株価
LIFULLとは

株式会社LIFULLは、東京都千代田区に本社を置き、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S(ホームズ)」を運営する不動産テック企業である。1997年、創業者の井上高志氏が「サラリーマンとしての生活では自分の理想の仕事は実現できない」と感じ、住まい探しの情報格差や不透明さを解消するために起業したのが始まりで、以降は“住まい”と“暮らし”を軸にしたデジタルサービスの拡大を続けてきた。
主力である「LIFULL HOME’S」は、賃貸・売買・新築・土地・注文住宅・リフォーム・老人ホームなど、住まいに関するあらゆる情報をワンストップで検索できる総合プラットフォームであり、情報の透明性と更新頻度の高さが評価され、国内不動産情報サイトとしてトップクラスの規模へ成長した。ユーザー向けだけでなく、不動産仲介会社・管理会社向けの業務支援サービスやマーケティング支援にも注力し、業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する存在となっている。
2017年には社名を「LIFULL」に統一し、グループ名やサービスブランドも整理。これは単なる不動産検索サイト運営企業ではなく、「暮らしをもっと豊かにし、人々の人生を支える総合生活支援企業へ進化する」という意思を示したものだ。“LIFEをFULLにする”という企業名には、暮らしを豊かにし、新しい人生のスタートを支えるという思いが込められている。
一方で、これまで積極的に展開してきた海外事業については、経営のフォーカスを見直す動きが進んでいる。グローバル子会社群を束ねる「LIFULL CONNECT」を通じて世界63ヶ国で不動産・求人メディアを運営してきたが、2025年9月期には海外事業を連結から除外し、日本国内のコア事業へ集中する方針へ舵を切った。これは、不動産テック領域における国内市場の競争が激化する中で、“ホームズを中心とした国内サービス強化”が最も収益性と成長性を見込めると判断した結果であり、国内基盤をより強固にする方向へ戦略転換が進んでいることを示している。
LIFULLは、シニア向け住宅情報サービス「LIFULL介護」、空き家活用・スペース活用事業「LIFULL SPACE」、地方創生・ソーシャルビジネス支援など、多様な社会課題を事業として取り扱う点も特徴である。単なるIT企業という枠を超え、「社会課題の解決を軸にしたプラットフォーム企業」としての位置づけが強く、2021年にはブランディングを評価する「Japan Branding Awards」で最高賞「Best of the Best」を受賞するなど、企業ブランドとしての評価も高い。
楽天グループの持分法適用会社でもあるため資本面の安定性もあり、デジタルと不動産の融合領域で確固たるポジションを築いている。今後は、海外事業の整理によってリソースを国内へ集中させ、ホームズを中心としたプラットフォームの質と収益力を高めていく戦略がより鮮明になっていくと思われる。
LIFULL 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 22.9 | 35,730 | 1,681 | 1,396 | 1,187 | 9.0 | 2.25 |
| 23.9 | 36,405 | 1,959 | 1,634 | 1,031 | 8.0 | 4.26 |
| 24.9 | 34,466 | -6,443 | -7,076 | -8,463 | -66.1 | 0.73 |
| 25.9予 | 28,500 | 3,300 | 3,000 | 4,200 | 32.8 | 7.33(記念) |
| 26.9予 | 29,700 | 3,400 | 3,200 | 2,000 | 15.6 | 4〜5 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 6,233 | -1,743 | -5,079 |
| 2024 | 1,671 | -718 | -2,977 |
| 2025 | 4,808 | -11,852 | 3,890 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.3% | 3.1% | 2.0% | – | – |
| 2024 | -18.7% | -35.2% | -20.6% | – | – |
| 2025 | 13.5% | 20.4% | 12.9% |
高値平均:40.8倍 安値平均:17.9倍 |
0.81倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
LIFULLの直近の業績推移を見ると、国内不動産市場の構造変化や海外事業の整理が重なり、数字の振れ幅が大きい時期を迎えている。まず売上は、23.9期に364億円、24.9期には344億円へとやや減少し、25.9期予想では285億円とさらに縮む見通しとなっている。これは25年9月期に海外事業を連結除外し、事業の中心を日本国内に集中させる戦略への転換が背景にあるため、単純な減収というよりは「事業構造のリセット」に近い動きである。
利益面を見ると、23.9期は営業利益19億円、経常利益16億円、純利益10億円と安定していたが、24.9期は赤字へ転落し、営業損失64億円、純損失84億円という厳しい結果となった。これは海外子会社群の事業性見直しや減損リスク、広告費の増加、コスト構造改革の影響などが重なったためで、一時的な“整理の年”として位置づけられる。しかし、25.9期予想では営業利益33億円、経常利益30億円、純利益42億円と、直近の落ち込みから大きくV字回復する見通しとなっており、EPSも32.8円へ改善する。記念配当を含む7.33円という配当計画も掲げており、業績改善への自信が数字に表れている。
指標面では、24.9期の赤字によりROEやROAは大きくマイナスに振れたものの、25.9期にはROE20%超、ROA12%台へ回復する予想となっており、利益率の改善が強く見込まれていることがわかる。営業利益率も18.7%のマイナスから13.5%へ反転する見通しで、事業整理後の収益構造がかなりスリム化されることが期待されている。
株価指標では、25.9期の実績PERは高値平均40.8倍、安値平均17.9倍と振れ幅が大きく、再成長に対する市場の評価が分かれている印象を与える。一方、PBRは0.81倍と割安圏にあり、資産バリューの観点では下値の固さも感じられる。
総合的に見ると、LIFULLは「24.9期に大規模な構造改革で一度沈み、25.9期から回復軌道に乗る転換期の企業」であると評価できる。海外事業の連結除外により短期的には売上が縮むものの、国内事業への集中で利益率の改善が図られ、収益の質が高まる可能性がある。リスクはあるが、構造改革を完了させた後の収益回復力は高く、25.9期の反転が実現すれば、再び“成長ストーリーのある不動産テック銘柄”として見直される余地も十分ある。
ただし、広告費や人件費の増加、競争環境の激化といった不動産テック特有の課題が残っており、業績のブレが大きい点は慎重に見る必要がある。長期投資というより、“中期的な回復シナリオに賭けるタイプの投資”に向いている銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
LIFULLを配当目的で見た場合、結論としては「配当を軸に長期で保有するタイプの銘柄ではなく、配当は“おまけ的”な位置づけで考えるのが適切」な企業である。予想配当利回りを見ると、26.9期で2.42%、27.9期で3.03%と、確かにそこそこ高めの水準に見えるが、これを“安定高配当株”として評価するのは難しい面がある。
まず同社は、24.9期に大規模な赤字を計上しており、ここ数年の利益の振れ幅が大きい。25.9期は純利益の改善により7.33円(記念配当含む)を予定しているものの、これは構造改革を経た“回復局面の一時的な厚めの配当”であり、長期的に6〜8円の配当が安定して続くかどうかは不透明である。27.9期の想定利回り3%超も悪くないが、利益が再び伸び悩んだ場合は減配の可能性も十分考えられる。
次に、同社のビジネスモデルは広告収入・掲載課金・不動産会社向けサービスなど変動要素が多く、景気や不動産市況の影響を受けやすい。国内不動産市場は人口減少に伴う縮小傾向が進んでおり、競合も増えているため、配当は安定しにくい構造にある。また、25年9月期以降は海外事業を連結から外して国内集中戦略に切り替えるため、売上規模が縮小する一方で、どの程度利益率を改善できるかが重要なテーマになる。つまり、「収益をどれほど安定させられるか」がまだ見えにくい段階にある。
とはいえ、全く配当目的に向かないわけではなく、26.9期〜27.9期の利回り水準であれば、成長回復シナリオが現実味を帯びてきたときには、株価上昇+配当でそれなりの総合リターンが見込める可能性がある。巨大な資本後ろ盾(楽天グループ)を持つ点も、極端な財務不安がない点ではプラス材料である。
総合的に見ると、LIFULLは「安定配当株」ではなく、「業績回復に賭けつつ、配当はサブ要素として期待する銘柄」である。利回り3%前後という数字は魅力的ではあるものの、それを継続できるだけの収益安定性はまだ固まっていないため、完全に配当目的の長期保有には向かない。どちらかと言えば、業績反転の流れに乗りながら、配当も“ある程度もらえる”くらいの柔軟な姿勢で投資する方が相性の良い銘柄である。
今後の値動き予想!!(5年間)
LIFULLの現在値165円を起点に今後5年間の株価を考えると、同社はちょうど「事業の転換期の真ん中」に位置しており、今後の経営判断と市場環境次第で株価の方向感が大きく変わる難しい局面にある。特に25年9月期から海外事業を連結対象から外し、事実上“国内特化型の不動産テック企業”として再出発することが大きな意味を持つ。この事業ポートフォリオの再構築は、短期的な売上減少を伴う一方で、中長期では収益力の底上げや経営効率の改善につながる可能性を秘めているため、株価にとってはプラスにもマイナスにも作用しうる。
LIFULLは主力の「LIFULL HOME’S」で不動産ポータル市場を戦う一方、競合にはリクルートのSUUMO、アットホーム、Yahoo不動産など強力なプレイヤーがおり、広告単価の変動、掲載業者の移動、検索トレンドの変化などが業績に大きく影響する。そのため、同社の株価は不動産市況よりも“広告市場の強弱”と“アプリ・Web流入数の増減”のほうに反応しやすい構造がある。こうした特徴を踏まえ、5年後の株価を良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理してみる。
【良い場合】
経営戦略がうまく機能し、新しい収益の柱が立ち上がるケースである。国内集中後のLIFULL HOME’Sがユーザー体験の改善、広告商品改良、反響精度向上などにより再び存在感を取り戻し、法人向けサービス(DX支援、業務効率化SaaSなど)が安定的に伸びる。検索流入の回復と成約データ活用により広告価値が上昇すれば、営業利益率は改善し、EPSは30〜40円台で安定。ROEも10%前後まで改善すれば、市場は「業績回復路線」に強い期待を寄せるようになり、PBRも0.8倍から1倍超へ切り上がってくる。こうした要因が重なると、株価は250〜320円のレンジへ上昇する可能性がある。さらに、空き家活用やシニア関連領域が伸び、新サービスが収益化に成功する場合には上振れ余地もあり、低位株特有の“見直し買い”が入りやすい環境が整う。
【中間の場合】
最も現実味があると考えられるシナリオはここである。国内事業に集中したことで効率化は進むが、競争環境が厳しいため大幅な増収増益にはならず、EPSも15〜25円のあいだで推移。事業としては安定するものの、“明確な成長ドライバー”を見つけきれない状態で、株価も現在の165円から大きく離れず、最終的に180〜220円のレンジへ収束する。低位ながら財務は安定し、配当利回りもそこそこあるため、大きく下がりにくい反面、積極的に買い進まれる状況にはなりにくい。値動きが重く、材料が出ない限りは横ばいが続きやすい中期安定シナリオである。
【悪い場合】
不動産ポータル市場でSUUMOやアットホームがより強固なシェアを確保し、広告単価が下がるなど競争に押される展開では、LIFULLの収益基盤は弱体化する。また、国内市場の人口減少による賃貸需要鈍化、景気後退による住宅購入意欲の低下など不動産市況全体が弱含む場合、反響型ビジネスの収益は一気に悪化するリスクがある。この状況ではEPSは5〜10円台まで低下し、ROEも一桁にとどまり、PBRは0.7倍前後へ落ち込む可能性がある。株価は120〜150円のレンジまで下押しされる可能性があるが、楽天グループの持分法会社であり財務基盤は比較的安定しているため、極端な暴落や上場維持の危機といった最悪ケースに陥る可能性は低い。
【総括】
LIFULLは現在、構造改革の真っ只中にあり、24.9期の大きな赤字を経て25.9期以降に反転を狙うタイミングにあるため、株価は“復活期待”が出やすい一方、“業績不安”も残るという非常に心理的な値動きをしやすい状態にある。良い場合には300円台への見直し買い、中間では横ばいの180〜220円、悪い場合でも120〜150円と下値は限られており、低位株としては比較的読みやすい値幅になっているのが特徴だ。配当も2〜3%台を維持する見込みがあるため、完全な高配当株ではないものの“リスクを抑えた中期リターン狙いの銘柄”としては一定の魅力がある。
この記事の最終更新日:2025年11月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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