株価
三機工業とは

三機工業株式会社は、東京都中央区に本社を構える三井グループの総合設備建設会社であり、空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、厨房設備、水処理施設、原子力関連設備、防災設備まで非常に幅の広い分野の設備工事を請け負っている。同社のルーツは三井物産の機械部門にあり、その部門が独立する形で発足したことから、長年にわたって三井グループと深い結びつきを保ってきた企業である。創業以来、オフィスビル、病院、大学、工場、商業施設、研究所など、あらゆる用途の建築物に対して空調・衛生・電気設備を軸としたインフラを提供してきた。
設備工事業界の中でも三機工業は特に技術志向の企業として知られ、快適性や清浄度が厳しく求められるクリーンルームや恒温恒湿空間、精密空調などの高度な環境制御が必要な施設で多くの実績を積んでいる。半導体工場や医薬品関連の工場、理化学研究所、大学の研究棟など、高度な空調制御技術が求められる分野では競争力が高く、確固とした地位を築いている。また、厨房設備や水処理設備、産業設備など、一般建築だけでなく工場・インフラ系の設備にも強みを持ち、幅広い領域で対応力の高さが光っている。
さらに同社は原子力関連施設向けの設備工事にも深く関わっており、放射性物質の管理設備や特殊空調、防災設備、除染関連システムなど、高い専門性が求められる領域にも対応している。これらの工事は高度な技術と安全性が求められ、参入できる企業が限られるため、三機工業の技術力の高さを象徴する分野となっている。
歴史的な点では、三機工業はかつて空調機器メーカーの「東洋キヤリア(現在のキャリアグループ)」の設立に関与したほか、新日本空調の創立にも関わったことで知られており、設備工事業界の発展において重要な役割を果たしてきた。ただし現在はいずれの企業とも資本関係はなく、独立した設備工事会社として事業を展開している。建築設備の設計から施工、保守・メンテナンスまで一貫して手がける体制を持ち、建物のライフサイクル全体を支えるサービスを提供できる点が大きな特徴となっている。
近年では、省エネ化や環境意識の高まりを背景に、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)対応工事や省エネ空調、エネルギーマネジメントシステムなどの環境ソリューションにも注力している。CO₂削減や建物の省エネ化のニーズが高まる中で、空調・衛生・電気を総合的に扱える三機工業の強みがより発揮されやすい市場環境になっている。
このように三機工業は、三井グループというバックグラウンドを持ちながらも独自の技術と実績を積み重ねてきた企業であり、空調・衛生・電気・水処理・防災など、建築設備に関わるほぼ全てをカバーする総合設備会社として業界の中でも安定した地位を築いている。幅広い設備分野への対応力、高い専門技術、長年の施工実績、そして環境配慮分野への積極的な取り組みが評価され、建設・設備業界の中でも信頼性の高い企業として位置づけられている。
三機工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当りの配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 190,865 | 5,409 | 6,247 | 4,750 | 85.8 | 75(特) |
| 連24.3 | 221,920 | 11,586 | 12,750 | 8,951 | 165.6 | 85(特) |
| 連25.3 | 253,136 | 21,893 | 23,071 | 17,203 | 326.3 | 165 |
| 連26.3(予) | 250,000 | 24,500 | 25,000 | 19,500 | 376.1 | 165 |
| 連27.3(予) | 270,000 | 27,000 | 27,500 | 21,000 | 405.0 | 165 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -10,584 | -969 | -8,327 |
| 2024 | 1,285 | 3,174 | -6,069 |
| 2025 | 29,725 | 1,897 | -11,398 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値 / 安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.8% | 5.2% | 2.7% | – | – |
| 2024 | 5.2% | 8.5% | 4.4% | – | – |
| 2025 | 8.6% | 16.1% | 8.5% | 14.7倍 / 10.1倍 | 2.60倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
三機工業の業績を億円ベースで見ると、売上は連23.3期の約1908億円から連24.3期の2219億円、連25.3期の2531億円へと順調に増加し、最新の連26.3期予想でも2500億円と高い水準を維持している。設備工事業界は景気の波で上下しやすいが、この会社は幅広い設備分野を扱うため売上が安定して伸びており、業界内でも比較的ブレの少ない企業と言える。
利益面では営業利益が54億円から115億円、218億円へと大きく伸びており、連26.3期予想では245億円に達する見込みとなっている。営業利益率も2.8%から5.2%、さらに8.6%まで改善してきており、工事単価の見直しや高付加価値案件の増加、原価管理の強化などが効いていると考えられる。経常利益も62億円から127億円、230億円へと増えており、最新予想では250億円とこちらも力強い伸びだ。純利益も同様に、47億円→89億円→172億円から、予想では195億円と伸びている。利益の伸びが売上以上に大きいことから、収益構造の質が改善しているのがわかる。
EPSは85.8円から165.6円、326.3円へと急増し、連26.3期予想では376.1円とさらに伸びている。EPSの急伸は利益の増加と資本効率改善の表れであり、株価評価にもプラス材料となる。配当は連23.3・24.3期で特別配当を含む形になっているが、連25.3期以降は165円と安定化している。EPSの伸びと比べると配当性向にはまだ余裕があり、今後の増配余地もそれなりに残されている。
ROEは5.2%→8.5%→16.1%と大きく改善しており、特に直近の伸びは利益が急増したことを反映したものだ。ROAも2.7%→4.4%→8.5%と強い伸びを見せており、資産効率は業界平均を大きく上回る水準に入っている。設備工事会社でROE16%台はかなり優秀で、企業体質が明確に良化している証拠と言える。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均で14.7倍、安値平均で10.1倍、PBRは2.60倍という水準になっている。PER10〜15倍というレンジは設備工事企業としてはやや高めだが、利益の急成長が続いている状況を考えると過度に割高とは言いにくい。PBR2.6倍は確かに高めだが、ROEが16%近い企業であれば市場がそれなりのプレミアムを付けるのは自然な流れで、資本効率の改善が株主価値として評価されていると見てよい。
総合すると、三機工業はここ数年で業績が非常に強く改善し、営業利益率やROEなどの主要指標が大きく伸びている点が強く目立つ。売上の安定成長に加え、利益率が明確に改善していることから、会社の収益構造そのものが進化している印象がある。配当はそこまで高利回りではないが、利益成長ペースを踏まえれば今後も増配余地は十分あり、株主還元にも期待が持てる。
株価指標の水準はやや高めではあるものの、直近の業績変化を考えると一定のプレミアムが乗っていても不自然ではなく、長期的には安定成長を見込んだ保有に向いている銘柄と判断できる。設備工事業界の中でも利益率の改善幅が大きく、今後の業績推移次第では株価の上振れ余地も残されている企業といえる。
配当目的とかどうなの?
三機工業の予想配当利回りは連26.3期・連27.3期ともに3.03%となっていて、配当目的の投資という観点では十分に検討対象になる水準に入っている。利回りが3%あれば、高配当株に分類される銘柄とまでは言わないまでも、インカム狙いの投資家にとっては魅力的なラインで、安定した設備工事会社の中では比較的高い利回りの部類に入る。
三機工業の場合、配当利回りだけでなく、配当の“持続性”と“成長余地”の両方を考える必要がある。まず利益の推移を見ると、純利益は連23.3期の47億円から連24.3期の89億円、連25.3期の172億円、そして連26.3期予想では195億円まで伸びている。利益の伸びが非常に力強く、EPSも85円から165円、326円、376円と急拡大している。利益とEPSが綺麗に積み上がっている企業は減配リスクが低く、安定配当・増配のしやすさという点ではかなり高評価できる。
現在の配当は165円で据え置きだが、EPSが376円という水準まで来ているため、配当性向としてはまだ余裕があり、今後の増配余地も十分ある。配当利回り3%が維持されるだけでも投資妙味はあるが、業績が順調に伸び続けるのであれば、利回りが3%台前半に乗ってくる可能性や、連続増配が実現する可能性も十分にある。
また、三機工業は空調・衛生・電気・水処理など、設備工事の中でも比較的安定したジャンルに強みを持っているため、景気悪化局面でも利益が大きく崩れにくいタイプの企業だ。設備投資が鈍化したとしても、ビルメンテナンスや更新需要などの“ストック型の仕事”が一定量あるため、業績が底抜けしづらく、配当の維持力が高い。減配リスクが低いという点は、配当目的の投資家にとって非常に大きな魅力となる。
配当利回り3.03%という数字は、銀行株や商社株の4〜5%台と比べると見劣りはするものの、設備工事業としては標準以上の水準で、しかも業績の伸び率や利益率の改善幅を踏まえると「今後さらに伸びる可能性を持った配当株」として評価できる。加えてROE16%、営業利益率8.6%という現在の高収益体質が維持されれば、配当と株価の両方で長期リターンが期待できる構造にもなっている。
総合すると、三機工業は現時点での利回り3%を軸にした配当投資として十分魅力的で、業績の伸びと財務体質の改善を背景に、今後の増配余地が大きいことから“成長する高配当候補”として扱える銘柄である。短期で高利回りだけを求めるなら別銘柄のほうが良いが、安定した利益成長+今後の増配期待+3%台の利回りというバランスを見れば、長期保有の配当目的としてはかなり相性の良い企業と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
三機工業の現在値は5,440円で、直近の業績を踏まえると株価はやや割安〜中立圏にいると考えられる。売上は1908億円→2219億円→2531億円と順調に伸び、営業利益も54億円→115億円→218億円と2年間で約4倍に増加している。営業利益率は2.8%→5.2%→8.6%まで改善し、ROEも5.2%→8.5%→16.1%と急上昇していることから、収益構造そのものが強化されてきた企業だという点が株価評価の中心になる。EPSも85円→165円→326円→376円予想と大きく伸びており、株価の下値が固くなりやすいタイプの業績をしている。
良い場合
設備工事需要が堅調に続き、空調・衛生・電気・水処理など同社が得意とする分野の受注環境が好調を維持するケースでは、EPSが5年後に400〜450円台から500円近くまで伸びる可能性がある。その際、PERが業績評価を織り込み14〜15倍で推移すれば株価は7,000円〜8,000円台まで上昇し、景気や投資環境が良ければ8,500円前後まで上振れする可能性もある。とくに省エネ設備やZEB関連、クリーンルームなど高付加価値案件が伸びれば、利益率改善が評価され株価は息の長い上昇になりやすい。
中間の場合
業績は横ばい〜緩やかな成長を続けるが、株価評価(PER)が現在の10〜12倍程度にとどまるケース。EPSが380〜420円あたりで推移すると、株価は5,500円〜6,300円あたりのレンジに収まり、現在値近辺の安定した動きを続ける。大きく上にも下にも動かないが、配当利回り3.0%前後が継続するため、株価横ばいでもトータルリターンは十分確保できる。いわゆる「安心して長期保有できる動き」に落ち着きやすい。
悪い場合
設備投資のサイクル調整や工事単価の下落、材料高などが重なり、利益の伸びが止まる、もしくは一時的に減益となるケース。この場合、EPSが350円を割り込むような動きになると市場評価がPER8〜9倍あたりまで低下し、株価は4,000円〜4,800円程度まで下押しされる可能性がある。ただし三機工業は設備工事業の中でも受注分野が広く、売上が極端に落ちるタイプではないため、5年スパンでの大きな崩れは起こりにくく、下値は比較的限定的と考えられる。
三機工業はここ数年で利益率とROEが大きく改善した企業で、設備工事の中でも技術系の高付加価値分野に強いことから、長期的には株価が緩やかに切り上がる可能性が高い。配当利回り3%を維持しながら利益成長が続く構造であるため、株価が極端に下がった場合は買い場となりやすく、上昇局面では高値更新も十分狙える位置にいる。良くも悪くも“下がりにくく、上がる時はじわじわ力強い”タイプで、長期保有との相性が良い銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2025年11月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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