株価
マツダとは

マツダ株式会社は、広島県に本社を構える日本の主要自動車メーカーで、走行性能とデザイン性に強いこだわりを持つブランドとして世界的に知られている。1920年に創業して以来、100年以上の歴史を持つ企業であり、独自技術の開発を武器に大手メーカーにはない個性的なポジションを築いてきた。特に「魂動(こどう)デザイン」による美しい造形と、「SKYACTIV TECHNOLOGY(スカイアクティブ技術)」を中心とした高効率エンジンが特徴で“走る歓び”を重視した車づくりがマツダのブランド価値を支えている。
事業の中心は自動車の研究開発・製造・販売であり、ラインアップにはコンパクトカーのMAZDA2、CセグメントのMAZDA3、フラッグシップセダンのMAZDA6、そしてSUVでは世界的に人気の高いCX-5、CX-8、さらには電動化を取り入れた新型CX-60などがある。スポーツカー分野でも「ロードスター」が国際的に評価されており、軽量・高レスポンスを追求するマツダの技術力を象徴するモデルとなっている。
また、マツダの大きな強みとなっているのが、独自のSKYACTIV技術だ。燃焼効率を徹底的に追求したガソリン・ディーゼルエンジン、軽量で高剛性の車体、低フリクションのトランスミッションなど、全てを統合的に開発することで、燃費性能とドライビング性能を高い次元で両立させている。こうした総合技術力は大手メーカーにはない開発哲学として世界から注目されている。
グローバル展開も非常に積極的で、マツダは特に北米市場に強い。アメリカではスポーティで質の高いブランドとして認知されており、SUV人気の追い風もあって販売が堅調だ。メキシコやアメリカに生産拠点を持ち、現地に合わせた車両供給体制を整えている。ヨーロッパでもデザイン性が評価され、ブランドイメージは他の日本メーカーとは少し異なる“プレミアム寄り”の立ち位置を目指している。
中国・東南アジアでも販売を展開しており、グローバル規模で需要の変化に対応できる体制を持つ。中期的にはアジア市場の成長を取り込みつつ北米でのブランド力をさらに強める戦略が進められている。
電動化については、マツダはEVシフトに対して独自のアプローチを取っている。EV専業ではなく、「電動化×燃焼技術の進化」という両方向を進めているのが特徴だ。MX-30 EVの投入に加え、独自技術であるロータリーエンジンを発電機として使用する「ロータリーEV」が話題となった。ロータリーエンジンという世界でも唯一の技術を進化させ、新しい形で再活用する姿勢はマツダらしさの象徴でもある。
さらに2050年のカーボンニュートラル達成を掲げており、EV・PHEV・ハイブリッド・高効率エンジンなど、多面的に電動化戦略を進めている。
このように、マツダは大メーカーとは異なる独自の技術志向とデザイン哲学を持つ、自動車業界でも非常に個性的な存在となっている。規模ではトヨタやホンダに及ばないものの、その分一台一台へのこだわりやブランド価値の高さは強みとなり、世界中に熱心なファンを持つメーカーとして確固たる地位を築いている。
マツダ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 3,826,752 | 141,969 | 185,936 | 142,814 | 226.7 | 45 |
| 2024/3 | 4,827,662 | 250,503 | 320,120 | 207,696 | 329.7 | 60(特別配当含む) |
| 2025/3 | 5,018,893 | 186,125 | 188,996 | 114,079 | 181.0 | 55 |
| 2026/3(予) | 4,900,000 | 50,000 | 53,000 | 20,000 | 31.7 | 50〜55 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023/3 | 137,424 | -99,427 | -89,863 |
| 2024/3 | 418,895 | -179,889 | -84,704 |
| 2025/3 | 305,626 | -199,961 | 90,071 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(高値平均) | 実績PER(安値平均) | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 3.7% | 9.9% | 4.3% | ― | ― | ― |
| 2024/3 | 5.1% | 11.9% | 5.4% | ― | ― | ― |
| 2025/3 | 3.7% | 6.3% | 2.7% | 7.3倍 | 4.1倍 | 0.40倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
マツダの直近3年間の数字を眺めると、業績そのものは売上が着実に増えている一方で、利益面では上下の波が大きく、まだ安定した成長軌道に乗っているとは言いにくい状況が続いている。2023年は営業利益が約1,420億円、経常利益1,860億円、最終利益1,428億円とまずまずの結果だったものの、2024年には営業利益2,505億円、経常利益3,201億円、純利益2,077億円と大幅に伸び、一時的には「復活」を感じさせる場面もあった。しかし2025年には営業利益1,861億円、経常利益1,889億円、純利益1,140億円と再び減速してしまい、この収益の振れ幅の大きさがマツダの課題を象徴している。
営業利益率も2023年3.7%から2024年5.1%へと改善したが、2025年には3.7%へ逆戻りしている。5%台なら自動車メーカーとして“平均〜良い”と言えるラインだが、3%台は採算面で強いとは言い切れず、もう一段の収益性改善が必要だと感じる数値だ。ROEも同じような動きで、2023年が9.9%、2024年は11.9%まで改善したが、2025年には6.3%まで下落してしまう。ROAも2年連続で低下し、企業が資産を活かし切れていない様子が数字に表れている。
市場評価を示す株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均7.3倍、安値平均4.1倍とかなりの割安圏にある。PBRも0.40倍と非常に低い。つまり市場は「業績が安定していない」「今後の改善には不確実性がある」と見ており、その分だけ株価が押し込まれている状態だ。逆に言えば、今が割安であることは間違いなく、業績さえ安定してくれば大きく見直される余地を残しているとも言える。
マツダは、トヨタやホンダのような巨大メーカーとは違い、商品戦略やモデルサイクルのタイミングに業績が強く左右される側面がある。そのため短期的な波は避けづらい。しかしブランドとしてのファンが多く、SUV・クロスオーバーのラインアップも充実しているため、商品力自体は依然として高い。特に北米市場での支持は根強く、モデル刷新が当たった年は大きく収益が伸びる傾向がある。
総合するとマツダは「利益に波がありながらも独自の技術とブランド力を持ち、復活すれば株価が跳ねる典型的なバリュー銘柄」という評価が最も近い。現在はPBR0.4倍という非常に低い評価で放置されており、まさに“安く買われすぎている”状態だが、これが“買い場”になるかどうかは業績改善の兆しが出始めるかどうか次第だ。営業利益率が再び5%台に戻る、ROEが10%前後に改善する、こういったサインが見え始めたタイミングが本格的な仕込み場になりやすい。
短期でサクッと儲かるタイプではないが、長期で割安なタイミングを狙って大きめのリターンを狙いたい投資家には向いている。逆に安定配当や低リスクを重視するタイプにはやや不向きと言える銘柄だろう。
配当目的とかどうなの?
マツダを配当目的で見ると、利回りの数字だけはかなり魅力的に映る。予想配当利回りは26.3期で4.89%、27.3期でも4.44%と、国内の自動車メーカーの中でもトップクラスに高い水準だ。とくに今のマツダは株価がPBR0.40倍という“かなりの割安放置”状態になっているため、その分だけ見かけの利回りも高くなり、配当効率が非常に良く見える局面になっている。
ただし、配当株としての安定性を考えると、少し慎重に見た方が良い部分もある。というのも、マツダはここ数年で利益が大きく上下しており、2024年には純利益が2,000億円を超えた一方で、2025年には1,100億円台まで落ち込んでいる。利益に波がある企業の場合、会社としても増配や高い配当維持に強気になりづらく、どうしても「業績次第で変動しやすい配当」になりやすい。
とはいえ、マツダはこれまでを見ても業績が良いときにはしっかり増配し、特別配当も出してきた会社で、株主還元に消極的というわけではない。むしろ業績が回復したときには株主に還元しようとする姿勢がはっきりしている企業だ。今の配当利回りは、業績の谷間に株価が落ちていることで押し上げられている面が大きいが、もし再び営業利益率が改善し、利益水準が安定してくれば、今の4~5%台の利回りを維持することも十分可能だろう。
総合的に見れば、マツダは「安定高配当銘柄」というよりは、「割安のうちに仕込めば高利回りを取りながら業績回復時の株価上昇も狙える銘柄」という位置づけになる。安定感を求める配当投資には必ずしも向いていないが、ある程度リスクを取ってリターンを狙う投資家なら、今の利回りは確かに魅力的と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
マツダの株価は現在1,124.5円だが、今後5年間を考えると業績の回復具合や北米市場の動向、そして電動化戦略の成功度合いによって大きく動く可能性がある。
まず良いケースでは、SUVとクロスオーバーの販売が順調に伸び、新型モデルの投入が当たり、営業利益率が再び5%前後に回復するシナリオだ。特にマツダは北米でのブランド力が高く、CXシリーズが好調に売れれば営業利益は1,500〜2,000億円の水準に戻る可能性がある。その場合、割安放置されているPBR0.4倍台から0.8倍前後への水準訂正も起こり、株価は1,800〜2,300円程度まで上昇していく可能性がある。タイミング次第では2,500円に迫る局面も考えられ、復活すれば跳ねやすい銘柄特性がある。
一方で中間のケースでは、売上はほぼ横ばいで推移し、利益も大きな伸びはないものの底堅く黒字を維持する展開になる。電動化投資の負担が重くなる一方、主力SUVの販売でなんとか利益確保が続くといった状態だ。この場合、株価は1,100〜1,400円程度のレンジで推移し、時折材料で1,500円を試すが、大きなブレイクまでは至らない可能性が高い。割安で放置されつつも、急落しない“重たい横ばい”のイメージが近い。
悪いケースでは、北米での競争激化や円高、電動化投資の負担、モデルサイクルの谷が重なり、営業利益が1,000億円を下回るような展開が続くパターンだ。営業利益率が3%前後まで落ち込み、収益が伸びない状態が長引けば、市場からの評価はさらに厳しくなり、PBR0.3〜0.35倍まで圧縮される可能性も出てくる。この場合、株価は800〜950円の範囲まで下落するリスクがあり、最悪の場合は700円台まで落ち込む可能性も否定できない。
総じて、マツダは「復活したときの上昇幅は大きいが、業績の波が大きい銘柄」という特徴が強い。特に北米市場の販売次第で業績が急回復することもあれば、その逆で急に失速することもあるため、5年間の株価もその時々の業績に大きく左右される。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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