株価
ヤマトホールディングスとは

ヤマトホールディングス株式会社は、「宅急便」で知られる日本最大の宅配企業であり、国内物流を支える最重要インフラ企業のひとつである。一般消費者の日常生活を支える小口配送から、法人向けの大規模物流や国際輸送まで、事業領域は非常に広く、宅配業界の中でも最も高いブランド力とネットワーク網を持つ企業として位置づけられている。
中核の宅配事業では、宅急便、クール宅急便、宅急便コンパクト、タイムサービスなど、多様な配送メニューを展開し、個人宅へ直接届ける「ラストワンマイル」の分野で圧倒的な存在感を持つ。特にクール宅急便や温度管理配送など、高品質なサービスはヤマト独自の強みで、多くの食品メーカー・EC事業者から選ばれている。また、コンビニ受け取り、PUDOステーション、ECロッカーなど、受取方法の多様化にも積極的に取り組んでおり、生活インフラとしての利便性を年々高めている。
法人向けの物流では、グローバルロジスティクスやサプライチェーンマネジメントの支援を行い、倉庫管理から配送までを一貫して提供する「フルフィルメントサービス」に強みを持つ。近年はEC市場の急拡大に伴い、アマゾン・楽天・メーカー直販ECなどからの物流需要が急増しており、ヤマトはこうした企業向けに高度な物流ソリューションを提供することで収益の柱を増やしている。倉庫自動化、AIを活用した配送効率化、データ連携による需要予測など、デジタル活用も積極的に進めている。
国際物流では、アジアを中心とした海外ネットワークを展開し、国際宅配や貨物輸送、通関業務などに対応。特に中国・香港・台湾との物流はECの拡大で需要が高まっており、日本発EC事業者の海外販路拡大を支援する役割も担っている。
ヤマトは全国に約7,000の営業所と巨大な配送網を持ち、20万人規模の従業員が全国の物流を支えている。これらのネットワークを活かし、企業向け・個人向け双方の物流を一体で提供できる点は競合他社には真似できない大きな強みである。また、車両の電動化、再配達削減、物流の効率化など、環境負荷低減にも積極的に取り組み、業界をリードする企業としての責任も担っている。
近年では「宅配便単価の是正」「人員不足への対応」「物流2024年問題」などが物流業界全体の課題となっており、ヤマトは収益性改善に重点を置きつつ、働き方改革やデジタル化を同時に進め、持続可能な物流モデルの確立を目指している。宅配ニーズの高まりとともに、生活インフラとしての重要性はさらに高まっており、物流そのものを再構築する役割を担う企業へと進化しつつある。
ヤマトホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 1株益(円) | 1株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 1,800,668 | 60,085 | 58,066 | 45,898 | 126.6 | 46 |
| 連24.3 | 1,758,626 | 40,059 | 40,458 | 37,626 | 107.2 | 46 |
| 連25.3 | 1,762,696 | 14,206 | 19,587 | 37,937 | 111.9 | 46 |
| 連26.3予 | 1,880,000 | 40,000 | 40,000 | 24,000 | 75.8 | 46 |
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 89,953 | -49,420 | -38,617 |
| 2024 | 64,333 | -22,435 | -30,777 |
| 2025 | 47,732 | -44,356 | 9,421 |
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 3.3% | 7.5% | 4.1% | ― | ― |
| 2024 | 2.2% | 6.4% | 3.3% | ― | ― |
| 2025 | 0.8% | 6.4% | 2.9% | 22.9倍 / 17.7倍 | 1.27倍 |
投資判断
ヤマトホールディングスの直近4年間の数字をあらためて眺めてみると、まず最も目につくのは「利益の変動が非常に大きい企業だ」という点だ。売上高は1兆7,500〜1兆8,800億円のレンジで比較的安定しているものの、営業利益・経常利益・純利益の推移を見るとブレ幅がかなり大きく、安定成長型の企業というより“良い年と悪い年の差が出やすい企業”という性質がはっきりと浮かび上がる。
連23.3では、営業利益600億円、経常利益580億円、純利益458億円と非常に安定した利益を計上していた。しかし翌連24.3では営業利益が400億円に縮小し、さらに連25.3では142億円まで落ち込んでいる。特に連25.3の営業利益率はわずか 0.8% しかなく、物流業界の宿命とも言える「人件費上昇」「燃料費増」「物量の波」などの影響をもろに受けた形となっている。
経常利益も同じような流れで、連23.3の580億円 → 連24.3の404億円 → 連25.3の196億円と縮んでおり、本業の利益体質はまだ回復途上と言わざるを得ない。純利益は連25.3で一時的に持ち直しているが、これは本業というより特別要因を含んだ増益の可能性が高い。
連26.3予では営業利益・経常利益ともに400億円に戻る見込みだが、純利益は前年379億円から240億円へ減少予想となっており、「完全に回復した」と断言するのは難しい。黒字は当然維持できるが、収益の安定性という意味ではまだ波が残った状態といえる。
こうした利益の波は指標にも表れており、営業利益率は 3.3% → 2.2% → 0.8% と一貫して低下。ROEは何とか6〜7%をキープしているものの、高利益体質と言える水準ではない。ROAも4.1% → 3.3% → 2.9%と落ちており、資産を活かす効率も下がっている。
一方で市場の評価を見ると、PERは高値平均22.9倍・安値平均17.7倍と、利益の弱さに対して“やや高めの期待”が織り込まれている。これは、ヤマトが構造改革やDX投資などで中期的に再成長を目指しているフェーズであることを市場が認識しているためで、未来の収益改善をある程度織り込んだ株価になっている。PBRは1.27倍と物流株としては少し高めだが、決して過熱感のある評価というほどではない。
こうした点を総合的に見ていくと、ヤマトHDは売上自体は大きく崩れていないものの、利益の変動が大きく、収益体質の安定感にはまだ課題が残る企業だと言える。物流業という構造上、労務費・燃料費・物量変化といったコストや外部環境の影響を強く受けやすい点も特徴で、短期的には業績が揺れ動きやすい。
その一方で、市場は中期的な業績の持ち直しや構造改革の成果に一定の期待を寄せている。現在の株価にはそうした“将来の改善”がある程度織り込まれており、今後の収益強化が本物になれば株価の上昇余地も十分にある。
結論として、ヤマトHDは「長期でゆっくり構える価値はあるが、足元の収益変動が激しいため短期勝負には向かない銘柄」という立ち位置がもっともしっくりくる。物流コストや外部環境の変動リスクを受け止めながら、中期的な復活を期待して保有するタイプの企業だといえる。
配当目的とかどうなの?
ヤマトホールディングスを配当目的で考える場合、まず押さえておきたいのは予想配当利回りがおよそ 2.04% という点だ。日本株として見ると「そこそこあるけれど、高配当株として狙うほどではない」という水準で、利回りだけで言えば普通〜やや低めの部類になる。
ヤマトは物流大手ということもあり、配当政策は非常に慎重で、どちらかというと“利益が出た範囲で安定的に出す”というスタイルを取っている。無理に増配を続けるタイプではなく、利益が伸びれば配当も少し増えるし、業績が悪くなれば維持に留める、という健全な方針だと言える。
ただ、ここで重要なのは「ヤマトは利益の波が大きい企業だ」という事実だ。
営業利益・経常利益・純利益が年ごとに大きく変動するため、配当余力もその影響を強く受ける。
連25.3のように営業利益率が0.8%まで落ちる年もあるなど、収益体質がまだ安定し切っておらず、毎年キレイに増配していくタイプではない。
それでも黒字基調は維持できており、物流大手としての基盤は強いため、“減配リスクが極端に高い企業”というわけではない。人件費の上昇や物量の変動といった要素に左右されやすいだけで、配当自体が消えてしまうような危うさは見られない。
しかし、配当目的でじっくり利益を積み上げたい投資家にとっては、2%前後の利回りはやや物足りない。成長企業のように株価上昇を強く期待できるタイプでもないため、配当でがっつり稼ぐ投資スタイルには噛み合いにくい。
一方で、今後の業績改善や構造改革の成果が出て利益が伸びてくれば、配当余力が増して増配の余地が出てくる可能性はある。そのため、「今の利回りで十分満足できる人」よりも、「中期的に業績の回復を期待しながら持つ人」に向いている銘柄と言える。
総合的に見ると、ヤマトHDは“安定配当ではあるが利回りは高くなく、配当目当て一本で選ぶ銘柄ではない。ただし、業績改善が進むなら長期で育つ可能性はある”という、配当面では控えめな評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ヤマトホールディングスの株価2,249円を起点に5年間の動きを考えるうえで、まず前提として意識しておきたいのは、この会社が“利益のブレが極めて大きいタイプの企業”だという点だ。売上は毎年1兆7,000〜1兆8,000億円台で大きく崩れていないものの、営業利益や経常利益の推移を見ると、600億円→400億円→142億円と大きく上下しており、連続的な成長というよりも、好調な年と苦しい年がはっきり分かれる構造になっている。物流会社として避けられない外部要因――人件費、燃料費、物量の波――がダイレクトに収益へ影響するため、数字の荒さは宿命的だともいえる。
現在は人件費の上昇、EC取扱量の変動、宅配単価の改定など複数の課題が重なっており、連25.3の営業利益率が0.8%まで落ち込んだ事実が示すように、収益体質がまだ万全とは言い難い。ただ、連26.3では営業利益が4,000億円へ戻る見通しが出ており、最低ラインの利益は確保できる段階まで戻りつつある点はポジティブ材料だ。こうした“回復の芽はあるがまだ安定しない”状況を踏まえて株価の将来像を描いていきます。
まず良い場合のシナリオでは、宅配単価の引き上げが浸透し、人件費の上昇が落ち着き、EC需要が再び安定して増えていくケースだ。このパターンでは、営業利益が安定して300〜400億円台を維持できるようになり、利益のブレ自体も小さくなっていく。その結果、株価の評価も戻り、5年後には2,800〜3,200円あたりまで十分に到達してもおかしくない。物流業界全体が再び成長モードに戻れば、ヤマトもその波に素直に乗れるだけの規模とインフラを持っている。
次に最も現実的なのが“中間シナリオ”で、利益は黒字基調を保ちながらも、コスト環境や物量変動の影響で上下を繰り返すケースだ。派手な成長ではないが、サービス品質の維持や宅配価格の調整によってじわじわと収益が安定していくイメージに近い。株価も同じように大きなジャンプはしないものの、ゆっくり持ち上がっていき、5年後は2,300〜2,600円程度に落ち着く見通しが強い。いわば“今よりは上だが劇的ではない”という現実的なルートである。
反対に悪い場合のシナリオでは、人手不足による労務費のさらなる上昇、燃料高、EC物流の伸び鈍化、運賃交渉の遅れなど複数の要因が重なって利益が伸びず、低収益体質から抜け出せないケースだ。利益のブレが続くだけでなく、市場からの評価も下がりやすくなるため、株価は2,000円を割り込む可能性が出てくる。現実的には1,700〜2,000円の範囲まで沈んでしまう可能性がある。ただしヤマトは国内物流の根幹を担う企業でもあるため、長期的に破綻的な水準になることは考えにくい。
総じて言えば、ヤマトHDは売上の安定性は高いものの、利益の振れ幅が大きいという特徴から、株価もその変動を反映しやすい。コスト改革の進捗や市場環境によってシナリオは変わるが、最も実現性が高いのは“中間的な緩やかな上昇ルート”で、ここ5年間で大きく化けるというより、じっくり時間をかけて企業価値が積み上がっていく銘柄だといえる。
この記事の最終更新日:2025年11月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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