株価
丸紅とは

丸紅株式会社は、日本を代表する大手総合商社の一つであり、歴史ある商社の中でも特に「生活・社会インフラ」に強みを持つ企業として知られている。現在の会社としての設立は1949年だが、前身となる商社活動は19世紀まで遡り、日本の商社文化の発展とともに成長してきた長い歴史を持つ。総合商社らしく、世界各地にネットワークを持ち、原材料の調達から販売、事業投資、インフラ構築、流通まで、多方面にビジネスを展開している。
丸紅の事業ポートフォリオは非常に幅広く、まず食料・穀物分野は同社の代表的な強みのひとつだ。世界中で穀物や農産物の生産・集荷・輸送・加工・販売まで関わっており、世界的な食料サプライチェーンの一部を担う存在になっている。また、食品だけでなく、畜産、油脂、飲料、加工食品など、生活に密着した分野でも深くビジネスを展開しており、消費者の生活基盤を支える役割を果たしている。
さらに丸紅は電力事業にも力を入れており、国内外の発電所の運営やIPP(独立系発電事業)などの電力インフラビジネスで高い実績を持つ。日本の総合商社の中でも特に電力事業の歴史が長く、再生可能エネルギーへの投資にも積極的で、風力・太陽光・水力などのクリーンエネルギー分野にも拡大している。電力は安定収益源になりやすく、長期にわたりキャッシュフローを生むため、丸紅の収益基盤を支える柱のひとつになっている。
また、資源・エネルギー分野でも、原油・天然ガス・金属資源などの開発・調達・販売に取り組んでいる。化学品領域では樹脂・化成品・医薬関連素材まで幅広く取り扱い、製造業に必要な素材供給の役割も担っている。
紙パルプ・森林分野では、植林事業を含む長期的な資源サイクルを構築しており、木材・紙の製造・販売までを一貫して関わる体制を持つ点が丸紅のユニークな特徴のひとつだ。環境配慮型のビジネスという意味では、脱炭素関連の取り組みやバイオマス発電事業なども進み、サステナビリティ戦略も積極的に進化している。
インフラや産業機械の分野では、交通システム、航空機ビジネス、建材、インフラ輸出など、国家規模のプロジェクトに関わる案件も多い。特に海外新興国では、電力・下水処理・交通インフラなどの社会基盤整備に多くの実績を持っており、商社としての総合力が強く反映されている。
近年ではICTやデジタル領域にも進出し、物流効率化、デジタルサプライチェーン、通信関連など、新しい分野での事業拡大にも積極的だ。総合商社は単なる“物の仲介”から“事業投資と事業運営”へとビジネスモデルが進化しているが、丸紅もこの流れの中で世界中の企業と共同で事業を展開し、収益源を多角化している。
総合すると、丸紅は食料・電力・資源・化学品・森林・インフラ・デジタルなど多岐にわたる事業を組み合わせ、世界規模で人々の生活や産業を支える水平なビジネスを展開している総合商社である。生活インフラから産業基盤まで幅広い分野で事業を持っている点は、同社の大きな強みであり、長期的な安定性の源となっている。
丸紅 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 9,190,472 | 328,846 | 651,745 | 543,001 | 316.1 | 78 |
| 24.3 | 7,250,515 | 275,059 | 567,136 | 471,412 | 279.6 | 85 |
| 25.3 | 7,790,168 | 349,472 | 629,207 | 502,965 | 302.8 | 95 |
| 26.3予 | 8,050,000 | 350,000 | 638,000 | 510,000 | 309.8 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 606,334 | 156,805 | -766,587 |
| 2024 | 442,469 | -334,425 | -254,172 |
| 2025 | 597,945 | -395,303 | -122,035 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 3.5% | 18.8% | 6.8% | — | — |
| 2024 | 3.7% | 13.6% | 5.2% | — | — |
| 2025 | 4.4% | 13.8% | 5.4% | 高値平均:8.7倍 安値平均:5.4倍 |
1.59倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
丸紅の直近の業績や指標を改めて見ると、この会社が総合商社の中でも「地味に強く、割安に放置されやすいタイプの優良企業」であることがよくわかる。まず売上高は9兆1900億円 → 7兆2500億円 → 7兆7900億円と上下しながらも安定しており、商社特有の市況変動の影響は受けつつも、企業としての事業規模は揺るがない。営業利益は3,288億円 → 2,750億円 → 3,494億円と一度落ち込んだあと再び増加しており、経常利益や純利益もそれぞれ6,517億円 → 5,671億円 → 6,292億円、5,430億円 → 4,714億円 → 5,029億円と、景気や資源価格の波を受けながらも最終的には高水準を維持している。
利益の質を見ると、営業利益率は3.5% → 3.7% → 4.4%と明確に改善しており、丸紅全体が“薄利多売の体質から少しずつ改善している”ことが数字から読み取れる。総合商社という業種は多くの事業を抱えているため、利益率の改善は経営効率の向上を象徴しているポイントで、丸紅が徐々に収益基盤を固めてきたことが見て取れる。
さらにROEは18.8% → 13.6% → 13.8%と高水準で、日本企業としては非常に優秀なレベルにある。ROAも6.8% → 5.2% → 5.4%と安定しており、総資産を効果的に利益につなげている点もプラス材料。商社という巨大な資産を抱えるビジネスモデルの中で、この規模のROE・ROAを維持できているのは明確な競争力がある証拠だ。
一方で、株価の指標を見ると丸紅は明らかに“割安”だ。2025年のPERは高値平均8.7倍・安値平均5.4倍と依然として低い水準で、PBRも1.59倍と控えめ。商社株は以前から割安で放置される傾向が強かったが、近年は収益力が安定してきており、本来であればPER10〜14倍程度で評価されてもおかしくない。しかし丸紅は、事業構造が地味な分、市場から過度に注目されにくく、収益力の割に株価が上がりにくいという“良くも悪くも評価されにくい銘柄”という性質を持っている。
ただしそれは裏返せば、「割安に買える安定企業」「大きく崩れにくく、着実に利益を積み重ねる企業」という長期投資的な魅力につながる。
丸紅の事業は食料・電力・資源・化学品・森林・インフラなど多岐にわたるため、一部のセクターが不調でも他のセクターが補う“分散効果”が強い。特に食料や電力といった“生活に直結した領域”の比率が高いため、世界経済が悪化しても必要とされる分野が多いのが丸紅の安定性の源になっている。
総じて丸紅は、派手に成長する銘柄ではないが、利益率が改善し、ROE・ROAが高く、バリュエーションが割安で、収益の柱が分散されているという総合商社の“王道的な堅実株”。短期で値上がり益を狙う銘柄ではないものの、長期でじっくり資産形成をしたい人にとっては非常に扱いやすく、ポートフォリオの中でも安定感を生む存在になる。
結論として、丸紅は「割安で買えて、下にも強く、じわじわ成長する」長期保有向けの優良商社株。安定感と割安さを両立している点が最も大きな魅力だと言える。
配当目的とかどうなの?
丸紅を配当目的で考えたとき、この企業は「高配当株」というほどの目立つ利回りではないものの、安定性と堅実な増配余力を持つ“扱いやすい配当株”という位置づけになる。予想配当利回り(2026・2027年度)は2.65%と商社株の中では中くらいの水準だが、業績の安定性や事業の分散度を考えると、配当を長期で受け取りたい投資家にとって十分魅力的な対象と言える。
まず丸紅は、食料・電力・資源・化学品・森林など、景気の影響を受けやすいものから受けにくいものまで幅広く事業を持っており、不調セクターが出ても他がカバーするという“総合商社の分散メリット”がしっかり効いている。実際、営業利益・経常利益・純利益は市況に合わせて上下しながらも、最終的には高水準で安定しており、利益率も少しずつ改善している。営業利益率が**3.5% → 3.7% → 4.4%**とじわじわ上昇しているのは、事業の質が着実に良くなっている証拠だ。
さらにROEは13〜19%前後と日本企業としては非常に高く、ROAも安定しているため、企業としての稼ぐ力が強い。株主還元の源泉がしっかりしている企業は、長期的に配当を維持・増配しやすい傾向があるが、丸紅はまさにそのタイプの企業だといえる。
配当についても、ここ数年は増配基調が続いており、利益の伸び方に応じて配当を引き上げる動きが見られる。予想配当利回り2.65%という数字だけ見ると「高配当株」とまでは言えないが、「業績の安定性 × 割安バリュエーション × リスクの低さ」を考えれば、実質的なリターンは数字以上に安定している。丸紅はPERが5〜9倍と非常に割安圏にあるため、株価自体が大きく崩れにくく、配当収入を安定的に受け取りやすい点もメリットだ。
また、丸紅の事業には電力やインフラといった“長期的に安定した収益を生みやすい分野”が多いため、突発的な業績悪化が起こりにくい。これは配当目的の投資家にとって非常に重要なポイントであり、「配当が安定しているほど安心して持てる」という性質が、丸紅の株にはある。
総合すると、丸紅は利回りこそ2.6%台と控えめだが、安定性・資本効率・割安さ・増配余力のすべてが揃った、長期保有向けの堅実な配当株。派手な利回りではないが、崩れにくいビジネスモデルを持ち“持っていて安心できる”タイプの銘柄だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
丸紅の株価を現在値3,761円から5年間という中期スパンで考えると、この企業の特徴である「事業の分散による安定性」が予測の軸になる。丸紅は食料、穀物、電力、資源、化学品、紙パルプ、森林、不動産、インフラなど、多岐にわたる事業を持っており、景気に左右されやすい分野とされにくい分野が良いバランスで共存しているため、特定のセクターが不調でも別の分野が補う構造になっている。このため業績は完全に沈みにくく、営業利益や純利益も市況に合わせて上下しながらも高い水準を保ってきた。営業利益率は3%台から4%台へ改善し、ROEも13〜19%と高い水準を維持している。
一方で株価指標は依然として割安圏にあり、PERは5〜9倍、PBRは1.5倍台と過熱感がない。伊藤忠や三菱商事と比べて市場評価が控えめで、丸紅は良い会社であるにもかかわらず割安に放置されやすい傾向がある。この点は長期投資においてはメリットであり、崩れにくく、着実に利益を積み上げる会社として評価できる。
こうした企業体質を踏まえ、今後5年間の株価を「良い場合」「中間」「悪い場合」の3つのシナリオで見ていく。
良い場合は、電力や食料などの安定事業に加えて、資源や化学品などの市況関連分野も伸び、再生可能エネルギーやインフラ投資の拡大も追い風になるケースである。この場合、利益が増えて評価も見直され、PERが8〜12倍程度に上昇し、株価は4,800〜5,300円程度まで上昇する可能性がある。
中間の場合は、最も現実的なシナリオであり、丸紅らしく利益が上下しつつも最終的には微増を続けるパターンである。PERは現在の水準付近で推移し、株価は4,000〜4,400円程度になると考えられる。大きな値動きは少ないものの、長期ではじわじわと資産が増えていく展開である。
悪い場合は、世界景気の後退、資源価格の下落、円高、海外事業の不調などが同時に起こるケースだが、丸紅は食料や電力など安定収益分野の比率が高いため、業績が深く落ち込む可能性は低い。この場合でも3,300〜3,600円の範囲で下げ止まりやすく、下値が固い点が特徴である。
総合すると、丸紅は株価が急騰するタイプの銘柄ではないが、「割安で安定していて下値が固く、利益体質が年々改善している」という長期投資に向いた特性がはっきりしている。5年間の株価レンジは、悪い場合で3,300〜3,600円、中間で4,000〜4,400円、良い場合で4,800〜5,300円程度となり、どのシナリオでも極端な崩れが起こりにくい構造を持っている。長期で保有し、安定した資産形成を目指す投資家に適した銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年11月19日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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