株価
ヤマハとは

ヤマハ株式会社は、1897年の創業以来、世界最大級の総合楽器メーカーとして発展してきた企業であり、「楽器=YAMAHA」という世界的ブランドを築いたことで知られる。静岡県浜松市に本社を構え、ピアノ・電子キーボード・ギター・ドラム・管楽器・教育用楽器など100種類以上の製品を世界中に供給している。強みは卓越した木工技術、金属加工技術、音響技術であり、これらは140年以上の歴史の中で磨き上げられてきたものだ。
ヤマハの事業は大きく「楽器事業」「音響機器事業」「電子デバイス事業」「その他事業」の4つで構成されている。
まず主力の楽器事業では、ピアノ、電子ピアノ「Clavinova」、電子キーボード「PSR」シリーズ、ギター、管弦打楽器など幅広いラインアップを展開。世界中の学校教育にも深く浸透しており、教育用楽器の分野で圧倒的なシェアを持つ。ヤマハのアコースティックピアノは世界的に高く評価され、グローバルでもトップクラスの市場占有率を誇る。特にコンサートグランドピアノ「CFX」は国際的な音楽コンクールでも多く採用され、プロ演奏家からも高い信頼を得ている。
次に音響機器事業は、オーディオメーカーとしての顔を持つヤマハのもう一つの大きな柱である。オーディオアンプ、AVレシーバー、サウンドバーなどのホームオーディオ製品から、ライブ・イベント向けの業務用音響機器、音楽制作機材、ミキサー、スタジオ用スピーカーなどプロフェッショナル向け製品まで広く手掛けている。特に業務用音響ではグローバルシェアが高く、音楽ホール・ライブハウス・放送局などプロの現場で幅広く採用されている。
また、ヤマハは意外にも“半導体メーカー”としての側面も持つ。電子デバイス事業では、音源LSI、オーディオ処理チップ、センサーなどの高品質な半導体を開発し、スマートフォンやタブレット、カーオーディオ、IoT機器向けに提供している。これらの技術はヤマハ独自の音響ノウハウに基づくもので、他社が簡単に追従できない付加価値を持っている。
その他の事業としては、自動車用内装部品(ウッドパネルなど)、ゴルフ用品、FA(ファクトリーオートメーション)機器などを展開。楽器づくりで培った木工・樹脂加工技術や精密加工技術が、車載領域や産業機械分野でも活かされている。
ヤマハは“楽器メーカー”として知られているものの、その実態は「音×技術」を軸に高度な製造業・電子技術企業へと進化した総合ブランドである。楽器事業は景気の影響を受けやすい一面もあるが、グローバル教育需要、趣味市場、DXによる音楽制作機器の拡大など追い風も多い。また音響機器・電子デバイスは利益率が高く、ヤマハの収益基盤として今後も重要性が増していく。
100年以上の歴史がありながら、現在も研究開発を積極的に行い、新しい音響体験や次世代楽器、AI関連の研究などにも取り組んでいる点は、他の製造業と比較しても大きな特徴と言える。
ヤマハ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 451,410 | 46,484 | 50,552 | 38,183 | 74.2 | 22 |
| 24.3 | 462,866 | 28,999 | 37,629 | 29,642 | 58.6 | 24.7 |
| 25.3 | 462,080 | 20,695 | 22,462 | 13,351 | 27.6 | 25.3 |
| 26.3予 | 452,000 | 30,000 | 31,500 | 22,500 | 49.6 | 26 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -14,841 | -21,563 | -35,287 |
| 2024 | 43,836 | -15,903 | -37,263 |
| 2025 | 55,281 | 8,106 | -63,140 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 10.2% | 8.3% | 6.4% | — | — |
| 2024 | 6.2% | 5.8% | 4.4% | — | — |
| 2025 | 4.4% | 2.9% | 2.2% |
高値平均:35.6倍 安値平均:22.8倍 |
1.03倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ヤマハの直近3年間の数値を見ると、企業としての収益力が明確に低下しており、業績面ではかなり苦しい局面にいることが読み取れる。まず営業利益は2023年の464億円から、2024年は289億円、2025年には207億円へと連続で減少。営業利益率も10.2% → 6.2% → 4.4%へと急速に悪化しており、本業の収益性が確実に落ち込んでいる。これは楽器市場の世界的な需要鈍化、為替影響、電子デバイス事業の不振など複合要因が考えられ、トレンドとして下向きなのは投資判断として大きなマイナス材料となる。
経常利益・純利益も同様に右肩下がりで、純利益は381億円 → 296億円 → 133億円と半減。EPSも74円 → 58円 → 27円と急激に落ち込み、一株利益の縮小が株主価値の低下につながっている。ROEは8.3% → 5.8% → 2.9%と、企業の稼ぐ力が急速に弱まっていることを示す数字となっており、一般的にROE10%以上が優良ラインと言われる中で、この数値はかなり厳しい部類に入る。ROAも6.4% → 4.4% → 2.2%と低下しており、資産を利益に変換する力も弱まっている。
一方で株価指標を見ると、2025年のPERは高値平均35.6倍、安値平均22.8倍と利益に対してかなり割高な水準にある。これは利益が落ち込んでいるため、PERが自動的に跳ね上がっている構造であり、決して市場が楽観視しているわけではない。PBRは1.03倍と、帳簿価値に対してほぼ等価の評価だが、ROEが3%弱の企業としては割安とは言い難い状態である。「資本効率が低いのにPBR1倍前後で維持されている」ということは、投資妙味としてはやや弱い。
総合すると、現在のヤマハは“楽器メーカーとしてのブランド力は絶対的だが、収益構造の悪化が続いている企業”という評価が最も近い。利益率の低下、ROEの劣化、EPSの急落など、数値は明確にネガティブな方向に向かっている。財務面では依然として安定感はあるものの、投資目線で見ると「成長株」「割安株」どちらの魅力も薄く、積極的に強気で買える状態とは言いにくい。
今後立ち直る可能性があるとすれば、グローバルな楽器需要の回復や音響・デジタル機器事業の反転、あるいは円安メリットが再び強く働く局面が必要になる。現時点では“回復待ちの中長期目線の銘柄”であり、短期での上昇期待は限定的と判断される。安定性はあるが成長性が弱く、直近の数値だけを見れば「無理に手を出す場面ではない」というのが率直な印象になるだろう。
配当目的とかどうなの?
ヤマハを配当目的で考える場合、予想配当利回りは2.48%と、国内株全体の平均(約2%)よりは少し高いが、いわゆる「高配当株」と呼ばれる3〜4%以上の水準ではない。位置づけとしては“中程度の利回りで安定配当を目指す銘柄”となる。
利回り自体はそこまで悪くないものの、問題は業績と収益性のトレンドだ。ヤマハは直近3年で営業利益が大きく減少し、営業利益率も10.2% → 6.2% → 4.4%と急低下。純利益は381億円 → 296億円 → 133億円と半減し、EPSも74円 → 58円 → 27円まで落ち込んでいる。ROEも8.3% → 5.8% → 2.9%と極端に悪化しており、企業全体の利益創出力が弱まっていることは明らかだ。
このように収益力が低下している企業の場合、配当の継続性について慎重に見る必要がある。現状では減配はしていないが、利益が減り続けると配当性向が上がり、配当余力は確実に圧迫されていく。実際、26.3期のEPS49.6円に対し配当26円となれば、配当性向は52%前後になり、以前よりも余裕があるとは言いにくい水準である。
ただし、ヤマハはキャッシュフロー自体は一定の改善が進んでおり、2024〜2025年の営業CFはプラスを維持している。財務基盤もしっかりしているため、“大幅な減配リスクがすぐ顕在化する”というタイプではない。ブランド力も非常に高く、長年にわたり安定したビジネスモデルを持っている点はプラス材料だ。
しかし、「配当目的で積極的に買うべき銘柄か?」と聞かれると、答えはやや厳しい。収益力が落ちている企業の配当は伸びにくく、利回りも2.48%と高くはない。配当利回り重視の投資家からすると、他により安定・高利回りの選択肢が多いのが実情である。
総合すると、ヤマハは“利回りはそこそこ、安定感はあるが成長力に不安が残る配当株”という位置づけになる。配当が目当てでこの銘柄を積極的に買うよりは、業績が立ち直る転換点を待って、株価の割安さを狙う方が投資妙味は大きいと言えるだろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
ヤマハの現在値は1,046.0円。世界最大級の総合楽器メーカーであり、音響機器・電子デバイスなど多角的に事業を展開しているが、直近数年は業績が大きく落ち込んでおり、苦しい局面にある。営業利益は464億円 → 289億円 → 207億円と下落し、営業利益率も10%台から4%台へ急低下。純利益も半減し、EPSも大きく落ち込み、ROEも8% → 5% → 2%台と企業の稼ぐ力が明らかに弱まっている。こうした収益力の低下は株価にも反映されており、現在値1,046円は低水準とも言える位置にある。これらを踏まえ、今後5年間の株価シナリオは以下の3パターンが想定される。
【良い場合】
楽器市場の世界的な回復が進み、アジア圏の需要が再び拡大。プロ向け・教育向け需要が戻り、音響機器事業もライブ需要回復やイベント市場の活性化で改善。さらに円安が進行し、輸出比率の高いヤマハに追い風となるケースでは、営業利益率が再び6〜7%台へ回復し、ROEも5〜7%に戻る。市場が「業績底打ち」と判断すれば、PERは15〜20倍、PBRは1.0〜1.2倍程度まで評価が上がり、株価は 1,500〜2,000円 辺りまで戻る可能性がある。
【中間の場合】
楽器需要は横ばい〜緩やかな回復、音響機器は堅調だが大きな伸びはなく、電子デバイスなど一部事業の回復は限定的なパターン。営業利益率は5%前後、ROEは4〜5%のレンジにとどまり、市場評価も現在の延長線上で推移する。PERは12〜15倍、PBRは0.9〜1.0倍程度の水準が続き、この場合の株価は 1,200〜1,400円 あたりが中心値となる。現在値からある程度の戻りはあるが、大きな上昇余地は限定的なパターン。
【悪い場合】
景気停滞やインフレで個人消費が鈍り、楽器需要が戻らないケース。教育向け・趣味向け需要が弱く、プロ用途の音響も低調。電子デバイス事業も競争激化で利益確保が難しくなり、営業利益率が4%以下に低迷、ROEも2〜3%の低水準が続くシナリオ。この場合、PERは8〜10倍、PBRは0.7〜0.9倍まで縮小し、株価は 800〜950円 のレンジまで下落する可能性がある。財務は健全なため急落はしにくいが、じわじわと停滞する展開になる。
【まとめ】
ヤマハはブランド力は圧倒的だが、短〜中期的には業績の回復が見えるまで株価が大きく上昇する可能性は高くない。現在値1,046円はある程度の割安感はあるものの、爆発的に伸びるタイプの銘柄ではなく“業績底打ち→緩やかな回復”というサイクルを待つ必要がある。5年後の想定株価は良い場合1,500〜2,000円、中間で1,200〜1,400円、悪い場合800〜950円というレンジが現実的なラインとなる。
この記事の最終更新日:2025年11月19日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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