株価
東京ガスとは

東京ガスは、首都圏を中心に都市ガスを供給する日本最大級の総合エネルギー企業であり、ガス会社という枠を超えて電力、海外エネルギー開発、都市開発など、多角的に事業を広げてきた巨大インフラ企業だ。東京23区を中心とする首都圏は人口密度も産業密度も日本トップクラスであり、そのエネルギー基盤を支える東京ガスの役割は非常に大きい。日常の家庭用ガスだけでなく、工場、飲食店、高層ビル、商業施設など、膨大なエネルギー需要を抱える地域を支える中枢的存在となっている。
事業の中心となるのは、都市ガスの製造と販売で、液化天然ガス(LNG)を輸入し、気化処理を行って首都圏へ供給するという大規模なインフラ系事業が基盤となっている。LNGは海外からの調達が基本で、東京ガスは長年にわたり世界各国の資源企業と契約を結び、安定的なガス調達網を築いてきた。ガスの需要は季節や気温によって変動するため、巨大な供給施設や貯蔵設備を備え、安全で途切れない供給を実現している。
ガス供給だけでなく、電力事業にも積極的に取り組んでいる点が現在の東京ガスの大きな特徴だ。電力自由化以降、ガス会社から電力を購入する家庭も増え、東京ガスはガスと電気のセット販売を武器に顧客基盤を拡大。火力発電所の運営や電力小売会社としての営業活動を通じて、ガス会社から総合エネルギー企業へと大きく進化を遂げた。ガスに加えて電力も供給することで、家庭のエネルギー全体を一括してサポートする体制が整っている。
海外事業にも力を入れており、LNGの権益獲得や資源開発、海外の発電事業、インフラ投資などグローバル展開も進めてきた。エネルギー価格の変動に対応するためには、単なる輸入企業ではなく資源開発の上流に入り込み、調達コストを安定させる戦略が必要になる。東京ガスはこの上流投資にも積極的で、国内だけでなく世界市場でのエネルギー関連事業にも足場を広げている。
また、不動産事業・都市開発分野でも社会的な存在感を発揮している。東京ガスが長年にわたり整備してきた広大な敷地やインフラを活かし、オフィスビルや商業施設、住宅開発などの都市ビジネスを展開。エネルギー会社が不動産事業に取り組む例は珍しくないが、東京ガスはインフラの上に街づくりを重ねる形で事業を発展させており、安定収益源の一つとして機能している。
近年では、脱炭素化や再生可能エネルギーへの移行という大きな潮流に合わせて、水素やメタネーション(CO₂と水素からメタンを合成する技術)の研究開発も進めている。これは「ガスの脱炭素化」を目指す長期戦略の一環で、将来のエネルギー供給の姿そのものを変える可能性を持つ。ガス管をそのまま使いながら、環境負荷を減らす技術を追求しており、インフラ企業としての持続性を高める取り組みが進んでいる。
総合すると、東京ガスは“都市の暮らしと産業のエネルギー供給を支える巨大インフラ企業”であると同時に“脱炭素時代の新しい総合エネルギー企業”へと変貌しつつある。ガスと電力の安定供給、海外エネルギー投資、都市開発、水素やメタネーションの研究など、幅広い領域に事業を展開し、長期的なエネルギー需要に応えるための取り組みを強化している。
東京ガス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 3,289,634 | 421,477 | 408,846 | 280,916 | 647.0 | 65 |
| 連24.3 | 2,664,518 | 220,308 | 228,179 | 169,936 | 411.9 | 70 |
| 連25.3 | 2,636,809 | 133,090 | 113,599 | 74,194 | 192.2 | 80 |
| 連26.3予 | 2,800,000 | 170,000 | 158,000 | 189,000 | 544.0 | 80〜90 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 487,030 | -203,522 | -22,403 |
| 2024年 | 331,210 | -362,014 | -73,214 |
| 2025年 | 363,120 | -263,526 | -255,979 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 12.8% | 18.0% | 7.8% | ― | ― |
| 2024年 | 8.2% | 10.0% | 4.3% | ― | ― |
| 2025年 | 5.0% | 4.2% | 1.9% | 13.4倍/8.2倍 | 1.32倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東京ガスの直近の決算推移を見ていくと、この会社が「巨大インフラ企業としての安定感を持ちながらも、利益が外部環境に左右されやすい」という特徴を持っていることがよく分かる。まず、売上や利益の推移を見ると、23.3期は売上3.2兆円、営業利益4,214億円、経常利益4,088億円、純利益2,809億円と非常に高い利益水準となった。しかしこれは、LNG市況の変動で在庫評価益が発生したことなど、特殊要因による面が大きく、“純粋な実力”というよりは相場環境の追い風が強かった年度と言える。
翌期の24.3期は、売上が大きく減少し、営業利益が2,203億円、純利益も1,699億円へと縮小している。これはLNG価格の落ち着きに加えて、販管費増や調達環境の正常化もあり、23.3期のような異常な利益水準が一服した形だ。そして最新の25.3期では営業利益1,330億円、純利益741億円と、利益水準はさらに低下している。ただし、歴史的な平均から見れば“極端に悪いわけではない”レベルで、むしろ市況の影響を受けての調整局面と見る方が自然だ。
26.3期予想を見ると、営業利益1,700億円、純利益1,890億円と、再び利益が回復する見通しとなっている。EPSも544円と大きく戻り、25.3期の192円から3倍近くの改善が見込まれている。これは、電力やガスの供給価格の調整が進んだこと、LNG市況の安定化、原価反映の進展が予想されていることなどが背景にある。
利益率面を見ても、23.3期の営業利益率12.8%、ROE18%という高い数字は明らかに特需の影響が大きく、翌24.3期は営業利益率8.2%、ROE10%と正常化し、25.3期ではさらに営業利益率5.0%、ROE4.2%まで落ちている。つまり、大きなブレはあるものの、安定した利益率を保つというよりは、原料価格や市況で利益が上下しやすい特徴がある。ただしROAやROEがマイナスに落ち込んでいない点を見ると、根本的な財務の健全性は保たれており、企業としての安定感は十分にある。
PERを見ても、26.3期予想ベースで高値平均13.4倍、安値平均8.2倍というレンジで、極端に割高というわけでもなく、むしろ“やや割安寄りの中立評価”と見ることができる。PBR1.32倍という水準は資産価値に対してそこまで過熱していないが、東京ガスはインフラ企業として一定の安定資産を保有しているため、PBR1倍台は違和感のない水準と言える。
総合的に見ると、東京ガスは、短期的には市況や燃料価格の影響を受けるものの、長期的には都市ガスと電力という安定的な需要があり、極端に業績が崩れにくい“中程度の安定性を持つエネルギー株”という評価が妥当だ。LNGや電力価格が安定していれば利益はしっかり出せるし、需要そのものが急減する心配もない。配当も増配傾向にあり、75円→80円→80〜90円という推移からも株主還元姿勢は強まっている。
ただし、23.3期の超高収益をそのまま期待すると失望する可能性が高い。あの年度は完全に市況の追い風が作り出した数字であり、今後は24〜26.3期のような“落ち着いた利益レンジ”を前提に考えるべきだ。収益のブレはあるが、ガス・電力の生活インフラを押さえているという強みは揺るがないため、長期的な破綻リスクは小さい。
結論として、東京ガスは「爆発的な成長はないが、極端な悪化もしにくい」という中庸タイプのインフラ株であり、安定収益を求めつつ市況改善時には利益回復も期待できる“堅実な中大型株”として扱うのが最も現実的だ。短期での大きな値幅狙いよりも、配当収入と中期的な業績回復を期待しながら、落ち着いて保有するタイプの銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
東京ガスを配当目的で考える場合、この銘柄は「安定感はあるが、高配当株ではない」という立ち位置にある。予想配当利回りは26.3期で1.64%、27.3期で1.80%と、日経平均やTOPIX全体の平均利回り(約2%前後)よりやや低い水準だ。つまり、利回りだけを目的に買う銘柄というよりは、安定インフラ企業としての安心感を重視しながら“控えめな配当を受け取る”タイプの投資先に近い。
東京ガスはインフラ企業であり、地域の暮らしを支える安定需要を持つため、極端に業績が悪化しにくいという強みがある。ガスや電力は景気に左右されにくい基礎的な生活インフラであり、需要が大きく減ることは考えにくい。こうした背景から、長期的に配当を維持しやすい体質を備えている点は、配当投資家にとって安心材料と言える。
実際、配当推移を見ると、23.3期の65円、24.3期の70円、25.3期の80円、そして26.3期の80〜90円予想と、しっかりと右肩上がりを続けている。短期的な利益の増減に左右されず、着実に株主還元を強めてきた会社であることがわかる。LNG市況に影響され利益が上下しやすい面はあるが、基本的には成熟したインフラ企業として安定したキャッシュフローを確保しているため、急激な減配リスクは比較的低い。
ただし、「配当目的のメイン銘柄にするか?」と言われると、利回りの低さは気になるポイントだ。他の電力株や高配当インフラ株(関電・中部電力・九電・Jパワーなど)と比較すると、東京ガスの利回りは控えめで、純粋に配当効率を重視する投資家には魅力が弱い。あくまで、“安定した企業に長期的に投資し、その中で少しずつ配当を受け取る”というスタンスの人向けの銘柄だ。
とはいえ、東京ガスには配当以外のメリットもある。財務基盤が強く、PBR1.3倍という適正〜やや割安水準で推移しており、株価の下値も比較的堅い。また、配当性向が安定しており、業績の回復に合わせて増配余地も残されている。26.3期ではEPSが544円と大幅改善が見込まれており、今後の配当余力はむしろ拡大しつつある。利回り自体は低いものの、増配トレンドは堅調で、堅実な株主還元姿勢は高く評価できる。
総合すると、東京ガスは「利回り狙いの高配当株として買うタイプではない」が、「安定感のあるインフラ株に長期投資し、緩やかな増配を受け取る」という目的には非常に向いている銘柄である。極端な減配の心配はほとんどなく、業績悪化時でも生活インフラという性質から大きく崩れにくい。したがって、安定性を重視する投資家、配当は少なくても確実に受け取りたい投資家には相性がよい企業と言える。一方、配当利回り3〜5%の“高配当インカム株”を求める人には少し物足りないだろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
東京ガスの株価は現在6,081.0円だが、この先5年間の値動きを考えるうえで重要なのは、LNG(液化天然ガス)の価格変動、国内の電力・ガス販売競争、海外エネルギー投資の成果、そして脱炭素に向けた新規事業の進展といった複数の外部要因だ。東京ガスは安定したインフラ企業である一方、燃料市況や調達価格の変動で利益が上下しやすく、株価もそれに合わせて動きやすい特徴を持つ。
まず 良い場合 を考えると、LNG市況が安定し、調達コストが下がり、ガス・電力の販売価格への原価反映が順調に進むという環境が続くケースだ。さらに海外の権益投資や再生可能エネルギー事業が利益貢献し、都市ガス需要も底堅いまま推移するような状態が続けば、東京ガスは収益の安定性と成長期待の両方を評価されやすくなる。今の株価水準からでも上値余地は十分にあり、その場合の5年後の株価は 7,200〜8,500円 程度まで到達する可能性がある。特にエネルギー価格が落ち着き、利益率の改善が続けばPBRやPERが見直され“安定成長株”として再評価される展開もあり得る。
次に 中間の場合 は、もっとも現実的なシナリオになる。ガス需要と電力需要は緩やかに横ばい、燃料価格は上がりすぎず下がりすぎず、市況の変化に合わせて利益が上下しながらも平均では安定するようなパターンだ。この場合、企業としての安定感は保ちつつも大きな成長材料は出ず、株価は6,081円を中心に上下する形になりやすい。5年間の株価レンジとしては 5,500〜6,700円 の範囲で動く可能性が高く、特別な材料がない限りは極端な値動きにはなりにくい。インフラ株らしく、配当を受け取りながら静かに保有するような価格帯が続くイメージで、良くも悪くも「堅いが飛びづらい」相場になりやすい。
最後に 悪い場合 のシナリオとしては、LNG調達コストが再び高騰し、原価反映の遅れで利益が大きく圧迫されるケースだ。また、競争激化によるガス・電力の販売単価の下落、海外投資の失敗、脱炭素投資の費用先行など複数の逆風が重なると、利益が細る可能性がある。東京ガスはインフラ企業のため大崩れはしにくいものの、それでも株価が押し下げられる可能性は高い。この場合、株価は 4,200〜5,300円 程度まで下落するリスクがあり、特に燃料価格の急騰や原価転嫁の遅れが続くと5,000円割れが現実的になる。
総合して見ると、東京ガスは「急成長ではなく堅実なインフラ企業」であり、株価も大きく崩れにくい一方で、爆発的な上昇を狙うタイプではない。収益が安定している年は株価も堅調に推移し、市況悪化時にはやや下押しされるという、典型的なエネルギー株の動きをしやすい。現在の6,081円は中間レンジに位置しており、ここから先はLNG市況と販売価格調整の進み具合が最大のカギになる。
この記事の最終更新日:2025年11月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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