株価
ベルグアースとは

ベルグアース株式会社は、愛媛県宇和島市に本社を置く「野菜苗の専門メーカー」で、特に“接ぎ木苗”の生産では国内トップクラスのシェアを持つ会社。トマト・ナス・キュウリ・スイカなど多くの野菜苗を大規模に生産し、農協(JA)やホームセンター、プロ農家に向けて安定供給している。単に苗を作るだけでなく、気候や病害虫に対して強い品種の開発や、栽培効率を上げる生産技術の改良にも積極的で、農業の効率化・省力化に貢献するプレイヤーとして知られる。
同社は主力の「野菜苗生産・販売事業」を中心に、苗の物流を担う流通事業、海外拠点での苗生産・輸出などを行う海外事業にも取り組んでおり、国内農業の構造変化や担い手不足といった背景をビジネスチャンスとして捉えている。特に接ぎ木苗は、病害に強く生育も安定するため農家の生産性向上につながり、年々ニーズが高まっている。企業規模としては中堅だが、接ぎ木苗というニッチ市場で高シェアを持つため、市場での存在感は大きい。
また、家庭菜園向けの苗や花き分野にも力を入れており、一般消費者向けホームセンターなどにも販路が広い。農業者向けの本格的な苗と家庭園芸向けの苗の両方を扱うことで、需要の季節性を平準化しながら、農業市場全体の変化にも柔軟に対応できるビジネスモデルを構築している。
会社としては、東証スタンダード市場に上場し、決算期は10月。資本金は約7億円規模で、売上の多くは苗の生産販売が占める。気象条件や病害の発生状況によって需要が揺れやすい業界ではあるが、近年は施設の自動化投資や栽培管理技術の向上によって収益の安定化にも取り組んでいる。国内農業は高齢化や労働力不足が進む中で、苗メーカーの役割は大きく、ベルグアースはその中核的存在として高い専門性を発揮している企業と言える。
ベルグアース 公式サイトはこちら直近3年間の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当(DPS) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.10 | 6,393 | -58 | -44 | 202 | 142.4 | 10 |
| 連23.10 | 7,061 | 76 | 106 | 78 | 50.9 | 10 |
| 連24.10 | 7,094 | 22 | -16 | 39 | 25.0 | 10 |
| 連25.10予 | 7,200 | 0 | 0 | 50 | 31.2 | 10 |
| 連26.10予 | 7,300 | 60 | 50 | 70 | 43.7 | 10 |
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022 | 344 | -467 | 49 |
| 2023 | 177 | -83 | -185 |
| 2024 | 111 | -241 | 54 |
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績 / 高値平均・安値平均) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.0% | 3.8% | 1.3% | ― | ― |
| 2024 | 0.3% | 1.8% | 0.6% | PER 高値平均 68.3倍 PER 安値平均 54.2倍 |
2.38倍 |
| 2025 | 0.0% | 2.4% | 0.8% | 95.74倍 | – |
投資判断
ベルグアースは、直近の数字を見るかぎり「売上は横ばいだが、利益水準がかなり薄く、安定性に課題がある企業」という印象が強い。連23.10の時点では営業利益7,600万円、経常利益1億600万円、純利益7,800万円と一定の黒字を確保していたが、翌期の連24.10では営業利益2,200万円へ大幅縮小し、経常利益はまさかのマイナス1,600万円まで落ち込んだ。純利益こそ3,900万円と黒字を維持したものの、EPSは50.9円から25.0円へ半減しており、利益面の波の大きさが目立つ決算となっている。
25年10月期(予想)では売上が72億円と微増する一方、営業利益・経常利益ともにゼロ予想となっており、実質的には横ばい圏の厳しい収益が続く見通しだ。純利益は5,000万円と小幅な回復を見込むが、EPSはわずか31.2円で、過去の水準と比べるとまだかなり低い段階にある。営業利益率も1%→0.3%→0%という推移で、ビジネスモデルとして利益率の低さは明確な課題。農業苗メーカーという性質上、天候や需要変動の影響を受けやすく、固定費圧力との兼ね合いで利益の変動が出やすい点はリスク材料と言える。
株価指標の面では、PBRが約2.4倍と純資産に対してやや割高感があり、十分な利益成長が伴っていない点を考えると強い投資妙味を感じにくい局面。PER(高値平均・安値平均)は68倍/54倍と極端に高く、利益が薄い局面での株価水準としては割高圏にある。ROE・ROAも数%前半と控えめで、資本効率面でも高評価はしづらい。
総じて、現時点のベルグアースは「成長株として買うには利益が弱く、割安株として買うにも割高感が残る」という中途半端な立ち位置にある。農業分野の長期需要や家庭菜園市場の底堅さなど、構造的な追い風はあるものの、利益率改善が確認できるまでは積極的に評価しにくい銘柄と言える。短期で大きな上昇を狙うより、今後の決算で営業利益率の改善や収益の安定化が見えてから検討するほうが安全度は高いだろう。
配当目的とかどうなの?
ベルグアースを配当目的で考える場合、正直なところ「配当株としての魅力はかなり薄い」という評価にならざるを得ない。現在の予想配当利回りは連25.10期・連26.10期ともに0.33%と、東証スタンダード銘柄としては極めて低水準で、配当収益を狙って投資するタイプの銘柄ではない。日本株全体の平均利回り(約2%前後)と比較しても見劣りし、銀行株やインフラ系、高配当ETFなどと比べると利回り面で圧倒的に不利な立ち位置になる。
さらに気になるのは、利益水準自体が薄く、営業利益率が1% → 0.3% → 0%という低状態で推移している点だ。利益が安定して積み上がっていない企業において、配当の持続性を評価するのは難しい。実際、純利益も数千万円規模で推移しており、内部留保の積み上げ余力が大きいとは言えないため、大きな増配を期待するのは現実的ではない。現状の10円配を「維持できれば良い」という段階にあり、積極的に配当余力を高めていく企業とは言いづらい。
また、PBRが2倍台半ばと純資産に対してやや高めの評価を受けている一方で、収益性が低い状況では、株主還元が割安感を補う役割を果たすこともできていない。つまり、配当利回りの低さに対して株価が大きく割安ということもなく、配当株として保有し続けるインセンティブが弱い。
総合的に見ると、ベルグアースは「成長期待先行型でもなく、高配当株でもない中間域」に位置する銘柄で、配当を主目的に投資するメリットはほとんどない。配当狙いの投資家にとっては、同じ資金を使うなら高配当セクター(銀行、商社、鉄鋼、REIT、インフラ系)に分散したほうが配当効率は圧倒的に高くなるだろう。ベルグアースは値上がり益を狙うか、農業関連というテーマ性に魅力を感じる人向けであり、配当目的で積極的に選択するタイプの銘柄ではないと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
ベルグアースの現在値は 2,968円だが、この株は景気敏感株ともディフェンシブ株とも言い切れない独特の位置におり、農業というテーマ性はあるものの、業績が安定しにくいビジネス特性から株価の見通しは良くも悪くも振れ幅が大きい。売上は毎年約7億円前後でほぼ横ばいながら、営業利益率が1%すら確保できない年が続き、利益の“薄さ”がそのまま株価の不安定さに直結している。苗生産は季節要因・天候・流通コスト・原材料価格の影響が直撃する事業で、固定費も重く、業績が急に跳ねるタイプではない。こうした特性を踏まえて、5年の株価イメージを3パターンで見ていくと以下のような姿になる。
【良い場合】
まず、設備投資や省力化技術の導入が効いて生産性が改善し、営業利益率が1〜2%へと回復してくるパターン。苗メーカーは規模の経済が働きにくい一方、人件費の抑制やIT化で効率が改善すれば利益が急に戻ることもある。近年は家庭菜園市場の底堅い需要や、農家の高齢化に伴う「苗の外部調達」ニーズも増えており、業界自体には追い風がある。ベルグアースがこの流れを生かして安定黒字を確保できれば、EPSも50〜70円台へと戻り、株価の評価も改善する。PERがかつての高水準まではいかなくても、業績の底堅さが見えれば株価は自然に切り上がり、3,500〜4,300円あたりまで到達する可能性がある。農業関連はテーマ性で買われる時期もあるため、相場環境次第ではさらに上振れする余地も残る。
【中間の場合】
売上はほぼ横ばいで、利益もゼロ〜微黒のレンジで推移する現状維持パターン。営業利益率は0〜1%を行ったり来たりで、EPSは30〜40円台のまま停滞する。農業は人口減で縮小すると思われがちだが、実際は担い手不足を補うための外部委託や苗の大型化需要が増えており、完全に衰退するわけではない。ただ、ベルグアースの場合は利益が伴わないため、株価はテーマ性だけで大きく買われる展開にはなりにくい。結果として株価は2,600〜3,200円という狭いボックス相場に入り、今の水準に近いレンジで推移することが想定される。長期保有しても値動きによる資産形成にはつながりにくく、「保有しても持ち味が強くない銘柄」になりやすい。
【悪い場合】
天候不順・物流コスト高・原材料費の上昇・農家の作付け縮小などが重なり、利益がマイナスまたは低水準に沈むパターン。営業利益率がゼロ付近から改善せず、EPSも30円を割り込むような状況が続くと、市場からの評価は一段と厳しくなる。PBRが2.4倍付近の現在水準から1.6~1.8倍へと切り下がり、株価は自然と1,900〜2,300円圏まで調整する可能性がある。農業分野は景気に左右されにくい部分もあるが、逆に“爆発的に伸びるテーマではない”ため、業績悪化時に株価を支える材料が少ない点もリスク要因になる。
総じて、ベルグアースの5年株価シナリオは「利益が戻るかどうか」がすべてと言って良い。農業は国の補助や構造改革によって中長期では安定した市場だが、企業として利益構造が弱い時期が続いている点は無視できない。現状の2,968円という株価水準は決して割安ではなく、成長株としての勢いも弱いため、投資するなら業績の底打ちと改善の兆しが出てからでも遅くはない。今は過度に楽観視する必要はなく、むしろ慎重に決算を確認しながら距離を詰めていくべき銘柄という印象が強い。
この記事の最終更新日:2025年11月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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