 72.0倍 | 1.91倍 |
投資判断
秋川牧園の直近の業績推移を見ると、売上は拡大しているものの、利益水準は極めて低く、本業の収益性に明確な課題を抱えていることがわかる。売上高は23.3期の約70億円から、24.3期で約74億円、25.3期で約80億円、26.3期予想では約83億円 と緩やかに成長しており、トップラインの伸び自体は堅調だ。健康志向や国産食品需要の高まり、自社で生産から加工まで管理する強みが反映された結果といえる。
しかし利益面を見ると状況はまったく異なる。営業利益は23.3期 0.19億円、24.3期 0.11億円 ともともと薄利だったところに、25.3期は-0.03億円(=赤字) に転落。本業としての収益性はほぼゼロに近い。営業利益率でみても0.2% → 0.1% → -0.1%と、食品メーカーとしては相当厳しい数字が並んでいる。
経常利益も23.3期の2.42億円 から、24.3期1.53億円、25.3期0.51億円 と右肩下がりで、利益の減少が止まっていない。純利益に関しては15.6億円 → 9.8億円 → 2.8億円と大きく低下しており、EPSも37.4円 → 23.6円 → 6.8円まで落ち込み、株主価値の積み上がりが鈍化している点は見逃せない。
26.3期予想の純利益は「0.7億円(=7,000万円)」である。EPSは 16.8円 と回復するが、7億円規模と誤認したときの印象とは大きく異なる。利益が小さいためROEも改善しづらく、25.3期のROEはわずか 1.2%、ROAも 0.3% と資本効率は極めて低い。
金融指標でも秋川牧園は割高感が強い。PBRは1.91倍、さらにPERは2025年ベースで 79.5倍/72.0倍 とかなりの高バリュエーションで取引されている。これは「ブランド力」「安全性の高さ」「こだわり食品」というテーマ性が市場で評価されているからだが、現状の利益水準と比べると明らかに割高で、期待先行の側面が大きい。
総合的に見ると、売上の成長やブランド価値は評価できるものの、利益の薄さと収益性の弱さ、そして株価の割高さを踏まえると、現時点で積極的に投資しやすい銘柄ではない。利益率が改善しない限り、中長期で株価が大きく伸びるシナリオは描きづらい。
投資対象としては、安定収益型の企業ではなく、「食の安全」というテーマ性やブランドの独自性を重視する一部の投資家が選ぶニッチな成長期待株という位置づけが妥当だ。
配当目的とかどうなの?
秋川牧園を配当目的で考える場合、この銘柄は正直なところ配当投資には向いていないと言わざるを得ない。予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに1.00%と、東証プライム全体の平均利回りである約2%を大きく下回っており、高配当株としての魅力はほとんどない水準にとどまっている。
売上自体は年々伸びているものの、利益水準が極めて低い点は配当投資としては大きな弱点だ。営業利益は毎年数千万円から1億円程度しかなく、25.3期には営業赤字へ転落している。純利益も想定以上に小さく、25.3期の純利益は0.28億円(2,800万円)まで落ち込んでおり、EPSも6.8円と非常に低い。26.3期の純利益予想も0.7億円(7,000万円)にとどまっており、配当原資として十分とは言い難い状態が続いている。
それでも同社が配当を10円に据え置いているのは、財務状態そのものが極端に悪化しているわけではなく、企業として一定の株主還元を維持しようとする姿勢があるためだ。ただし、もともと収益が安定している企業ではなく、利益の変動も大きいため、業績次第では減配リスクが生じる可能性は否定できない。実際、純利益が数千万円規模の年でも10円の配当を続けていることは、それなりの負担になっていると考えられる。
加えて、秋川牧園は株価が割高に評価されやすい傾向があり、PBRが約1.9倍、PERも70〜80倍と非常に高い水準になっている。利益水準に対して株価だけが高く評価されているため、配当利回りの低さと相まって、配当狙いの投資としての効率はかなり悪い。
総合的に見ると、秋川牧園は利回りの低さ、利益の安定性の欠如、そして割高な株価という点が重なり、配当目的で購入する銘柄とは言い難い。もし投資をするのであれば、配当収入を目的とするのではなく、安全・安心な食品を提供するというテーマ性にどれだけ価値を感じるか、あるいはブランド価値の成長に期待できるかといった観点で考える必要がある。
配当を中心に考える投資家にとっては、秋川牧園よりも高配当の食品株やインフラ関連株、金融株などの方が、利回り・収益性ともに合理的で、長期的にも安定した投資対象になるだろう。
今後の値動き予想!!
秋川牧園の株価を5年間スパンで考える場合、まず前提として押さえるべきなのは「業績の伸びと利益の薄さのギャップが大きい企業」であるという点だ。売上は確実に増えているものの、利益はごくわずか、あるいは赤字の年さえある。この“利益の細さ”が株価の上値を重くしており、今後の株価もここをどう改善できるかで方向性が大きく変わる。
現在の株価は994円。PERは70〜80倍と非常に高く、利益水準と比べると割高感が強い。ただし、同社は「安心・安全食品」というテーマ性が強く、ブランド価値を評価する層が一定数いるため、割高でも買われる傾向がある。つまり、一般的な食品企業とは株価の動き方が異なり、テーマ性・ストーリー性に左右されやすい銘柄と言える。
良い場合のシナリオでは、まず利益面の改善がしっかり進むことが前提になる。売上は毎年増えているため、営業利益が1億円台後半〜2億円に乗るレベルまで引き上がれば、現在の高いPERが正当化され、市場が再び成長期待を織り込み始める可能性がある。原材料高の落ち着きや生産効率の改善が進めば、利益率の改善は十分あり得る話だ。このシナリオであれば、株価は5年後に1,400〜1,800円のゾーンまで上昇するイメージとなり、テーマ株として再評価される展開も考えられる。
中間的な現実路線のシナリオは、売上は増えるものの利益改善は限定的で、純利益が毎年5,000万円〜1億円前後で推移するようなパターンだ。この場合、現在のPER70〜80倍はさすがに維持できず、40〜60倍程度へ徐々にバリュエーションが落ち着く可能性が高い。株価は5年後に900〜1,200円のレンジで動くイメージになり、現状と大きく変わらない横ばい〜小幅な上下を繰り返すだろう。安定はするが、大きな資産成長は見込みにくい。
悪い場合のシナリオでは、利益がさらに不安定になり、営業利益がゼロ〜数千万円レベルに戻ったり、再び営業赤字に転落する可能性もある。原価高や物流コスト上昇の影響が続いたり、生産性の改善が進まなければ、このような展開も十分に想定される。このシナリオではPERが20〜30倍程度まで縮小し、株価は600〜800円あたりまで下落する可能性が出てくる。テーマ性だけでは株価を支えきれなくなるケースだ。
総合的に見ると、秋川牧園は“売上は伸びるのに利益がついてこない”という構造的な課題を抱えており、これが株価の最大のブレーキになっている。テーマ性の強さから一定の人気は続くかもしれないが、利益が安定しなければ株価の大きな上昇は期待しづらい。今後の株価は、とにかく収益性をどこまで改善できるか、それに尽きると言える。需要トレンドや健康志向の追い風はあるものの、事業構造の改善が伴わない限り、株価は高く評価されにくいだろう。
この記事の最終更新日:2025年11月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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