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日本郵船(9101)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日本郵船とは

日本郵船は、日本を代表する総合海運会社であり、世界でもトップクラスの規模と歴史を持つ巨大物流グループだ。1885年(明治18年)に創立して以来、日本の国際貿易を支えてきた“海のインフラ企業”で、現在は海運、物流、エネルギー輸送、航空輸送など、多岐にわたる事業を展開している。単なる「船で荷物を運ぶ会社」ではなく、海・陸・空を統合した総合輸送ネットワークを持つ点が最大の特徴だ。

最も大きな柱となっているのは海運事業で、コンテナ船、自動車船、ドライバルク船、LNG船、原油タンカーなど幅広い船隊を保有している。とくに自動車船の分野では世界トップクラスの規模を誇り、日本メーカーの輸出車を世界中へ運ぶ役割を担っている。またLNG船についても高い運航技術と安全管理が評価され、世界のエネルギー供給に欠かせない存在となっている。こうした専門性の高い船舶を数多く運用しているため、景気や市況に応じて複数の収益源を確保できる点が日本郵船の強みでもある。

物流分野では、グループ会社である日本通運(Nippon Express)と連携し、陸上輸送・倉庫・フォワーディングを含めた総合物流サービスを展開している。海運企業でありながら“陸の物流”にも強く、企業のサプライチェーン全体を設計・運用する力を持っている。海上輸送だけでなく、航空貨物、陸送、倉庫保管までワンストップで提供できるため、世界中の企業が日本郵船グループを利用している。

エネルギー輸送事業も大きな収益源で、LNG・石油・ケミカルなどの危険物を運ぶ専門船を数多く運航している。近年は脱炭素社会に向けた動きに対応し、LNG燃料船やメタノール船、アンモニア燃料船などの次世代船の開発に積極的で、洋上風力発電の設備輸送など新しい分野にも参入している。海運業界の脱炭素をリードする企業のひとつと言って良い。

航空輸送の領域では、ANAと共同で貨物航空会社「ANAカーゴ」を運営し、空の物流も取り込んでいる。海運会社でありながら航空貨物にも強いという点は世界的に見ても珍しく、日本郵船の多角的な収益体制を支えている。

全体として、日本郵船は「海」「陸」「空」を横断する巨大な物流網を持ち、世界中のサプライチェーンを支える存在になっている。海運市況は変動が大きいが、複数の事業を組み合わせることで安定性と柔軟性を確保している点も特徴的だ。加えて、近年は環境対応や次世代燃料への投資に力を入れており、今後の海運業界の方向性を先導する企業としても注目されている。

日本郵船 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 1株益(EPS) 1株配当
連23.3* 2,616,066 296,350 1,109,790 1,012,523 1,994 520
連24.3 2,387,240 174,679 261,341 228,603 468.1 140
連25.3 2,588,700 210,820 490,866 477,707 1,070 325
連26.3予 2,350,000 140,000 240,000 240,000 567.9 235

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
連23.3 824,853 -252,964 -581,203
連24.3 401,414 -285,631 -163,420
連25.3 510,755 -59,783 -427,747

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER(高値/安値) PBR
2023 11.3% 40.8% 26.8%
2024 7.3% 8.6% 5.3%
2025 8.1% 16.3% 11.0% 6.1倍 / 3.7倍 0.73倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

日本郵船の直近4年間の収益推移を見ると、この会社が「市況によって大きく収益が上下する典型的な海運市況株」であり、安定型というより“波の大きい収益構造”を持つ企業だということがよく分かる。とくに連23.3の1兆円超という純利益は、コロナ期のコンテナ運賃高騰という歴史的な特需がもたらした例外的な数字であって、企業本来の実力を示す水準ではなかった。

その証拠に、連24.3では純利益が2286億円まで急落し、連25.3ではやや持ち直したものの4777億円と、市況の変動に左右される海運特有の乱高下がはっきり表れている。さらに連26.3予では2400億円と落ち着いた水準に戻っており、特需が去ったことで“本来の利益体質に戻る過程”にあることが伺える。

営業利益の動きも同様で、2963億円 → 1746億円 → 2108億円 → 1400億円予想という推移をたどっている。黒字はしっかり確保できるものの、市況次第で利益は大きく上下している。経常利益はより市況の影響を強く受け、1兆1097億円から2613億円へ急落し、その後4908億円まで反発したものの、翌期予想では2400億円と再び縮小する流れとなっている。これは海運市況が改善すれば大きく跳ね、低迷すれば一気に利益が薄くなるという、日本郵船の収益構造そのものを表す動きと言える。

EPSも1994円 → 468円 → 1070円 → 567円予想と大きく揺れ動いており、利益水準が市況によって極端に変化する企業であることがはっきり分かる。短期間で倍増したり半減したりするダイナミックな推移は、海運株に特有の“サイクル性”の象徴でもある。

バリュエーションを見ても、PERが高値平均6.1倍・安値平均3.7倍、PBRが0.73倍と、数値だけ見れば極めて割安に見える。ただしこれは業績が不安定で読みにくい点を市場が織り込んでいるためで、「割安だから買い」という単純な判断はできない。ROEが40% → 8% → 16%、ROAが26% → 5% → 11%と変動幅が極端に大きいことからも、利益の安定性に欠け、収益構造が市況に強く依存していることが理解できる。

こうした数字を総合的に判断すると、日本郵船は特需が終わったことで本来の利益水準へ戻りつつある段階にあり、今後も海運市況に大きく左右される収益構造を持つ企業だと言える。業績の乱高下が起きやすい典型的な市況株である一方、財務基盤は強く、黒字確保の安定性はある程度担保されている。また、PER・PBRが低水準に見えるのは、市場が“変動リスクの大きさ”を織り込んだ結果であり、単なる割安感とは性質が異なる。

結論として、日本郵船は“成熟した安定株”ではなく、“海運市況の波を見ながら投資するタイプの銘柄”という位置付けになる。市況が良い局面では利益が大きく跳ねる可能性を秘めている一方、悪い局面では利益が急速にしぼむリスクもあるため、リスク許容度の高い投資家向けと言える。安定的な成長を期待して買うタイプではなく、サイクルに合わせて戦略的に狙う企業であり、特需時のような爆発的な業績は期待しにくいものの、通常時でも巡航速度の利益を維持しつつ、市況次第では再び上振れのチャンスがある銘柄だと判断できる。

配当目的とかどうなの?

日本郵船の配当を目的に投資を検討する場合、まず目を引くのが利回りの高さだ。予想配当利回りが連26.3で4.5%前後、連27.3では5%を超える水準が見込まれており、単純に数字だけ見ればかなり魅力的な高配当株の部類に入る。日本株全体の平均利回りが2%台であることを考えると、その2倍近い水準で配当を受け取れる点は大きな魅力だと言える。

ただし、この高利回りには“海運市況に左右されやすい利益構造”が大きく影響していることも押さえておく必要がある。日本郵船は、コンテナ運賃やバルク市況の変動によって利益が大きく上下するタイプの企業で、実際ここ数年も純利益が1兆円から2000億円台まで乱高下している。つまり、配当も市況次第で変動しやすく、景気敏感株特有の不安定さをどう受け止めるかがポイントになる。

とはいえ、日本郵船は財務体質が非常に強く、特需期に積み上げた内部留保も大きいため、多少の市況悪化ではすぐに無理な減配をするような企業ではない。また、海運大手は株主還元方針を強化しており、利益が出た年度は積極的に利益還元を行う傾向が続いている。高利回りが急にゼロになるようなリスクは比較的低めだと考えられる。

総合すると、日本郵船の配当は「景気敏感銘柄としては魅力的に高いが、安定配当というより“市況に連動して上下する配当”」という性質を持つ。しっかり配当を取りながら、市況が良い年の上振れも狙えるという意味では、“リスクを許容して高配当を得たい投資家向け”の銘柄と言える。

逆に、毎年一定の額を安定して受け取りたいという“ディフェンシブな配当狙い”にはそこまで向いていない。配当の高さそのものは非常に魅力的だが、その背景にある収益の変動性も理解したうえで投資判断することが大事になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

日本郵船という会社は、普通の事業会社とはまったく違う“海運市況で収益が上下する典型的なサイクル株”で、市況がよい時は驚くほど稼ぎ、市況が悪い時は一気に利益が縮むという特徴がある。直近数年の数字を見ても、純利益が1兆円→2,286億円→4,777億円→2,400億円予想と大きく波打っており、船賃・コンテナ運賃・バルク市況・原油価格・世界貿易量など外部要因で業績が動くことがよく分かる。この“市況依存型”という性質が、現在の株価(4,952.0円)から今後5年間の株価を考える上で最も重要なポイントになる。

まず市況が強く回復する良い環境が続く場合、アジア〜欧米航路の運賃が底堅く推移し、世界の物流量も増えていく。特に米国・中国・インドなど大口地域の経済が改善すると海運市況は一気に強くなる。そうなると日本郵船の収益は市況に素直に反応し、営業利益・経常利益も力強く上振れていく。過去にも運賃が急騰した時期には株価が爆発的に伸びたが、その再現までいかなくても“市況が普通より強い期間が続く”だけで十分上値余地が出てくる。こうした追い風が続くと、株価は現在の4,952円から大きく伸び、5年後には 7,500〜9,000円 程度まで上がっていても不思議ではない。市況株らしくリターンの振れ幅が大きいのが強みだ。

一方で、中間のシナリオはもっと現実的で、海運市況が極端に悪くも良くもならず、緩やかな増減を繰り返すケースだ。この場合、日本郵船の利益は年度ごとに多少の上下がありつつも黒字は安定して確保される。設備投資も進み、財務基盤も強いため、事業そのものが揺らぐような心配は薄い。株価も市況の揺れに合わせて上下しながら、全体では緩やかに評価が上がっていくイメージになる。5年後の株価としては 5,500〜6,500円 のレンジに収まる可能性が高く、安定とは言えないが堅実な値動きが想定される。

そして悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速、物流量の落ち込み、コンテナ運賃の低迷などが同時に起こるケースだ。特に米中景気が弱いと海運市況はすぐに冷えるため、日本郵船の利益にもストレートに影響が出る。とはいえ、同社は財務が極めて強固で、どんな市況でも黒字を確保しやすい構造になっているため、企業としての生存リスクは低い。ただし株価としては勢いを失いやすく、5年後には 4,000〜4,500円 あたりで停滞するイメージになる。

こうして整理すると、日本郵船の株価が5年間でどう動くかは、ほぼ“市況次第”と言ってもいいほど外部環境の影響が強い。一方で財務基盤の強さや投資余力の大きさ、市況回復時の爆発力などを考えると、完全にディフェンシブではなく、中期のサイクルを見ながら狙っていける魅力は十分にある。

この記事の最終更新日:2025年11月22日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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