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東京電力ホールディングス(9501)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

東京電力ホールディングスとは

東京電力ホールディングス(TEPCO)は、日本最大の電力会社グループであり、関東圏を中心に膨大な数の家庭・企業へ電力を供給する国内トップ級のエネルギー企業だ。電力自由化や市場競争が進む中でも、依然として国内で最も大きなインフラ基盤を持つ企業で、首都圏の生活や産業活動を支える“社会インフラの中枢”といえる存在である。2016年の電力自由化に合わせて持株会社体制へ移行し、発電・送配電・小売の3事業をグループ内で明確に分離しながら運営している。

発電部門では、LNG火力や石炭火力、水力発電を中心に大規模な発電設備を保有しており、国内外の燃料調達から発電までを一貫して手がける。エネルギーの安定確保は国の安全保障にも直結しており、東京電力フュエル&パワーは国内電力の大きな供給源となっている。近年はカーボンニュートラルの流れを受け、再生可能エネルギーを柱に据えた新規事業にも積極的で、特に洋上風力発電や既存水力の高度化、地域電源の活用など、低炭素電力の拡大に力を入れている。

送配電部門の「東京電力パワーグリッド」は、全国最大規模の送電ネットワークを管理し、膨大な数の電柱・配電線・変電施設を運用。雷・風水害・地震などの自然災害が多い地域をカバーしているため、耐災害性の強化や設備更新が常に重要テーマとなっている。電力自由化後は競合他社の電力会社が増えたが、送電網は“どの会社の電気も公平に運ぶ役割”を担う中立的なインフラであり、東京電力PGはその中心として都市機能の根幹を支えている。

小売部門の「東京電力エナジーパートナー」は、家庭・企業向けの電力提供だけでなく、ガス販売、省エネ提案、V2Hや蓄電池などのエネルギーマネジメントサービスも展開し、単なる「電気を売る会社」から総合エネルギーサービス企業へシフトしている。電力自由化の影響で競争が激しい分野だが、東京電力は依然として関東で最大級の顧客基盤を抱えており、その規模感は他の新電力とは一線を画している。

そして東京電力を語る上で避けて通れないのが、福島第一原発事故の対応と廃炉プロジェクトだ。事故対応には長い年月と莫大なコストがかかるため、企業経営にとって重い負担となっている一方、グループとして安全対策や技術開発を進めることで、廃炉作業を確実に前に進める使命を背負っている。この取り組みは、単なる企業活動という枠を超えて「社会的責任」としての側面が強く、東京電力は事業運営とリスク管理を両立しながら前進し続けている。

総合的に見ると、東京電力ホールディングスは「巨大なインフラ事業者であり、安定供給という社会的責務を持ちつつ、再エネ・エネルギー転換・災害対策など多くの課題に取り組む企業」。収益構造は規制事業と競争事業が混在しており、他の電力会社と比べても役割の重さと事業規模が際立っている。将来に向けては再生エネルギーの強化、エネルギー管理サービスの拡大、そして廃炉作業の確実な前進が大きなテーマとなる。

東京電力ホールディングス 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) EPS(円) 1株配当(円)
連22.3 5,309,924 46,230 44,969 5,640 3.5 0
連23.3 7,798,696 -228,969 -285,393 -123,631 -77.2 0
連24.3 6,918,389 278,856 425,525 267,850 167.2 0
連25.3 6,810,391 234,452 254,443 161,278 100.7 0
連26.3予 6,400,000 200,000 240,000 -700,000 -436.9 0

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期(単位:百万円) 営業CF 投資CF 財務CF
2023年 -75,673 -388,842 319,984
2024年 673,017 -698,790 541,499
2025年 361,249 -859,209 194,169

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

決算年 営業利益率 ROE ROA PER(高値/安値) PBR
2023年 -3.0% -4.0% -1.0%
2024年 4.0% 7.6% 1.8%
2025年 3.4% 4.2% 1.0% 8.4倍/3.3倍 0.65倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

東京電力ホールディングスの業績推移を見ると、この企業は他の電力会社とはまったく異なる“特殊な収益構造”を抱えていることが改めて分かる。売上高自体は毎年6〜7兆円規模と極めて大きく、国内でも最大級の社会インフラ企業であることに変わりはない。しかし問題は利益のブレ幅で、通常の大型インフラ企業では考えられないほど激しく上下している。

23.3期は営業利益がマイナス2,289億円、経常利益がマイナス2,853億円、純利益はマイナス1,236億円と大幅赤字に沈んだ。これは燃料価格高騰と燃料費調整の遅れ、さらに原子力発電所の停止が続いていることで安定収益が失われていることが主因だ。電力という生活インフラを担いながら、経済環境の逆風をまともに受けた形となった。

その後、24.3期には営業利益2,788億円、経常利益4,255億円、純利益2,678億円と急回復し、黒字転換を果たしている。しかし安心できる状況には程遠く、25.3期は再び利益が縮小して営業利益2,344億円、経常利益2,544億円、純利益1,612億円へと低下。完全に安定を取り戻したとは言えない経営状態が続いている。

さらに深刻なのは26.3期予想で、売上6.4兆円規模ながら純利益は マイナス7,000億円 と、過去でも類を見ない超巨大赤字が見込まれている点だ。EPSは -436.9円と壊滅的な水準に落ち込み、当然ながら配当はゼロのまま。ROE・ROAも赤字期は大幅マイナス、黒字期でも一般企業の平均値に届かず、収益性の低さがはっきり出ている。営業利益率も一貫して低く、電力自由化による競争や燃料価格の影響を受けやすい構造が続いている。

これらの数字を総合すると、東京電力は「通常の財務指標で評価するのが極めて難しい銘柄」であり、投資判断も一般の電力株とはまったく違うものになる。黒字と赤字を行き来する不安定な収益構造の原因は、ほぼすべて福島第一原発事故の賠償・除染・廃炉に関連する莫大な費用であり、これは数十年単位で続くことが確実な“特殊リスク”だ。

その結果として、東京電力株は「利益成長に対して株価が反応する通常の企業」とは異なり、政策・再稼働・規制変更・料金改定などの外部要因で大きく値が動く“政策テーマ株”の性質を強く持つ。黒字化の兆しや再稼働検討といったポジティブ材料が出れば短期的に急騰し、逆に原発関連の悪材料が出れば急落する、といった投機的な値動きが頻発する。

したがって結論として東京電力は、安定した収益や配当を目的に買う銘柄ではなく、政策や再稼働などの材料で動く“短期〜中期のテーマ株”として扱われる銘柄という位置づけになる。インフラ企業としての基盤は圧倒的に強い反面、財務・利益の安定性は極めて低く、通常のバリュー株や高配当株のように長期保有のメリットが生まれにくい。投資する場合は、一般企業とはまったく異なる“特殊株”として慎重に扱う必要があるだろう。

配当目的とかどうなの?

東京電力ホールディングスを配当目的で考える場合、この銘柄は「配当投資にはまったく向かない」と断言できるほど適性が低い。予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに 0.00% のままで、無配が長期的に続いている。これは単に業績が悪いからではなく、「福島第一原発事故の賠償・除染・廃炉費用」という非常に特殊で莫大な負担を抱えていることが根本的な理由である。

本来、インフラ企業は安定収益を背景に高めの配当を出す傾向がある。しかし東京電力の場合、利益が出た年でさえ、その利益はほぼすべて原発関連コストに吸い込まれてしまうため、株主還元に回せる余力がほとんど生まれない。さらに26.3期は純利益が マイナス7,000億円 という極めて大きな赤字予想で、EPSも -436.9円と壊滅的な水準だ。この状態で配当復活を期待すること自体が非現実的で、復配の見通しは完全に立たない。

加えて、東京電力の場合は「黒字なら配当する」という単純な構造でもない。政府の方針、規制の変更、廃炉作業の進捗、追加費用の発生など、企業業績とは別軸の大きな外部要因が絡み合っており、財務が改善してもすぐに配当を出せる環境にはならない。廃炉や賠償関連費用は今後も長期間続くことが確実であり、現実的に見れば 数年どころか10年以上無配の可能性すら十分ある。

さらに、電力自由化以降は小売競争が激化し、発電コストも燃料価格に影響されやすいため、東京電力の利益構造はもともと不安定だ。黒字に転じるような年があっても、その利益が廃炉費に吸収されてしまうため、株主に還元されることが期待できない。配当投資という観点から見れば、魅力はほぼゼロと言い切れる。

結論として東京電力は、配当収入を目的に保有する銘柄ではなく、配当投資としての魅力は完全にゼロ、むしろ対象外レベルである。

もちろん株価自体は、政府の政策、原発の再稼働、料金改定、規制緩和などのニュースで大きく上下するため、投資対象として“短期〜中期の材料株・テーマ株”として扱うことはできる。しかし、それはあくまで値動きを狙う投機的なスタンスであり、安定配当を受け取り続ける長期投資とはまったく別物だ。

今後の値動き予想!!(5年間)

東京電力ホールディングスの今後5年間の株価を考えるときに、まず理解しておきたいのは、この会社の株は普通の企業のように「業績だけ」で動くわけではないという点だ。東電は国内最大の電力会社でありながら、福島第一原発の廃炉や賠償といった他の企業には存在しない特殊な負担を背負っている。そのため、利益が出てもすぐに安心できるわけではなく、逆に利益が悪くても政策が動けば株価が上がることがあるという、非常に独特な値動きをしてきた。

実際にこれまでの株価の動きを見ても、決算が悪くても原発に関する前向きなニュースが出るだけで株価が急に跳ね上がることがあり、逆に決算が良くても安全対策の不備や再稼働の遅れが報じられると、すぐに売りが広がることがあった。つまり東電の株価は、企業の業績だけで説明できるものではなく、政治や政策、世の中のエネルギー状況に左右される“テーマ株”として扱われることが多い。

こうした背景を踏まえ、現在値817.9円から5年間の株価の動きを「良い場合」「中間の場合」「悪い場合」に分けて考えてみると、より現実的な見通しが見えてくる。

まず良い場合のシナリオでは、日本全体で原発を活用する流れが強まり、柏崎刈羽原発の再稼働に向けた準備が順調に進むケースだ。政府や自治体の理解が進み、安全対策が着実に進んでいるという情報が増えていけば、市場は「東電の収益が安定するかもしれない」という期待を持つようになる。また、電気料金の値上げが認められたり、燃料価格が落ち着いて発電コストが下がるなど、複数の条件が重なってくると、市場はさらに前向きに評価し始める。こうした期待が高まると、東電株は業績以上の勢いで買われやすく、株価が1,200円から1,600円くらいまで上昇する可能性がある。

次に中間のシナリオでは、再稼働は進まないものの後退もしない状態が続き、業績も黒字と赤字を行ったり来たりするような状況だ。電気料金の調整も小幅にとどまり、廃炉費用は重たいまま、燃料価格によって収益が上下する、こうした「良くも悪くも決定打がない」状態だと、株価は大きな方向性を決められず、広いレンジで動くことが多い。実際、東電株は過去にもこうした横ばい相場を長く続けており、700円〜950円程度の範囲を行き来しながら、結局は現在の817.9円前後に戻ってくるような展開も起こりやすい。

最後に悪い場合のシナリオでは、柏崎刈羽原発の再稼働がさらに遅れたり、新たな安全対策の費用が発生したり、燃料価格が高騰して火力発電のコストが重くのしかかったりと、複数の悪材料が重なるケースだ。さらに、電気料金の値上げが認められなかったり、賠償や廃炉費が予想以上に膨らんでしまったりすると、市場の不安が一気に高まる。東電株は投機的な性質が強いので、こうした不安が広がると売りが続きやすく、株価が450円〜650円の水準に落ち込む可能性もある。ただし、国の基幹インフラを担っている企業である以上、極端な崩壊や破綻といった事態は現実的には考えにくく、どこかで下げ止まりやすいのも事実だ。

総合的に見ると、東京電力の株価は業績よりも政策や社会情勢の方が強く影響し、通常の電力株とはまったく違う動きをする。現在値817.9円から考えると、良い場合は1,600円近くまで到達する可能性がある一方、中間では700〜950円での横ばい、悪い場合は450〜650円の下落と、幅広い展開があり得る。投資する際は、配当や安定収益を期待するよりも、「政策次第で大きく動くテーマ株としてどう付き合うか」という視点が必要になる銘柄だといえる。

この記事の最終更新日:2025年11月23日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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