株価
丸井グループとは

丸井グループは、一見すると「マルイの商業施設を運営している小売企業」というイメージが強いですが、実態としては“小売 × 金融 × 投資”を組み合わせた非常に独自性のあるビジネスモデルを展開している会社です。歴史ある企業でありながら、従来の百貨店や小売企業とは全く違う進化を遂げている点が大きな特徴で、特に「エポスカード」を中心としたフィンテック事業が主力となり、今では利益の大半を金融分野で稼ぐ企業へと変貌しています。
まず小売事業についてですが、丸井が運営する「マルイ」や「モディ」は、全国の都市圏に出店しており、アパレルや雑貨、飲食、カフェ、アニメ・キャラクター関連ショップ、イベントスペースなど、若年層からファミリー層まで幅広い客層に向けたラインアップを持っています。特に丸井グループの特徴は、自社で商品在庫をほぼ持たない“テナント中心のモデル”を採用している点です。これにより、アパレル不況が続く中でも在庫リスクを極端に抑え、商業施設としての安定収益を確保できる体質へと変わっています。さらにイベントやポップアップショップに力を入れており、Z世代やオタク文化との親和性が高く、「体験型の商業空間」として独自の存在感を持っています。
しかし丸井グループの本当の主役となっているのは、言うまでもなくフィンテック事業です。エポスカードの会員数は数千万規模に達し、国内でも有数のクレジットカード事業者として成長しています。信用販売利益、キャッシング、保険、ローン、ネット決済、加盟店手数料など、多様な収益源があり、この金融領域がグループ全体の利益を牽引している状況です。小売店舗は単なる“物を売る場所”ではなく、カード会員を獲得する起点としても機能しており、「店舗 → 会員獲得 → 金融収益」という流れが完全に仕組み化されています。この“小売と金融のシナジー”は、丸井グループ独自の強みです。
さらに丸井は、スタートアップ企業との共創や出資にも積極的で、サステナビリティや社会課題解決型の事業を重視する姿勢を強めています。脱炭素、循環型社会、Z世代との共創ビジネスなど、未来志向の領域に投資し、自社の理念である「人と未来に投資する」という方向性に沿った事業モデルを築きつつあります。この投資・共創領域はすぐに利益を生むものではないものの、長期的に見れば企業価値向上につながる余地が大きく、丸井グループが“ただの小売企業”に留まらない理由のひとつです。
総合的に見ると、丸井グループは小売企業でありながら、収益源の中心は金融であり、さらに未来志向の投資にも取り組むという、多層構造のビジネスモデルを持っています。景気やアパレル市況に依存しすぎず、フィンテック事業が強力に稼ぐ一方、小売部門は安定した収益基盤、投資部門は将来の成長の芽という役割を担っています。こうした“守りと攻めを両立する企業”である点が、丸井グループの魅力と言えます。
丸井グループ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
EPS (円) |
配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 217,854 | 38,771 | 36,364 | 21,473 | 109.4 | 59(特) |
| 2024/3 | 235,227 | 41,025 | 38,776 | 24,667 | 130.7 | 101 |
| 2025/3 | 254,392 | 44,515 | 39,916 | 26,588 | 143.2 | 106 |
| 2026/3(予) | 273,000 | 50,000 | 42,000 | 28,000 | 154.5 | 131 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023/3 | 16,717 | -22,382 | 18,259 |
| 2024/3 | 38,003 | -18,266 | -7,879 |
| 2025/3 | -4,482 | -13,665 | 2,838 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 17.7% | 8.7% | 2.2% | ― | ― |
| 2024/3 | 17.4% | 9.7% | 2.4% | ― | ― |
| 2025/3 | 17.4% | 10.8% | 2.5% | 高値平均:21.0倍 安値平均:15.8倍 |
2.26倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
丸井グループの業績を全体的に見ていくと、この企業が小売業に属しながらも、ほとんど“金融企業の顔”を持っているという独特の強さが数字にはっきり表れています。まず売上高は2023年の約2,178億円から、2024年は2,352億円、2025年は2,543億円と、毎年しっかり伸びています。特に小売企業でこのような安定成長が続いているのは珍しく、これはマルイの店舗ビジネスよりも、エポスカードを中心とした金融収益がしっかり伸びていることが背景にあります。
営業利益・経常利益の推移を見るとさらに顕著で、営業利益は2023年が387億円、2024年が410億円、2025年が445億円ときれいな右肩上がり。経常利益も同じように増加しています。さらに純利益も2023年214億 → 2024年246億 → 2025年265億と、安定して増えています。業績が年々伸び続けている企業というのは数は限られますが、丸井はその中の1社です。
こうした利益の伸び以上に、投資家が注目すべきポイントは営業利益率の高さで、直近3年の営業利益率は17.7% → 17.4% → 17.4%と非常に高い水準を維持しています。一般的な小売業や百貨店は、営業利益率5~10%でも良い方ですが、丸井はその倍以上という圧倒的な効率性を誇っています。これは、店舗ビジネス自体が“在庫を持たないテナント型”でリスクが小さく、実際の利益を生み出しているのがエポスカードを中心とした金融事業であるという、丸井特有のビジネスモデルの強さの現れです。
ROE・ROAの数字も改善が続いており、ROEは8.7% → 9.7% → 10.8%と順調に上昇。ROAも2.2% → 2.4% → 2.5%と資産効率が改善しています。ROEが10%を超えている企業は、資本効率が良く、利益体質が強いとされるため、丸井は評価されやすい体質を持っています。
一方で、PER・PBRを見ると、市場が丸井を“安定した優良企業”としてしっかり評価していることが分かります。2025年の実績PERは高値平均で21.0倍、安値平均でも15.8倍と、割安株というよりは、業績の安定性に対して正当なプレミアムがついている状態です。PBRも2.26倍と高く、これは純資産に対して投資家が強い期待を持っている証拠です。単なる小売企業でPBR2倍超えは珍しいため、この評価は完全に金融収益の安定性によるものと言えます。
総合的に見ると、丸井グループは「小売 × 金融 × 投資」という三層構造が機能している企業で、売上・利益が安定して伸び続けている点は非常に評価できます。成長株のように爆発的な伸びは期待しにくいものの、金融事業を中心とした利益体質は非常に強く、営業利益率の高さ、ROEの改善、安定成長という点で長期投資に向いた銘柄です。株価水準は安くはありませんが、「割安だから買う」というより、「堅実に利益を積み上げる優良企業として安心して保有する銘柄」という位置づけのほうが適切です。
丸井は短期で急騰を狙うタイプではなく、長期視点で“着実に積み上げていく銘柄”として非常に扱いやすい企業です。景気の波に左右されにくい金融収益を軸に、売上・利益・効率性がきれいに伸びているため、長期保有との相性はかなり良いと言えるでしょう。
配当目的とかどうなの?
丸井グループを配当目的で見た場合、この会社はかなり扱いやすいタイプの銘柄だと感じます。予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに4.19%と、安定して4%台を出しており、東証プライムの中でも十分高い部類に入ります。4%台の利回りを保てる企業というのは、裏側にそれだけ安定した利益構造があるということなので、まずこの時点で“配当目的の候補”としての土台はしっかりしています。
丸井の強みは、小売企業でありながら「小売で稼ぐ会社」ではないという点です。マルイやモディの店舗事業は安定基盤として存在しますが、実際に利益の大部分を生み出しているのはエポスカードを中心とした金融事業です。営業利益率が17%台という、一般的な百貨店や小売企業ではまず見られない高い水準を継続できているのは、金融収益の安定感があるからこそです。つまり、丸井は景気の波に大きく振られにくい収益構造を持っていて、この安定性がそのまま“安心して受け取れる配当”につながっています。
業績の推移を見ても、売上高は2023年から2025年にかけてじわじわと増え、営業利益も経常利益も純利益もすべて増加しています。特に純利益が約214億 → 246億 → 265億と安定して伸びている点は、配当の持続性や増配余地の大きさを裏付けています。企業の財務体質そのものが毎年改善している状態なので、多少景気に振られる局面があっても、丸井が急に配当を削らざるを得ないような展開にはなりにくいと見るのが自然です。
もちろん、PERやPBRを見る限り「割安だから買う」という銘柄ではありません。PBR2.26倍というのは、市場が丸井を“安定的に利益を出し続ける優良企業”として明確に評価している水準です。高配当株の中には“利回りが高いのに企業が弱っているから株価が安いだけ”という銘柄もありますが、丸井はその真逆で、業績がしっかりしているからこそある程度の株価水準になっているというポジションです。
配当を目的にするなら、「利回りが極端に高いわけではないが、安定して受け取れる4%台を長期にわたって維持できる企業」というのは実はかなり価値があります。丸井グループはまさにこのタイプで“高すぎないちょうどよい利回り+安定成長”という組み合わせが長期投資に向いています。配当金をコツコツ積み上げていきたい人や、株価の急激な値動きが苦手な人には非常に相性の良い銘柄です。
結論として、丸井グループは“配当目的の長期保有”に適した、安定性のある高配当銘柄と言えます。短期の派手さはないものの、利益構造の安定性と金融事業の強さによって、安心して毎年の配当を受け取れるタイプの企業です。
今後の値動き予想!!(5年間)
丸井グループの現在値は3,122円ですが、この会社は小売業の顔を持ちながらも、実質的には金融を中心に安定して稼ぐビジネスモデルが確立されているため、株価の極端な上下が起きにくいという特徴があります。営業利益率がずっと17%前後と非常に高く、純利益も着実に伸び続けていることから、企業としての安定感はかなり強い部類に入ります。エポスカードの収益が安定して積み上がり、小売店舗は在庫を持たないテナント型でリスクが低い構造になっているため、長期的には「じわじわ堅実に育つタイプ」の銘柄です。
こうした丸井の特徴を踏まえて、今後5年間の株価を「良い場合」「中間」「悪い場合」の3つのシナリオで見ていくと、よりイメージしやすくなります。
まず「良い場合」ですが、これはエポスカードを中心とした金融収益が順調に伸び、小売事業も安定、投資・共創領域からの成果も少しずつ現れるという展開です。ROEが10%前後で推移し、配当も毎年増配できる状態が続くと、投資家の評価が高まって株価もじわじわ上がりやすくなります。このパターンだと5年後には3,600円から4,000円あたりまで視野に入ってきます。丸井は爆発的な成長株ではありませんが、安定と金融収益の強さを背景に、良いケースではしっかり株価を押し上げる力があります。
次に「中間の場合」。これは最も現実的なケースで、エポスカードの収益は堅調、小売事業も大きな崩れなし、利益も毎年少しずつ伸びるという流れです。ただし大きな成長テーマはないため、株価はゆっくりと落ち着いた動きを見せます。このパターンでは3,300円から3,500円あたりで推移しやすく、株価の上げ幅は控えめでも、配当とトータルリターンでしっかり積み上げていく安定した長期投資向けの動きとなります。
最後に「悪い場合」ですが、これは景気の悪化でカード利用が伸び悩み、小売事業も消費低迷の影響を受けるケースです。金融収益が鈍ると利益の伸びも一時的に弱まります。ただし、丸井は在庫リスクのない小売モデルと金融事業という安定収益源があるため、他の小売株のように大きく業績が崩れる可能性は低めです。それでも市場全体が弱い時期には株価が押されやすく、2,700円から2,950円あたりまで調整する場面は想定されます。ただ、この企業の構造上、悪材料が続かない限りは時間の経過とともに戻していきやすいのが特徴です。
まとめると、丸井グループの5年後の株価は、良い場合で4,000円近くまで伸びる可能性があり、中間なら3,300〜3,500円の安定ゾーン、悪い場合でも2,700〜2,950円あたりという比較的読みやすい範囲に収まります。全体的に見ると「大きくは上がらないが、安定して下がりにくい」という性質が強く、長期でじっくり配当と株価の両面から育てていける銘柄と言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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