株価
T&Dホールディングスとは

T&Dホールディングスは、日本の大手生命保険グループの一角を形成する持株会社で、太陽生命・大同生命・第一フロンティア生命という三つの主要な生保会社を軸に事業を展開している企業です。本社は東京都中央区日本橋にあり、国内の生保グループの中でも特に「顧客層の多様性」と「販売チャネルの広さ」に大きな特徴があります。
グループの中核である太陽生命は高齢者向け保険に強みを持ち、認知症保険や生活習慣病向けの商品など、シニア層のニーズに合わせた商品を幅広く扱うことで安定した保険料収入を確保しています。一方、大同生命は中小企業向けの生命保険で国内トップクラスの存在感を持ち、法人の保障や福利厚生向けの保険を提供することで、契約期間の長いストック収益をグループ全体にもたらしています。そして第一フロンティア生命は銀行窓販に特化し、一時払い商品や資産形成型の保険を中心に、販売ネットワークを生かした収益獲得を続けています。
これら三社はそれぞれ役割が異なり、個人、高齢者、法人、そして銀行窓販という複数の市場をカバーしているため、T&Dホールディングスは特定の市況に業績が振り回されにくい、非常に強い収益構造を持っています。国内生保グループの中でも、この分散されたビジネスモデルは際立った特徴です。
さらに同社は資産運用にも積極的で、債券・株式に加えて不動産やインフラ、プライベートエクイティなどのオルタナティブ資産への投資も進めています。こうした運用の多様化により、収益源の安定性を高め、長期的な運用益も確保しやすい体制を整えています。金利が上昇する局面では利差益が改善しやすいなど、生保ビジネスならではの強みも発揮できています。
加えて、業務のデジタル化も進んでおり、引受業務の効率化や保険金請求のオンライン化、営業現場のデジタル化など、コスト構造の改善につながる動きが強まっています。これらの取り組みは、将来的な利益率の底上げにも寄与するものです。
総合して見ると、T&Dホールディングスは高齢者向け、法人向け、銀行窓販という三つの柱がそれぞれ安定した保険料収入につながっており、太陽生命・大同生命・第一フロンティア生命がそれぞれ明確な役割を果たすことで、国内生保市場の中でも安定性の高いビジネスモデルを築いています。さらに資産運用も多様化が進んでおり、収益を複数のルートから積み上げられる点も、大手生保グループとしての強みです。
こうした特徴から、T&Dホールディングスは長期で安定した収益を積み上げていくタイプの生保グループであり、強固なストック収益モデルを背景に、投資対象としても注目されやすい企業と言えます。
T&Dホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 経常収益(百万円) | 保険料等(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 1株益(円) | 1株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連24.3 | 3,207,991 | 2,474,555 | 159,809 | 98,777 | 183.1 | 70 |
| 連25.3 | 3,730,479 | 2,579,821 | 198,595 | 126,411 | 241.7 | 80 |
| 連26.3予 | 3,010,000 | 2,620,000 | 223,000 | 118,000 | 237.1 | 124 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -307,631 | 665,960 | -106,580 |
| 2024 | 262,754 | -180,245 | -79,227 |
| 2025 | -359,867 | 94,269 | -87,340 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | ― | -13.4% | -0.8% | ― | ― |
| 2024 | ― | 7.0% | 0.5% | ― | ― |
| 2025 | ― | 9.7% | 0.7% | 14.5〜8.6 | 1.09 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
T&Dホールディングスの直近業績を見ると、この企業が「生保3社の強みを結集した安定型グループ」であることが数字からはっきりと表れています。まず経常利益を見ると、連24.3で1,598億円、連25.3で1,985億円としっかり伸びており、純利益も987億円 → 1,264億円へと着実に増加しています。生命保険は大型のストックビジネスであり、利益の伸びはそのまま契約保有の成長や資産運用益の改善につながります。この点でT&Dは、太陽生命のシニア保険、大同生命の中小企業向け保険、第一フロンティアの銀行窓販と、3つのビジネスがそれぞれ役割を果たしており、事業ポートフォリオの強さが業績改善に直結しています。
EPSも183円 → 241円と伸びており、利益がきちんと1株利益へ還元されているのも高評価ポイントです。効率性の指標であるROEを見ると、2023年は一時的にマイナス(-13.4%)でしたが、2024年には7.0%、2025年には9.7%予想と大幅に改善しています。生命保険会社は巨大な総資産を持つためROEが上がりにくい業種ですが、ここまで改善しているのは運用益、商品ミックス改善、保険料収入の回復など複数のプラス要因が働いている結果です。ROAも-0.8% → 0.5% → 0.7%と改善傾向で、収益構造の強さが徐々に戻ってきていることが分かります。
バリュエーション面を見ると、2025年のPERは高値平均14.5倍、安値平均8.6倍で、生命保険株としては割安〜適正の範囲です。PBRも1.09倍と低くはないものの、ROE成長が続けばPBR1.2〜1.3倍に見直される余地もあり、まだ評価余地が残されています。生命保険は金融市場の動きに影響されるため短期ではブレることはあっても、中長期では安定して利益を積み上げる特性を持つため、このバリュエーション水準は悪くありません。
総合的に見ると、T&Dホールディングスは「安定収益」「ROE改善」「PBR1倍前後」「事業ポートフォリオの強さ」という特徴を持った、バランス型の金融株です。急激に株価が跳ねるタイプではありませんが、着実に利益を積み上げていく堅実な企業で、長期で見たときの安定感がとても強い銘柄です。生保特有のストック収益が厚いため、景気変動に強く、長期の資産形成に向いた銘柄と言えます。
配当目的とかどうなの?
T&Dホールディングスは、配当目的の長期保有を考える投資家にとって「かなり相性の良い大型生保株」です。まず予想配当利回りを見ると、連26.3期で 3.68%、連27.3期で 3.71% と、国内大型株の中では十分に高い利回りを維持しています。生命保険会社はもともと安定したストックビジネスを持ち、利益の底が厚いため、利回り3.5%〜4%台に乗っている企業は「高配当カテゴリー」として評価できます。
T&Dの場合、太陽生命・大同生命・第一フロンティア生命の3社がそれぞれ異なる顧客層を持ち、保険料収入が大きくブレにくい構造になっているため、利益の安定性が高いことが特徴です。実際、純利益は987億円 → 1,264億円と増えており、EPSも183円 → 241円と順調に伸びています。EPSが伸びているということは、配当を支える“企業の稼ぐ力”が強化されている証拠であり、これは配当目的の投資家にとって最も重要なポイントです。
さらにROEも-13.4% → 7.0% → 9.7%と改善しており、資本効率が上がっていることで、企業の還元余力も高まっています。生保株は一般的にROEが一桁になりがちですが、T&Dはしっかり水準を戻してきているので、今後も安定した配当を維持しやすい体制になっています。
血気盛んな成長株と違って、T&Dは株価が急騰するタイプではありませんが、代わりに「減配しづらい」という強みを持っています。生保は契約保有が厚く、資産運用益も安定しやすいので、一時的な市況変動があってもすぐに配当を削る必要がありません。利回り3.6〜3.7%という水準をキープしつつ、業績が伸びれば緩やかな増配も期待できます。
こうした点から、T&Dは配当狙いの長期保有で非常に扱いやすい銘柄だと言えます。金融セクターの中でも特に“安定型”の部類に入り、長期の資産形成に向いた優良配当株です。
今後の値動き予想!!(5年間)
T&Dホールディングスの現在の株価(3,368.0円)を5年間というスパンで見通す場合、まず意識したいのは生命保険会社ならではの“収益構造の強さ”と“運用環境の影響を受ける特性”の両面です。T&Dは太陽生命・大同生命・第一フロンティア生命の3社を傘下に持ち、個人保険・法人保険・銀行窓販という3本柱でバランスよく収益を生み出す体制が整っています。このため、単年度で多少の変動があっても、グループ全体としては大きく崩れにくいビジネスモデルです。
直近では純利益が987億円から1,264億円へしっかり増えており、EPSも183円から241円へと伸びています。ROEも-13.4%から7.0%→9.7%へと改善しており、利益体質そのものが回復しているのが特徴です。こうした業績の回復は株価の下値を固くする要因で、特に配当利回りが3.6~3.7%と比較的高いこともあり、長期的には下がりづらく上がりやすい方向に傾きやすいタイプといえます。
こうした前提を踏まえて5年後までの値動きを予想すると、まず“良いケース”では、海外金利が落ち着き債券運用益が順調に働き、太陽生命のシニア市場、大同生命の中小企業市場、第一フロンティアの銀行窓販がそれぞれ増収に貢献する流れが続きます。この場合はROEが10%超で安定し、増配も期待でき、PBRが1.2~1.3倍程度まで評価される可能性があります。株価としては4,200~4,600円程度が視野に入り、現状から25~35%ほどの上昇が狙えるシナリオになります。
一方で“標準的なケース”はもっと現実的で、T&Dらしい安定した収益を維持しつつ、純利益1,200億円前後、ROE9~10%を維持する落ち着いた展開です。市場環境には大きな追い風も逆風もない時の動きで、PBRは0.95~1.1倍、PERも8.5~10倍あたりで推移しやすくなります。この場合の株価は3,600~4,000円程度で、現在値をやや上回る水準に落ち着くイメージです。急騰は狙いにくいものの、配当を受け取りながらじわじわ株価が育っていくような、安定した長期保有に向く展開になります。
“悪いケース”は、生命保険会社全体にとって共通のリスクである“運用環境悪化”が発生した場合です。例えば海外債券の評価損、円高による外貨資産の目減り、金利低下による利差益縮小などが同時に起きると利益が圧迫され、ROEが6~7%台に落ち込む可能性があります。こうした時期は市場のセンチメントも弱くなり、PERが8倍を割れ、PBRも0.9倍あたりまで下がることがあります。株価としては2,800~3,100円程度も想定され、短期的にはマイナス10~15%程度の調整となる場面もあり得ます。
ただし、悪いケースが続いてもT&Dは生命保険会社として強固なストック収益を持ち、契約更新や保有契約に支えられるため、急落後にそのままズルズルと下げ続けるようなリスクは比較的限定的です。配当利回りの高さも株価の下支えに働くため、長期で見れば大きな破綻リスクのある銘柄ではありません。
総合すると、T&Dホールディングスは配当利回り3.6~3.7%を得ながら、標準ケースで株価も緩やかに上昇していくという、堅実な中長期投資に向いた銘柄と言えます。生命保険という巨大なストックビジネスに支えられた安定性に加え、ROE改善の余地や評価見直しも期待できるため、5年間のスパンで見れば中間〜強気シナリオに寄りやすい企業です。
この記事の最終更新日:2025年11月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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