株価
日特建設とは

日特建設は、基礎工事、地盤改良、法面保護工事といった特殊土木を得意とする国内大手の建設会社であり、地盤の安全性を高める技術力に強みを持つ。麻生グループの傘下に属しており、財務面でも安定していることから、公共インフラ関連工事を中心に長期的な受注基盤を築いている。日本は地震・豪雨・土砂災害が多発する国であり、同社が専門とする防災・減災工事や環境工事は社会インフラに必要不可欠な分野で、景気に左右されにくい安定的な需要が存在する。
同社の土木技術は、都市部のインフラ整備に必要な地盤改良、地中連続壁工法、薬液注入工法といった高度な専門技術を中心に発展してきた。これらは地下鉄やビルの基礎工事、道路・河川・港湾工事など、社会資本形成の根幹となる領域であり、高い専門性が求められる分野だ。また、豪雨災害や地震で崩れやすい斜面に対する法面対策(のり面対策)にも豊富な実績を持ち、落石防護や地すべり防止といった災害対策工事の経験も多く、国土強靭化政策と非常に相性の良い企業となっている。
最近では、能登半島地震の復旧復興に対応するため、能登事務所と現場宿舎を6月末に新設し、長期戦となる復旧工事に向け万全の体制を整えた。現場力・機動力を最重要視する特殊土木企業として、災害現場にすぐ駆け付け、長期間の復旧作業を継続できる体制は同社の大きな強みである。このような動きは、単に工事を請け負うだけでなく、「地域のインフラと生活を守る企業」という社会的側面を強く反映している。
受注面でも堅調で、大堀川(千葉県)での雨水支川工事など、10億円未満の中規模案件を確実に積み上げている。こうした案件は利益率が安定しやすく、急激な受注の乱高下が起こりにくい。同社は大型案件だけに依存するのではなく、中小規模の案件を積み重ねることで、長期的にバランスの良い受注ポートフォリオを形成しているのが特徴である。
さらに、アセットメンテナンス事業にも注力しており、老朽化が進む橋梁・トンネル・斜面などのインフラの補修・補強工事の需要拡大が追い風になっている。日本のインフラの多くが老朽化しており、メンテナンス需要は今後確実に増えると見られており、この分野に強みを持つ日特建設は長期的に優位なポジションにいると言える。
総合すると、日特建設は「特殊土木 × 防災 × 基礎 × 地盤改良」という強固な専門領域を持ち、麻生グループの安定したバックボーンを背に、地盤とインフラを守る技術で社会に貢献する企業である。国土強靭化、防災・減災、インフラ更新といった日本の長期テーマに直結しているため、今後も継続的に需要が見込まれる、非常に安定性の高い建設銘柄と言える。
日特建設 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 72,918 | 5,451 | 5,462 | 3,526 | 84.6 | 45(記念) |
| 連24.3 | 71,880 | 4,356 | 4,397 | 3,066 | 73.5 | 47 |
| 連25.3 | 67,216 | 3,679 | 3,764 | 2,408 | 57.7 | 48 |
| 連26.3予 | 76,000 | 5,000 | 5,000 | 3,350 | 80.2 | 49 |
| 連27.3予 | 85,000 | 5,700 | 5,800 | 3,880 | 92.9 | 49〜50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,659 | -1,788 | -2,171 |
| 2024 | 4,421 | -2,287 | -1,965 |
| 2025 | 4,513 | -4,005 | -1,961 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.4% | 11.0% | 6.6% | ― | ― |
| 2024 | 6.0% | 9.0% | 5.6% | ― | ― |
| 2025 | 5.4% | 7.0% | 4.2% | 高値平均 16.4倍 安値平均 12.5倍 |
1.46倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
日特建設の業績を見ていくと、売上高は23年から25年にかけてやや減少し、利益も段階的に縮小していることが分かる。特殊土木の企業として安定した需要はあるものの、受注の端境期や利益率の低い案件が重なったことが影響し、25年の営業利益は36億円、純利益は24億円と3期連続の減益となった。ただ、26年予想では反発して売上が760億まで回復し、利益も営業利益50億、純利益33億と増益見通しになっている点は明るい材料である。
利益率の推移を見ると、23年の営業利益率7.4%から24年に6.0%、25年に5.4%と右肩下がりで推移し、収益性にやや陰りが見られていた。しかし、26年予想では再び6%台に戻る予測となっており、採算の良い案件が増えることで、利益面でも底打ちしているように見える。特殊土木は高い技術力を要し、競争環境も比較的穏やかであるため、急激な悪化が起きにくい点が同社の安定性につながっている。
ROE・ROAの推移を見ると、23年はROE11%と高水準だったが、利益減少に伴い25年にはROE7%まで低下している。ただし、これは景気敏感というより受注タイミングの問題が大きく、長期的に見れば資本効率は一定以上の水準を保っている。また、26年以降は利益回復が見込まれているため、ROEも再び改善していく可能性が高い。
PERを見ると、25年の株価レンジから計算される実績PERは12.5倍〜16.4倍で、建設・土木セクターとしてはやや高めの評価がついている。これは、特殊土木という分野が国土強靭化、防災、インフラ補修といった長期テーマに直結しており、将来の安定需要が市場から評価されているためだと考えられる。PBRも1.46倍と建設株の中では比較的高い水準に位置し、専門性の高い企業として安定したバリュエーションが維持されている。
総合すると、日特建設は短期的に受注や利益に波はあるものの、事業構造自体が“なくならない需要”に支えられているため、中長期的には安定した回復が期待できるタイプの企業である。地盤改良、法面工事、防災対策といった社会インフラに直結する工事を手掛けており、景気の良し悪しに関わらず継続的に必要とされる分野で強みを持つ。26年の業績回復見通しも追い風となり、過度に悲観する局面ではない。
投資スタンスとしては、急成長を期待するよりも「インフラに基づく安定性」「長期テーマに沿った堅実な業績」「強固なニッチ領域」を評価し、中長期で安定的なリターンを取りに行くのが向いている銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
日特建設の予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに4.01%と、建設・土木セクターの中でも比較的高い水準にあり、特殊土木という安定したニッチ領域を手がける企業らしい落ち着いた配当水準になっている。麻生グループ傘下という背景もあり財務基盤は強固で、借入に大きく依存しない経営体質や、キャッシュフローの安定感が配当の持続性につながっている点は配当目的の投資家にとって安心材料になる。
実際、同社の配当はここ数年、利益に多少の上下があっても大きく揺らぐことがなく、25.3期の減益局面でも減配せずに配当を維持したことから、会社として配当を重視する姿勢が明確に表れている。26年・27年は利益回復が見込まれており、EPSも再び増加する見通しのため、現在の配当水準を無理なく維持しやすい状況が整っている。
事業内容の面では、日特建設は地盤改良、法面対策、防災・減災工事など、国土強靭化や災害対策と直接結びつく領域に強みを持ち、これらの需要は長期的に継続する可能性が高い。公共工事の比率が高いため景気後退局面でも受注が急激に落ちにくく、業績が急変しづらい点も配当の安定性を支える要因になっている。能登半島地震のような災害では復旧工事が長期化する傾向があり、同社の専門性は災害復旧の需要とも相性が良く、事業のベースとなる収益が途切れにくいという強みを持つ。
利回り4%という水準は高配当株として十分魅力がある一方で、過度なリスクを伴わない点も評価できる。急激な増配を狙うような銘柄ではないが、毎年安定した配当を受け取り続けたい投資家にとって扱いやすいタイプの企業といえる。
総合的に見ると、日特建設は利回り4%前後の安定配当を基盤とし、景気変動に左右されにくい特殊土木の事業構造、麻生グループ傘下の強固な財務、そして減配しにくい配当姿勢といった特徴を備えた、長期で安定的にインカム収入を確保したい投資家に適した銘柄であり、配当株として十分評価できる存在となっている。
今後の値動き予想!!(5年間)
日特建設の株価が現在の1,219円から今後5年間でどのような動きをたどるのかを考える際、まず押さえておくべきポイントは、同社が地盤改良、法面対策、防災・減災工事といった「国土を守るための特殊土木」に強みを持つ企業であるという点である。一般的な建設会社のように民間投資の増減に左右されにくく、公共工事を中心に安定した受注を積み重ねるビジネスモデルのため、株価も景気循環による乱高下が起きづらいという特徴がある。災害大国である日本では地盤補強・のり面対策は半永久的に需要が続く分野であり、国土強靭化政策やインフラ老朽化対策といった中長期テーマに支えられている点が、日特建設の株価の基礎的な安定要因となる。
良い場合のシナリオでは、国の防災・減災投資が継続的に拡大し、特に地盤改良や大型の法面補強工事の発注が増えることで、同社の得意分野が強く伸びる状況が想定される。また、能登半島地震のような大規模災害は復旧工事が数年単位で続くため、災害関連の特需が長期にわたって業績を押し上げる可能性もある。営業利益が40億円台後半から60億円台へと成長し、利益率も改善。一方で、特殊土木というニッチ性の高い事業構造から市場が安定成長を評価し、PERが15〜17倍程度で推移すれば、株価は1,500〜1,700円台まで上昇することが考えられる。大幅な跳ねは期待しにくいが、安定基調の中でじわじわと株価が切り上がる展開になる。
中間シナリオでは、業績が現状を大きく崩さず、緩やかな横ばい〜小幅成長で進むパターンが想定される。防災工事・インフラ補修の需要は安定して続く一方、採算は案件ごとのばらつきがあるため、営業利益は40億円前後で推移する。株価は配当利回り約4%の水準が下支えとなり、大きな崩れは起きにくい。仮に業績が伸び悩んでも市場は同社の安定性を評価し続けるため、株価は1,200〜1,350円程度を中心に動きつつ、じわじわと1,400円台へ向かう可能性がある。急成長は期待しにくいが、長期で見れば資産価値がゆっくり増えていくタイプの値動きとなる。
悪い場合のシナリオでは、資材価格の上昇や人材不足による人件費の高騰が利益を圧迫するリスクがある。また、特殊土木は大型案件の発注タイミングに左右されやすく、年度ごとに受注が波打つ特徴があるため、受注の端境期が重なると営業利益が30億円前後まで落ち込む可能性もある。この場合、市場は利益率の低下を嫌気し、PERが10倍前後まで低下すれば、株価は1,000〜1,100円台まで下押しされる展開が考えられる。ただし、日特建設は麻生グループ傘下という財務面の安心感や、特殊土木という事業特性から需要が底割れするリスクは低く、一度下落しても戻りが早い傾向があるため、長期的な悲観シナリオは限定的と言える。
総合的に見ると、日特建設は「急騰を狙う銘柄ではなく、長期で堅実に伸びる銘柄」というポジションにあり、価格推移もそれを反映して緩やかで安定したものになりやすい。国土強靭化、防災・減災、インフラ老朽化対策といった国家レベルのテーマが今後も継続する以上、同社の事業領域は中長期で強い追い風を受け続ける。配当利回り4%の下支えもあるため、株価の下値は固く、長期的に安定配当を受け取りながらゆっくりと株価の上昇も期待できる、バランスの取れた投資先と言える。
この記事の最終更新日:2025年11月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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