株価
高砂熱学工業とは

高砂熱学工業株式会社は、東京都新宿区新宿六丁目の新宿イーストサイドスクエアに本社を置く、日本を代表する空調設備工事会社である。資本金は131億円で、JPX日経インデックス400の構成銘柄にも選ばれており、建築設備業界の中でも高い評価と安定性を持つ独立系総合エンジニアリング企業である。
同社の主要事業は空気調和設備(空調設備)の設計・施工であり、この分野では国内で圧倒的な業界トップの地位を長年にわたり維持している。完成工事高(売上高)は14年連続で空調設備業界首位という実績を持ち、空調・衛生分野の技術力は日本でも屈指。特に、研究施設・医薬品工場・半導体工場・データセンターなど、高度な温湿度管理やクリーン環境が必要とされる建物において強みを発揮している。
技術力の高さは、空気調和・衛生工学会における論文賞、技術賞、技術振興賞などで突出した受賞件数を持つことからも裏付けられており、同学会での受賞数は業界2位以下を大きく引き離して首位となっている。また、保有する知的財産(特許・実用新案・意匠・商標)は741件にのぼり、そのうち特許は国内477件・海外20件(いずれも2021年3月末時点)。空調設備分野で圧倒的な技術基盤を持つ企業として確固たる地位を築いている。
事業領域は空調設備にとどまらず、建築設備の設計・施工・保守、環境制御システム、エネルギーマネジメント、衛生設備、電気設備など幅広く、建物全体の環境づくりを担う総合設備エンジニアリング企業として発展している。また、不動産開発事業や宇宙開発関連の事業にも取り組むなど、多角化も積極的に進めており、従来の建築設備工事会社の枠を越えた事業展開を行っている。
企業としての評価も高く、2020年・2021年・2024年度には経済産業省の「健康経営優良法人」に認定され、2022年度・2023年度にはより上位区分の「健康経営優良法人(ホワイト500)」に選ばれるなど、従業員の働きやすさや健康管理に関しても模範的な企業とされている。これは、人材を重視し高い品質を継続的に提供し続ける企業姿勢の表れでもある。
総合すると、高砂熱学工業は、空調設備工事を中心に圧倒的な技術力と実績を持ち、研究施設や半導体製造装置向けの高度な空調制御、データセンター向けの高効率冷却システムなど、付加価値の高い分野で強い存在感を示す企業である。技術開発・知財・健康経営など企業としての総合力も高く、建築設備業界におけるトップブランドとしての地位を確固としたものにしている。
高砂熱学工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当りの配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 338,831 | 15,326 | 16,685 | 12,227 | 184.7 | 63 |
| 連24.3 | 363,366 | 24,192 | 26,150 | 19,612 | 295.7 | 129(記念) |
| 連25.3 | 381,661 | 32,415 | 34,970 | 27,631 | 416.2 | 167 |
| 連26.3(予) | 410,000 | 38,000 | 40,000 | 30,200 | 461.3 | 174〜180 |
| 連27.3(予) | 425,000 | 40,000 | 42,000 | 31,700 | 484.2 | 176〜196 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 25,826 | -5,427 | -8,325 |
| 2024 | -13,100 | -8,103 | -491 |
| 2025 | 5,885 | -1,405 | -12,713 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値 / 安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.5% | 8.5% | 3.9% | – | – |
| 2024 | 6.6% | 11.9% | 5.7% | – | – |
| 2025 | 8.4% | 15.2% | 8.2% | 14.9倍 / 8.7倍 | 2.99倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
高砂熱学工業の業績を3年分並べて見ると、売上・利益ともに非常に綺麗な右肩上がりとなっており、特に24.3期以降の伸び方は設備工事業としては異例の強さが出ている。空調設備のトップ企業としてデータセンター・半導体工場・製薬工場などの高付加価値案件が増加しており、特に利益率の改善が顕著。営業利益率は4.5%から8.4%まで急上昇していて、業界の構造変化をうまく捉えていることがわかる。
純利益も122億 → 196億 → 276億 → 302億へと順調に伸びており、EPSも184円 → 416円 → 461円と倍以上に拡大している。ROEも8.5%から15.2%まで上昇しており、資本効率が非常に高まっている。これは事業の付加価値が上昇し、高利益率の案件が増えていることの証拠であり、企業価値として大きなプラス材料である。
株価のバリュエーションを見ると、PBRは2.99倍と建築設備業界では高水準で、市場が高砂熱学の技術力と成長性を強く評価していることがわかる。また、PERは安値でも8.7倍と割安に見えるレベルで、成長を考慮すれば明らかに許容範囲内。高値平均14.9倍であっても、利益成長、EPSの伸び、設備需要の強さを踏まえると、そこまで割高感はない。
業績を見る限り、単なる設備工事会社ではなく、高度環境制御・クリーンルーム・データセンター空調など、利益率の高い分野に強い構造へ変化しており、今後も中期的に安定成長が期待できる。通常の建設業とは明らかに異なる成長性を持っている点が大きな魅力となっている。
総合すると、高砂熱学工業は利益成長・利益率改善・EPS伸長・ROEの大幅改善という複数の強い要素がそろっており、建築設備の枠を超えて“半・成長株”的な評価ができる企業。PBRが高いことは割高というよりも“それだけ市場が評価している”という解釈が適切で、業績の伸びが続く限りは株価も中期的に押し上げられる可能性が大きい。インフラ系設備企業の中では攻守バランスが優れており、安定性と成長性が両立している銘柄といえる。
配当目的とかどうなの?
高砂熱学工業の予想配当利回りは連26.3期・連27.3期ともに2.39%となっており、インフラ系設備企業としてはやや控えめな利回りである。一般的に配当目的で株を選ぶ場合、3%以上を基準とする投資家が多いため、数字だけを見れば高配当株とは言えず、利回り面の魅力は限定的に見えてしまう。しかし、高砂熱学の場合は単純に配当利回りの高さだけで判断すると本質を見誤る可能性がある。
同社は近年の業績が非常に強く、純利益が3年連続で大きく伸び、EPSは184円から416円、さらに461円へと倍以上に拡大している。利益成長の勢いが続いているため、現時点で利回りが低くても、将来的な増配余力はむしろ非常に大きい。実際に同社はこれまでも安定的に増配を続けており、配当総額も右肩上がりとなっている。データセンターや半導体、医薬、研究施設など高付加価値の建物向けの案件が増えていることから、業績も安定しやすく、配当支払いの体力も十分にある。
また、PBRが2.99倍と高いことは、市場が同社の技術力と成長性を強く評価していることの表れであり、株価が高く保たれている分だけ利回りが相対的に低く見えてしまっている側面が強い。これは、業績が伸びて株価が上昇している企業でよく見られる現象で、利回りが低いこと自体がネガティブとは限らない。むしろ、高砂熱学の場合は“株価が強いために利回りが見かけ上低くなっている”と理解する方が実態に近い。
ただし、数字だけを見れば2.39%は高配当とは言えないため、大量の配当金を毎年取りにいくというタイプの投資には向いていない。一方で、安定成長を続ける企業が業績に合わせて自然に増配していく流れを重視したい投資家にとっては非常に相性が良く、中期的に見て“中配当の成長株”として評価できる。利回りの高さではなく、利益成長・EPSの伸び・事業の強さを軸に投資したい場合には十分に魅力的な銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
高砂熱学工業の現在株価4,386円を基準に5年間の値動きを考えると、この企業は空調設備業界で長く首位を維持しているうえ、データセンター、半導体工場、製薬・研究施設など高付加価値案件の比率が年々高まっているため、業績がブレにくく、利益率が向上しやすい構造になっている。空調という成熟産業の中でも成長性を取り込めるポジションにいる点は大きな強みであり、株価も中長期で上昇しやすい性質を持つ。一方、建設・設備業の宿命として市況影響や工事採算のブレが発生しやすいため、短期的な上下は避けられず、シナリオごとにある程度幅を持った推移になると考えられる。
良い場合は、データセンター投資が国内外で加速し、半導体製造拠点の増設や医薬・研究施設の設備投資が続く展開である。この場合、高砂熱学の高い技術力がより評価され、営業利益率は8%台〜9%台を維持し、ROEも15%前後の高水準を継続する可能性がある。市場が成長企業としての評価を強めれば、PERは15〜17倍程度まで上昇しても不思議ではなく、株価は5年後に 5,800〜6,500円 程度まで上昇するシナリオが見える。さらに業績が予想以上に伸びれば、7,000円台に乗せる可能性も十分にある。
中間シナリオでは、現状の高付加価値工事の受注は安定して続くものの、特段の大型案件や急成長分野の拡大は限定的で、業績は年5%前後のゆるやかな成長に落ち着くケースである。利益率も8%前後を維持しながらも、急成長とまではいかないため、市場の評価はPER10〜13倍程度にとどまり、株価は5年後に 4,500〜5,000円 の間で推移すると考えられる。現在の株価から大きく逸脱しない、堅実で安定した値動きになるシナリオだ。
悪い場合は、設備工事全般が景気後退の影響を受け、データセンター投資のペースが鈍化したり、半導体設備投資が一時的に縮小したりするケースである。工事採算の悪化や案件の遅延が重なると営業利益率が6%台へ下がる可能性もあり、市場の評価はPER8倍前後の割安放置状態になりやすい。この場合の株価は 3,300〜3,800円 程度まで下振れする可能性がある。ただし、高砂熱学は設備の更新・保守需要が安定しているため、大幅な長期低迷に陥る可能性は低く、下落しても一定の下値抵抗は維持しやすいタイプの企業である。
総合すると、高砂熱学工業は空調設備分野のトップ企業として安定性が高く、成長性も取り込める“攻守バランスの良い銘柄”である。大暴騰するタイプではないが、企業価値の積み上がりに合わせて株価もじわじわ上がっていく傾向が強く、長期保有に向いた銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年11月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す