株価
MS&ADインシュアランスグループホールディングスとは

MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、三井住友海上あいおい生命などを中核会社とする、日本最大級の総合保険グループです。本社所在地は東京都中央区新川2丁目27番2号で、日本の大手金融・保険企業が集まるエリアに拠点を構えています。現在の持株会社体制は2008年に発足し、旧三井住友海上グループと旧あいおい損保・ニッセイ同和損保の経営統合によって誕生しました。
事業内容は非常に幅広く、運営する会社の規模と範囲は国内損害保険グループの中でも最大級です。損害保険事業では自動車保険、火災保険、傷害保険、企業向け賠償責任保険、海上保険など、個人・法人両方の分野で多様な保険商品を提供。国内トップクラスのシェアを持ち、特に企業向け保険ではグローバル企業のリスク管理を支える重要な存在になっています。災害リスクやサイバー攻撃など新しい保険ニーズにも対応し、高度なリスクソリューションを提供するのが大きな特徴です。
生命保険事業では、三井住友海上あいおい生命を中心に医療保険、がん保険、収入保障、年金保険など幅広い商品を展開。損保と生保の両方を持つことで、個人の生活リスクから企業の事業リスクまで一体で支えられる点がMS&ADの強みです。
近年特に力を入れているのが海外事業の拡大です。アジア・欧州・北米など50ヶ国以上で展開し、現地保険会社の買収や提携を積極的に進めています。アジアでは新興国を中心に保険市場が拡大し続けているため、収益源の多角化と成長ドライバーの確保に成功しています。海外事業は今やグループ利益の3〜4割を占める規模まで成長しており、国内の自然災害が利益を圧迫する年でも海外事業の利益で補える構造が整いつつあります。
さらに、MS&ADは保険だけではなくリスク関連サービスも強化しており、企業に対して災害対策・事業継続計画(BCP)、サイバーリスク評価、海外進出時のリスク調査など、保険会社を超えた総合リスクマネジメント企業としての地位を築いています。事故や災害の支払いリスクを減らす“予防型サービス”に力を入れ、自社の収益安定にも繋げている点が特徴です。
ESG・サステナビリティにも積極的で、環境リスク対応、脱炭素社会に向けた保険商品、自然災害データ解析など、保険を通じて社会価値を創出する経営を進めています。
総合すると、MS&ADは国内損保市場だけでなく海外市場でも存在感を強め、損保・生保・海外事業・リスクコンサルティングという多層的な事業構造を持つことで、リスク分散が効いた極めて安定性の高い保険グループです。自然災害が増える近年においても、収益源が国内だけに偏っていないため、業績の振れ幅が比較的小さく、長期的に成長が期待できる大型金融株として高い評価ができます。
MS&ADインシュアランスグループホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 経常収益 | 正味保険料 | 経常利益 | 純利益 | 1株益(EPS) | 1株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 25.3 | 6,660,813 | 4,674,301 | 928,989 | 691,657 | 445.5 | 145特 |
| 26.3予 | 6,700,000 | 4,916,000 | 806,000 | 579,000 | 388.0 | 155特 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 194,153 | 480,953 | -314,502 |
| 2024 | 549,466 | -276,825 | -231,549 |
| 2025 | 660,188 | -558,725 | -659,578 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | ― | 5.3% | 0.6% | ― | ― |
| 2024 | ― | 8.2% | 1.3% | ― | ― |
| 2025 | ― | 17.2% | 2.6% | 12.2倍/7.9倍 | 1.17倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
MS&ADインシュアランスグループの業績推移を見ると、日本の損保3メガの中でも極めて安定した収益基盤を持つ企業であることが数字から明確に読み取れます。まず経常収益は6兆6,608億円から6兆7,000億円予想と横ばい〜微増で推移しており、本業である正味保険料は4兆6,743億円から4兆9,160億円へと順調に拡大しています。国内損保市場そのものは成熟していますが、自然災害リスクの積み上がりに伴う保険料改定、企業向け保険需要の増加、海外事業の拡大などが利益成長を下支えしており、収益基盤はさらに強固になっています。
利益面でも、連25.3期の経常利益9,289億円、純利益6,916億円は業界トップクラスの水準で、連26.3期はやや調整見込みとはいえ、自然災害の影響を考えれば十分に高い水準です。EPSも445.5円から388.0円へ一時的に低下するものの、この規模の利益をしっかり維持しており、企業の稼ぐ力は揺らいでいません。
効率性の面では、MS&ADの魅力がより際立ちます。ROEは5.3%から8.2%、さらに17.2%へと急改善しており、資本効率の高さは金融セクターでも屈指です。保険引受利益の改善、海外損保事業の収益増、資産運用益の寄与などが複合的に効いており、企業全体の収益構造が強くなっていることがよく分かります。ROAも0.6%から2.6%へと伸びており、総資産規模が大きい損保企業としては抜群の効率性です。
また、バリュエーションの割安さも見逃せません。25.3期のPERは12.2倍/7.9倍と、利益規模に対する株価水準は非常に低く評価されています。特に安値平均の7.9倍という水準は、明らかに市場が業績のブレを過度に織り込んでいる状態で、同業他社と比較しても割安感が強い位置です。PBRが1.17倍にとどまっている点も、資本効率の高さを考えれば十分に割安と言えます。
このように、MS&ADは本業の保険料収入が安定して伸び、純利益やEPSも高水準を維持しており、さらにROEの改善が著しい企業です。PBR1.1倍台の割安感や、業績が災害リスクで多少ブレるものの基礎利益が極めて強い点、そして海外事業の成長や為替メリットが収益に寄与している構造など、長期投資に向いた魅力が揃っています。
総合的に見ると、MS&ADインシュアランスグループは長期の安定資産として非常に高い評価ができ、増配傾向や高ROEを重視する投資家にとって魅力的な大型ディフェンシブ銘柄です。短期的な自然災害リスクに過度な反応をする必要はなく、じっくり育てる長期保有のポートフォリオに適した銘柄だと言えます。
配当目的とかどうなの?
MS&ADは「配当狙いの長期投資」との相性が非常に良い企業です。まず予想配当利回りを見ると、連26.3期で4.51%、連27.3期で4.65%と、国内の大型株の中でも明確に高い水準を維持しています。利回りが4.5%台というのは金融セクターでも上位に入り、長期で安定した配当を受け取りたい投資家にとって魅力の大きい数値です。
同社は「安定配当を維持しつつ、事業利益の成長に合わせて増配していく」という方針を掲げており、配当性向も40〜50%程度を保つことが多い企業です。損害保険という業種は自然災害の影響で利益が大きく振れる可能性がありますが、MS&ADは利益のボラティリティを抑える仕組みが非常に強固で、純利益を安定させる力に優れています。このため、同業他社と比べても減配リスクは低めと考えられます。
また、MS&ADの特徴として、通常配当に加えて特別配当を積極的に実施している点が挙げられます。実際に連25.3期・26.3期の配当は特別配が上乗せされており、株主還元の姿勢は非常に強いものがあります。これはROEが17%まで改善するなど資本効率が大幅に高まっていることや、海外保険事業の収益増加といった利益構造の強化が背景にあります。
さらに、正味保険料が着実に増加していることや、海外保険・再保険事業の成長が続いている点など、利益の底上げにつながる要因も揃っています。このため、配当の持続性だけでなく、将来の増配余地も十分に期待できます。大型ディフェンシブ株で利回り4.5%台を維持しているのは、日本市場では貴重な存在です。
総合すると、MS&ADは利回りの高さに加えて、減配しにくい安定的な収益構造を持ち、さらに特別配当も含めた株主還元を積極的に行っている企業です。利益水準が高く、ROEの改善によって増配余力も十分にあることから、長期保有すればするほど配当が積み上がっていく、典型的な「安定高配当株」と言えます。長期的に配当収入を重視する投資家にとって、非常に相性の良い銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
MS&ADインシュアランスグループの株価は現在3,434円ですが、ここから5年間の値動きを考える上で重要なのは、同社の収益構造が「保険料収入の安定性」「自然災害による利益変動」「海外損保の収益成長」「資産運用益の変動」という複数の要因で決まる点です。これらを踏まえると、MS&ADは大きく伸びる可能性を持ちながら、同時に下値は比較的限定されるという非常にディフェンシブな特徴を持っています。
まず良いケースでは、国内外の正味保険料が順調に伸び、特に企業向け保険の増加や保険料改定が利益にそのまま反映されるパターンです。海外損保事業が安定して成長すれば収益の柱がさらに分散され、自然災害のリスクを吸収しやすくなります。この場合はROEが10%台後半を維持し、資本効率の改善が株価を押し上げる形になります。こうした良好な環境が続けば株価は5,000〜5,700円程度まで上昇する可能性があり、現在値から見ても4〜6割の上昇が視野に入ります。
次にもっとも現実的な中間シナリオでは、国内の損保事業が横ばいから微増、海外事業も堅調ながら急成長というほどではなく、自然災害も例年並みという穏やかな状況を想定します。この場合は業績が安定して推移し、ROEは8〜12%程度を維持。株価は配当利回りの高さに支えられながら、4,000〜4,400円程度の水準で落ち着くと考えるのが自然です。特別配当が継続するようなら、このレンジの上限を超えてくる可能性もあります。
悪いケースでは、地震や台風などの大規模災害が重なって保険金支払いが増加し、利益が圧迫されるパターンがあります。加えて海外事業で評価損が発生したり、資産運用益が市場環境に左右されて伸び悩むことも考えられます。しかしMS&ADは巨大な損保グループで財務基盤が極めて強いため、最悪のケースでも株価の下落幅は限定的で、配当利回りの高さが下支えとなります。悪い場合でも3,000〜3,200円程度で収まり、下落率は1割前後で済むことが多いと考えられます。
総合的に見るとMS&ADは大型のディフェンシブ株として非常に安定性が高く、利益が大きくブレにくいことから、5年間というスパンで見た場合でも“中間〜良いシナリオ”に収まりやすい企業です。高い配当利回りも株価の下支えとなり、長期保有を前提にすることで配当収入と株価上昇の両面を狙えるバランスの良い銘柄です。長期的な資産形成や配当重視の投資家に非常に向いている銘柄であり、大型株としての安定感と成長余地の両方を併せ持つ優良な保険株と言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月21日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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