株価
東京エネシスとは

株式会社東京エネシスは、東京都中央区に本社を構える電力設備工事会社で、発電所や変電所といった電力インフラの中核部分を担う工事に特化した企業である。1947年(昭和22年)に「株式会社東京電氣工務所」として設立され、戦後の電力インフラ復旧と拡張の時期から電力システムに深く関わり続けてきた歴史を持つ。その後、1961年に東京証券取引所第二部へ上場、1981年には東証第一部に昇格し、2001年に現在の「株式会社東京エネシス」へと商号変更している。70年以上にわたり電力関連工事一筋で成長してきた企業で、日本の電力インフラ整備の裏側を支えてきた存在である。
事業内容は、発電所と変電所の建設工事・改修工事が中心で、水力・火力・原子力といった従来型の発電施設から、太陽光発電などの再生可能エネルギー関連設備に至るまで、多様な電源設備の工事を幅広くカバーしている。特に大規模な発電施設の据え付けや改修、タービンや発電機周りの設備更新、変電所の老朽化対策、送電線や地中線の整備といった、専門性の高い領域を長年にわたり担ってきた点が特徴である。
また、電力インフラだけでなく、電気設備工事、情報通信設備工事、制御・計装設備、防災設備、電力設備の保守・点検・診断サービスなども行っており、電力設備の建設から維持管理までを一貫して提供できる体制を持っている。特に近年は、設備の老朽化が進む国内のインフラ更新需要や、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う新設工事、送電網の強化・デジタル化など、多くの分野で需要が増加しており、東京エネシスの役割はますます大きくなっている。
東京電力との関係も深く、東京電力ホールディングスが株主総会議決権の27.07パーセントを保有する筆頭株主であり、同社出身者が東京エネシスの代表取締役社長を務めるなど、強い資本関係と人的つながりがある。これにより、東京電力管内の電力インフラ工事において安定した受注基盤を確保しており、送電・変電・発電に関する工事の高い技術力と実績が長年にわたり評価されている。
国内では、火力・水力・原子力の老朽化に伴うリプレース工事、再生可能エネルギーの導入拡大、送電網の増強、災害対策としての耐震化工事や防災設備の強化など、今後も必ず必要となるインフラ投資が継続する見通しにあり、東京エネシスが活躍する余地は非常に大きい。電力インフラという社会に不可欠な領域を支えているため、景気変動の影響が比較的小さく、長期的に安定した需要が継続する点も特徴である。
総合すると、東京エネシスは電力インフラに強みを持ち、発電所から変電所、送電設備まで一貫して手がける数少ない専門企業として、電力供給の根幹を支えている存在であり、再生可能エネルギーや電力インフラ更新の波に対応できる技術力と歴史をあわせ持つ企業である。
東京エネシス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 79,055 | 3,458 | 2,770 | 2,120 | 61.9 | 40(特記) |
| 連24.3 | 88,467 | 3,959 | 5,212 | 2,960 | 86.7 | 45 |
| 連25.3 | 67,722 | 2,665 | 3,342 | 2,900 | 86.7 | 52 |
| 連26.3予 | 82,000 | 3,900 | 4,100 | 3,400 | 102.0 | 57 |
| 連27.3予 | 95,000 | 5,000 | 5,200 | 3,500 | 105.0 | 57 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 8,143 | -3,119 | -656 |
| 2024 | 8,503 | -5,126 | -4,446 |
| 2025 | -15,229 | -90 | 10,655 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.3% | 1.9% | 3.1% | — | — |
| 2024 | 4.4% | 2.7% | 4.3% | — | — |
| 2025 | 3.9% | 2.6% | 4.2% | 高値16.9倍/安値11.7倍 | 0.86倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東京エネシスは、発電所や変電所といった電力インフラの建設・改修工事を主力とする企業で、東京電力グループとの関係が深く、電力設備の更新・維持という安定需要に支えられている。このため、景気動向による業績の大きなブレは比較的少ないが、受注のタイミングや大口案件の有無によって短期的に売上が上下する特徴を持つ。
業績推移を見ると、売上は23.3期の790億円から24.3期は884億円へ増加した一方、25.3期は677億円と大きく落ち込んでいる。これは電力インフラ工事特有の年度ごとの受注案件の偏りによるものと考えられ、企業体質が急に弱くなったというより、年度タイミングの問題が大きい。26.3期予想では820億円と持ち直す見通しで、再び通常の受注水準に戻る形になっている。
営業利益は23.3期の34億円から24.3期39億円へ伸びたものの、25.3期は26億円へ減少している。営業利益率も4パーセント台前半で推移しており、設備工事業の中でも利益率はそれほど高くない。経常利益も27億円 → 52億円 → 33億円と上下が大きいが、これは発電所・変電所案件の採算性や受注タイミングの影響が強く出たもの。26.3期予想では41億円と改善が見込まれており、電力設備更新工事が回復していると考えられる。
純利益は21億円 → 29億円 → 29億円と比較的安定しており、26.3期は34億円の予想。赤字には至らない安定性がある一方で、利益が大きく伸びていくタイプの企業でもない。EPSは61円から86円へ上昇し、25.3期は受注減で停滞したものの、26.3期は102円と回復が見込まれている。配当も特別配当を含めて増加傾向にあり、40円 → 45円 → 52円 → 57円予想と、利益に応じた還元が続いている。
指標面では、ROEが3〜4パーセント台、ROAも2パーセント台と、決して高い水準ではないが、電力工事企業としては標準的な範囲。2025年の実績PERは高値で16.9倍、安値で11.7倍、PBRは0.86倍と総じて割安寄りの評価になっている。特にPBR1倍を下回っていることは、利益水準の改善が進めば再評価余地があることを示す。
総合的に見ると、東京エネシスは大きく成長するタイプではないが、電力インフラという必須分野を支える「安定性重視」の企業で、業績が極端に崩れにくい特徴を持つ。一方で利益率は高くないため、株価の大幅な上昇は期待しにくい。電力設備更新需要や再生可能エネルギー関連の設備投資が増える時期には追い風が吹きやすく、緩やかに持ち直す展開が続きやすい。堅実でディフェンシブ寄りの銘柄だが、収益性の向上には時間がかかるため、中長期でじっくり持つタイプの投資対象と言える。
配当目的とかどうなの?
東京エネシスの予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに3.10%となっており、電力関連の設備工事会社としては比較的高めの水準にある。電力インフラという安定需要のある分野を中心に事業を行っているため、業績は年度ごとの受注状況で多少の上下はあるものの、赤字に転落しにくいという特徴がある。この安定性が配当の維持にもつながっており、長期的には一定の配当が期待しやすい。
実際に配当は、23.3期40円、24.3期45円、25.3期52円と増配傾向が続き、26.3期の57円予想でも利益の回復に合わせた確実な配当還元が示されている。配当利回りは3パーセント台前半で比較的安定し、高配当株とまではいかないものの、適度な利回りを持続できる銘柄といえる。一方でROEが3〜4パーセント台と高くはなく、利益成長も急激なタイプではないため、大幅な増配や利回りの急上昇を期待するのは難しい。電力向け工事の性質上、年度によって業績が振れやすい側面もあり、配当も中期的には調整が入る可能性がある。
それでも、電力インフラ更新、再生可能エネルギー設備への投資、災害対策としての設備強化など、必ず必要となる分野の工事を担っているため、極端な業績悪化や減配リスクは比較的小さい。総合すると東京エネシスは、利回り3パーセント台の安定した配当水準を維持しやすく、事業構造も赤字になりにくく、電力インフラ需要に支えられた堅実な業績が期待できることから、配当目的の銘柄として十分に選択肢になる存在である。ただし、爆発的に利回りが伸びるタイプの企業ではなく、長期保有でじっくり配当を受け取りながら付き合っていく銘柄という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
東京エネシスの現在の株価(1,833.0円)から株価シナリオを考える際に重要なのは、同社が「発電所・変電所・送電設備」という日本の電力インフラの中心部分を担っていることに加え、工事需要の波が比較的読みやすい業界である点である。再生可能エネルギーの導入拡大、老朽設備の更新、災害対策としてのインフラ補強など、政策的にも不可欠な工事が続くため、極端に悪化しにくい一方、大幅な急成長を期待しにくいという特徴がある。こうした性格を踏まえて、5年間の株価を良い・中間・悪いの3シナリオで整理すると次のようになる。
良い場合では、再エネ設備や送変電設備の更新工事が継続して増えることで、受注が安定し、利益が堅調に積み上がっていくパターンである。特に発電所の更新需要や送電網の強化は、政府のエネルギー政策や再エネ拡大と密接に関わっているため、投資が継続しやすい。営業利益率が4パーセント後半へ戻り、ROEが4〜5パーセント台で安定してくると、市場の評価も改善し、割安さが解消される。現在のPBR0.8倍台という低評価が1倍前後まで戻ってくれば、株価は2,000〜2,200円台が見えてくる。電力インフラの大型更新が重なれば、さらにもう一段上の評価を受ける余地もあるが、それでも急騰というよりは時間をかけてじわじわと上値を切り上げる展開になる。
中間の場合は、最も現実的なシナリオで、年度ごとの受注状況に合わせて業績が上下しつつも、トータルでは横ばいから微増程度の動きに落ち着くケースである。電力設備工事は案件規模が大きく、年度によりムラが出やすいため、売上や利益が一定の幅で前後するのはこの企業の“普通の姿”と言える。利益率も4パーセント前後で落ち着き、バリュエーションもPER10〜13倍程度で推移し、株価は1,700〜2,000円あたりを中心に動きやすい。現在値1,833円から見ても上にも下にも極端に動きにくく、配当をもらいながら安定して保有する形になりやすい。
悪い場合は、資材価格の高騰、工期の遅れ、電力会社側の投資ペースの鈍化などが重なり、利益が伸びにくくなるケースである。電力工事は材料費比率が高いため、資材高や人件費上昇の影響を直接受けやすい。営業利益率が3パーセント前半まで落ち込む状況が続けば、PERの評価も低下し、株価は1,500〜1,650円付近まで調整が起きる可能性がある。ただし電力インフラの更新自体は不可避のテーマであり、政府も再エネや老朽設備対策を重視しているため、極端な長期低迷は想定しにくい。景気敏感株のように深く売られることは少なく、一定のところで下値が固まりやすいのが特徴である。
総合すると、東京エネシスは上にも下にも振れ幅がそれほど大きくなく、業績の方向性に応じてじわじわ動くタイプのインフラ株である。再エネ・老朽更新の追い風が続く限り、長期では緩やかに上値を目指しやすい一方、悪材料があっても大崩れしにくい。配当を受け取りながら中長期で保有するスタイルに最も向いている銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年11月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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